私にとって「墓場」と言えば、エロマンガ家の墓場さんを真っ先に思い出してしまうんですよね。
それは私のフロム信者としてレベルが低いのか、はたまたエロとフロム脳を直結出来るほどにレベルが高いのか……、そういうのも考え方次第で幾らでも解釈出来るものです。
つまりッ! そういう訳で今回は『巨人墓場』攻略回です♪
前回から今回もバトルっぽい流れが続いていますが、この作品における『巨人墓場』が戦いをテーマにした観光地だからということで。
降参したり怪我をしたらその時点で係員のガイコツたちは手を止めてくれます。基本的にほのぼののんびりまったり、そしてたまに「血が出た」です♪
平和とは、つまりまったくそれでよいのだ。
作中テーマ曲は『赤のラグナル』です。
◆ ◆ ◆
機能停止して廃棄されていた旧型アンドレイ師匠から種火を手に入れた後、途中の篝火で暖まっての食事休憩。
私の料理は『病み村』料理長のミルドレットさん直伝だからプリシラやんが作るよりも美味しいんですよね。
そのためプリシラちゃんは洗濯や野営準備は手伝ってくれますが、料理だけは決して手伝ってくれません。
何故なら私の手料理が食べたいから。まったくもう、甘えん坊さんなんだから♪
「……さて、『巨人墓場』の攻略も中盤。
ここまでの戦闘を見るに、プリシラちゃんはかなり成長が早いですね。
私にはあなたを含めて三人の弟子が居ますが、その中でも飛び抜けて早いですよ」
「あ、その弟子って、『病み村』に居る<混沌の娘>ちゃんと『狭間の森』にいる……、
えーと“あなた岩”ハビョビョさんでしたっけ?」
「あながち間違いではありませんが、正しくは“岩のような”ハベルさんです。
あの人には恋人(予定)がいますけど、変態さんなので覚えなくてもいいですよ」
「え~、でも“岩のような”ってなんかカッコいいでしょ~? お兄ちゃんってのにも憧れるし~。
私、年の近い<混沌の娘>ちゃんにも会ってみたいけど、ハベルさんにも会ってみたいよ~」
可愛らしくわがままを言いながら私の背後からしな垂れかかってくるプリシラちゃん。
この子の自然と、こういうことをしてくる子どもっぽさと、子どもとは思えない発育の良さは、実際ハベルさんに会わせるのは危険だと思います。絡めてくる腕のモフモフが柔らかくて良い香りですし♪
でもハベルさんもまた、私の弟子になって魔法を身に付けて正真正銘の伝説級の騎士になってるから、兄弟子としては優秀なんですよね。
プリシラちゃん勉強のためにも会わせるか思案しますが、その考えはまた後日。
まずは突然この場に現れた新たな声に警戒をしましょう。
「よぅ、嬢ちゃん達。なかなか盛り上がってるようじゃねぇか俺も混ぜてくんね?」
スキンヘッドに大盾と槍装備。いかにもな悪人でございという顔をした男性が声を掛けてきました。
「おじさんだ~れ~?」
「おじさんは“鉄板”のパッチさ!
盗人と商人の二足のわらじを履いているんだが、困ったことになったんだ。
助けてくれないか?」
来て早々にオーバーリアクションで図々しい事を言ってくるパッチさん。
確かに面白い人ではあるかも知れませんが、どう考えても悪い人でしょう。プリシラちゃんは警戒心がありませんけど。
「実はな、俺はこの『巨人墓場』にやってきた人間を高所から突き落とし、死んだところを身ぐるみ剥いで売るのが生業なんだが、今回落とした聖職者がそれで死ななかったんだわ。
だから報復される前に倒してくれってことさ」
「さぁ、プリシラちゃん。ご飯も食べ終わりましたし私たちは先に進みましょう。
この人は悪人です。関わってはいけません」
人の心の悪を見てプリシラちゃんのトラウマが目覚めては、私を信じて彼女を預けてくれたジュレマイアさんたちエレーミアスの仲間たちに申し訳が立ちません。
ですが、プリシラちゃんは私の想像以上に清く正しく強くなっていたと、今この瞬間にこそ彼女の成長を知ることになったのです。
「<かぼたん>さん! 困っている人は助けてあげなきゃ!!」
「え? でもこのパッチさんは自業自得ですよ?」
しかしプリシラちゃんは続けてこう言います。「罪を憎んで人を憎まず」と。
……あ~、そういうことですか。
「話が分かるようで良かったぜ♪
それじゃあ早速付いてきてくれ。ソウルの量ではお嬢ちゃんたち二人なら楽勝だぜ♪
やっぱ罪を憎んで人を憎まずだよなぁ~♪」
パッチさんも頭が軽いと言うか何と言うか。
この人、絶対プリシラちゃんの言ったことを考え違いしていますね。
「待ってください、おじさん」
「あん?」
「ドーン♪」
私達がいるのは『巨人墓場の』篝火の側。もっと言うと、暗くて足場が悪い高所で、篝火は崖の側にあります。
そんな場所で突き飛ばせば落っこちる訳で、まぁ結果を言えばパッチさんは奈落の底に落ちちゃったんですよね。
「さよ~なら~♪
おじさんを恨んでいる人たちには、私達が許してあげるように言っておくねー♪
罪を償うためにも、おじさんも同じ目にあってね~♪」
暗くて深いから崖下は見えませんが、「ノーカウント」と連呼するパッチさんの声。
「罪を憎んで人を憎まず……その罪のみを憎んだ結果、パッチさんに罰を与え、その代り自分達が彼を許してあげるように頼みに行く。
つまりはそういうことですね?」
「うん♪ だって<かぼたん>さん。高いところから突き落とされたら痛いでしょ?
だから同じ目に合わなきゃ、パッチさんが落とした人も許してくれないと思うんだ♪」
「……はい、その通りです。
プリシラちゃんは賢いですね♪」
「えへへ~♪」
可愛いから良しと言うことで。
でもこれでパッチさんが落としたと言う聖職者――たぶん、レアさん――に会いに行かなくてはならなくなりましたね。
何事も無ければ良いのですが……。
◆ ◆ ◆
レアさんが居るらしい場所は篝火からそう離れていませんでした。
すぐ近くから聞こえる女性の声を辿って行くと、そこに彼女はいました。
「いいですか~? この世はありとあらゆる不幸で満ちているのです。
その不幸を跳ね返すためにも、この『白のタリスマン』を買いましょう♪」
周りに多くのスケルトンさんたちを集めて演説をしている女性がいました。
側には二人の騎士。一人は『頭蓋ランタン』による照明役。「むーん」としか言わない無口系の人。
もう一人は相槌役の軽そうな人。
「この『白のタリスマン』は本来、白教の女性のみが購入できる激レアアイテムなのですが、
何と本日はお値打ち価格で男性にも販売しております!
素材も私のおパンツと同じものですよー♪」
オォ~! というスケルトンさん達の歓声。
あー、こういう布教の仕方なんですね。
「でもお高いんでしょう?」
「いいえ、実際安いです。
なんとこのタリスマン、お値段は5万ソウル!!」
「ワー! スゴーイ!」
側近の方でしょう、軽そうな騎士さんがヨイショすることで場は盛り上がり、「買うしかない」という空気を作りだす。
オマケとして最後にレアさんがスカートをたくし上げ、自身のおパンツとタリスマンが同じ素材だと証明。
これを見て商品を買う人も変人ですが、売るレアさんも商売人ですね。
お客さん達全員がタリスマンを買って帰った後、私たちも何も見なかったことにして先を進もうと思いましたが、プリシラちゃんが一人で話しかけに行ってしまいました。
「ん?」
てふてふと近づいていったプリシラちゃんにレアさんが気付きます。
「お嬢ちゃん迷子?
もしかして私のタリスマンを買ってくれるの?」
接客スマイルのレアさん。彼女の側近の騎士二人はプリシラちゃんのソウル量に気づいて警戒しているようですが、特に敵意がないようですし、乱暴なことはしないつもりのようです。
折角なので、初めてのお使いを見守る母親的ポジションで私は静観しましょう。
「ううん、私タリスマンなんていらない。
でもお姉さん。タリスマンってそれぞれの宗教信者の人が奇跡を起こすために使う物でしょ?
何でお金を取るの?」
なるほど、タリスマンは信者に無料で配るはずと考えているんですね。
プリシラちゃんらしい純粋さですが、このロードランでは大体のものはお金がかかりますから正しくはあっても正解とは言えません。
「お嬢ちゃん。無料で配るのは信仰を得るために信者に与える場合だけよ。
私は信仰よりもお金――ソウルが欲しいのよ!」
「ソウル?」
「そう! ソウルがあれば何だって出来るし、何だって買える!
私は神様なんてクソ喰らえって思ってるんだから信仰なんて食えないものに興味はないわ」
間違ってはいないのでしょうが、そこまで聖職者がお金に固執するのもどうかと思いますけどね。
宗教というのは人を集めさえすれば安易にお金が稼げる組織ですし、白教ほどの大きな宗教組織で高位にいたでしょうレアさんが、こんなロードランの辺境に左遷させられたってのも、お金絡みでしょうし。
執着する気持ちが強くなるのも仕方が無いかもしれませんね。
側の騎士さんたちもレアさんの太鼓持ちでしかありませんし、やはり私達が関わる問題ではないようです。
「<かぼたん>さん。人は何でお金に固執するのかな?」
こちらに戻ってきたプリシラちゃんが聞いてきます。
「そうですね。それはお金の価値と人それぞれの価値観の差が小さいからだと思います。
心の平穏というのは、何かしらバランスのとれた絶対的なものに依存してしまうんですよ。
ソウルはお金でもありますが所有者の能力を上げてくれます。
だから絶対に価値の下がらないものを沢山所持していると人は安らぐものなのです」
私やプリシラちゃんの余裕のある態度も、性格も関係あるのでしょうがデーモンと竜という、莫大なソウルを持っているからこそのものかもしれません。
ソウルを失えば死も同然。何も出来ない状況ほど心が乱れることはありません。
きっとレアさんは、そんな状況にお金でしか安寧を求められない人なのでしょう。
ならば私達は、そんなレアさんを止める権利も気持ちも持ちません。
ただ静かに離れ、墓の底――エリアボスの“墓王”ニトさんに会いに行くことにします。
あ、パッチさんのこと許してもらうの忘れてましたけど別にいいですよね。
◆ ◆ ◆
「いらっしゃいませ~♪ 当エリアは誰でもウェルカム♪
どんな形式のバトルをご希望でしょうか?」
ボス部屋の前には係員がいるもの。
ニトさんの部屋の前にいた『地下墓地』のエリアボスとは別の<三人羽織>さんが、そんな風に聞いてきました。
「ここのボス戦はコースで分かれているんですか?」
「はい。順に読み上げますと、
Aコース:ニト様と、スケルトン三人と巨人スケルトン三人がおまけの標準コース。
Bコース:ニト様と、巨人スケルトン十人がおまけのちょいキツコース。
Cコース:お客様の望む設定があれば、その設定通りニト様が戦ってくれるコース」
「Cコースは勝負の台本を挑戦者が作るってことですか?」
「そうなります。
挑戦者の方が一から書いてもいいですけど、こちらで用意した台本から選ぶことも可能です♪
衣装やセリフの一部変更もいいですよ♪」
なるほど、これはどれを選んでも面白そうですが、やはりCコースが一番気になりますね。
「ねぇねぇ<かぼたん>さん! わたしCコースがいい!!」
「そうですね。私もCコースが気になります」
台本は自分で作ることも出来るようなので即興で書いたものを<三人羽織>さんに渡し、ニトさんに届けてもらいます。
ふふっ、ここって暗いエリアなのに従業員さんたちの雰囲気や工夫がとても楽しいエリアですね♪
◆ ◆ ◆
「ふーはははははぁー! よく来たな、勇者<かぼたん>! 勇者プリシラ!」
「墓に入るのにいちいちあなたの許可をもらわなければいけない時代は終わったのです墓王ニトさん!
私のデモンズソウルと、プリシラちゃんのドラゴンソウル。二つの合体技で消し飛ぶといいわ!」
「(ジュレマイア)お爺ちゃんが言っていた。ドクロを付けた人は実際悪い人だと」
タオルを詰め込んで丸太のように膨らませた上腕と胸筋。
背中には聖女レアさんの刺繍が縫い付けられ、お腹にはでっかく「悪いニト」と書かれたニトさんに相対するは勇者装束――すなわちビキニアーマーの私とプリシラちゃん。
プリシラちゃんは半竜らしく毛が長いのでビキニっぽく毛をカットしただけですけど。
「地下の道を往き、墓を司る王に歯向かうとは、ちょこざいな!」
「王が統べる時代は終わりです。
あなたの運命は、私と<かぼたん>さんの『ラブラブ・プリチーズ』に敗北する運命にたった今書きかえられるのです」
「え? プリシラちゃん、そのセリフって台本では『プリティ・ラヴァーズ』だったんじゃ?」
セリフの間違いはアドリブと言うことで。
勢いで誤魔化し、結果的にニトさんが諸悪の根源ということで一同が納得し、プリシラちゃんの大鎌が閃光を放ちます。
「サヨナラ!」
ニトさんの骸骨の頭は大鎌によって切断され、永遠にその体とおさらばするのでした……。
◆ ◆ ◆
「うっははははは! これほど楽しい時間はいつ以来だろうな♪」
「いや、ニトさん。こんな暗いところに引き籠ってたら暗くもなりますって。
無理してでも毎日笑うようにした方がいいですよ」
「うわぁ~、これもこれもこれもこれもこれもこれも、みぃ~んな美味しいぃ~♪」
イベントバトルを終えた後は握手をして大宴会。
『巨人墓場』の料理人さん達と私の料理バトルが展開されたりしましたけど、「全部美味しい」という平和的な決着となりました。
あ、ニトさんですが、骸骨の体なので首を切断されても乗せたら普通にくっつきました。
「わしもそろそろ墓王を辞める頃合いかもしれんな……」
「へ? 確かにニトさんは結構な年みたいですけど、仕事を辞めて、何かしたい事でもあるんですか?」
宴のさなか、いい感じにお酒が入ったところでニトさんはそんな事を言いました。
「うんむ、これでも四人の王の一人だ。グウィンからもらった王のソウルを<かぼたん>ちゃんにあげたことだし、わしも旅に出ようかと思ってね」
「ニトおじいちゃんも旅に出るの?」
プリシラちゃんはジュレマイアさんに育てられたからか、お爺ちゃんっ子みたいなんですよね。背だってニトさんは、半竜のプリシラちゃんよりも高いですし。
だからか彼女も、ニトさんにえらく懐いているようで、妬ましいやら微笑ましいやら……。
「うむ……、そうだな。
後任のスケルトン達も育ってきたことだし、わしも旅に出る!
いま決めた。そしてこれは決定事項だ!」
「勢いで決めたにしては清々しい決意ですね。
前々から考えていたんですか?」
「少しだけな♪
それと少し聞いてみるがプリシラちゃん。わしと一緒に来ないかね?」
自分よりも背の高いニトさんが珍しいらしく、肩車をしてもらっていたプリシラちゃん。
ドクロの頭をぺしぺししながらニトさんの顔をのぞき込みます。
「プリシラちゃんは、<かぼたん>ちゃんと違って特に目的もないだろう?
わしと一緒に目的を探す旅をしないか?」
プリシラちゃんは一瞬考え、そして今度は私の顔をうかがってきます。
自分の夢や目的は自分で決めるもの。
私は彼女に、ただ一度微笑んで首を縦に振るだけにしました。
「うん♪ 決めたよニトおじいちゃん♪
私もお爺ちゃんについていく! いいでしょ? <かぼたん>さん」
「ええ、プリシラちゃんが決めた事ならどんなことでも私は応援しますよ♪」
出会いの宴は別れ宴へ。さっきの仲間はいずこへか。
こうして『巨人墓場』での冒険も無事に王のソウルを手に入れたことで終わり、プリシラちゃんはニトさんと一緒に別のエリアへと旅立っていきました。
……あ、そういえば『病み村』に彼女を連れていくって書いちゃいましたけどどうしましょう?
◆ ◆ ◆
~おまけ~
しんしんと降り続く雪の中、元気に駆ける老人の姿があった。
「おぉ~い、みんな! プリシラから手紙が届いたぞ!」
雪の降り続ける静かなエリア――『エレーミアスの絵画世界』。
そこではエリアボス代理のジュレマイアが一通の手紙を手に、エリア中の仲間達を集めていた。
「それでジュレマイアさん、手紙には何と?」
誰もが気になる彼らのアイドル、プリシラの外の世界からの最初の手紙。
その内容を問われたジュレマイアは、焦らすように手紙を読み始めた。
『エレーミアスのみんな、お元気ですか? 私は元気です♪
今回初めてのお手紙を書いてみましたが、私はいま<かぼたん>さんと別れ、旅の途中で知り合った“墓王”のニトおじいちゃんと一緒にいます♪
その冒険は笑いあり涙あり。手と手を取り合うことでお互いを理解し合う中で気が付きました。
「あぁ、私は恋をしているのだと」
そういう訳で今度ニトさんを連れて里帰りをしようと思います♪』
……
…………
………………
ジュレマイアは意識を手放した。
~後書き~
レアはほとんどアンバサ。故に反・アンバサ。
個人的にニト様のイメージは『剣客商売』の秋山小兵衛って感じですね。結構な年なのは確かですし、子どもどころか孫が居てもおかしくないような気がします。
邪神ドゥルヴァルキーもイメージに近いのですが、あっちの大根ネタはクラーグで出しちゃったのでw
それはさておき、今回の話から改行の仕方を変えてみました。
これまでは『小説家になろう』での空け方――「セリフと地の文の間、セリフとセリフの間を二行」、「地の文と地の文の間を一行」と、基本的にこれだけ空けていましたが、こちらでは元々の文字同士の感覚が広いようなので空行をあまり挟まない方が読みやすいと思ったのです。
逆に読みにくく感じる方がいれば以前のように戻します。
私が小説を書く上で特に気を使ってているのは、「ネット小説」として読みやすく面白いものを楽しく書くことです。