射干玉の闇に灯るは幽けき淡い也   作:真神 唯人

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力に求めるは、果てに何をも見通せず。
今は...。


そは、純粋なりし、愚にあらん

今も思う。アレは、妙な悪魔じゃったと。うーん、なんという名じゃったか。

若い連中はやたらと懐いてしまったが、それも無理からぬことかのう。

アレは、悪魔らしからぬ悪魔じゃったからな。悪魔と言えば、ワシら「マネカタ」に

苦痛を強いらせて「マガツヒ」を搾り取ったり、奴隷として使ったりするのが当たり前で

ワシらはそれに抗う術は無く、受け入れるしかなかった。嫌なら逃げるしかなかった。

じゃが、アレはそんなことには全く興味を持たなんだな。何でかは知らんよ。

 

他の悪魔を退ける力を持ちながら、ワシらに危害を加えることはせんかった。

いつも、懐かしいものを見るような目をしておったのう。

 

 

****

 

 

「ギンザ大地下道」の入り組んだ道の先に、「彼ら」は隠れ住んでいた。

「人間」を追っていたら「人間を真似て」創られた存在に会うとか、

何の因果だろうと思った。「人間」に似せているとはいえ表情も乏しいし、

動きも妙で。でも会話するのは、何気に楽しかった。

 

濁さずストレートな言い方がツボにきたとでも言おうか。

 

ただ。困ったことに、俺が向かう「イケブクロ」から逃げてきたらしい

「彼ら」によって、そこへと至る途中の扉は閉ざされていた。どうするかと

思案にくれていると「彼ら」のなかの1人が言った。

 

「ガラクタばかり集めてるマネカタ」にはもう会ったか、と。

行ってみれば、扉の前にはそれはもう分かりやすいほどに「人間」が

使っていたモノの残骸が陣取っている。

 

入ってみたら、これでもかと壊れたショーケースに飾られていて、まるで店かと

錯覚したほどによく集められていた。そしてそこに、件の「彼」が居たのだが、

通さない門番に口利きをする代わりに、あるモノを見つけてきてほしいと

頼み込まれては、否も応も無い。「それ」があるかもしれない「人間で賑わっていた場所」

なんて、ありすぎてヒントにならないと思いかけたけど、俺は1つ心当たりがあったのを

思い出して「ギンザ」に戻った。

 

『(...ビンゴ、だな)』。

 

見張りがいない間に、どうにか「それ」を盗み出したはいいけど戻ってきた見張りと

鉢合わせしたのは、世の中やっぱり甘くないらしいことの証明か。

 

 

****

 

持ってきた「オサツ」を手に取り、こっちが引くくらい喜ぶ「彼」は、早速口利きの手紙を

書いてくれたし、そして何て書いてあったかは知らないけど、門番は、割とあっさり通して

くれた。...なんだこのノリは。まぁいいけど、通れりゃそれにこしたことはないからな。

長かった地下道を抜け、外へ出て「霊園」を通り、砂漠を歩いた。そして。

力が全てだという、ある意味最も悪魔らしい思想を貫く集団の拠点へと向かった。

 

 

...まさかそこで、探している「人間」の2人目に会うなんて、予想だにしてなかった。

高い高いビルだったモノの、入口の扉の向こうで、聞き覚えのある声に俺は急いだ。

開けた扉の先には、図体のでかい悪魔に向かって何かを言う「人間」の後ろ姿。

「東京受胎」のあと、病院からここまで自力できたのか、いきなりここまで飛ばされて

きたのかは分からない。もし、自力でここまで来れたのなら、俺より「橘」より

すげぇなと思ったけど、真相は。あいつは...「新田」は、俺に気付いて振り返ったけど

すぐには俺だと分からなかった。

 

また新たな悪魔が出たと思ったらしいけど、まじまじと俺を見て名を呼んだ。

そして、ここで時間を食ってるヒマは無いと、「先生」が...と言いかけた隙に、

後ろの悪魔に殴られて立てないところに悪魔の手が「新田」の頭に乗せられる。

 

そこから赤いモノが、抜かれていく。ずるずると、引き出すように。

俺は、初めて「マガツヒ」が抜かれる瞬間を見た。

命宿る者から、命の灯が抜かれるのを。

 

力無く倒れた「新田」を見下ろし、俺に向かって悪魔は言った。

 

 

 

 

「このマントラに足を踏み入れたる者は、全て、我が裁きを受けてもらう」

 

 

 

 

力を示さねば死ぬ。シンプルで分かりやすい「理不尽」。

それが、ここで行われている「決闘裁判」だった。

 

 

 

俺は、それに勝たなければならない。

 

 

 

 

負ければ、死んで全てが終わる。それは俺の選択肢には無い。




要は、勝てばいい。どんな手を使おうとも。
それもまた、シンプルで分かりやすい「理不尽」だ。
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