射干玉の闇に灯るは幽けき淡い也   作:真神 唯人

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我は祈る その身に 光の加護のあらんことを
お前が力を貸さねば あの者らの「企み」は潰えよう
悪魔の体に 人の心を持ちし稀有なる者よ
混沌の力満ちしその地を離れ 在るべき地に戻れ
道は未だ 続いているのだから



破邪の声音、深淵へ至る照破と為りん

「喪服の女」が語るは、魔人の異能とメノラーを奪い去った切っ掛け。

作ったのは氷川であり、氷川が起こした「東京受胎」であると。

そして、カグツチと創世と、世界という数多の「箱庭」の成り立ちと。

全てを識るもの、そこに在りし、「大いなる意志」のことを。

 

ボルテクス界における、生と死と、命そのものの。

その始まりと終わりまでの、プロセスを。

 

「....それが、大いなる意志のもとに定められたアマラの摂理」

 

俺ら人間にとっては、原初の時まで遡る話だった。

つまりは、「神サマ」の実験場だってか。世界ってやつは。

まるでリセットの効くゲームか何かのようじゃないか。

....「神サマ」にとっての、な。

 

「我が主と共に、幾つもの世界の「興り」と「命の営み」と」

「そして、最後の「滅び」の姿をも見つめてきました」

 

解き得ぬひとつの命題と共に。....そう言って俺を見る。

人間の疑問でもある、命は何処から来て何処へ行くのか。

何故、世界は、命は、生まれ変わるのかを。

それらを識ることは....叶うのか。

 

「....今、まさにその答えを見つけようとしているのやもしれません」

『(何で俺を見る?。俺は....何にも為れていないんだ)』

「その為にはあなたの行動が、その機縁となるでしょう。」

『(?!。俺が?。いや、俺の「行動」が、だと?どういう意味だ)』

「我が主は、あなたに期待しておられます。故に」

 

堕ちたる天使に授けられしその「力」、無にせず命も奪われぬように。

それだけ言って、スルスルと幕が下りてきてしまった。

相変わらず曖昧で核心を濁し、パズルのように言葉を組んで。

そのくせ、いきなり知りたかった事を教えてくる。

 

ある意味、翻弄されてはいるんだろな。ムカつくけど。

....期待、ねぇ。堕ちた天使って、あの金髪のこどものことか?。

そうは見ぇねえけど。ああでも、こどもだけど綺麗な顔してたっけな。

....確かに、白い翼が似合いそうな感じはするか。

 

そんな事をぼんやりと思いながら、第2カルパへと向かう。

そこで、俺の置かれている状況はかなり異様な事を知るのだった。

 

****

 

どこからともなく、「声」が聞こえてきた。頭に直接響くように。

....それだけなら、特に何とも思わなかった。問題は。

 

『?!...っ!。(何だこの凄まじい「圧力」...っ!!)』

 

今まで感じた事の無い、重圧感が全身にかかる。くそ重てぇ。

これは一体何なんだと、歯を食いしばって耐えているといきなり

それが、かき消えた。思わず足がよろめいて膝をつきそうになる。

 

「...お前が、堕天使の意を受けて混沌の企みに手を貸したる、魔人か」

「お前は知っているのか?。自身の行動により己が道を違うやもしれぬと」

 

「喪服の女」も、似たようなことを言っていた。けれど。

俺は「なにものかに為らねばならない」という「声」を聞いた。

未だ迷いながら、模索しているに過ぎない者に、何を言うんだよ?。

 

「闇に魅入られし者、アラト。いと高き意志に、逆らおうとする者よ」

「残された人の心まで暗黒に染まりきる前に、我が声を絶対と信じよ」

 

その声の、有無を言わさない凄まじい「圧力」が、またかかる。

すげぇきつくて思わず、ハイと言ってしまったけどいいのか?。これ。

偽りを言うなとか言われるんじゃないかと身構えたけど、反応は無い。

そのまま、特に不信に思われることなく「声」は聞こえなくなった。

....自らを「神の代弁者」と、名乗って。

 

「なあ。さっきオマエが来た方からすごい声がきこえたぜ」

「....大きな声じゃ言えねえが、まるで大いなる意志そのものだ」

「オマエ、悪魔なのに近くにいて大丈夫だったのか?」

 

入口近くにいた悪魔が、そう言ってぶるぶると震えてた。

....これだけ離れているとこにいても、アレを聞いてこうなるのに。

俺がこの程度で済んだのは、人であることを失っていないせいか。

 

 

『....それにしても。「人間」と「創世」と「悪魔」と「神サマ」かよ』

「アラト、どした?。腹痛てぇのか?。顔歪んでっぞ」

「えー?大丈夫?、何か悪いモノ食べたっけ?」

「なまものは無かった筈ですよ。火は通してましたし」

『....お前らな。ちょっと考え事くらいさせろ』

 

 

ただ巻き込まれただけじゃないのかもしれねぇな、コレは。

 

 

「えー、急にどうしたの?。いつも考えるの放棄するくせに」

「7割がたは、面倒っつって突っ込んでくよな。後先考えてるとか嘘だろ」

「それでもアマラに行く時は、かなり頑張っておられますよ主は」

『....なあ。貶めてんのか褒めてんのか、はっきりしろよ』

 

 

褒めてるんだよーと口を揃える仲魔たちを、ギロリと睨む。

棒読みで言われたって嬉しくも何とも無いっての。

 

....まあいいか、進めばわかることだろうしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに、誰の思惑があろうとも。





「貴公に勝利を! さもなくば喪服を....」

現れしは かつてその手にかかりたる死の影のひとつ
その影を呼び寄せたるは 呪われし「石」
「死の使い」を招きたる その「石」の名を

「死兆石」と 館の主は告げた....

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