射干玉の闇に灯るは幽けき淡い也   作:真神 唯人

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「欲」そのものは罪でないと、誰かが言った。
では罪に為りしは何かと問えば。応えが1つ返ってきた。


罪深きは、その「欲」の「深さ」である、と。


無為なる因縁、火坑(かきょう)知らぬ者と結ばん

「聖(ヒジリ)さん」は言った。この物体は、ただのオブジェじゃないと。

「アマラ経絡」という回廊のような不思議な空間を繋ぎ、僅かな時で、

離れた場所へ飛ばす転送機能を持つ「ターミナル」だと。

 

****

 

「ギンザ」に新しい世界を創ることを掲げた「組織」があるらしい。

それを聞いて、さてどうやって行くかと考えながら地下街を歩いていると

ある扉の前で、がたりと音がした。

 

もしやと思って扉を開けると、「聖(ヒジリ)さん」がそこにいた。

 

 

「お前...いや驚いたな。自力で、ここまで歩いてきたのか?」

『ええ。「聖(ヒジリ)さん」は...まさか』

「俺は少し前に着いたんだ。こいつを使って、な」

 

 

そう言ってオブジェを指差し、その機能を俺に教えた。更には、この「ターミナル」が

「氷川」の居る所にまで、繋がっている筈だと。そして、俺をじっと見て言った。

 

 

「よう、手を組まないか?。癪だが今の状況を変えるには「氷川」の影を追うしかない。

噂じゃ、創世とやらを掲げる「組織」が「ギンザ」にあるそうじゃねぇか。しかも、だ」

 

 

率いているのは「人間」。そうだろうな、東京受胎なんてことをやって悪魔も呼び出せる

ような男だ。どう見ても敵う筈の無い存在を、その背に従えるくらいワケは無い。

「聖(ヒジリ)さん」から、この「ターミナル」で俺を「ギンザ」まで送ってやるとの

申し出に否やは無かった。他に手段が見つからないんだ、多少のリスクは腹を括るしかない。

 

 

「但し、「ギンザ」が今どんな事になってるかは全く想像がつかん。準備を怠るんじゃないぞ」

 

 

準備を終えて戻ってくると、俺の転送に成功したら、何とかして後を追うという

「聖(ヒジリ)さん」が「ターミナル」の転送機能を起動させる。そして。

 

 

「...いいか、死ぬなよ。それじゃあ、行って来い!!」

 

 

****

 

 

...なーんて、カッコよく送り出されたけど。...マジで死ぬかと思った。

てか、死んでてもおかしくないぞ!。よく生きてたな俺......。

 

 

回り出す「ターミナル」。目まぐるしく変わる「回廊」への視点。猛スピードで移動する自分。

このまま順調にいくかと思いきや、凄まじい音と共に足元が抜けて。

思わず声をあげたのは、当然の反応だろ。

床への激突だけは避けたけど、気付けばどこかに「落ちていた」。

 

 

...そこは、赤と金の世界。天井と床を、膨大な「マガツヒ」が流れていく。

目がチカチカして、長居はしたくねぇなと思っていると、上から声が聞こえてきた。

「聖(ヒジリ)さん」いわく、どうやら俺は、転送に失敗して「アマラ経絡内」に落ちたらしい。

「アマラ経絡」は転送路だから、入口と同様に出口もあるといい、自分がバックアップするから

「ギンザ」を目指してくれと言ってきた。(...ホントに大丈夫かよ。)

 

 

「アマラ経絡」にも、住人という名の思念体は、わりと居た。

ただ、何と言えばいいのか。彼らは、頑ななまでに「他人を拒絶する」。

群れることを嫌い、関わることを嫌い、どこまでも拒む。所謂、個人主義が思想か?。

...ここまで極まっていると、いっそ潔いと錯覚する程に。

けど、稀にそこまでない思念体もいて、マガツヒが何故できるのかを教えてくれた。

 

 

大きな感情。例えば、苦痛・不安・悲しみ。プラスよりもマイナスの感情。

そういった大きく強い感情の流れが、大きな力を生みだすんだと。

...と、いうことは。ここはマイナスの感情が強い場なんだろうか。

この赤い命の灯の全てが。そう思うと、背筋が寒くなった。

...早いとこ出口へ行こうと、俺は先へ進む。

 

 

そして、「聖(ヒジリ)さん」いわくここは形が常に安定しているとは限らないらしいと

言っていたが、安定してないどころか適当に進むと最初の場所に戻されたりと面倒な仕様で、

もう地図を作るつもりで進むしかないなと開き直った。

 

****

 

辛うじて通信が可能な「希薄空間」を通過しながら、先を急ぐ俺に「聖(ヒジリ)さん」が

気になる事を言ってきた。俺達の通信に割り込もうとしている存在がある、と。

「敵」かもしれないから気をつけろと言われていたのに。

ようやく出口が近いことを知らされ、安堵した隙をついて「ソイツ」は現れた。

たどたどしい口調に、表す確かな「敵意」と共に。

 

 

「外道・スペクター」というソイツは、強欲の塊だった。

どうやら俺がここのマガツヒを独占しにきたと思い込んでいるらしく、どうでも排除しないと

気が済まない姿勢だったから、こっちもいいかげん外に出たかったし応戦するしかないわけで。

かなり苦戦は強いられたけれど、何とか退けた。

 

 

              「...イツカ、ゼッタイ、オマエヲ、クッテヤル。」

              『は?(何言ってんだろこいつ)』

              「...ウォレ、ウォマエ、ゼッタイ、ワスレナイゾ...」

 

 

そう言い残して消えたソイツと「また」があるなんて、想像すらしないまま。

眩しい光の先、出口へと歩いて行く。これで出られる、そう思っていた。

 

 

 

...どう考えても出口...だと思っていたのに。

足元に虚ろな「穴」が開いた瞬間、俺は、またも「予想外」の所に転落した。

視界が光の白から、闇の黒へ、そしてまた「赤」へと変わっていった。

 

 

そして「アマラ経絡」とは明らかに「違う」場所に、俺は立っていた。

「ターミナル」とは違う奇妙な「オブジェ」が真ん中にある、円形状に囲まれた部屋?に。

暫く辺りを見回していた俺の全身が、何かを感じ取って総毛立つ。

そこらじゅうに漂う「妖気」とでもいうのか、異様な雰囲気が慄かせるのだと気付いても

小さな震えが止まらない。

 

 

それでもゆっくりと、さっきから気になっていた「オブジェ」へと近づく。

幾つかの歪な穴が集まって、小窓のようになっているそこから「覗いて」みた。

まるでジェットコースターに乗ってるように、黒と赤の視界が揺れて眩暈がするのに

そこから顔が外せない。...やがて、ぴたりと動きが止まって視界が安定する。

 

 

 

その、視界の。視線の先で。あり得ない「その人」の声を聞くなんて。

俺は、冗談だと思った。どうして。何で。こんなところに。

 

 

 

               

 

 

                  なんで、「あんた」がここにいる...?。

 

 

 

 

 




「あの人」なのか。赤の他人なのか。そうだと言い切るには、他人の空似と言うには、あまりにも「似過ぎて」いて。リアルタイムでプレイしていた時も、改めてリプレイしている今もなお、私は、いまだに分かりません。プレイした人の数だけ、様々な解釈が在ると知ってはいても。






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