射干玉の闇に灯るは幽けき淡い也   作:真神 唯人

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あり得ないのは、「両方」だと気付いているか?


白烏(しろがらす)、両虎を繋ぎて

 

仲魔の檄が、飛ぶ。

 

 

 

「呆けてるんじゃねぇ!アラトっ!!」

『...っ!悪い、ミカズチっ!!』

「だから...ひとを...っ、略すなっ、ガキがあああああっ!!」

「クダラヌ言イ争イハ、止メヌカバカ者ガッ!」

「来ます!主さまっ!」

 

 

****

 

 

マネカタから俺を探してるやつがいる、そう聞いてすぐだった。

マントラ軍本営の大扉の前で、見たことの無い悪魔に遭遇してそいつが

俺が誰かと対決するって言いだして、階段の下に視線を移したその先にいたのは。

見紛うことなく、間違う事無く「黒猫と学生服の男」だった。

そういや、「東京」で聞いたな。そういうのを見かけたって。

....「美少年」だって言ってたけど、そこはどうなんだろ?。

俺、そんなことの基準値なんて知らないし。

 

 

ふと思い出したことを頭から払い、ソイツ等を見つめる。

 

 

「あいつ等」以外の「人間」が、このボルテクス界に存在している。

だけど、「妙な感じ」がするのはなぜだろう?。........ああ、そうか。

単純に見たことのない「制服」と、知らない「学生帽の校章」だからだ。

って言うか、ここら辺であんな「学生服の学校」なんかあったか?。

だいたい「学生服にマント?みたいなもの」をはおってるのも「変」だろう。

 

 

そう、そこにいるヤツからは「違和感」しか感じない。

あまりにも、クラシカルというかレトロというか。もっと言えば。

それは見るからに、「今の時代に、そぐわない」んだ。

懐古趣味?。いや、そんなもんじゃない。

 

 

不躾にじっとそいつを見ていると、足元にいた「黒猫」が動いた。

あの時、病院にいなかった者は「全て死んだ」筈だ。それが「東京受胎の条件」だ。

ならなんで、「黒猫」なんてものがここに存在している?。なぜ、存在できるんだ?。

 

....そこまで考えて、俺は思い至る。

階段の下にいる「アイツ等」は、「明らかに存在自体がおかしい」んだと。

この、ボルテクス界において。「あり得ない存在」なんだと。

そして....「黒猫」が、じっと俺を見ている。そう思った時。

 

 

どこからともなく、「声」がした。突然「低い声音」で、俺に向かって言い放った。

 

 

 

「....「人修羅」とやら。まずはその力、見極めさせてもらうぞ」

『(えっ?今、どっから声がした?アイツ、口開いてねえよな?)』

「どこをみている。さすがは「人修羅」、余所見とは余裕だな」

『(....まさか。マジか?。)』

 

 

「学生服の男」が、猛ダッシュで階段を駆け上がってくる。

マント?の下に、黒くて長い鞘みたいなモノが見えた。「刀」だ。

鍔を押し上げ、柄に手がかけられ、鞘走る音とともに俺に向かって。

ソイツは、ダンッ!と踏みしめて高く跳んだ。そのまま「刀」を振り抜く。

 

 

煌めく刃が、俺の頭上に降ろされる。...ヤバい、間に合わねえ!!。

ダメージをくらうと覚悟した俺は、目を開けたまま、ソイツを見た。

けれど、おかしいことに、ソイツからは殺意は感じなかった。

まるで剣道か何かの手合わせを、挑まれたような感じといえばいいか?。

ただ、竹刀で打ち込まれる。それに似た感覚だった。

持ってるのは間違い無く、「真剣」なのにな。何でそう思ったのか。

 

 

呆気にとられて手を出せない俺の前に、ソイツじゃない「人影」が現れた。

 

     

 

      ...おい、俺は「呼んで」ねえぞ。何でここで「出て」くるんだよ。

      ...それも「次々に」。...俺の「盟約の拘束」が弱いのか?。

 

 

 

凄まじい剣げきの音と共に、降りて来る筈の「刃」が防がれる。

別の手にすぐさま後ろに引っ張られ、後退させられた。

「俺達」を庇うように、白い獣が舞い降りる。

臨戦態勢となった「俺達」に、どこからか「声」がした。

 

 

 

「...「ライドウ」。先ずは慎重にな。間違っても殺すなよ?」

 

 

 

「声」に応えるように、ソイツは頷き、胸元から何かを抜いた。

「銀色の試験管?」のようなモノを構えるように持ち、口早に何事かを呟く。

そして、それが俺達に向けられた途端、「何か」が飛び出してきた。

 

 

「ヨシツネ見参ッ!!」

『あ、悪魔ぁ!?』

 

 

 

「赤い鎧武者」姿の悪魔が、にやりと口角を上げて刀を振り下ろす。

なおも俺に迫るそれを「タケミカズチ」の剣が、弾き返した。

跳び退った悪魔は、ヒュウと軽く口笛を吹いて笑う。「やるじゃねぇか」と。

 

 

次々に違う悪魔を呼んでは、攻撃を仕掛けるソイツ自身の強さも

相応のものだった。おそらく、今の俺より少し上か。でも。

負けるわけにはいかない。まだ、終われない。

....また「声」がした。

 

 

「「ライドウ」。少し手を抜きすぎではないか?「人修羅」め、なかなかやりおる...」

 

 

****

 

 

真剣勝負の結果は、「辛うじて」俺達が勝った。

 

 

呼吸の荒い俺達とは違って、ソイツは息ひとつで呼吸を整える。

...なんかムカつく。コイツ、やたら戦闘慣れしてねえ?。

「刀」とか持ってるし、悪魔呼ぶし、何なんだ?。

 

お互い何も言わぬまま、じっとにらみあっていると「黒猫」が前に出る。

 

 

「...「ライドウ」が認めるその力、なかなかのものだ」

『なあ。さっきから喋ってたの、アンタか』

「...いかにも。今、お前と戦ったのは「ライドウ」。そして俺は「ゴウト」」

 

 

 

しがない探偵だというソイツ等に、驚きを隠せない。

「黒猫」は、ある「老紳士」の依頼を受けて俺を探りにきたと言った。

俺を、「人に非ず、悪魔に非ず、故に「人修羅」か」と、存在づける。

そして、事と次第によってはもう一度コイツと「手合わせ」するかもしれないと。

それまでその命、大事にしろと言って....「2人?」は去った。

茫然と見送る俺は、こみ上げるものを堰を着るように吐き出す。

 

 

 

『なあ、猫ってしゃべらねえよな。高校生はフツー、刀なんか装備しねえよな』

「....どうした、アラト。目つきやべぇぞ、落ちつけよ?」

『あんな制服のガッコなんて無いし、悪魔呼べるとか「氷川」かよ!』

「....お、おい。アラト??」

『しかも何だよ、猫なのにあの、始終上から目線!!』

「....。あー、うん」

『学生で探偵とか、ワケわかんねぇ!戦闘慣れしてるとか、おかしいだろ!!』

「....主。イヤ、イイ。スキナダケ吐ケ」

『守秘義務はどうしたんだよ!いいのか標的に洩らしても!それでも探偵か!』

「....取り敢えず、泉の聖女の元に参りましょう。お疲れなのですから」

「....そんで、暫く休憩とるぞ。いいか、アラト?」

 

 

俺は、言うだけ言って、こくりと頷き階段を下りて行った。

そんな俺をじっと見ていたマネカタが、言った。

 

 

 

「悪魔は何だか色々あって大変そう。生きるのも死ぬのも何だか大変そう」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

....悪魔に限ったことじゃないけどな。





「人でもなく悪魔でもない」は「人でもあり悪魔でもある」と同義語だと思うのは
おこがましい、間違いだろうか?。悪足掻きでしか無い、だろうか。



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