SONIC  CRISIS KISMET   作:トラちゃん

2 / 16
花と蔓と夜

「まったく...遅いなぁ、エミーってばぁ」

 

「そう焦るなって... まあ、確かに遅いけどな」

 

 

昼前に調査に行ったきり、夕方になっても帰ってこないエミーを心配し、ソニック達は外に出て、彼女の帰りを待っていた。

 

調査に向かった先は密林で、夜になるとまず明かりも無いので、迷子になる心配もあった。

 

 

「それにしてもさぁ、何なんだろうね、あの碑文」

 

「ああ、書いてあることの意味がさっぱり分かんないぜ...」

 

「うん、それもそうなんだけど、何で今更、新しい碑が出てくるのかな?」

 

「い、言われてみれば確かに... あの辺りの調査は、ナックルズがかなり前に『全部済ませた』って言ってたしなぁ」

 

「不思議だなぁ...」

 

 

彼らが思考を巡らせていたその時、不意に物音がした。

 

 

「!? エミーか!?」

 

「やっと帰ってきたなぁ... もう8時前だよ...って、あれ?」

 

 

エミーは、見たことの無い誰かに支えられて、帰ってきた。

 

すぐにテイルスが明かりを点け、駆け寄った。

 

光に照らされて浮かび上がったのは、ぐったりしているエミーと、見慣れない格好をした、少女だった。

 

 

「あ、あの... ありがとう。 エミーを助けてくれて」

 

 

少女は、エミーを静かにテイルスに引き渡すと、微笑んで頷いた。

 

 

「いえいえ... 私が森の中を歩いていたら、ちょうどこの子が道端に倒れていたの。 それで、多少意識はあったから話を聞いて、ここに運んで差しあげたのよ」

 

「ラッキーだったな、助けてもらえて。 ...ところで、オマエは? 見慣れないけど」

 

「私の名は、エステル・フォレスよ。 あの森に住んでいるの。 今は巫女をしているわ」

 

「巫女かぁ。 確かにそれっぽいね」

 

 

エステルと名乗ったその少女は、頭に漆黒のリボンが付いたカチューシャのようなものをつけていたし、若干のレースがあしらわれたワンピースには、同じく漆黒の上着を羽織っていた。

 

彼女の体色は、薄いピンクだったが、纏っている衣服のせいで、どこか異世界を思わせた。

 

 

「...で、何に仕えてるんだ? 巫女なんだよな?」

 

「仕える...というよりむしろ、私はみんなの手助けをしているのよ」

 

「え? 手助け?」

 

 

彼女は、淡い朱色の目で、少し微笑んだ。

 

 

「私は、ここにある自然の力を借りたり、声を聞いたりする仕事をしているの。 例えば...そうね、星々の声を聞いて、日々の天気を予知したりだとか、草花の力を借りて、ゆっくりではあるけれど...荒れ地を生き返らせたりしているのよ」

 

「わあ、凄い力だね! 素敵だなぁ」

 

「ありがとうね。 あ、そうそう... あなた達、碑文の調査をしているのよね? エミーちゃんから聞いたわ」

 

「そうだ。 ...でも、さっぱり意味が分からなくて困ってたんだよ」

 

「そうなの... では、私もお手伝いするわよ」

 

「え!? いいの!?」

 

 

言い終わるや否や、テイルスは碑文を写した紙を取り出した。

 

 

「じゃあ、頼もうかな... これ、文字は読めるんだ。 でも、意味がさっぱり...」

 

 

エステルは、紙を受け取って、文を読み上げ始めた。

 

 

「『彼の穹の涯より、黎黒たる魔魅、桜花綻びし時の世に、此の幽遠なる地に降りること然り。

彼の者、何れ此の地を廃し、何の命をも、冥途へ遣わす。

此の世を服させてはならぬ。 次の世に住まいし御霊に託す。

玉響に駆け、阻む壁を総て穿ち、心を以て神剣と成せ。

願わくば、此の世に夢絶えんことを』 ...あら、なかなか手強い碑文じゃないの」

 

「そう...なんだよ、全然分かんないんだ」

 

 

彼女は顔をあげ、彼らににっこりと微笑んでみせた。

 

 

「偶然ね。 ...私が受けた命と、あなた達への試練が全く同じなんて。 協力するわ。 この私、エステルがいれば、きっとあなた達のお役に立てるわよ」

 

「そうなの!? ありがとう! じゃあよろしくね、ボクはテイルスだよ!」

 

「存じてるわ。 あなたは...ソニックね。 噂には聞いてたけど、『英雄』を形にしたみたいね、本当に」

 

「ま、そこらの奴じゃないってトコかな。 ...よろしくな」

 

「ええ、こちらこそ。 では、夜が明けたらまた、お訪ねするわ。 おやすみなさい」

 

 

エステルは、ソニック達が別れの挨拶をする前に、夜の一部となって消えた。

 

 

「あ、消えちゃったよ... 素敵だよね、自然と共に生きるなんて」

 

「...そ、そうだな... じゃ、まずはエミーの看病をしなくちゃな」

 

「そうだね。 ボクらも休んどかないと、明日何があるか分からないね」

 

「よし、帰るか」

 

 

 

 

 

 

テイルスのラボの前に着いて、ソニックは後ろを振り返った。

 

密林が、遠くから彼らを見つめているようで、そら恐ろしかった。

 

 

 

...行く先に不吉なものを感じたのは、やはり彼だけだった。

 

 




「うむ、出来はなかなかじゃのお。 よく動いとるわい」

「エッグマン様、また新しいメカを作ったんですか?」

「そうじゃ。 すでにメタルがいるとはいえ、もう一体つくれば、更にやりやすくなるからのぉ」

「でも、なんかリアルすぎて怖いなぁ...」

「確かに、ほぼソニックに近い感じが...」

「まあ、電子頭脳も、ほぼメタルと同等じゃし、見た目もだいぶ自然に近くしてあるぞ」

「うん... で、名前は何ていうの、パパ?」

「『パパ』呼ばわりするのはやめんかい... 実はな、まだ決まっとらん。 メタルと少し共に行動させて性能を確かめてから、つけるつもりじゃ」

「へえ... 楽しみですね」

「何でもよくないか? ...じゃあ、『キューボット弍式』なんてどうよ?」

「誰もお前に近く作っとらんわ!」

「センス無いなぁ... ここは、『オーボット2』でしょ」

「同じ事を言わせるな! まあいい、これからが楽しみで仕方ないわい」

「ボスがこう言う時って、大抵厄介なことになるんだよなぁ...」

「ん? 何か聞こえたような気がするが... お前たちは仕事に戻れ」

「ほら、またお前のせいで...」

「つべこべ言わんと戻れ! 改造するぞ!!」

「はーい...」


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。