第三話:かぼたん、話し合いで解決する
最初の篝り火の目の前にあった大きな門を潜ったかぼたんを出迎えたのは巨大なデーモンであった。
大きな槌を持ち、上からの突然の襲来には少し驚いたが、ソウルそのものを視認することの出きる<かぼたん>にとってはそのソウルの少なさから恐れることはない敵だと見抜いていた。
「あのー、すいませんーん。
私は『黒衣の火防女』の<かぼたん>と言いますが、もしよろしければこの世界についての情報を教えてくれませんかー?」
まずは挨拶が肝心だと思い、情報収集も兼ねてデーモンに聞いてみる。
「ん? デーモンの言葉が分かるとは……お前さん人間じゃないのか。
俺は<不死院のデーモン>だ。
異世界のお嬢さん、は何が聞きたいのかな?」
会話が可能と分かるとデーモンは座り込んで笑顔を浮かべてくる。
「ええ、どうにも私が元いた世界とこの世界は違っているようなので色々と教えてほしいんです」
「あいよ、それじゃ説明させてもらうと——中略——ってな訳で、俺はこの『北の不死院』と呼ばれる建物から逃げ出そうとする人間たちを閉じ込めておく役割を担っているんだ」
「なるほど~、説明ありがとうございました。
それじゃ私は元の世界に戻る必要はないのかもしれませんし、人間ではありませんが、その不死の使命ってのを果たす旅にでも出ようと思います」
「それならばこの先を真っ直ぐ進むと大きなカラスが飛んでくるからそいつに連れてってもらいな。
呪われたロードランの地でお嬢さんが、どんな冒険をするのかこの不死院から楽しませてもらうさ」
そう言うと不死院のデーモンは道を開け、大きな手に小さな鍵を持って、先ほどまで守っていた門を開けてくれる。
「行ってきな、不死にして人外のお嬢さん。
デーモンと会話ができると言っても、話し合いでの解決が出来ない連中も多いみたいだから苦労するだろうけどな。
あとカラスに連れて行ってもらえる場所は火継ぎの祭祀場という場所だ。
敵はいないようだが向こうについたら気を抜くなよ」
「色々とありがとうございますデーモンさん。
でも私はこれまでずっと一つ所に縛られてきたんです。
だから実を言うと自分の意思で自分の行きたい場所に行けるこの状況が楽しくて仕方がないのです。
なのでそういう苦労も含めて私はこの旅を楽しみたいと思っています♪」
「ハハハ、そいつはいいな。
それじゃ細かい説明はまた向こうで聞くと言い。
行ってらっしゃい、不死のデーモンのお嬢さん」
「行ってきます、不死じゃないデーモンさん」
こうして北の不死院を出て真っ直ぐに進んだ<かぼたん>は不死院のデーモンの言うとおり大きなカラスに運んでもらい、新たな地へと向かう。
呪われた地、ロードランへ。
彼女はこの旅を楽しむことと、自分が楽しくて仕方がないことに心弾ませているので一つ忘れていることに気付いていない。
まぁ、それすら彼女にとっては瑣末な問題に過ぎないので、ここはひとつ、彼女の旅が楽しいものになるように祈ろうではないか。
〜北の不死院の鉄球の壁破壊によって入れるようになる部屋にて〜
「あれ? 彼女来ないの?」
アストラの騎士は自分の使命を<かぼたん>に託すつもりで彼女の牢に鍵を投げ込んだのだが、そんなことに気づかない<かぼたん>はさっさと不死院から出て行ってしまっていた。
こうして彼——アストラの騎士は誰にも知られずにひっそりと亡者になっていったそうな。
私が思うに、<かぼたん>は「ジョジョの奇妙な冒険」第二部の「柱の男」みたいに口以外でも人を食べることが可能だと思うんですよ。
まぁ、それをしないのは彼女が自分を楔の神殿の歯車の一つという認識をしているからでしょうけど。