皆が集まったところで、エステルが語り始めた。
「みなさん、お集まりいただいて、本当にありがとう。 急に呼んでしまってごめんなさいね... でも、本当に大事な事をお伝えしないといけないの」
「エステルは、あの碑文を解読してくれたんだ。 ...で、何が起こってるの?」
「ええ... 実はね、このままでは... この世界が無くなってしまうかもしれないの」
「は!? どういう...」
エステルは軽くため息をついて、ややうつむき加減になった。
「何からお話しすればいいのか... いいわ、最初から全てお話ししましょう」
彼女はそう言うと、どこからか円くて大きい鏡を取り出した。
「いい? しっかりご覧になってね。 いくわよ」
彼女が鏡の前に手をかざすと、鏡に何やら樹のようなものが映し出された。
それは桜のようにも、また桃のようにも見える、不思議な大樹だった。
花全体が虹色に輝き、花吹雪が舞って、まるでこの世のものではないように、その樹は在った。
「綺麗だな... 何だ、これ?」
「これはね、色々な呼び名があるけれど... 私のような特別な者は、これを、
「み、みお... 難しいな... で、それと、さっきの問題とどこが関係あるんだよ?」
「この樹は、世界に何らかの大危機が訪れたときに、この世の全てを吸収し、自らの内にそれを凝縮して、また世界を一から作り直す力を持っているの。 言い換えれば、『造物神』ね」
「と、いうことは...」
「そう。 今の私たちは、全て消えてしまうことになるわね」
「えぇ!? そんな... っていうか、その大危機って、何?」
「それだけは、いくら調べても分からないの。 きっと、私たちの知らないところで、何か起こってるんでしょうね。 ...人智の及ばないところで」
「な、何とかしてその樹を止められないの?」
「ええ、できるわ。 止められるわよ... でも、私だけでは、とても無理なの」
「何をしたらいいの?」
エステルは鏡をしまい、小さな宝石のようなものを取り出した。
「これは、澪浄大華神に携わる者にしか渡されない、いわば『切符』よ。 あの樹を止めるためには...そうね、試練を受けないといけないの。 『
「ほう、要はアイテムを集めりゃいいって事だな?」
「あ...まあ、そうね... 一筋縄ではいかないと思うけど...」
エステルは立ち上がって、頭を下げた。
「お願いします... あなた達に来てもらいたいの。 私みたいな巫女だけでは、とても無理だわ... お願い、私と一緒に来てください」
「...当然だろ? 行くに決まってるじゃないか」
「みなさん...!」
「ま、俺らじゃないとできなさそうなミッションだしな」
「ちょっと~、調子乗らないでよ、ナックルズぅ」
「アタシは... まあ、道中でお宝が手に入るなら、いいかしら... ね、シャドウ、あんたも行くんでしょ?」
「...仕方ない。 僕も行こう」
「エミーは、じきに良くなるから、当然行きたがるだろうな」
「っていうわけで...エステル、ついていくよ」
エステルは、目に涙をためて、再び頭を下げた。
「ありがとうございます... 嬉しいわ。 ...では、行くのは早い方がいいわね。 彼女の具合が良くなってから、すぐに発つとしましょう」
「そうか。 何か、オレに手伝えることはないか?」
「では... 薬草を採ってきてくれないかしら? 特徴は、私が紙に記してあるの」
「分かった。 じゃ、すぐに帰ってくるぜ」
「薬草...ねぇ。 これか?」
ソニックは、森に入って、お目当ての薬草を一つだけ見つけた。
その薬草は、形はアヤメに似ているが、ヨモギのような香りがほのかにしていた。
「よし。 じゃ、早いとこ帰ろうか」
彼は走り出そうとしたが、何かに足を取られた。
見ると、さっきまで何も生えず、ただの土しかなかった地面に、いつの間にか蔓が犇めいていた。
「...!? し、しまった、動けない...!」
すると、蔓に毒々しい色の花がいくつも咲いて、ぞっとするような匂いを発した。
「...っ、い、息が...!」
刹那、花が蔓全体に広がり、彼は気を失った...。
◇◇◇
気がつくと、彼は、暗い色を湛えた川の真ん前にいた。
周りは霧に包まれ、空は曇っている。
「ど、どこだ...、ここは...?」
「お? あれ、君... もしかして...」
後ろから声がしたので、彼は後ろを向いた。
そこには、白い長めの上着を羽織り、プリーツと、レースの入った青色のスカートを穿いた、背の高い、凛とした青い目の少女がいた。
彼女の上着には、青の
「う、うわぁぁぁぁ! 鎌ぁ!?」
「ちょっと、驚かないでって... 別に、私は君を殺そうなんて考えてないよ。 それより、君、もしかして...ここがどこか、分かってないの?」
「わ、分かんないぜ... 気がついたらいて...」
「やっぱりね。 ...ここは、三途の川。 そして私は、死神」
「えぇぇ!? じゃあ、オレ...死んでるのか?」
「うーん、正確には...まだ死んでない。 一応、この川の向こう岸に行かないと、本当の死者とはいえないんだ」
「訳が分からない... なんで、いきなり...?」
彼女は微笑むと、彼の手をとった。
「...私は、とあるお方に、君を帰すように言われてる。 だから安心して。 君にはまだやることがたくさんある。 でもね、命あるものは、何を考えているのか分からないけど、命を超えたものを持つものは、更に何を考えているのか分からない。 これだけ、覚えておいて」
「...あ、ああ... そういや、助けてくれてありがとな。 オレの名はソニック。 オマエは?」
「私は、サオリだよ。 あのお方に、君に助言できるように、いつでも会えるようにしてって言われたんだ。 だから、これからよろしくね」
「ん? いつでも会える、って...」
そこまで聞くと、サオリは鎌を振り上げた。
「そう、君に憑依するって事かな。 ...じゃ、あんまり時間をムダにしちゃダメだし、早いとこやっちゃおうっと... ちょっとの間の辛抱だから、そこで動いちゃダメだよ~」
「んぁ!? な、何するんだ!? まさか、その鎌でオレを...」
「仕方ないじゃん! 殺さないように、生き物に憑依するってことが、どんだけ難しいと思ってんの!? 今は殺しやしないって、『半殺し』にするだけだからぁ」
「いやいや、でも痛いって...絶対! なあ、止めようぜ!」
「もう、じれったいなぁ... いくよ、『
途端に鋭すぎる痛みを感じ、彼は本日二回目の、気絶を体験した。