短編、私はトビウオであった。名前はまだない。(多分三話構成) 作:なむさんばがらす
6, Dragon dive
私は装甲にいくつもの擦過傷と弾痕を作り、黒煙と火花を飛び散らせながらもなんとか本隊と合流し、今の母艦である重雷装航空戦艦の彼女に収容された。
――何を見た。
爆弾だ、とても大きな。まるで『小さな少年』や『太った男』のようであった。
――見間違えではないか?
彼女の疑問は最もだ、あの兵器はクロスロードにて『艦船には有効打を与え辛い』と証明されていたはずであったからだ。
もしかしたら、それに似せた新型爆弾の可能性もないとは言い切れない。
――ふむ、ということはあの艦隊はどちらにしろ新兵装の実験艦隊を兼ねている。と?
おそらくそうだ。
敵方の兵器開発傾向には特徴があり、桜花や回天といった、のちに負の遺産とされている物に関しては開発されない。その理屈でいけば『あの』兵器は勝者と敗者で評価が180度異なるために開発は難航しそうである。
逆に、負の遺産でない物に関しては陸海軍を問わず艦載装備化されるのだが。
――なるほど、装備試験艦隊として極北方面に出撃したが、時期が悪く泊地と化したここを刺激してしまった……というところか。
その癖に奴ら、ずいぶんと好戦的な編成をしていた。いくら米帝でも装備試験に大規模連合艦隊など、馬鹿げている。
――それだけ大事な装備だったということか、あるいは……
彼女はしばし思案し、戦艦の姫といくらか電信を交わした後、水雷戦隊を率いて本隊とは別の針路を取った。
曰く、後方にいる敵の機動部隊を、極北方面特有の濃霧にまぎれて先行し叩きに行く。とのことであり、私は来る敵機動部隊との交戦に備え、応急修理を急いだ。
またこの時、本隊の航空隊は敵の新型爆弾を積載した艦載機群とは全く接敵しなかったことが報告されたのだが、彼女たちの言葉は私には理解できず、気に留めることができなかった。
・・・・・・
戦艦の姫は、北極海特有の濃霧をうまく使い、敵艦載機の航空攻撃を掻い潜っていた。
敵艦載機は口惜しそうに濃霧の手前で引き返すのが電探によって理解でき、彼女はほくそ笑んだ。
名無しの重雷装航空戦艦型からの報告では、新型爆弾積載の艦載機はかなり挙動が不安定であるとの報告を受けていたため、これは従来型の艦載機だった。
そして、あらかじめ空母『ヲールステイン』艦載機群の報告した場所に向かった。
「ほう、存外、大物が釣れたな。あとで長門の奴に自慢してやろう」
「インペリアル・ジャパンの変態共が作った『Carrier Battleship(航空戦艦)』とかいう珍兵器のドリームスペック版が三隻か……面白そうだ」
「確か、日本では古歌になぞらえて『Re-class』と呼んでいるそうだよ?」
そこには、報告にあったものから空母を除いた星条旗を掲げる水上打撃部隊が待ち構えており、既に開幕航空攻撃は為されているため小破状態の敵艦艇も見受けられたが、彼女らの好戦意欲は微塵も減じてはいなかった。
「……沈ミナサイ!!」
制空権はこの濃霧では関係がない。故に、彼女は気合一声砲撃した。これは、あらかじめ随伴の重雷装航空戦艦型三隻が敵の予測進路に雷撃を敢行、無数の烏賊魚雷群が敵艦に向かっていくこの時に、敵の注意を海面から逸らすための牽制射撃の様なものだ。故にほぼ最大射程から、観測機なしの闇雲な一斉射であった。
その後、彼女は雷撃の戦果報告も聞かないうちに、艤装部分の巨腕で人型部分を庇い、敵艦艇群に正面から突撃する。
この独特の戦闘スタイルこそが、彼女たちが姫級の随伴として重宝され、日本で『ダイソン』などと呼ばれる所以である。
誰しも、16インチ三連装砲をゼロ距離で食らいたくはない。
故に、たとえ自身の砲が彼女の装甲を貫けなくとも、狙わずにはいられないのだ。
「……っち。バカが突っ込んでくる。砲撃を集約、押し留めるぞ」
この艦隊も例外ではなかった。
彼女の前後左右に夥しい数の水柱が上がり、彼女を守る剛腕にも、いくつもの命中弾があった。
だが、それが14インチ砲弾程度ではお話にならない。そんな豆鉄砲では彼女の装甲を抜くことは適わなかった。
「くそぅ、弾かれるんだったらダメコン降ろしてヤマトカノンガン積みで来ればよかったっ!!」
ならばこちらもゼロ距離で、と言わんばかりに敵戦艦級が一隻、悪態をつきながら突撃し、他の艦艇群はそれに単縦陣で追従した。
より一層、破壊力を持った砲弾が飛び交うが、お互いに移動中射撃なので命中弾は少ない、だが砲弾の夾叉範囲はぐんぐんと縮まっていた。
そして両者の砲塔仰角が水平になった時、重雷装航空戦艦……レ級の開幕雷撃が火を噴いた。
「……機関損傷、速力低下。……復旧、迅速に」
「ボロボロになってからが、俺の本領っ!! まだまだ行けるぜーっ!!」
レ級の雷撃は二隻の敵艦艇を中大破に追い込んだ。
被害を受けた艦艇こそ気丈に振舞っていたものの、誘導魚雷かと思うほどの正確さと、酸素魚雷かと思うほどの静粛性を併せ持った統制雷撃に敵艦艇群は戦慄した。
「すぐに統制雷撃の第二波、それと電探砲撃が来るぞ。さっさと目の前のバカをやり過ごして、後ろの航空戦艦の相手をせねば」
「……サセナイ!!」
戦艦の姫は、作戦に気付いて指示を出した敵旗艦に向けて吶喊した。
両者の砲の仰角は既にゼロであり、これ以上近づいて使える兵装というと、一つしかない。
「ッ!?……衝角攻撃(ラムアタック)の真似事か、随分と時代錯誤なのだな、戦艦棲姫?」
大質量の物質同士がぶつかり合うような重い音が響き、敵戦艦級がこう吐き捨てた。
「……!!!」
その応答も待たずして、互いの砲口は互いを捕え、一斉に火を噴いた。
7, 民意という化物が、彼女に敗北を許さない。
「無謀だったな。今までの奴らと同じだと思ったか?」
「……!!」
砲煙が晴れ、そこには無傷の敵戦艦と中破状態の戦艦棲姫がいた。
確かに、両者の砲弾は確実に両者に着弾し、戦艦棲姫の砲弾に至っては敵戦艦の装甲を抜き、バイタルパートに深刻なダメージを与えていた。
だが、敵戦艦級はその致命傷を瞬く間に修復したのだった。
「"The goddess of damage-control"―― 私は手段を選ぶ気はない、勝利こそが我々の使命だからだ」
米帝ここに極まれり、と言わんばかりの獰猛な笑みを浮かべ、中破状態の戦艦棲姫を力で抑え込み――
――全艦艇で集中砲火を叩き込んだ。
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「よし、敵の水上打撃部隊はあらかた片付いたな。……本隊は後方に展開する機動部隊と合流し、オペレーションフェーズ2まで待機する!」
重雷装航空戦艦型が十全な性能を発揮するには、優秀な前衛となる艦艇群が必要不可欠であった。なぜなら『艦載機を放って突撃』など、特攻でもさせない限り土台無理な話であるし、またその名に恥じぬ『重雷装』は、被弾時に魚雷の誘爆というウィークポイントも同時に持つ、ということでもあるからだ。
「……霧が濃くなってきたな、機動部隊は大丈夫か?」
「今僕たちが撃滅したのは機動部隊と水上打撃部隊のハイブリッドだったから、あとは水雷戦隊だけのはずだよ」
「水雷戦隊程度なら、空母守らせてる艦だけで余裕だろ」
「胸騒ぎ……する……リメンバー……パールハーバー……」
「心配だとは思うが、こちらもダメコンがない以上、むやみに戦闘を行うのはよろしくない。補給切れで作戦失敗となれば、世論が反戦に一気に傾くからだ」
北極海航路の解放と、敵方の人工衛星迎撃艦の撃滅。それが本作戦の目的だった。
――直後、北極方面からの遠雷のような爆轟音が聞こえた。
「北極氷への爆撃の開始を確認。作戦、フェーズ2に移行する」
8, Unknown unit has connected.
読みが甘かった。と言わざるを得なかった。もう少し情報があれば、もう少し会話をしていれば、味方艦載機の報告を受けた戦艦の姫との電信が私に少しでも理解できていれば、と、私はこの光景を見たときに思わずにはいられなかった。
艦隊の遥か後方から上がった無数の爆炎、爆轟。
いや、この事態はもっと早くに予測できて然るべきであったのだ。特に飛び魚艦載機である私が私であればこそ、なおさらそうであった。
あの爆弾に過剰反応し過ぎて、なぜ艦戦よりも艦爆が真っ先に発艦しようとしていたのか、なぜ私単機での奇襲が成立したのかを考えていなかった。
新型爆弾による北極氷への重爆撃。
爆轟よりも熱量を重視するそれは局所的な上昇気流による霧払い効果と、北極海氷の融解の促進、それによる北極海氷上に展開する深海勢力の漸減を目的とされていた。
現在北極点付近は破氷船棲鬼、極光測地棲姫という地対衛星用の超精密高射砲しか持たぬ者たちが防衛に当たっているため、航路確保はたやすい。
また、一般的に北極の海氷は海面上昇に影響しないと言われているために、幾ら溶かしたところで人間が生きるには支障はない。
「アハハ、作戦は成功だぞ。ファッ○ンディープマリーン共め。この霧さえ晴れてしまえば、ハワイとアラスカ基地から出る、ASM(空対艦ミサイル)満載の長距離爆撃機がお前たちを世界の果てまで追い回して撃滅する!!」
「……ハァ」
私が先ほど爆沈させ、ダメコンで生き返った機動部隊旗艦が狂ったように笑い始めた。
先ほどまで、この濃霧を利用した名前のない彼女の奇襲戦法で一方的に損害を増やしていたというのにだ。
――……最早ここまで堕ちたか。私はこの有り様を形容する言葉を知らない。
「まさか北極圏の生態系をぶち壊しに来るとは思わなんだ……久々にトサカに来たぜ……」
敵の重厚な艦隊編成は、霧払いによってあぶりだされた私たちの掃討作戦を並行して行うためのものだった。
名前のない彼女は、燃える北極海を見て嘆息した後、自らの人間体に語りかけた。
――賭けは、我輩の勝ちだな? 名前のない艦艇よ。
「……そうだな。名前のない化物」
何かの賭け事に勝ったとは思えない程に落胆した声色と表情で、彼女は発艦準備に入っていた私を格納庫の奥に押し戻した。
貴公、一体何をする気だ!?
「戦争さ。後にも先にも、俺たちはそれしかやってなかっただろ?」
――量子波動砲、エンゲージ。撃つなら無駄にするな。半年に一発しか撃てないのだからな。
先ほどまで私が発艦しようとしていた航空(口腔)甲板に、46 cm 砲が赤子に見えてしまうほど巨大な砲口が突き出した。
その砲口には臨界までエネルギーを蓄えた動力炉が覗き、そして限界まで広げられた顎関節に従うように航空艤装の頭部装甲が展開した。
そこには、片目に青の燐光を灯す、遥か古代に君臨していた最大の肉食軟骨魚類の容貌が露わになっていた。
さらに、強大なエネルギーが動力炉から漏れているのか、彼女自体が黄色の気炎を纏ったように仄暗く輝き、片目に艤装頭部と同様な青の燐光を生んだ。
勝利のため、他のすべての生物、果ては地球そのものすらも焼き滅ぼす、人間の持つ果てない業の炎に、名前のない彼女は怒り狂っていた。
そして、限界まで引き絞られた弓弦を放つがごとく、彼女はそれを開放する。
――――瞬間、音という音が消えた――――
超高エネルギーの奔流が空を裂き、轟雷のような音が一瞬で私の聴覚を飽和させたための現象だった。視覚も同様、発射直後は使い物にならなかった。
「――――――――――――――――ッ!!!!!」
彼女の天を衝いた憤怒が、彼女を狂ったように笑わせていた。しかし、その怪笑の奥には人への諦観と、焼き尽くされる地球への悲哀がありありと浮かんでいた。
そして彼女はそのまま、その熱線を、薙いだ(・・・)。
熱線の射線上から外れていた敵艦艇群が息を呑んだのが分かった。そして、その熱線から逃れようと全力で缶を炊き、タービンを回すが、熱線によって局所的に海水が多量に蒸発したために起きた流れに飲まれて進めず、あえなく光の奔流に呑まれた。
米艦隊構成
旗艦:長門に自慢しようとしてた軍人っぽい喋りの戦艦。
弐番艦:時雨っぽい喋り方のヤマトカノン論者積みしたかった戦艦。
参番艦:日本人に偏見があったり口が悪かったりする喋り方の俺っ娘戦艦。
四番艦:無口な感じの戦艦
駆逐軽巡?(喋ってないので)知らない子ですね。
私はどの艦かとかは全く考えていないので各自脳内補完してください。(べ、別にこっそり教えてくれてもいいなんて言ってないんだからね!!)
以下、関係ない独自考察
現在、日本では、深海棲艦は物量チートでガンガン来る二次大戦後半の米軍みたいなイメージだけど、米国サーバーだと高い練度とマジキチ技術、夜討ち朝駆け当たり前な大戦初期の日本軍みたいなイメージ持たれてそう。
今回の話を平たく言うと、米鎮守府夏イベのE3ぐらいでギミック(霧払い)解くと、敵旗艦の戦艦棲姫が弱くなって、仕置きマスにいるレ級がキレる。という感じです。
三話構成と言いつつ、もうちょっとだけ続くため、平に謝罪をば。
次回「欧州戦線」
嘘同時上映「アイドルマスターフリートガールズデイブレークステージ」