SONIC  CRISIS KISMET   作:トラちゃん

11 / 16
叢雲、風、優しさ

森の少し開けた場所で、彼らはまた顔を合わせた。

 

テイルスが小走りに寄ってきて、後からシルバーがゆっくりと来た。

 

 

「あれ、他に誰かいなかったの? 一人だけ?」

 

「他のヤツは、誰かしら一緒にいるみたいだけど…お前一人だったのか?」

 

 

言われて、彼は少し俯いた。

 

 

「…居たよ。二人ぐらい」

 

「え? そうなの? どこいったの?」

 

 

その地面に何が隠されているのかを忘れたように、彼は答えた。

 

…いやに青い草が生える地面を、おもむろに眺めながら。

 

 

「居たんだけどな、はぐれたんだ。 何処にいるかは分からない。 だって、ここは『夢儚の森』だろ? …いつ『夢』に喰われてもおかしくないさ」

 

「ふ、ふーん…」

 

「それより、皆には会ったのか? 早いとこ探して合流しようぜ」

 

 

やや間があった。

 

 

「そ、それなんだけどね、三人居ないみたいなんだ」

 

「…三人?」

 

「うん。みんな女の子みたいだよ…誰かはよく分かんないけど」

 

 

二人はここで『居なくなった』。

 

だから彼らが誰かも分かる。が、あと一人は…

 

 

「…無事…だよな…?」

 

「え? あ、エミーのこと? うーん、探してみないとな…あのね、ボクたちと一緒に居たんだけど、一人で行くって言って離れたんだ」

 

「…離れた?」

 

「うん、一人で… だ、大丈夫だって! たぶん…」

 

 

足元が、再び色を変え始めたような気がした。

 

 

…見せてはいけない、この色は、まだ……

 

 

「…見ツケタゾ!ソニック!」

 

 

刹那、上空から見覚えのある者が降りてきた。

 

 

「うわ、メタル?! なんで今…ていうか、来てたんだ?!」

 

「巻キ込マレタンダ。ソレニ、俺ノ目的ハ最初カラ決マッテイル…」

 

 

モーターの起動音がした。

 

すぐに戦闘ができるように、最初から準備していたのだろう。

 

 

「貴様ヲ討ツ事ダ!ソニック!」

 

 

何発か弾が飛び出した。追尾型ミサイルのようだった。

 

軌道に狂いは無かった。

 

…確かに、無かったはずだった。

 

 

「…オマエなのか? …違うよな?」

 

 

弾が、空中で何の衝撃もなく砕けた。

 

火薬も積まれていたのに、爆発もしなかった。ただの塵と化したのだ。

 

 

「オレに負けず劣らず…なんだろ? じゃあ、違うよな?」

 

 

そこには、どんな高性能なレーダーをもってしても、絶対に掴めない『歪み』があった。

 

入ったものを一瞬で朽ちさせてしまうような、そんな『歪み』が…

 

 

「答えろよ。オマエじゃないって、証明してみせろよ」

 

 

朽ちたはずの弾が、今度は矢となって再び飛んだ。

 

…それも、メタルを確実に狙って。

 

 

「あ、危ないよメタル! 今は防御して! じゃないとここで____」

 

 

聞こえたのが一瞬遅かった。

 

というより、彼は最初から、助言など聞かないつもりだったのかも知れない。

 

 

「アイツ、何を…?! …テイルス、危ないからちょっと離れるぞ!」

 

 

辺り一帯が、光を遮られたように暗くなった。

 

周りの木々に付いている光の玉が、一斉に気味の悪い色に輝いた。

 

 

「無理か。 …じゃあせめて、ここで終わりにしてもらうよ」

 

 

メタルの周りだけに、黒く濃い霧が現れた。

 

それは、いつまでも相手の身体を蝕み続ける、『悪夢』だった。

 

誰の夢だったかは分からない。

 

 

だがそれは、今や彼の道具となっていた…

 

霧が濃さを増した。螺旋を巻いて暴れ狂う。

 

それから、彼はまるで…獲物を仕留めるような、そんな目をして笑った。

 

生気の欠片も無かった。

 

 

「…堕ちるんだ。 こコで『永遠の悪夢』ノ贄トナレ___」

 

 

 

 

「ちょ、ソニック?! どうしたの?!」

 

 

見る間もなく、メタルは霧に蝕まれて『消えた』。

 

消えたが、まだそこに留まっていそうな感覚はあった。

 

…助けが来ない限り、彼はいつまでも、蝕まれ続ける事になるのだろう。

 

 

「お、おーい! ソニックってばぁー?」

 

「テイルス! あまり刺激するんじゃない…見ろ、あれ」

 

「え?」

 

 

メタルのちょうど反対側に立っていた彼は、何かに憑かれたように、一点をじっと見つめていた。

 

…すると、彼は地面にいきなり倒れた。

 

 

「うわぁ?! た、助けないと!」

 

「あ、ああ… サオリの所にでも連れて行くか。手伝えよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆♢

 

火の粉がパチパチと舞う。

 

サオリは、ただならぬ気配を感じたのか、先に火を焚いて準備をしてくれていた。

 

…彼は今、火の側で再び眠っている。

 

 

「そっかあ、それは大変だったね…」

 

 

彼女はどこからか持ってきた果物を、二人に手渡した。

 

それは林檎のように赤いが、香りは杏子に似ていた。

 

 

「これね、みんなが取ってきてくれたんだ。ちょっとここで休んでから、今は多分各々の道を進んでるよ」

 

「…す、すっぱ…」

 

 

気分次第で甘くも酸っぱくもなるのだろう。

 

今は、涙が出そうなぐらい、酸っぱく感じた。

 

 

「あ、あのね、サオリ…。大丈夫なのかな。なんか、…怖かったよ」

 

「そんなに震えないでって… 大丈夫。よしよし」

 

 

サオリには分かっていた。

 

彼から感じる瘴気は、並のものではないと。

 

瘴気は瘴気を呼ぶ。

 

…この先、何が起こってもおかしくはないだろう。

 

 

 

「…あら、サオリちゃん?」

 

 

知らない声がした方を見ると、そこには一人の女の子が立っていた。

 

頭にはピンクの帽子を被り、雲があしらわれた服を着た彼女は、どうやらこの世界の者のようだった。

 

 

「あ、彩夢(さいむ)ちゃん! …ごめんね、私の監督不足だったかも」

 

「分かってるわよ。…この分じゃ、『試練』はナシだわ。今が『試練』みたいなものだもん」

 

 

そう言うと彼女は、二人に向き直った。

 

 

「私は彩夢。この『二之界』での試練担当よ。…え?格好が変? ああ、私は『獏』なのよ、こう見えても」

 

「知ってるぜ。悪夢を食べてくれるっていう…」

 

「あら、それは迷信よ。 私らは元々中国の生まれなんだけど、そんな設定は日本に伝わってから付けられたのよ」

 

「そうなの?!」

 

「まあでも、貴方らの夢なんかすぐに変えられちゃうからね。こう見えても結構年取ってるのよ」

 

 

彩夢は、火の側で寝ている彼に近づいた。

 

 

「こりゃ、まあ… 無理なはずね」

 

 

そう言うと彼女は、軽く空を切った。

 

…すると、彼の身体から、何かただならぬ瘴気が抜けていった。

 

周りが再び晴れた後も、心なしか…瘴気は少しだけ残っているような気がした。

 

 

「う、うーん…」

 

「だ、大丈夫?! よかったぁ、怖かったよ…」

 

「…何してたんだっけ、オレ」

 

「は?」

 

 

彼の朝の露のように澄んだ目で見られると、さっきまでの事など話す気も失せてしまった。

 

 

「それは…まぁその」

 

「何も無かったのか? じゃあ、いいか」

 

「そ、そういう事にしておくかな」

 

 

彼は立ち上がって、伸びをした。

 

 

「なんかいい夢を見たような気がするんだ。 久しぶりに… …きっと大丈夫だよな、これから」

 

 

何と答えたらよいか、そもそもその答えが存在するのかどうかすら分からない彼らには、目の前の存在をただ認めるしかなかった。

 

 

「…サオリ。知ってるみたいだけど、分かってる?」

 

「…分かってる。何をしたらいいのかも、全部分かってる……全部はできないかもしれないけど」

 

「うん…頑張ってね。私はここから見てるから」

 

「…ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

「…なんで」

 

「どうかなされましたか?」

 

 

役目を終えたワイズ達は、彼らをこっそり見守っていた。

 

 

「…違う。あんなの、いらなかった」

 

「瘴気の魔物、ですか。 しかし、あそこは『夢儚の森』ゆえ、何が出るかは…」

 

「ダメなの。絶対に触れちゃダメ。綺麗なままでいてもらわないと、ダメなんだ…!」

 

「お、落ち着いてくださいよ!僕らにもできることは限られてるんです」

 

「でも…!」

 

 

ちょうどその時、CAINの事を思い出した。

 

 

「…あのロボット」

 

「ええと、乱入者ですか? 名は…」

 

「いいんだ、名前なんか。どうせ鉄の塊なんだ。すぐ…」

 

 

 

「…潰してあげるから。ソニックには触れさせないよ…」

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。