「まったく...遅いなぁ、エミーってばぁ」
「そう焦るなって... まあ、確かに遅いけどな」
昼前に調査に行ったきり、夕方になっても帰ってこないエミーを心配し、ソニック達は外に出て、彼女の帰りを待っていた。
調査に向かった先は密林で、夜になるとまず明かりも無いので、迷子になる心配もあった。
「それにしてもさぁ、何なんだろうね、あの碑文」
「ああ、書いてあることの意味がさっぱり分かんないぜ...」
「うん、それもそうなんだけど、何で今更、新しい碑が出てくるのかな?」
「い、言われてみれば確かに... あの辺りの調査は、ナックルズがかなり前に『全部済ませた』って言ってたしなぁ」
「不思議だなぁ...」
彼らが思考を巡らせていたその時、不意に物音がした。
「!? エミーか!?」
「やっと帰ってきたなぁ... もう8時前だよ...って、あれ?」
エミーは、見たことの無い誰かに支えられて、帰ってきた。
すぐにテイルスが明かりを点け、駆け寄った。
光に照らされて浮かび上がったのは、ぐったりしているエミーと、見慣れない格好をした、少女だった。
「あ、あの... ありがとう。 エミーを助けてくれて」
少女は、エミーを静かにテイルスに引き渡すと、微笑んで頷いた。
「いえいえ... 私が森の中を歩いていたら、ちょうどこの子が道端に倒れていたの。 それで、多少意識はあったから話を聞いて、ここに運んで差しあげたのよ」
「ラッキーだったな、助けてもらえて。 ...ところで、オマエは? 見慣れないけど」
「私の名は、エステル・フォレスよ。 あの森に住んでいるの。 今は巫女をしているわ」
「巫女かぁ。 確かにそれっぽいね」
エステルと名乗ったその少女は、頭に漆黒のリボンが付いたカチューシャのようなものをつけていたし、若干のレースがあしらわれたワンピースには、同じく漆黒の上着を羽織っていた。
彼女の体色は、薄いピンクだったが、纏っている衣服のせいで、どこか異世界を思わせた。
「...で、何に仕えてるんだ? 巫女なんだよな?」
「仕える...というよりむしろ、私はみんなの手助けをしているのよ」
「え? 手助け?」
彼女は、淡い朱色の目で、少し微笑んだ。
「私は、ここにある自然の力を借りたり、声を聞いたりする仕事をしているの。 例えば...そうね、星々の声を聞いて、日々の天気を予知したりだとか、草花の力を借りて、ゆっくりではあるけれど...荒れ地を生き返らせたりしているのよ」
「わあ、凄い力だね! 素敵だなぁ」
「ありがとうね。 あ、そうそう... あなた達、碑文の調査をしているのよね? エミーちゃんから聞いたわ」
「そうだ。 ...でも、さっぱり意味が分からなくて困ってたんだよ」
「そうなの... では、私もお手伝いするわよ」
「え!? いいの!?」
言い終わるや否や、テイルスは碑文を写した紙を取り出した。
「じゃあ、頼もうかな... これ、文字は読めるんだ。 でも、意味がさっぱり...」
エステルは、紙を受け取って、文を読み上げ始めた。
「『彼の穹の涯より、黎黒たる魔魅、桜花綻びし時の世に、此の幽遠なる地に降りること然り。
彼の者、何れ此の地を廃し、何の命をも、冥途へ遣わす。
此の世を服させてはならぬ。 次の世に住まいし御霊に託す。
玉響に駆け、阻む壁を総て穿ち、心を以て神剣と成せ。
願わくば、此の世に夢絶えんことを』 ...あら、なかなか手強い碑文じゃないの」
「そう...なんだよ、全然分かんないんだ」
彼女は顔をあげ、彼らににっこりと微笑んでみせた。
「偶然ね。 ...私が受けた命と、あなた達への試練が全く同じなんて。 協力するわ。 この私、エステルがいれば、きっとあなた達のお役に立てるわよ」
「そうなの!? ありがとう! じゃあよろしくね、ボクはテイルスだよ!」
「存じてるわ。 あなたは...ソニックね。 噂には聞いてたけど、『英雄』を形にしたみたいね、本当に」
「ま、そこらの奴じゃないってトコかな。 ...よろしくな」
「ええ、こちらこそ。 では、夜が明けたらまた、お訪ねするわ。 おやすみなさい」
エステルは、ソニック達が別れの挨拶をする前に、夜の一部となって消えた。
「あ、消えちゃったよ... 素敵だよね、自然と共に生きるなんて」
「...そ、そうだな... じゃ、まずはエミーの看病をしなくちゃな」
「そうだね。 ボクらも休んどかないと、明日何があるか分からないね」
「よし、帰るか」
テイルスのラボの前に着いて、ソニックは後ろを振り返った。
密林が、遠くから彼らを見つめているようで、そら恐ろしかった。
...行く先に不吉なものを感じたのは、やはり彼だけだった。
「うむ、出来はなかなかじゃのお。 よく動いとるわい」
「エッグマン様、また新しいメカを作ったんですか?」
「そうじゃ。 すでにメタルがいるとはいえ、もう一体つくれば、更にやりやすくなるからのぉ」
「でも、なんかリアルすぎて怖いなぁ...」
「確かに、ほぼソニックに近い感じが...」
「まあ、電子頭脳も、ほぼメタルと同等じゃし、見た目もだいぶ自然に近くしてあるぞ」
「うん... で、名前は何ていうの、パパ?」
「『パパ』呼ばわりするのはやめんかい... 実はな、まだ決まっとらん。 メタルと少し共に行動させて性能を確かめてから、つけるつもりじゃ」
「へえ... 楽しみですね」
「何でもよくないか? ...じゃあ、『キューボット弍式』なんてどうよ?」
「誰もお前に近く作っとらんわ!」
「センス無いなぁ... ここは、『オーボット2』でしょ」
「同じ事を言わせるな! まあいい、これからが楽しみで仕方ないわい」
「ボスがこう言う時って、大抵厄介なことになるんだよなぁ...」
「ん? 何か聞こえたような気がするが... お前たちは仕事に戻れ」
「ほら、またお前のせいで...」
「つべこべ言わんと戻れ! 改造するぞ!!」
「はーい...」