ロードランは今日も平和です   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 ~前書き~

 <かぼたん>秘伝の「火防女式鍛冶呪術」……、それは最強の術である。
 師であるアンドレイから習った鍛冶と呪術に火防女としての能力を組み合わせ、向かうところ敵なしの必殺技。
 考えるだけ考えていながら出す必要はないなぁ~、と思っていた<かぼたん>の裏設定。バトル作品じゃありませんからね。

 今回は最終話に向かうまでの『火継ぎの祭祀場』での話。


 ◆ ◆ ◆


第二十三話:かぼたん、再会と宣伝をする

「それでですね、こういう玩具があるんですよ」

 

「へー、流石は『小ロンド遺跡』の連中ッスね。

 遊ぶことには妥協しない遊び人集団だけあるッス」

 

 

 場所は『火継ぎの祭祀場』。

 隣にいるのはアナスタシアちゃん。

 手に持つのは『鍛造昆虫ターマイト』……、もらってきちゃいました♪

 

 

「ほら、こうやってオプションパーツを付ければ……あら不思議♪

 宙に浮かんで空からの攻撃も可能になります♪」

 

「なら私は呪術を埋め込むッス♪」

 

 

 意外と面白いこの玩具。

 元々、鍛冶屋のリッケルトさんが作成したものなので、同じ鍛冶屋の私にも作成は可能。

 量産してあちこちに配り、ロードランをターマイターでいっぱいにする計画です♪

 

 

「ではルール確認と行きましょう。

 チャージフリー、フリーエントリー、フリーオプションのトリプルフリーです」

 

「了解ッス!」

 

「「チャージイン!」」

 

 

 火花を散らす両者のマシン。

 火防女の先輩後輩なんて関係を抜きにして、手加減なんて微塵も無いターマーター同士の真剣勝負の始まりです。

 

 

「私の方が数日早くこの玩具を知ったのに、アナスタシアちゃんはすでに完璧にマシンと意思疎通をしている……。

 私と同等か、それ以上に!」

 

「悪いッスね、<かぼたん>先輩。

 私も勝負と名のつくもので手加減する気はないッス。

 そして精神力が勝敗を左右する勝負は、むしろ十八番ッスよ!」

 

 

 激しい炸裂音を響かせぶつかり合うお互いのマシン。

 私のマシンは魔法『完全な防護』の術式を埋め込んでいる防御型ですが、それすらも貫通する彼女の攻撃力!

 さてはアナスタシアちゃん、呪術『内なる大力』でも仕込んでいるのでしょう。

 ならばこちらの取るべき手段は持久戦!

 

 

「おっと、<かぼたん>先輩のことッスから、当然私が呪術『内なる大力』を使っているのは見破ってるッスね?

 私がこの呪術の弱点である持久戦の対策をしていないと思っているッスか?」

 

「ハッ!? まさかアナスタシアちゃん!」

 

「気付いたみたいッスね。

 そう! 奇跡『再生』による時間経過による回復効果に加え、再生の指輪をオプションパーツにしたッス!!

 機動戦士アンバサ型は、プレイヤースキルが低いうちは重宝するってもんスよ」

 

「くっ! あくまで基本に忠実な堅実なプレイスタイルとは流石ですね」

 

 

 『鍛造昆虫ターマイト』を教えてからわずかの時間でこれだけ実践的なカスタムが出来るとは、彼女はまさに生まれながらの勝負師!

 確かに彼女はマシンとの意思疎通こそ可能なれど、まだまだ初心者。基本に忠実というのは厄介な強みですね。

 

 これは『病み村』へ行く途中のほんの少しの寄り道のつもりが、長々と過ごすことになっても仕方が無いでしょう。

 <混沌の娘>ちゃん。プリシラちゃん。あなた達の師匠は強敵に勝ってから会いに行きます!

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 それから何日が過ぎたでしょう。

 私とアナスタシアちゃんは、来る日も来る日もターマイトで戦い、勝ち負けを繰り返し、友情を深め合い、腕を磨いていたある日、『火継ぎの祭祀場』にお客さんが来ました。

 

 

「わはー♪ <かぼたん>師匠~♪」

 

「待ちきれないから来ちゃったー♪」

 

 

 私のデーモン洞察力でも気づけない隠密能力。そこから繰り出される巨体によるタックル。

 その正体は<混沌の娘>ちゃんとプリシラちゃんでした。

 

 

「え? 何で二人がここに?」

 

「うー、<かぼたん>師匠が『病み村』に手紙を出してから、私たちがどれだけ待ったと思ってるの?」

 

「私たちはニトおじいちゃんに連れてきてもらいました♪」

 

 

 二人の後ろに目をやると、二人の大きな少女達よりもさらに大きな老人っぽい骸骨のニトさんがいます。

 温暖な気候の『病み村』で生活していたからか、服の丈が短く涼しげになっています。

 

 

「すまんな<かぼたん>お嬢ちゃん。

 最初はプリシラも<混沌の娘>も良い子で待っていたのだが、お前さんに会うと言って聞かないからな。

 だから儂が連れてきた」

 

 

 道中、露店などで二人にねだられて財布が軽くなったと笑うニトさん。

 あ~、だから保護者がニトさん一人なんですか。ニトさんって隠居しているから所持ソウル量も多いですし。

 

 

「いや、引率の保護者は儂だけじゃないぞ?」

 

「え?」

 

 

 ニトさんの言葉の意味を一瞬で理解した私は瞬時に防御をします。

 静かな『火継ぎの祭祀場』に響き渡る空気を焦がす風切り音。シュギィン!

 

 

「ハッ、流石だねぇ<かぼたん>さん」

 

 

 最初に上手く気配を消して登場した<混沌の娘>ちゃんとプリシラちゃんは囮。

 私に一撃を入れそうになった風切り音の正体はクラーグさんでした。

 ……防がなければ私の首が永遠にオサラバするところだったんですけど?

 

 

「しっかし上手く防ぐもんだねぇ。

 プリシラや<混沌の娘>が隠密重点の再会をするって言うから、あたしも似たようなことをしてみたんだけどさ。

 しっかりと防がれちまったねぇ。参った参った敵わないさ♪」

 

「クラーグさんの実力は二人よりも上ですけど、私はさらに上ですからね。

 弟子二人にのしかかられた状態でも防げなくありません」

 

 

 そう、私はいまのクラーグさんの腕試しの不意打ちを防いだだけでなく、私の上にのしかかっているプリシラちゃんと<混沌の娘>ちゃんを抱きしめたままの姿勢で受けたのです。

 離してなるものか! この感触!!

 

 これぞ、アンドレイ師匠直伝の愛の防御!

 

 

「……いや、技名付けるほどじゃなくね?」

 

「そうですね。でも『病み村』に行かずして皆さんと久し振りに会えてうれしいです♪」

 

「そいつは良かった♪

 でもそれは、あたしらが来なければまだまだ遊びまくっていたってことかい?」

 

「そうなりますね。

 いや、クラーグさんもやってみればハマりますけど、この玩具が凄く面白いんですって!」

 

「否定もせずに自分の興味を勧める。やっぱりあんたは変わらないねぇ。

 そこが楽しいんだけどさ♪」

 

 

 取り出したるは『鍛造昆虫ターマイト』。

 不意打ちというノリに付き合ってあげたんですから、今度はクラーグさんが私の新しい趣味に付き合ってくれる番です。

 私が熱心に勧める玩具の説明を一生懸命に聞いてくれるクラーグさん達『病み村』御一行。

 特に弟子二人にはぜひとも身に付けてほしい技術ですね♪

 

 でもターマイトもいいですけど、彼女達が来た理由も聞くことにしましょうか。

 幾ら彼女達が自衛可能な強さと優秀な部下に恵まれていると言っても、エリアボスが自分たちの治めるエリアを空けるには理由があるはず。

 その上で、『鍛造昆虫ターマイト』に興味を持ってもらいましょう♪ これを勧めることは決定事項です。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「あたしらが来た理由は、妹達があんたに会いたがったってのもあるんだけどさ。

 こっちがが本題なわけ」

 

 

 クラーグさんがドンと取り出したのはソウル。

 それもただのソウルではありません。

 

 

「これは……王のソウルですね?」

 

 

 クラーグさんが差し出したものは『王のソウル』。そういえば彼女のお姉さんが、その一人でしたっけ?

 

 

「見ての通り、王のソウルさ。あたしの家――混沌家の長女<混沌の苗床>姉さんが『病み村』よりもさらに地下深くで守っていたもんだ。

 あんたが集めているって言ってたから貰って来た」

 

「ありがとうございます。取りに行く手間が省けて助かりました」

 

 

 普段は<混沌の娘>ちゃんにメロメロのクラーグさんですが、真面目なエリアボスとしての顔も作れるんですよね。

 これでグウィンさんがいる『最初の火の炉』への鍵はすべて揃いました。

 すぐにでも向かうことが出来るわけですが、急ぐ理由があるわけではありません。

 

 私たちが今手にしているのはソウルよりも、もっと立派なもの……ターマイトなのですから♪

 

 

「それじゃ早速するかい?」

 

「ええ、そのために勧めたのですから」

 

 

 真面目な話は終わり。ここからはターマイトの時間。

 少し離れた場所では<混沌の娘>ちゃんと、プリシラちゃんが自ら鎚を振るって自分用のターマイトを作成しているようですし。

 師匠としても、ブームの火つけ人としても、彼女たちに勝利してからグウィンさん家に行くべきです!

 クラーグさんもニトさんも、最初に渡したマシンを話をしながらカスタムしていたのですぐにでも試合開始出来ますね。

 

 

「チャージ三回、フリーエントリー、ノーオプションの基本ルールです。

 では……、」

 

 

「「「「「「チャージイン!」」」」」」

 

 

 アナスタシアちゃんも加わり、決戦のバトルフィールドは大盛り上がりとなるのでした。

 

 

「まずは私の先制攻撃! 火防女式鍛冶呪術『バーンナッコォ』! イヤー!」

 私のマシンが炎を纏う。

 

「グワー!」

 

 

 速攻でリングアウトしたのはニトさんのマシンだけ。他の三人は回避しています。

 

 

「か~ら~の! 火防女式鍛冶呪術デッド・スパイク・サン!」

 

 

 今の私のマシンは超攻撃型にカスタムしています。

 避けることが不可能な最強最速の攻撃。これが決まって私の一人勝ち……と、なればよかったんですけどねぇ~。

 そうはいかなかったんですよ。

 

 

「クラーグ様、大変です!」

 

 

 場に響く声は先ほどまでいなかったはずの人。血だらけのミルドレットさんのものでした。

 何かただ事ではない様子ですね。ひとまずバトルは中断します。

 

 

「どうしたんだいミルドレット!?」

 

 

 血を流してはいるものの、その怪我は不死者らしくすでに治っているようです。

 なので、このクラーグさんの問いかけは、「真剣勝負の最中に邪魔するな!」という意味が込められていると思います。

 私にしても必殺技が炸裂する寸前だったので少し残念ですし。

 

 

「『病み村』が壊滅しました!!!」

 

 

 前言撤回。

 この事が、勝負すらどうでもよくなる緊急事態の前触れだったのです。




 ~後書き~

 奇跡や呪術などが重複するのはこの作品の仕様。
 そうだったらいいなぁ~、と思って書いているので白べたと松脂を一緒に武器に塗ったりも出来るということで♪

 今回の話を含めたラスト三話は、書きあげてからまとめて投稿するつもりでしたが、長くなったのでこの繋ぎの話だけで投稿。
 一度に三話(一万文字オーバー)は、読むのも修正作業をするのも疲れますからねw
 あと2話で終わる予定ですが投稿にはもう少しかかりそうです。あと4000~5000文字くらい書けば仕上がるかなぁ~……。
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