それではどうぞ!
「うわー、相変わらず人多いな」
東京には着いたが、穂乃果たちは今日離任式があるらしく、約束の時間まで暇を持て余した俺はとりあえずアキバに来ていた。
「さて、どうしようかな・・・ん?」
黒髪をツインテールにした女の子が焦った様子で走って来た。
「ココロー!ココロー!!」
どうやら、人を探しているようだ。
んー、特にすることもないし手伝おうかな。
「あの、すいません」
俺が話しかけると女の子はびっくりしたようで、恐る恐る振り返ってきた。
「・・・なんですか?」
うわ、おもっくそ警戒されてるな。
そりゃそうか、ナンパだと思われてもおかしくないよな。
「えっと、誰かを探してるみたいだったので、声をかけたんですけど、ご迷惑だったでしょうか・・・?」
すると彼女の表情が少しだけ柔らかくなった。
「はい、実は妹が迷子になってしまって・・・この辺りにいると思うんですけど・・・」
なるほど、ココロって子は妹さんか。そりゃ心配だよな。
「なら、手伝いますよ。俺、暇なんで」
「・・・なんで手伝ってくれるんですか?」
あ、警戒させちゃった。
「君が従妹に似てるから」
「ぷっ、なによそれ。あーあ、警戒して損したわ」
お前、どこの黒の剣士様だよってセリフを使ったがん、伝わらなかったらしい。
それに警戒は解けたみたいだ、あと同時に敬語も解けたらしい。
まあ、こっちの方が話しやすいからいいんだけど。
「私は矢澤にこ。にこでいいわ」
「俺は藤間拓人。中一だ。俺のことも拓人でいい」
俺もタメ口で自己紹介した。まあ、見た感じ俺と同い年か下っぽいからいいかな。
「ふふん、にこは中二よ」
「へー・・・・・・ハッ!?年上だと!?」
そんな馬鹿な!俺の見立てが間違っていただと・・・
「そんなことより早くココロを探しましょう」
「そ、そうだな」
正直な所、納得いかなかったが今はココロちゃんを探すのが最優先だな。
「それで、どんな子なんだ?」
「かわいい」
「え?」
「だから私に似てかわいいのよ!」
自分で言うか!?いや、たしかににこはかわいいけどさ。
「ほ、他には?」
「髪型はサイドテールでリボンの色が黄色よ」
ああ、穂乃果が浮かんでしまった。
「了解、とりあえず探してみるか」
*****
「ココロ、どこ行っちゃったの。こんなに探しても見つからないなんて・・・」
にこの声は今にも泣きだしそうな声だった。
それもそうだ。一時間近く探したのに、幼い妹がまだ見つからないんだからな。
「きっとすぐに見つかる、いや見つけるよ!だからにこ、泣くな」
「な、泣いてなんかないわよ!」
「だって、泣きそうになってたじゃん」
そんなやり取りをしながら再び探し始めた俺たち
「それは目にゴミが入ったから・・・え、あれって」
「ん?どうした?」
次の瞬間にこは勢いよく走りだした。
にこに着いて行きながら、向かっている先を見てみると、にこに良く似たかわいい女の子がいた。
「よかった、見つかったんだな」
本当に良かった。
信号無視で突っ込んでくる車さえなければ。
信号が青に変わり、横断歩道を渡り始めた直後のことだった。
このままじゃにこが危ないと思った俺は、咄嗟ににこを突き飛ばした。
身体に襲いかかるとんでもない衝撃。
ああ、俺死ぬんだな、と理解できてしまうほどの衝撃だった。
(会いに行けなくてごめん。謝りに行けなくてごめん)
自分が死ぬことに対しての恐怖より、こんな感情が心を埋め尽くしていた。
でも・・・
「拓人!拓人!!しっかりして!死なないで!」
声が聞こえた。
目を開けると黒髪ツインテールの女の子が見えた。
何て言ってるかは途切れ途切れでしか分からないけど、”僕”を心配してくれてるっていうのは分かった。
「にこはまだ、あんたに何のお礼もしてないじゃない!だから死なないでよ拓人!」
そっか、”この女の子”はにこっていうんだ。
名前が分かってよかった。
あと、お礼って言葉も聞こえたな。
なら―――
「・・・笑っ、て。キミには、笑顔が、似合うよ」
なんとか伝えられた。
けど、もう限界だ・・・
僕はもうだめみたいだ。ほんとにごめん。
あれ、僕はさっきから誰に対して謝ってるんだろう・・・
とても大切だった気が、す、る・・・
「拓人!?拓人!返事して!いやぁぁぁぁぁ!」
救急車が到着したのはそのわずか十五秒後だった。
*****
「あれ、ここ、は、」
天井が見える。寝てたのかな?
”ガラガラ”
ドアを開く音が聞こえ、女性が中に入って来た。
「っ!拓人!目が覚めたのね!」
拓人って僕のことだろうか?僕の名前は―――あれ、思い出せない。
「あの、すいません」
「何よ、急に敬語になって。あんたが交通事故にあったって聞いて心配したんだからね。それで何?」
交通事故・・・言われてみれば、ところどころ骨が折れているような・・・
おっと、そんなことよりも今は―――
「拓人って僕のことですか?」
*****
先ほどの会話の後、女性はすぐに部屋を飛び出していき、医者を連れて戻って来た。
「いやー、意識が戻ってよかった。君は四時間ほど意識を失ってたんだよ」
「そうなんですか・・・」
女性が連れてきた医者は、『西木野』と書いたネームプレートを首から下げていた。
「じゃあ、いくつか質問に答えてくれるかな?」
「はい、分かりました」
とは言うものの、何を聞かれても答えられる気がしないなー。
「じゃあ、一つ目の質問だ。私のことが分かるかい?」
「えっと、分かりません。初対面だと思います・・・」
本気で覚えがない。
というかそもそも、僕記憶ないんじゃね?っていう結論が既に出ている。
「そうか・・・では二つ目。この女性が誰かは分かるかい?」
そう言って西木野先生は、最初に部屋に入って来た女性の方に手を向けた。
それに対する僕の答えはもちろん―――
「・・・分かりません」
というものだった。
「そうか、なら何でもいいから覚えていることとかないかい?」
何か覚えていること、何か・・・はっ!これは!
「ひー・・・」
「ひー、何だい?」
そうだ、俺の中に残っているものはたしかにあるんだ。
「ヒースク○フの正体は茅場○彦・・・」
部屋の空気が凍った
「た、拓人君。他に、他にはないのかい?」
「他に、ですか・・・あっ!父親?らしき人と何か話してます・・・」
「本当かい!?どんな感じだい?」
「うぇ・・・」
「がんばれ!拓人君」
「Wake Up Gi○lsって言ってます!」
「なんでそんなどうでもいいことしか覚えてないのよ!」
女性がキレた。
本能的恐怖が俺を襲う。
「まあまあ、藤間さん。拓人君を責めないであげてください」
「分かってはいるんですけど・・・」
「気持ちは分かりますよ。私もこんな患者見たことないので。記憶ないのに落ち着き払ってますもん」
そりゃあ、自覚してるからね。
でも、さっきのWake Upうんたらって何だろう。なんかすげー気になってきた。
「とりあえずこの様子なら大丈夫だと思いますよ。幸い内部に異常は見られませんでしたし、後は骨折などですね。まあ、これらはこれから私たちが全力を尽くしますよ」
「息子のこと、よろしくお願いします」
ああ、この人母親だったのか。
「ただ、記憶の方は私たちにはなんとも・・・印象が深いところに行く、あるいはそういう人に会うなどがいいらしいのですが、現在は仙台ですもんね」
「はい。でも、拓人のためにはこっちにいた方がいいと思うので、しばらく入院させていただいてもよろしいでしょうか?」
「分かりました。では手続きの方を」
「ありがとうございます。じゃあ、拓人。ちょっと行ってくるからね」
「うん、いってらっしゃい、母さん」
驚くほどすんなり母さんという言葉が出てきた。
母さんも目を丸くして驚いていたが、やがて優しい表情になり、部屋を出て行った。
「記憶喪失、か」
「あなた記憶喪失なの?」
声のした方を見ると、赤毛のかわいらしい女の子がいた。
「え、キミだれ?」
いかがでしたか?
いつも以上に駄文でお送りしました。
ココロちゃんに関してはアニメでは片仮名表記になっており、この作品もアニメを原作として構成しているので片仮名にいたしました。あらかじめご了承ください。
ご覧いただきありがとうございました。