射干玉の闇に灯るは幽けき淡い也   作:真神 唯人

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最初の「仲魔」にして、戦友。


瑞風、ただ、乞ひて

...正直、まさかと思った。

 

 

「先生」でも「氷川」でも「あいつ等」でもなく、何で?と。

記者魂ってやつなのか、執念ってやつなのか。

 

 

無事だったのにも驚いたけど、一番驚いたのは俺みたいに悪魔化するでなく

東京受胎前に会った時のまま、ヒトの姿を保っていたことだった。

 

 

 

***

 

 

最後にいたのは屋上だったけど、気がついた時は手術室だった。

そして部屋の外に出たら、見覚えのある地下階。

だから。ああ、あのまま病院は無事だったんだと思った。

 

 

だけど、青白い何かがぼうっと浮いていたのには本気で びびった。

恐る恐る話しかけてみたら、返事が返ってきたのにも びびったけど。

何なんだろう?。人魂ってやつか?。

 

 

そうして、ふらふら歩きだしてふと見ると何かよく分からねえマークが

チカチカしている扉があるのに気付いた。近づくと、がたり、と音がして。

そういえばここは、「氷川」がいた部屋だと思いだす。

 

 

まさかあのまま、ここにいるのか?と思わず身構えた。

あの男はどうやってか「悪魔」を呼び出せる。

けれど、今は俺も悪魔の体だから、いざとなれば戦える。

 

 

そう思い直して、思い切って扉の前に立った。

 

 

 

***

 

 

薄闇の向こう。淡く光る「何か」と、それを撫でまわす男。

「氷川」じゃない誰か。けど、俺はその男を知っていた。

入ってきた俺に気付いた男は、一瞬、びくり、と肩を跳ねさせた。

そして俺をしげしげと見たあと、まさか、という顔をする。

 

 

それからは、情報交換みたいな会話をした。

けれど、圧倒的に情報が少なくて、男は...「聖(ヒジリ)さん」は。

俺に調べてきて欲しいと言った。...まあ,そうなるか。

 

 

更に受胎後、悪魔が出るようになったと聞いて驚いた。

まだ遭遇してなかったのは、幸か不幸か。

 

 

取り敢えず地上に、外に出ないと始まらない。

俺はそこから、エレベーターへと向かった。

エレベーターといい、電気系統は生きてるらしく動いていた。

 

 

そこまではよかった。

 

 

ところが、扉が開いたところで異常が起きた。

ぐにゃりと視界が歪んで、眼を開けたら「赤い場所」にいた。

膝下あたりまで水?に浸かっていて、思わず目をみはる。

 

 

よく見ると、その視線の先に「誰か」がいる。

「車椅子の男と、喪服を着た若い女」が、こっちを見ている。

すると突然、頭の中に声が響いた。〈来い〉と。

 

 

 

近づいていくと、〈悪魔の力を見せよ〉と、聞こえて。

そしていきなり、二体の「悪魔」が現れた。

 

 

 

    うわ、気持ち悪っ!本物の「悪魔」かよ!

    くっそ、武器とか無ぇし!コレどうすんだ??

    殴ればいいのか?近寄んな、噛むな痛てぇ!!

 

 

 

ひたすら殴って、でも、その感触が気持ち悪くて。

呼ばれて進むたびに、それを繰り返した。そして。

最後に〈...上々だ。近いうちにまた会う〉と、言われた後。

また視界が歪み、元のエレベーター前に戻っていた。

 

 

 

引き返して、よくわからない体液?を洗い流す。

気持ち悪くて仕方なくて、何とかしたかったから。

でもきっと、この感触は消せないと頭のどこかで思いながら。

 

 

 

***

 

 

1階に上がって、ある意味、無事ではないことを知る。

ここにも人魂(後に「思念体」という存在だと知る)が、いた。

話を聞いてみると、ここには人間はいないと言われた。

それを聞いて、マジかと絶望しかけたけれども。

 

 

 

確か「先生」は、ここにいない人間は死ぬといった。

でも俺も「あいつ等」も、ここにいたんだ。ならば。

どこかに飛ばされて、生きている可能性はある。

 

 

 

    諦めねえ。諦めるものか。まだ外に出てさえいないんだ。

 

 

 

取り敢えず、分院を目指して進む。

妨害する悪魔を沈めながら。時に、逃げながら。

全部倒しても、きりがないから。

 

 

 

そしてやたら明るい、外が見える連結路に着いた。

あれ?。何だあれ。...「何か」が、いる。

 

 

その「何か」が、「悪魔」だと気付いた俺は

咄嗟に、その入り口に浮かんでいる小さな「悪魔」に身構える。

けど目が合った途端、何故か心臓がドクリ、と鳴った。

 

 

 

突然、視界が白一色になる。「声」が聞こえた。

 

 

 

 

    「...ラト、アラトってば。ねえ聞いていい?」

    『うん?。なんだよ、改まって』

    「どうしてアタシを、ここまで連れてきたの?」

    『...前線で戦えなくなってもってか?』

    「うん。強化はしてくれたけど、頭打ちなのになんで?」

    『えー?。言わすか、それを。まあいいや。それは、あれだ...』

 

 

 

     おまえとは、一緒に生き抜いて、死線を潜り抜けてきたんだよ。

     他の奴らとは、全然違うんだ。外すことも合体材料にすることも。

     考えたことなんか、全然無ぇよ。だから、ここまで連れてきた。

     最後まで付き合ってくれよな。頼むよ。

 

 

 

 

すう、と視界がひらけて 元の場所にいることに気付く。

 

 

 

      ...あれ?。俺いま、何を考えてた?。

      何かアタマ痛ぇな。まあいいや。...お?。

 

 

 

目の前には、きれいな翅をはばたかせて浮いている「妖精」が

不思議そうな顔をして、こっちを見ていた。そして。

 

 

 

「妖精」は、探し物をしているのかと問いかけ、それなら自分も

「仲魔」となって、探すのについていくと告げる。

「妖精」は、ここから出たいから連れ出してくれる者を探していたと。

 ...あまり強そうじゃない、の一言は、余計だったけれど。

 

 

 

ついてきてくれるその「妖精」は...ピクシーは、俺に聞いてきた。

 

 

     

 

     「アラトっていったっけ?ねえ、何で。泣いてるの?」

     『...わかんねぇ。なんでだろうな...』

 

 

 

 

ぼたぼたと涙を零す俺は、男でしょ!泣かないの!と、小さな手で叩かれた。

その小さな手の感触を、何故だか知ってる気がした。

 

 

 

 

だからなのか。そうして叩かれた額は、いつまでも痛かった。

 

 

 

 

     「「 アラトぉー?。ほらあ、行くわよー 」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





うちの人修羅さんは、泣いてばかり(序盤だし)。










2/23、加筆しました。ちょこっとだけ。
今日は早く帰れたぞー(ついさっき帰宅)。

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