射干玉の闇に灯るは幽けき淡い也   作:真神 唯人

41 / 45
十重二十重に 業を積みしものよ
汝が罪科 永劫の鎖となりて繋がん
汝が自覚無きは 正しき道理なり

汝 果て無き生々流転を以て 
赦しを請われぬ 己が定めを呪え


末那(まな)持て苦輪に堕ちし、形代なるもの

ターミナル....否、”アマラの転輪鼓”が淡い光を放ちながら高速で回る。

頭の中に流れ込んでくる映像(ヴィジョン)は、見たことのない景色を映していく。

 

その建物の周囲の地面は有漏(うろ)のように真っ暗で底が見えず、砂が流砂のように底へ落ちて。

離れ小島みたいなその場所に建っているのは、何階あんのか想像もつかない高い高い塔だ。

外側の壁には、まるで血管みたいな線が幾何学模様のように幾筋も走っているのが分かる。

 

....何かこういうの、授業で習ったっつーか教科書で見たっつーか。

いや、テレビか?。エジプトのどっかにあったんじゃなかったっけ。

....でもあれは建物じゃなかったと思うんだけど、違ったか?。

 

そして視線を移すと、空から赤い何かが塔の天辺へと吸い込まれていくのが見えた。

赤い何かは、まるで”何か”に呼ばれているかのように集まり、吸い寄せられていく。

 

「見えるか?。こいつはな、チヨダにあるオベリスクだ」

 

「聖(ヒジリ)さん」の声が映像に被さる。ああ、ここ千代田か....って、オベリスク?!。

何でそんなモンが....って言うだけ無駄だよな。何でもアリだと思えば、驚きも減るぜ。

しっかしイケブクロのビルより全然高っかいだろ。エレベーターが無いとか言うなよな。

 

「ここがナイトメア・システムの核、新たなマガツヒの集積所だ」

 

....「氷川」の、真の拠点。なら、間違いなく先生もいる。今度こそ、会える。

俺は、あの時答えてもらえなかった事を「先生」から聞かなきゃならないんだ。

 

「出来りゃあ自分で乗り込みたいが、俺にそんな強さは無い」

『.............』

「けど、このままにしていればみすみす、世界を「氷川」に渡すようなもんだ」

 

目の前の映像(ヴィジョン)が眩しい光の中に収束した瞬間、転輪鼓は止まってた。

元の薄暗いターミナル部屋で、さっきまでの光の残滓にチカチカする両目を擦る俺に

「聖(ヒジリ)さん」が”次の目的”を寄越したのは、もうあの人の役割のようにも思えた。

 

「どうだ?。現人(アラト)、お前が行ってきてくれないか」

 

オベリスクの作動を止め、マガツヒの流れを本来の元の状態に戻せば少なくとも奴の

このまま独走状態な一人勝ちは、なくなるだろうな。でも、どうやって行けって??。

 

「ニヒロの第2エントランスのターミナルを使ってくれ。ロックは外しとく」

 

仲魔達からパシリだなんだと言われてもあんま腹立たしくならないのは、この人が単に

次への目的を言って終わりじゃなく、その後に続く大人だからこその言葉があるからだ。

例え()()が計算されたもの、或いは逆に他意は無く、儀礼的なものだとしても。

 

「随分な高さだし、どんな悪魔がいるかもわからん。巫女とやらの力も」

 

侵入することそのものが既に命懸けなのも理解した上で、それを言えるのは....なあ。

 

「だが、お前の力ならやれる筈だ。よろしく頼む」

 

ガラリとターミナル部屋の引き戸を開けて、外に出たあと直ぐに向かう気になれず。

俺は魔人との遭遇の所為で、まだやっていないアサクサの街の散策をする事にした。

 

「聖(ヒジリ)さん」は俺という存在を認めているのか怖れているのか、蔑んでいるのか。

それともこの世界の特殊性だからという事なのか、今なお知れずまた、定かではない。

そして、悪魔化してるとは言え、自分よりも年下の未成年(ガキ)に頼らざるを得ない事実を

芯から受け入れているとも思えない。だからこその、”ギブアンドテイク”なのだろう。

 

お前に頼んでおいてなんだけど悪いな、と言いながら大して悪びれもせず、自力で

アサクサのターミナルを攻略して。ここに辿り着いた自分の力を自画自賛する辺りは

まぁ確かに分からないでもなかった。特に誰が褒めてくれるワケでも無いしなぁ。

 

マネカタ達が、ここら辺のドブ川でさらった黒い泥から作られていると言って

彼らの故郷であり復興させようとするのも分かるな、と感心していたっけ。

 

 

「おお!。どこの悪魔かと肝を冷やしたが」

 

大地下道で出会ったアンタじゃないか!と見覚えのある爺さんマネカタが声をかけた。

あーそういや会ったな、懐かしいって程の期間でもないんだけど。勿論、覚えてるぜ。

 

その後どうだ?と聞かれて答えると、爺さんもここでの暮らしが満更ではないようで

やっぱりマネカタらしからぬ言葉とリアクションに、思わず苦笑いしちまったけどな。

 

「フトミミさんには、もう会ったか?」

『いや、まだ来たばっかだし。これから見て回ろうかって』

「そうか。フトミミさんなら我らの聖地、”ミフナシロ”におるぞ。挨拶してこい」

『ミフナシロ?。ってか聖地なんだろ、俺行っていいのか』

「バカモン!。幾らアンタでも中には入れんわ、入口までじゃ」

『ふーん。わかったよサンキュ、じーさん』

 

聖地とやらに向かう道すがら、あちこちで頑張っているマネカタ達に話しかけると

アサクサでの皆の様々な話が聞ける中に1つだけ....妙に、気になることがあった。

 

「皆の和を乱す、悪いマネカタがいるわ。気をつけてね」

『....悪いマネカタなぁ。どんぐらい悪いんだ、ソイツ』

「マネカタの皮を剥ぐ、ヒドーなヤツよ」

『....皮を剥ぐ、ってマジで?』

「悪魔も例外じゃないかもしれないから、気をつけてね」

 

仲間を襲って皮を剥ぐマネカタが、アサクサのどこかにいるらしい。

皮を剥ぐ理由は今一つ分からねえけど、マネカタが仲間を....襲う?。

そんな事、全然想像出来なかった。悪魔に襲われる、ならまだ分かるが。

 

『ともかく、気を付けるに越したことはないか』

 

マネカタだと思ってたら、とんでもない反撃をくらうかもしれないしなと思った。

........それが、正しい判断だと知るのは、ずっと後のことになるのだが。

 

 

 

 

 

「オレはマガツヒを集め....いずれはそれで悪魔を支配してやるつもりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 




型に定まらぬもの 定められぬもの
お前は何処に行くか 何処にも行けぬか
未だ彷徨えし 2つの姿持つものよ

惑え 迷え 小さき世界をその手で
みたび血と瓦礫に 変える時まで
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。