カネが全ての転生者   作:yudaya89

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第08話「カネで幸せは買える」

 

プレシアについては、まだまだ利用価値はある。それどころか、上手く転がせば莫大な利益を生み出す。しかしただ利益を生み出す物であれば、いくらでも転がっている。例えば宝くじ・・・しかし宝くじに当選したからといって何になる?転生前の俺なら泣いて喜んで借金返済して、良い暮らしをするだろう。だが今の俺には「ただのカネ」は不要だ。「価値のあるカネ」が必要になる。

 

 今はプレシアに「投資」している段階だ。プレシアには財産は殆ど無いが、それでも俺は投資をする。

 

 

 

 

 

  何故か?

 

 

 

 

 

  今に分かるさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プレシアとの対話から1週間、あれ以来彼女からのアポはない。諦めた?いや違う。自分の体を完治させる方法を模索しているようだが、それに意味はない。それどころか、その模索で体力を消費し、貴重な時間までも消費している。これは「無意味」だ。しかし無意味な事を続けさせる事は、それこそ無駄になる。少し早いが、次の段階に移行しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 管理局

「君か」

「ああ、用件は先に伝えた通りだ」

「正直、監視官として君を彼女に合わせる気はない」

「だから?私情を挟むのは辞めてくれないか?これはビジネスだ。俺もここには仕事できている。だから監視官として対応してくれないか?クロノ・ハラオウン執務官」

「分かった。だが、度が過ぎる場合は、即刻出て行ってもらうからな」

「言っただろ?俺はビジネスできている。彼女を傷つけることはしないさ」

 

 

 

 まぁ傷つけはしないさ。もう既に付いている傷に塩を塗りたくるだけさw

 

「こんにちは、フェイト・テスタロッサ。いや、フェイト」

「!!」

「そう怯えないで欲しいね。今日君に会いにきたのは、実は君の製作者のプレシア・テスタロッサについて話す事がある」

「君は!!」

「クロノ執務官?俺は本当の事を話している。フェイト、君は自分が造られた意味、どうやって造られたかを、理解すべきだ。君は頭がいい。恐らくベースとなったアリシアの影響だろう。だから分かっているはずだ。自分の事に目を逸らして何が出来る?自分のことを理解できずに、他人の何が理解できる?フェイト・・・そろそろ前に進まないか?確かに母親と思い、信頼し、いつか振り向いてくれる、そう信じていたのに、裏切られた気持ちは俺には理解出来ない。でもいつまでも、そのまま停滞していては、何も生まれない」

「・・・」

「俺を信頼する、しないについては追々として、まずこの資料を見て欲しい」

 俺は一枚のカルテをフェイトに差し出した。彼女はそれを受け取り、カルテの内容に目を通す。

「この患者は、胃癌を患い、それがどんどん進行していき、多臓器へと転移している。寿命は持ってあと半年だ」

「・・・か・・かぁ・さん」

「そうだ。このカルテに記載されている人物は、プレシア・テスタロッサ。君を裏切り、捨てた、君の作製者だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フェイトside

「そうだ。このカルテに記載されている人物は、プレシア・テスタロッサ。君を裏切り、捨てた、君の作製者だ」

 

 

 この男は!!!

 

 今なんと言った!!

 

 裏切り者!!

 

 捨てた!!

 

 母さんを!!

 

 母さんを!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気付いたときには、クロノ執務官に私は取り押さえられていた。私は目の前に居た男、ミスト・フォン・アルパインに馬乗りになって胸倉を掴んでいた。それを認識した瞬間、うしろからクロノ執務官に肩を掴まれた。

「落ち着くんだ!!」

 

 私はすぐに自分がしでかした事の重大性を認識した。私は現在保護観察下であり、私が掴みかかった相手は、ミスト・フォン・アルパイン、アルパイン家の長男、そして現場には監視官である、クロノ執務官が居た。

 

 この事が報告された場合、自分の立場どころか、私の罪の減刑に協力してくれた、リンディ・ハラオウン、そしてクロノの面目を潰す事になる。

 

「あ・・ああ・・す・・すみま・・すみませんでした!!」

「ああ、まぁ此方にも非があったかもしれないが、暴力はいけないな。そうだろう?クロノ執務官?」

「そうだな。ミストにも非があったが、それでも掴みかかるのは見逃せない」

「・・・」

「しかしこちらにも非がある事は確かな事だ。そこでフェイト、俺のもとで働かないか?」

「え?」

 

 彼から提示された内容を要約すると

ミスト・フォン・アルパインの監視下及び命令下で働く事だった。仕事内容もアルパイン直下の企業の開発した道具の耐久性テストや管理局への派遣、そして劣悪な環境における魔力使用効率の向上試験だった。

 

「これは・・・」

「元々フェイトにはこの話を持ってきた。プレシア・テスタロッサの治療と引き換えにね」

「え?」

「実は急遽人手が必要になってね。しかし優秀な人間は、何処かに所属している。それを引き抜いたりすると、かなりの費用が発生する。また負傷した場合はベット料金が発生する。そこでフェイトに白羽の矢がたったという訳だ。君は現在保護観察中という事だけど、こちらがその保護観察を引き受ける代わりに、フェイトの所属を俺直下の部下にする。そしてその給料でプレシア・テスタロッサの治療費を支払う・・・どうだい?」

「でも治療費は・・・幾らになるのでしょう?」

「3億だ」

「!!」

「3年待ちの状態でな。これでも譲歩はしている」

「・・・わかりました」

「じゃあ、まず労働条件についてサインを。あ、名前は「フェイト」で頼むぞ」

「どうして?」

「今フェイトには出生の関係で戸籍がないんだ。現在手続き中だが、時間がまだ掛かる状態だ。そうだろ?クロノ執務官?」

「ああ、すまないフェイト。もう少しで君の戸籍が発行される。それまでは君は「フェイト」なんだ。最終的にはフェイト・テスタロッサで戸籍が発行される予定だ」

「早くとも2日後から協力してもらいたくてな。戸籍が発行されるのを悠長にまってられない。しかしフェイト・テスタロッサとサインすると、日付等の関係上、契約が無効になる。そうなると、俺に罪が発生してしまい、立場上それは御免被る」

「わかりました」

「理解が早くて助かる。サインできたか?じゃあこれが治療費の契約書だ」

「ここですか?」

「そうだ」

 

 

 

 これで私は正式にミスト・フォン・アルパインの部下となった。

 


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