ロードランは今日も平和です   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 ~前書き~

 以前投稿したウーラシール王国の話にて、マヌスがボスのエリア『深淵の穴』を『深淵』と表記していたのに気付いた方はおられるでしょうか?
 並べてみればお分かりでしょうが、『深淵』というエリアは『小ロンド遺跡』の先にある<四人の公王>との決戦のバトルフィールドで、ウーラシールにあるのは『深淵の穴』。別のエリアです。

 ならば、なぜ私が『深淵の穴』を『深淵』と表記したのか!?
 そんな感じのお話です。……いや、深い理由がある訳じゃないんですけどね。

 あと、半オリジナルの名詞が多いです。そしてボーガー向けになり過ぎたかな?


 ◆ ◆ ◆


第二十二話:かぼたん、人生の縮図

 ロードランのあちらこちらを旅してきた私は、色々な場所や色々な人を見てきました。

 その中には暗くて怖い場所や、明るくて綺麗な場所も多くあり、変な人から尊敬できる人まで様々な出会いもありました。

 そんな私が『巨人墓場』の次に向かったのは『小ロンド遺跡』。そしてその先にある『深淵』。

 

 『巨人墓場』でプリシラちゃんとニトさんのコンビと別れた私は、まるで昼間でも夜のように薄暗い『小ロンド遺跡』にいるのです。

 どんな出会いがあるのかと楽しみにしながら。

 

 

「……で、何でエレベーターを降りてすぐの場所にあなた達が居るんですか?」

 

 

「固い事言いっこなし♪」

「むしろ長いエリアを移動する手間が省けていいっしょ?」

「あ、王のソウル集めをしている火防女って君のこと?」

「噂なら聞いてるよ。王のソウルなら幾らでも持ってって♪」

 

 

 『火継ぎの祭祀場』にあるエレベーターを降りてすぐの『小ロンド遺跡』。

 そのエリアに入ってすぐの場所にエリアボスの<四人の公王>さん達はいたのです。

 亡者さん達と一緒に「かくれんぼ」をしながらエリアボスの威厳を欠片も見せずに。

 

 

「いやいや<かぼたん>さん」

「そうは言ってもエリアボスの威厳だなんてこのエリアには必要ないものなんだよ?」

「そもそも『深淵』ってエリアは『ウーラシール王国』へのタイムホールが出来てから閉鎖になっちゃったし」

「元々アルトリウスさんの思いつきで作っただけで人気無かったし」

 

 

「経営難になるほど人気が無かったんですか……。

 ウーラシールの深淵と違って暗いだけでなく、何もないのが売りだと聞いていたのに世知辛いものですね」

 

 

 <四人の公王>さん達が言うには、彼らは元々『小ロンド遺跡』のみのエリアボスとして細々とそれなりの収入で生活をしていたそうですが、

 “深淵歩き”のアルトリウスさんが自身の過去の偉業を再び体験するために建設させたとか。

 

 しかも、エリアを作成した本人が試験的に飛び込んだら、入場の際に必須の指輪『アルトリウスの契約』をつけ忘れての転落死という事故で運営は傾き、

 『小ロンド遺跡』さえもロードランで一番の不人気エリアになってしまったそうです。

 

 

「でも気にしなくてもいいよ」

「ここの住人ってみんなやる気とか欲とか、そういうの薄いから」

「衣食住にお金を使わなくても、不死の呪いのおかげで死なないしね」

「住人の雰囲気は前からこんなだし」

 

 

 そんなこんなで、アルトリウスさんの思いつきで作られて潰れることになったエリア『深淵』の探索は中止。

 目的だった王のソウルもあっさりと手に入ったので、このエリアでしたいこともなくなってしまいました。

 さて、どうしましょうかね?

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「チャージ三回!」

「フリーエントリー!」

「ノーオプションバトル!」

「チャージイィィィーーン!」

 

「チャージイン♪」

 

 

 ここは『小ロンド遺跡』。

 王のソウルも手に入れてこのエリアですることもなくなったと思っていた私は、<四人の公王>さん達と遊びに興じていました。

 

 名づけて<鍛造(たんぞう)昆虫ターマイト>!

 <小ロンド遺跡>に引き籠っている鍛冶職人のリッケルトさんが、かつて訪れた遠い島国で見かけた虫をモデルに作成した玩具です。

 ルールはよく分かりませんが、昆虫の形をした自走玩具をぶつけ合わせて相手のマシンを機能停止、またはリングアウトさせれば勝ちのようです。

 

 構造こそ単純な玩具ですが、決して侮ることなかれ。

 このエリアの人たちは遊びに関しては一切妥協しない全力で遊ぶ大人ばかりなのです!

 そしてこのエリアの人たちは、遊ぶことに心血を注いでいる人たちなのです。

 

 

「いっけぇー! 私のメタビーケー・ビーティーカボタン(マシン名)!!

 ムーンライト・ダークスレイ・エクセレクター(技名)!!!」

 

 

「おぉ! いきなりの必殺技とは!」

「やりますね<かぼたん>さん♪」

「ならば、こちらも本気を出しましょう」

完全調和(パーヘクトハーモニー)ですな兄者達♪」

 

「「「「トットコ・マカリトオル(マシン名)! カアス・フラムト・クチクサイノ・ナンデ(技名)だ!!!」」」」

 

 

 相手のトットコ・マカリトオルは<四人の公王>さん達のマシンらしく、分裂してきます。

 それは残像などのチャチなものではなく、全部が本物。すなわち全部の攻撃を避けて、全部に攻撃を当てなければ私の負けということです。

 普通ならば初心者がこんな鬼畜技を使われては勝てません。……普通ならですけどね。

 

 

「この勝負。私の勝ちです!」

 

 

 私のマシンは天高く飛びあがると、回転を加え、先端に付けられた二本の牙でロックオン。

 

 

「「「「な!? トットコ・マカリトオル!?」」」」

 

 

 <四人の公王>さん達は私のことを初心者と侮っていたようですが、この玩具は使用者の精神に反応します。

 その事を製作者のリッケルトさんに聞いて私は、自分が負けないと確信しているのです。

 

 

「いいですか、<四人の公王>さん達。

 私は一分一秒、そしてこの瞬間にも成長しているのです。

 ターマイター(この玩具のプレイヤー)の精神が勝敗に影響するのなら、私に精神的に勝てる人なんているはずがありません!」

 

 

 精神攻撃は基本。

 料理で一番大事なのは愛情ではなく基本です。基本あっての達人技。

 それはターマイターにも共通しています。

 

 私の火防女としての「ソウル操作能力」と、アンドレイ師匠直伝の「鍛冶技能」は、マシンのソウルレベルを最大まで強化しています。

 その強さは物理的にも精神的にも相手を追い詰めるのです。

 

 無慈悲なまでに洗練された初心者の私が繰り出す達人技は、<四人の公王>さん達のマシンの膝に矢のように突き刺さり、リング外まで一撃で吹き飛ばしました。

 

 

「完敗です」

「<かぼたん>さんはターマイターの初心者でも、人生経験豊富」

「まさに密度が違う……、人生の密度が」

「実際強い……」

 

 

「まぁ、そういうことです♪

 これで分かったでしょう。私の実力が。

 初心者相手のバトルでも、スイーツみたいに甘くないってことが」

 

 

 いたずら好きと言いますか、子どもがそのまま大人になったような<四人の公王>さん達は遊ぶことがとにかく大好き。

 火防女の私を負かせば箔が付くとでも考えたのでしょう。

 それ故の御誘いでしたが、慢心しているようなので相手の土俵にて、伸びた鼻っ柱をへし折ってあげました♪

 

 

「では王のソウルも手に入れたことですし、私は『病み村』に向かったあと、『最初の火の炉』に向かおうと思います」

 

「そうですか」

「では次にまた会える時まで」

「腕を磨いて待っているとしましょう」

「あとグウィンさん家は今大変だから気を付けて」

 

 

 こうして無事にソウルを手に入れた私は次なる目的地『病み村』へと向かいます。

 <混沌の娘>ちゃんにもお土産が沢山出来たし、楽しみですね♪

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 ~プリシラとニト~

 

 

 いつからか、考えるのも億劫になる大昔。

 古竜を倒してからの儂は、墓の王などと呼ばれ、グウィンからも信頼され、趣味だったソウルの研究や眷族達との交流に力を入れるようになっていた。

 だからだろうか? それが緩やかな停滞だと気づけず、ある日後ろを振り返ると信者たちの数が減っていたのだ。

 どうやら儂に愛想を尽かしたようだ。

 

 儂は別段目的も無い、過去の戦で表舞台から去った隠居爺。

 趣味のソウル研究を続けていればそれで楽しかったし、研究成果を発表することもせずに地下深い墓場に籠り続けていたからそういった眷族が出るのは仕方が無いと思っていた。

 

 それに、まだ残っていた数人の眷族達に聞いたところ、元・墓王の眷族達は『病み村』というエリアから人間性を集めにやってきた、混沌の従者たちに影響を受けて出て行ったのだそうな。

 やはり若い者たちは女子の胸というのが好きなようだ。大きいのも小さいのも揃っている男の理想郷という話を聞いて儂も行ってみたい気はしていたが、それよりも研究欲の方が強く、行かなかった。

 

 しかし人生とは何があるか分からんものだな。何故ならそんな儂が今居るのが『病み村』だからだ。

 

 

「はい、ニトお爺ちゃん。あ~ん♪」

 

「あーん」

 

「ニトお爺ちゃん。今度は私のも。あ~んして♪」

 

「あーん」

 

 

 何だかんだで『巨人墓場』を出ることを面倒がっていた儂は、結局旅に出て今『病み村』にいる。

 そして旅のパートナーのプリシラと、『病み村』の姫君<混沌の娘>に料理を食べさせてもらっている。

 いや別に、介護が必要なほど老いている訳じゃないぞ?

 

 

「お味はどうですか、ニトさん?」

 

「おぉ、ミルドレットさん。ここの料理はどれも美味しいですね。

 儂は食事の必要が無かったので何百年ぶりかの食事ですが、とても楽しませてもらっています」

 

 

 料理長のミルドレットさんの料理は美味い。

 もしかしたら儂は、これまでの人生を怠惰に過ごしていただけで、新しい出会いの場を一切求めていなかったのかもしれん。

 

 その事に気がついただけでも、儂の人生はまだまだこれからだと思える。

 

 

「さて、プリシラ。それに<混沌の娘>ちゃんも。

 儂の勘じゃとあと数日以内に<かぼたん>嬢ちゃんが『病み村』に来るはずだ」

 

「おー、<かぼたん>さんくるんだー♪」

 

「それじゃあ『姿隠し』の魔法をもっともっと鍛えないと!

 不意打ちで<かぼたん>さんに一撃を叩きこめるだけ強くなるんだもん!」

 

 

 ほっほっほっ、<かぼたん>嬢ちゃんが来ると知っただけでこの喜びよう。

 二人にとってはあのお嬢ちゃんは師匠のようだし、儂も手ずから鍛えてやるのも良いかもしれんな。

 

 どれ、サマーカットで涼しげな、露出の多いプリシラと、最初から裸の<混沌の娘>の柔肌を紳士的に第二の師匠ポジションで鍛えてやろう。

 

 ふぉ~ふぉっふぉっふぉっふぉ♪

 




 ~後書き~


 今回は名詞が多いので少し説明をしましょう。
 まず「ターマイト」とは、フロム・ソフトウェアで私が一番好きなゲーム『キングスフィールド2』に出てくる巨大なアリ型クリーチャーです。

 そして『深淵の穴』を『深淵』と表記した理由……、ようするにアルトリウスが駄目駄目なので、指輪『アルトリウスの契約』を取りに行きたくなかったからです。
 最初は単純に間違えただけなので直そうかとも思ったのですが、『深淵(公王たちの)』は経営難で潰れた設定でいいかな? と思ったらわざわざ直さなくてもいいかと思いましてw
 ちなみにイングヴァードさんも「かくれんぼ」や「鍛造昆虫ターマイト」で公王たちと競うライバルポジションという感じです。作中には出ていませんが。(出し忘れていた)

 次話で<かぼたん>は再び『病み村』に遊びに行き、<混沌の苗床>に会ってソウルをもらい、『最初の火の炉』へ行けば原作だとクリアとなりますので、エピローグを含めてあと3話くらいで完結予定です。今月中には完結するかな?

 ある程度の流れは出来ていますが、私はそういうプロットだとかを意図して無視するのが大好きなので、書き足したり削ったりで予定通りに行くかは分かりませんが、最後までよろしくお願いします♪
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