祥子「原作レ○プだ」
由乃「だめよ、7時半にヤクの取引があるの! 付き合えないわ」
令「今日は休め」
志摩子「こんなの『マリア様がみてる』じゃないわ! 『マリファナ吸ってみて』、略して『マリみて』よ!!」
聖「だったら吸わなきゃいいだろ!」
また春がやってきた。
出会いの春が。再会の春が。始まりの春が。
時の流れと節の巡り、それは誰にも等しく平等に訪れるものだ。
それは私立デビアン女学園も、例外ではない。
便所裏の銀杏林に集うレディースたちが、今日も悪魔の如き邪悪な狂笑を浮かべて鉄格子の門をバイクでくぐり抜けていく。
穢れしか知らない心身を覆うのは、返り血でドス黒い色に変色した改造制服。
校舎内から鳴り響く発砲音と、瞬刻の間断もなく立て続けに何かが爆ぜる音。
春を売る媚びた少女の猫なで声と、怪しげな薬を売りつけようとする者のしゃがれ声、茂みの奥から響く甲高い嬌声。
校舎裏に反響する断末魔に、爽やかな命乞いの声などあれやこれやが入り混じり、奇怪な不協和音を奏でている。
そんなものにいちいち耳を傾けながらゆっくりと歩いているとここではすぐ死ぬ。
私立デビアン女学園。
ここは、中毒者の園―――。
そんな日本のロア○プラ、治外法権が適応されたデビアン女学園だが、あまりにもデビアン女学園とは相容れぬ容貌の少女が、今その校門をくぐり抜けた。
スカートのプリーツは乱さないように、白いセーターカラーはひるがえさないように、ゆっくりと歩くのがここでのたしなみと言わんばかりの瀟洒な物腰は、ここ私立デビアン女学園において異端そのものである。
日本人離れした容姿の少女だ。
ブロンド色のふわふわの巻き毛は暖かに揺れ、春の日を浴びて幻想的な輝きを放っている。
蒼い瞳の眼差しは前を向き、正面の薄汚れた校舎を見つめている。
彼女の名は、
突然だが、グローバルな視点の話をしよう。
世界的に治安が悪いとされる地域において、その地域の路地を美女が裸で歩き回ったらどうなるか。
次いで自然界の話をしよう。
餓えた狼の群れの中に羊が一匹紛れ込めば、その羊はどうなるか。
そしてファンタジーの話をしよう。
オークの群れに包囲されて奮闘するも、剣も矢も尽き果てた気高き女騎士が、ついうっかり『くっ、殺せ!』と叫んだならばどうなるか。
どうなる。
どうなる?
どうなるだろうか?
結果は、火を見るよりも明らかだ。
誰でも容易に想像がつくことだろう。
そしてデビアン女学園において、志摩子のような見目麗しい外見をした
桜色の唇も、陶磁器のように白い肌も、ピスクドールを思わせる青い瞳に長いまつげも、全てが黄金比で成り立っている。
神の介在を邪推してしまうほどの容姿は、男がすれ違えば誰もが振り返るだろう。
それに加えて楚々とした振る舞いは、まさに撫子。
少女から女に変わり始めてきたことを予感させる、程よい丸みを帯びたスタイルは、無改造の制服の上からでも際立っている。膝丈のスカートからチラリと覗く真っ白な生足には染み一つない。
箱入りのお嬢様―――それも極上の箱に嵌った黄金で出来たお嬢様―――と、このデビアン女学園にたむろする者たちの目には映るだろう。
路地裏に連れ込まれ、怪しげな薬の中毒にされ、花を売り物にされる……その程度ならばまだマシだ。
散々に弄ばれた後、変態共に売り渡され、生涯を地下室で過ごす……温い。
四肢を切り落とされ、死ぬまでアンダーグラウンドで豚や馬とまぐわうショーの主演女優とされる……まだ笑えるレベルだ。
世界は邪悪に満ちている。
死後に天国や地獄に送られる人間が存在するだろうか。
それは分からない。
だが、地獄は存在する。常人の思考では及びもつかない地獄は、この世にこそ存在するのだ。
そしてここ、デビアン女学園はまさに地獄そのものであった。さながら、「時はまさに世紀末」といった有様である。
筋骨隆々とした体躯を改造した女子制服で無理やりに押し包んでいるのは変態男たち―――ではない。
その多くは女装した変態男ではなく、女だ。それも15歳から18歳の少女である。中には女性に扮する正真正銘の男もいるが、少数である。
デビアン女学園の名に違わず、ここは女子高である―――対外的に、であるが。それはまた別の話である。
何せ明らかに学園の関係者とは程遠い身なりをした男たちも、敷地内にはちらほらと見受けられる。そして誰も彼もがまともではない。
瞳の焦点が合わぬ者は十人中八人を占め、その中でも涎を垂らしたまま恍惚とした表情をしている者が七名、己の頭に拳銃を突きつけ発砲する者が一名である。
そして残る二名は、既にこの世に意識が残っていない。体温がない。脳波がない。つまりはそういうことである。
俗な言い草ではあるが、あまりにもお察しな光景であった。
そんな中を静々と歩く藤堂志摩子。
これが薄い本なら二ページ後には未成年者お断り的な展開が待ち受けていることが容易に予測可能であり、そして回避不可能であっただろう。
「へへ……おい、お嬢ちゃんよぉ……ちょっとばかし来るところ間違えちゃいねえかい?」
そしてこの展開はある意味で当然と言えただろう。
モヒカン頭の二メートルを超す巨漢………否、巨大な女が、志摩子の歩みを遮った。
右手には割れたビール瓶、改造制服の胸元から覗く谷間は深くおよそHカップ、丸太のように太い生足は誰得と言わんばかりに剥き出しであり、注射痕が多数見受けられる。
とどめとばかりに顔面は涎と鼻水塗れであり、いささか表現しがたい笑みを浮かべながら、ヤニ臭い息を荒く吐き出している。
明らかに『法的にも健康的にもよろしくないお薬』をオーバードーズしていた。
「あたしは優しいからよぉ………出口に案内してやるよ。それともトイレがいいかなァ? なぁに、どっちみちすぐに天国にご案内しちまうぜ、ヒヒ……」
悪魔のような黒い舌先で下唇を舐めるモヒカン巨女に対し、志摩子は、
「…………?」
まさに今、モヒカン巨女の存在に気づいたとばかりに、すぅと視線を持ち上げる。
志摩子のサイズは平均的な女性のそれと大差ない。志摩子から見れば、さながら巨木であっただろう。
力づくで来られては、志摩子に勝ち目などあるはずもない。
かくして志摩子の命運は定まったかに見えた。
だが、正確には違う。
命運は確かに定まっている。ただしそれは、志摩子に絡んだモヒカン巨女の命運が、である。
「ッ……!? ばッ……馬鹿ッ!! その人が誰だか分かってんのか!?」
仲間であろうか―――遠巻きから叫ぶ女がいる。
彼女はモヒカン巨女が絡んでいる人物が誰であるか気付いたのだろう、顔色は蒼白で、叫びは悲鳴染みたものだった。
しかし、叫んだ女生徒の傍らにいたもう一人のレディース風の女生徒が肩を掴み、首を横に振る。
「やめろ。もう遅い……アイツは一年からの途中編入だからよう……あの方を知らなかったんだ……運のねえヤツだぜ。離れよう。あたい達まで巻き添えを食っちまう……」
レディース風女生徒の言う通りだった。
既に遅かった。何よりもモヒカン巨女は薬漬けであり、認識の狂った脳味噌に、仲間の悲痛なまでの叫びは届いていなかったのだ。
注意力が不足していた?
不幸だった?
愚かだった?
後から考えれば、様々な要因はあったのだろう。
だが、それは遅すぎた。
デビアン女学園に通う者ならば、本来誰もが分かるはずなのだ。
このデビアン女学園に辿り着ける時点で、そして校門から校舎近くまで無事で済んでいる少女が―――
それに思い至らなかった時点で、このモヒカン巨女の命運は決まっていた。
繰り返す。
ここ、デビアン女学園は、地獄である。
地獄に仏はいない。
ここにいるものは、鬼か修羅か悪魔か、
「……らない」
「あぁ? なんだってぇ? もう男の×××が欲しいってかァ? 気の早えお嬢ちゃんだなぁ、すぐに死ぬほどお相手ができるってのによぉ、死ぬほどなぁ、ケヘ」
―――
「ギンナンは裏切らない……ギンナンは裏切らない」
ぶつぶつと呟く志摩子の手には―――いつの間にか銀杏が握られていた。
しかもそれは、殻どころか腐ったウ○コみたいな悪臭を放つ果肉付きである。
一目で分かるものは少ないだろうが、それは日本において最大の銀杏出荷量を誇るA県I市S町産は久治銀杏―――その最高級品であった。
「あぁ? 何言ってんだテメエ? 頭イカレちまってんじゃ―――」
その言葉は、最後まで紡がれることは無かった。
唐突に、そのモヒカン巨女の顔面を、高速で飛来した何かが襲ったのだ。
強烈な一撃は哀れなモヒカン巨女の額を容易く叩き割り、そこから噴水のように血が噴出する。一体何が起こったのか―――当人であるモヒカン巨女にはわからなかっただろう。
しかし大量の出血にパニックに陥る時間も、割れた額から走る熱い痛みに悶絶する余裕さえも、彼女には与えられなかった。
額を割った何かは、今度は群となって次々に彼女の全身へと着弾する。
「あ、ぎゃっ………ぎゃっ、うぶっ、げばぁッ……」
先刻の一撃はただの予告。これから貴様を粉微塵にするという、死刑宣告だったのだ。
何かは次々とモヒカン巨女の太い四肢を、腹を、胸を、制服の上から穿っていく。その光景は、かの名曲『魔弾の射手』の調べを忠実に再現しているようだった。
傍目には、まるでモヒカン巨女が踊っているようだった。
全身全霊をかけて、文字通り血肉を噴きだしながら、命を賭けて命を散らし、命が堕ちていく。
おぞましくておぞましくて、おぞましすぎて、結局のところおぞましい以外の何物でもないおぞましい光景である。
いつの間にか、音は止んでいた。
誰もが口を閉ざし、その最後の舞を見つめていた。
ようやく嵐の如き陵辱が収まった時、そこに『在った』のは以前はモヒカン巨女だった―――ただの肉隗だった。
「あ……あびゅ?」
どす黒い血液を口から吐き出しながら、モヒカン巨女は受身すら取れず顔面から倒れ付した。
とうに意識を失っていたのだろう、時折びくんびくんと身体が痙攣する。
悪性腫瘍の如く腫れあがった彼女の顔も、誰得の生足も、無惨に撃ち抜かれ、血に染まり、赤紫に染まっていた。
崩れ落ちた彼女の身体からは、言いようもない悪臭が漂っている。
血の匂いに混じるのは、下品ではあるが、とんでもないウ○コの臭い。
それもそのはず彼女から噴き出した鮮血に染まった地面には、数え切れないほどの果肉付きの銀杏の実が転がっている。
「ろ、ろっ、ろっ………
息を呑んでその光景を遠巻きに見つめていた女生徒―――例にもれず筋骨隆々である―――の一人が叫んだ。
「
悲惨極まりない光景に加え、その戦慄に値する名前を耳にした者達は、ようやく呑んでいた息を吐きだし、にわかに騒ぎ始める。
「ぬ、ぬぅ………あ、あれは紛れもなく……
その中で、特に筋骨隆々としたレディース二人組のうち、学生帽を被った方が叫んだ。
「し、知っているのか、富樫ッッッ」
「銀杏吹雪……文字通り銀杏を吹雪の如く高速で連続射出し、相手に重症を追わせる中国は四川省の山奥に伝わる流派・銀杏拳の奥義……!」
「ま、まさかあの伝説の………実在していたのか!」
「あの正当後継者こそが死舞子さまだ………アレを喰らっちまったら、重症を負うこともさることながら、運良く掠っただけで済んだとしても、一週間はギンナンの匂いが股間にまで染み付く……正直それは、年頃のおれたちにとっては死に等しい……銀杏臭漂う身で、どうやって、どうやって………」
富樫と呼ばれた少女は、全身を恐怖に震わせ、一瞬言葉に詰まった。
しかし、振り絞るように叫ぶ。
「どうやって彼をデートに誘えっていうんだ……ッッッ!!」
その言葉に、富樫と呼んだ女は勿論のこと、周囲で耳をそばだてていた他の女生徒達も、その顔面を蒼白に染めた。
「な、なんて恐ろしい奥義だ……駅前にできたこじゃれたスイーツの店に、彼氏とモンブランを食べに行くことも出来なくなっちまうのかッ!!」
「クッ、そんなモン喰らっちまったらッ……オチオチ彼氏とホテルにシケ込むこともできやしねえじゃねえか……!!」
「ああ、とんでもねえ技さ……けどよ、あいつはもう二度とスイーツを喰うことはおろか、明日の朝日すら拝めねえ………」
「死舞子さま………恐ろしいひと……!!」
「ああ、マリア様だってウ○コを漏らすほどの恐怖の代名詞だぜ………」
そう、銀杏。
それこそが彼女を襲った魔弾の正体。
志摩子が常に常備する萌黄色の巾着袋の中に内包されているのは、悪臭を放つ数千発もの果肉付き銀杏―――それを掌の内部に収め、急激に圧力を加えることで内部の中種皮付き銀杏が汁をたっぷりと纏わせて飛び出す―――単にそれだけの技。
しかし志摩子は、それを秒間百発を優に越える速度で射出する。
さながら散弾銃であるが、全力で放てばその一発一発の威力が、二十ミリの鉄板すら容易に貫くほどだという。
それを魔技と言わずして、なんと言おう。
藤堂志摩子……通称〝銀杏の死舞子〟。
そしてこの学園を支配する山百合会における最高権力者の三人、
惡の華を咲かせる前の
「ギンナンは裏切らない……ギンナンは裏切らない……」
銀杏の外種皮に塗れた手からは、排泄物に似た悪臭が発生している。
死舞子は肉塊と化したモヒカン巨女の纏っていた服の残骸を拾い上げて手を拭いつつ、校舎への歩みを再開させた。
彼女の前方には、他の女生徒たちがたむろしていたが、彼女が再び歩み始めたことに気付くや否や、猫のような俊敏さで道の端に飛びのいた。
それはまるで、モーセの十戒の再現か。
海を割るかの如く人波が割れ、道の両側には筋肉造りの人垣が出来あがった。
「ごきげんようッッッ!! 死舞子さまッッッ!!」
「ごきげんようッッッ!!
「死舞子様、ごきげんようッッッ!!」
爽やかな朝の挨拶が、デビアン女学園名物のイチョウ並木―――通称『ここからが本当の地獄通り』に反響する。
筋肉の海を渡る死舞子はの足取りは変わらずゆっくりとしたものだ。
一歩を踏み出すごとに、イチョウの木々にたかっていた猩々たちが次々に逃げ出していく。ちょっとした『森の終わり』が訪れようとしていた。
「誰か……そこのゴミをイチョウの木の下に埋めておいてくださいな………この私の面貌を見知らぬ愚昧の血肉とはいえ、血は血、肉は肉。善き銀杏の養分となりましょう」
「はいッッ、喜んでッッッ!!」
ヘタな軍隊よりも見事な敬礼をする女生徒達であった。それこそ現役兵士より鍛え上げられた肉体はもはや兵器そのものである。
そんな筋骨隆々とした肉達磨たちが、一見にして深窓の令嬢でしかない死舞子を恐怖する光景こそが異常そのものであった。
「…………ごきげんよう」
前触れもなく訪れ、音もなく過ぎ去る台風ほど恐ろしいものはない―――それは察知できないからだ。
対処ができない。対策ができない。残るのは被害のみである。
志摩子が校舎内に消えていくのを見届けた女生徒たちは、疲労困憊で誰もが膝をついていた。
しかし、いつまでもそうしてはいられない。死体を処理せねば、と次々に立ち上がる。
「クソみてえな学園で、クソみてえな悪臭に包まれて死ぬ……か」
死体を引きずる女生徒の一人が、どこか皮肉気に呟いた。
「明日は我が身だぜ。精々、山百合会には目ェつけられねえようにシノギをしようや……ショバ代もこれ以上滞納しちまうと、おれたちも消されるぜ」
それを手伝うもう一人の女生徒が淡々と告げる。それを聞いた女生徒は先ほどの光景を思い出したのか、露わになった極太の生足をぶるりと震わせた。
藤堂志摩子―――通称『銀杏の死舞子』。
好物は銀杏。
主食は銀杏。
その肉体を構成するすべては銀杏である。
そう―――死舞子の体は銀杏で出来ている。
彼女に逆らえる存在は、この悪名高きクズの巣窟『デビアン女学園』においても、極一握りしか存在しないのである。
十年以上前の話だ―――死舞子は変わった子供だった。
死舞子は咬合力が強く、繊維の密集したヤシの実であろうと、その
そして好物が銀杏だった。それはまあいい。問題は行き過ぎているということである。耳かきにド嵌りして外耳炎になる阿呆が世の中には存在するぐらいだ。
何事もほどほどが肝心である。薬も過ぎれば毒となる、過ぎたるは猶及ばざるが如し、まさにそれだ。
死舞子は銀杏が好きが高じて、幼少時はしばしば中毒になり、病院に搬入されることが多かった、ちょっと残念な子であった。
医者や両親が必死で静止をかけても、志摩子は季節を問わずどこからか銀杏を調達してはそれを果肉ごと食し、中毒になり、入院するを繰り返した。
シスコンが行き過ぎて近親相姦を秘かに狙っている特殊性癖を患う死舞子の兄も止めはしたが、幼少時より悪意に敏感であった死舞子が最初から兄の言葉に聞く耳を持たなかったのは言うまでもなかった。
このまま銀杏ばかりを食し続けては、いずれ死に至る―――それは誰の目にも明らかだった。
しかし銀杏は彼女の想いを裏切らなかった。
銀杏に対する代えがたき愛。
その身を中毒に侵されようと、銀杏を食し続けると言う覚悟は、まさに
誰あろう―――銀杏である。
死舞子は語る―――あの日、確かに私には銀杏に宿る妖精を見た、と。それは己に語り掛け、力を与えてくれたのだ、と。
銀杏によって汚染された肉体は限りなく銀杏に近いものとなっており、それによって銀杏は死舞子を主と認めてくれたのだ―――と。
イチョウの木を母胎とし、その養分を吸って実を成す銀杏のように。
銀杏に含まれる中毒性のある成分であるメトキシピリドキシンは、志摩子にとって無害となっていた……かに見えた。
「銀杏は、ひひ、裏切らない………裏切らないったら、裏切らないのぉ………」
校舎内に入った死舞子の表情を見て、誰が彼女を健常者と判断するだろうか―――どんな節穴の目でもヤク中と判断するだろう。
彼女が過剰摂取する銀杏は、明らかに死舞子の身体に有害な影響を与えていた。なにせ死舞子は現実としてラリッているのだから。
「んはっ、んっ、んんんんっ! んほっ、んほぉおおおん!」
とうとう叫び出す始末である。おもむろに銀杏袋に手を突っ込み、殻どころか果肉塗れのウ○コ臭のするそれをバリバリと齧り始めたではないか。
もはや銀杏の味どころかウ○コの味までしてきそうな錯覚を覚える悪臭だが、死舞子の表情は至上の楽園に到達した聖者の如き面持ちである。
脳内ではエンドルフィンが分泌され、その多幸感によって死舞子は何度も何度も絶頂を迎えていた。涎ダラダラ出っ放しである。どこから出ているかは語るだけ野暮であろう。
明らかに淑女がしてはいけない表情であり、こんな顔のまま街中を歩いたら職質まったなしである。美少女だろうと日本の警察は優秀なので差別しないのだ。恐らく性犯罪の被害者として保護される側ではあるが。
まあ実際のところ、銀杏の妖精なんてものは中毒で痙攣をおこした死舞子が見た幻覚である。言うまでもないことだ。妖精? ファンタジーやメルヘンじゃああるまいしそんな物がいるわけないのだ。
そして未だ銀杏を主食とする死舞子は銀杏の中毒に侵されており、意識がもうろうとした状態が常時続いているせいでまともな認識力を失っていた、と言うのがオチである。
死舞子は銀杏には妖精が宿っていると信じている。
それによって己は常人ならざる力を発揮しているのだと―――。
しかし、現実として死舞子の魔技は本物であった。天性たる咬合力を差っ引いてもヤバいレベルである。
以前、デビアン女学園へヤクザがカチコミを行った際に、銀杏袋を片手に最前線でそれを迎え撃ち皆殺しにしたのは誰あろう、この死舞子であった。
ヤクザの銃弾とか普通に銀杏で撃ち落とすし、ドスだろうとヤッパだろうと銀杏吹雪の貫通力の前には枯れ枝同然の強度でへし折れた。
はたして妖精はいないのか、それとも本当は実在するのか―――。
それは死舞子のメトキシピリドキシンに侵された脳だけが知っている。
祥子「なんでこんな二次小説書いた! 言え!」
祐巳「なんで私に言うんです! 知りません!」
由乃「あたし(取引に)行かなくちゃ」
祐巳「うるせえ!!」
続いたところでどうせみんないなくなる。