狂医者の死神奇譚   作:マスター冬雪(ぬんぬん)

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何となく前後編に分けます。


▼出来合いの悲喜劇 前編

ヒソカは生来の性分故か、仮宿を頻繁に変える。依頼の関係でというのもあるが殆どが気紛れだの飽きっぽいだのといった理由だ。その頻度は現在各大陸の町5ヶ所程に腐食犬(グール犬)が数体徘徊していると言えば察しが付くだろう。延々と引っ越しするなんて、何処の葛飾北斎なんだろうね。

 

「……」

 

今回の引っ越し先は北の方、人口の多い雪国。小生は寒いのが嫌いだから、首元のトランプのスートが描かれたマフラーを鼻上まで引き上げて八つ当たりを込めて斜め上を睨んだ。死体が腐らないのはいいけれど、それとこれとは別なんだ。

 

「寒いのかい?」

「小生の母国は温暖でね」

「オーラで調節すればいいのに♣️」

 

そう言うヒソカはいつもの奇術士スタイルではなく、カジュアルな好青年の姿だ。頬に涙と星のマークはなく、小生と色違いのマフラーが首に巻かれている。

 

「気分の問題だよヒソカ。……それよりも、今回小生は何処で暇を潰せばいい?」

 

肉塊鬼(ヴァンチミート)多顔屍食鬼(スライムグール)を作るのは飽きてきた所だ。次は骨のみで白骨鬼(スケルトン)だのを作ろうと頭に思い浮かべる。……その内生物災害でも起きそうだ。

 

「いや♦今回はキミにも手伝ってもらおうかなと思ってるんだ」

「……お前の依頼だろう」

 

こんな視界的にも物理的にも寒い中殺人以外で動きたくはない。

はあ、と両掌に息を吹き掛ける。

 

「急遽一人足りなくなってね♥」

 

簡単な仕事だ、人も殺せる、そろそろ高位の念使いとの戦闘をするべきだ、という風に言葉を重ねるヒソカに何やら予感を覚えつつ分かった分かったと了承した。

 

 

 

何処が簡単だ気違いピエロめと吐き捨てた。だが高揚している自分がいるのも事実だった。向かってくる黒ずくめのヒトガタの持つ得物と、医療用、かつ巨大な翦刀()を合わせながら思った。

 

 

 

遡る事数日前。ヒソカの紹介という体で同業者と顔合わせした。ヒソカのようなタイプは団体行動が苦手だと思っていたために意外だと思ったのは新しい記憶だ。

 

「揃ったようだな」

 

筋骨隆々としたアマチュアブラックリストハンターに見下されつつ漸く依頼人が現れる。この国の宰相だという白髪混じりのグレーの髪の、初老の男。神経質そうな顔立ちを更に引き締め、威厳を見せ付けている。中々の使い手だが隣に立つヒソカがゾクゾクしているのを感じて、嗚呼コレはヒソカの獲物かと興味を逸らした。

 

依頼内容は単純なる物でパーティに出る彼の護衛だった。宰相なる立場となると幾ら自身が強かろうが、護衛を一人も付けないのは駄目なのだとヒソカは笑って言った。飾りだけの護衛も肉壁に位はなるだろうと小生も笑った。オーラの扱えない生者としてではなく、念で造られた死者として。

 

 

 

"使える"者は優先的に宰相の車両付近に配置された。ヒソカは前方、小生は後方の車両と分かれる事になる。

 

「じゃ、また後で♠」

「……はしゃぎ過ぎて依頼を忘れないでおくれよ」

「分かってるって」

 

また何か企んでいるのだろう、嫌な笑みを張り付けて車両に乗り込む彼に小生も踵を返す。同車する人間が憐れだ、何せ昂った状態の彼の殺意を一身に受ける事になるのだから。

小生が乗り込んだ先には運転席に一人後部座席に二人乗っていたため助手席に座する。

 

「やあ、新人かい?」

「……ツレがどうしてもと言うものだからね。よろしくお願いするよ」

 

車内にいる人間は全員念使いだ。食えない笑みを浮かべた金髪の優男、野生染みた大男、黒づくめの3人らしい。全員強者だ。……ヒソカには劣るが。

 

「足手纏いになるんじゃねえぞ」

「ああ、勿論だ」

 

 

 

依頼は順調に進められている。といっても唯車に乗っていただけで、それから会場となる巨大な飛行船に移動しただけだが。先程車内で一緒になった者達とは1つの班になるらしくなるらしく、小生らは廊下で怪しい者がいないか突っ立っている。

船内は流石と言える。国の宰相が賓客として呼ばれるだけはあるのだろう。多少なりの粗末な知識しかない上ありきたりな言葉しか出てこないが、流石と言える。

 

「それにしても……唯のパーティで態態宰相が来賓で来る物なのかねぇ」

「知らねーのか小僧、今夜はお宝が出るんだぜぇ!」

「……ほう、宝、」

「ちょっと、それは言わないって暗黙の了解だろ」

 

金髪が大男に苦笑して言った。

 

「……ふん、脳筋……」

「あー?やんのかコラ」

「あーもー、二人が暴れると周りの物が全部壊れるじゃないか……」

 

黒づくめと大男は喧嘩腰にそう言うが、何処と無くじゃれあっているように見受けられた。

 

「三人は前々から知り合いなのか?」

「あー、まあね。仕事仲間かな?」

 

成る程、納得がいく。恐らく何時もの事なのだろう。

 

「というか、聞かないの?宝って何なのかーとか」

「生憎と興味が無くてね。愛玩動物でも愛でている方が好ましい」

「あははっ、可愛らしい趣味してるじゃん」

「ふふ、そうだろう?」

 

無論小生が愛玩するのは屍兵なのだが、知らぬが仏という話だ。

 

 

 

パーティが始まる頃になると大体の護衛も会場目立たない所で会場に入る事になる。

絢爛豪華と言っても過言ではない程の会場は、彼方此方にシャンデリアが下がり、会食型のテーブル一つまで美しい。楽しんでいる人間一人足りとも妥協している者はいない。

横から冷やかすような口笛の音がした。

 

「さっすがお偉いさんは違うなぁ」

「各国からパーティの名目で集まってるからねぇ」

「だけど全部宝目的よ」

「ふぅん……」

 

護衛の一部は皆会場に集められたらしい、遠目にヒソカが見える。特に隠しもしなかった為か、珍しくメイクなし・スーツ姿のヒソカはこちらに向けてにこりと笑った。例え表面上は爽やかでもオーラが昂っていれば変態は変態である。

 

「長らくお待たせ致しました!本日のメインイベントが始まります!」

 

途端に灯りが落とされ、壇上にいる男がマイクを手にして立っていた。

 

「ほら、彼がパーティの主催者のマルケティーニだよ」

 

司会の隣に立つ恰幅の良い高慢そうな男。

拍手喝采を受け満足そうに笑っているが、何処か底意地が汚いような顔付きだ。

 

「彼は世界有数の資産家でね、よくパーティを開いては自分のコレクションを自慢するのさ」

「コレクション?」

「そ。見栄を張って結構な額注ぎ込んでるらしいよ」

 

種類は様々、古代遺物や宝石、人体に至る迄蒐集しているという。

 

「人体ねぇ……」

「あれ、そういうの気になっちゃう系?」

「さあ、見てみなきゃあ分からないよ」

 

今後の参考になりそうで、ちょっと期待してるんだよね。

その時だった。

 

「さあそれでは最後になります、」

 

 

─────……バツン……ッ─────

 

 

一瞬にして、会場は闇に包まれたのは。




一体何旅団なんだー(棒)
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