地に堕ちた天使
この世にある全ての色をした葉を漲らせ、微かに吹雪を散らせているその樹は、確かに「終わり」を予感させた。
どこから声がするのかは分からない。
そもそも、声など聞こえているのかも分からない。
幻想の中に、その樹は確かに存在していた。
樹は、静かに語り出した。
『実を言いますと、この試練に克ってここまで来れたのは、あなたが初めてなのです。他の者は耐えきれず、自らここを去ることを決めて離脱しました。多くは民衆の支持を得て、あなた方のように、立派な力を持っている者は少なく、大抵は一之界で倒れました』
「じゃあ、この世界は…もう何回も創り直されてるって事か…」
『軽く3回は直されています。どれも、今の世界に良く似た世界でした… 私は一から歴史を消して、また創りあげます。よって、私以外の誰にもあの世界の記憶は残っていませんが、滅んだのも、ちょうど今頃だったような気がします』
穏やかな風が吹き続ける。
『聞いたかも知れませんが、私が世界を創り直すのは、世界に異変が生じたからです。…今回の異変を、あなたはまだご存知ないでしょう』
「…そういや、聞いてなかった」
『私は、本来ならば、これからあなたにまた試練を課すつもりでした…』
「…え?」
風が渦に変わり、樹を中心にして激しく巻き起こった。
『今回は特別…いや、異常なのです。お仲間をお返しいたしましょう』
「…?!」
渦が一瞬にして消え去った。
…そこには、仲間が一人残らず、全員返ってきていた。
「うわぁん…会いたかったよぉ!」
「エミー!」
彼らは一度吸収されて、本当なら会っている筈だが、誰もが久しぶりに会ったように、再会を喜んでいた。
…だが、ただ一人、エステルが気まずそうにしていた。
「…あの、ありがとう。とりあえず、最後までいてくれて」
「終わった事だ。もう言わないさ」
「違うの。…今だから言うわ。みんな、聞いて」
言うなり、エステルの背中に六つの羽が現れた。
天使と言いたいところだが、彼女にはそんな神々しさは無かった。
「…私はね、巫女なんかって言っちゃったけど、本当は堕天使なの。それも、自ら望んで堕天した… 昔は大天使なんかって呼ばれてたわ。かなり昔にね」
「堕天…? 何のために?」
「…あなたの為よ。本当はね… 澪浄!私よ。
『あなたは… 堕天使様ですね。分かりました… これも私の務めです。今こそ、この世界の
また渦が巻き起こった。