射干玉の闇に灯るは幽けき淡い也   作:真神 唯人

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「絶対者」と、従う存在もまた、「今は動かない」。


光、未だ遠きに在り

数多の星が発する「光」が、一本の柱のように集まり伸びた、その先。

光る御柱の最果て、清輝に満ちた玲瓏なる間で歌われしは、讃美歌。そして。

 

 

 聖なるかな 聖なるかな 聖なるかな 

 昔いまし 今もいまし 後来たり給う 主なる全能の神よ

 

 

ただ唯一の存在の為だけの、三聖頌が遠く近く どこまでも響く。

 

 

御柱の中で溢れんばかりの光の洪水が、途切れを知らぬ流れを生み続ける世界。

ヒトにはけして辿りつけぬ、真なる全き「光」の世界。

 

 

 

その中にあって、針の先よりも細き闇が 「そこ」に生じていた。

在る筈のない「闇」を創りしは、「尊き方」の光る御手。

 

 

視線は、愚かで小さきヒトの世界へと注がれている。

 

 

 

恒河沙の「渦巻き」の中から探す行為は まるで。

砂漠に落ちた、色の違う一粒の砂粒を探すようなものに似ていた。

 

  

  けれども、その視線は何故だか哀し気でさえあるような

  そう思われるモノであった。

 

 

敢えて、時を使い 探す事を哀しむようでさえあった視線が

やがて。ひた、と ある1つの世界を見出し 止まる。

 

 

そして、音とも声ともつかぬ囁きが 光の奔流に乗る。

哀し気だった視線は 姿をひそめ、重苦しき言葉となって。

 

 

  

  

  「懲りぬ者よ。<絶対なる悪にして堕ちたる天の御使い>よ。」

 

 

 

 

 

  「如何なる手を使おうとも、我は 認めはしない」

 

 

 

 

  

  「そして、許しもしない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

光る御手は、一つ乾いた音を以て「玉座に侍る者」を呼んだ。

 

 

再び起こらんとする「世界の崩壊」と、それによって生まれるモノを

「こちら側」に、導かんと努める旨を告げたのである。

 

 

 

そうなれば「<堕ちたる天の御使い>の思惑は外れ、天の糧が増える」と。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「王座に侍る者」は考える。

 

 

 

あの「ヒト」に 執着に似たものを持つのは、其れなりの理由がある筈。

なれば、弱きうちに手を打つが上策か。

 

 

だが、あの世界は「あの者」の領域。

光に属する身は、そう容易くは侵攻できない。

 

 

...それでも。赴かねばならないのだ。

何より、「あの者」の思うがままにはしておけない。

 

 

それは赦される事なのか?と、己れに問うたならば。

答えは一つしか出てこない。

 

 

 

 

「イイヤ、赦サヌ。」

 

 

 

 

そうだ。悪しき存在など 赦してはならない。

唯一の「尊い御方」の為だけに、己が存在は ある。

 

 

 

この力は、この身は、悪しきモノを滅するために 在る。

 

 

 

 

件の人間が、如何なるモノであろうと。

 

 

 

 

だが、せめてどちらに付くかを見定めてやるだけの猶予は

与えて然るべきだろう、と思い至る。

 

 

 

「あの者」の策に堕ちることなく、「大いなる存在」に 与するならば良し。

「あの者」の力によって、ヒトならざる身になろうとも なお救いを求めるならば。

 

 

 

その時は忌まわしき世界の「檻」を破って、光の御柱の向こうへ連れて行く。

 

 

 

 

但し、もしも....それが叶わぬときは。

 

 

 

 

***

 

 

清輝に満ちた、光溢るる間にて 歌声は響く。

今少しの、「その時」を待つように。

 

 

   「ハレルヤ」

 

 

 

 

 

 

 









未だ本編の折り合い付かず...。
スタイリッシュなあの人か、レトロな学生服の彼か...。

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