森に潜みし神隠し
「やだ、もうこんな時間? 帰んなくちゃ~」
木々が生い茂る密林で、エミーは帰り道を急いでいた。
今日は訳あって、この密林で調査をしなければならなかった。
「...確かに、こんなトコには絶対に何かありそうよね」
つい昨日、新しく掘り出した碑に書かれてある文の解読が済んだばかりで、エミーはその碑文に記されていた場所の調査にあたっていた。
...しかし、手がかりなど全く無かった。
「とりあえず、報告しに帰らなきゃ... あれ? こんな場所、あったかしら...」
いつの間にか、エミーは、湧水が流れ出る泉と川があり、見たこともないような美しい花が咲いている場所に来ていた。
そこには木漏れ日がさしていて、まるでちょっとしたオアシスのようだった。
「きれい... でも、来たときには無かったし... 地図のミスかしらね?」
事前に大まかな地図を渡されていたが、どこにもこの場所の記載が無かった。
しばしの間、彼女は泉の美しさにみとれていた。
「あ...ダメダメ! 帰らないと、みんな心配してるわ」
泉の縁にあった岩に腰を下ろしていた彼女は立ち上がり、急ぎ足でその場を去ろうとした。
しかし、何かに足をとられ、転びかけてしまった。
「きゃ...な、何これ!? 動けないじゃない!」
彼女の足に、いつ生えてきたのか、蔓草が絡み付いていた。
草は太く、なかなか千切れない。
「しまった... 何か尖ったもの、持ってきたらよかったのに...」
彼女が悪戦苦闘しているうちに草は次々と生えてきて、彼女は身動きがとれなくなってしまった。
「うっ... は、発信機も点かないの? どうしよう...!」
彼女がパニックで半泣きになったとき、彼女の前に、一つの光が降りてきた。
手のひらに乗りそうなくらい、その光は小さかったが、静かな青色に輝いていた。
「きれい...」
光は音もなく、彼女のすぐ前に降りてきた。
「あ、あの... 帰れないんだけど、どうかして...」
『大丈夫よ、心配はしなくていいわ』
「えっ!? 喋った...っていうか、帰してくれるのね? よかった~...」
『もちろん、帰すわよ。 あなたには、帰ってもらわないと困るもの』
「じゃあ、早くこの草を...」
その時、彼女に巻き付いていた草が、急に締め付けを強めた。
「い、痛っ! ...何すんのよ!?」
『ちょうど良い子が来てくれて、助かったわ。 これなら、うまくいきそうね』
「ちょ、何を... いたたた、止めてってば!」
彼女はしばらく抵抗していたが、だんだん力が無くなってきた。
今や草に目を塞がれ、何も見えなくなっていた。
感じるのは音と、草の痛さだけになっていた。
「ソニック、みんな... アタシ、もう...」
彼女が意識を失いそうになる寸前、声が聞こえた。
『大丈夫よ、お友達の所には帰れるわ。 だけど、あなたには、[器]になってもらわないと』
声が終わらないうちに、彼女は、自分の中に別のものが染み込んでくるのを感じた。
それは優しくて、鋭いものだった。
その美しさに、彼女は何も考えられなくなった。
「ソニック... みんな...」
『じゃあ、これで完璧ね。 ちょっとの間だけ、[器]として、アレを預かっててちょうだいね... かわい子ちゃん』