作品の方に移る前に、この物語の主人公、時雨久々理(しぐれ くくり)についての設定などを書き留めておきます。
時雨久々理
種族:猫又(橙と同じ種族…だっけ?)
年齢:78歳
性別:男
能力:切り開く程度の能力
閉ざす程度の能力
このような感じでございます。
容姿などの設定も欲しいと言う方がいらっしゃったら、是非申し付けください。
次回の前書きに書き足しておきます。
大変長らくお待たせいたしました。
是非是非、お楽しみいただけたらと思います。
どうぞ。
東の博麗神社の方角からまばゆい朝日が昇り、幻想郷中を照らしていく。
ここは、皆さまご存じの幻想郷。外の世界で忘れ去られた者たちが住まう楽園。
そこの住民は多種多様。妖怪、悪魔、仙人、神様、吸血鬼、式神…まぁ色々である。
ここでは、人間、人外も皆豊かに暮らしている、わけではない。
例え楽園でも、貧困の差はあるのだ。これは外の世界となんら変わらないことだ。
さて、話の方に戻りましょうか。
段々高く昇りゆく太陽。人里の住民たちもゆっくりと起き始める時間だ。
その人里から少し離れた森の中にある洞穴に、この話の主人公、時雨久々理が住んでいる。
洞穴の中に住んでいるのだから、貧しいのは見て取れる。
ぼろがきた灰色の着物と袴をいつも着て、細い目を軽くこすりながら、久々理は住処の洞穴から顔を出す。
「…くぁあ…、眠いな…もう少し寝ていようか…」
そう呟き、寝床の方へ踵を返すが、ふと食料が昨日の夜に底を尽きたことをひょっと思い出した。
「ああ、そうか。もう食料が切れていたか…仕方ない、少ししたら人里におこぼれをもらいに預かろうか…」
洞穴から出てきた久々理。
眉間には皺が少し寄っている。これはいつも目を細めているから、と本人は話している。
近場の川辺で軽く顔を洗い、顔を横に振り水気を払う。
と同時に、猫のような耳が頭の上から二つ、ひょこっと顔を出す。
「ぬ…隠しているのに…」
そう呟き、久々理は自分の耳を撫でつけ、髪の毛になじませた。
久々理は猫又。だが、自分の耳と尻尾を邪魔としか思っていないようだ。
ちなみに、彼の尻尾と耳は漆黒、と言っていいほど真っ黒である。
支度を済ませ、ゆっくりと里へと続く道を進む久々理。
人里の入り口に付くと同時に、体を猫に変え、ひょこひょこと人里へと入っていく。
人里はいつも通りにぎやかで、あちらこちらで呼び込みの声が上がっている。
久々理は、一切の迷いもなくある雑貨屋へと歩いていく。
その店は、老婆が経営している古臭い店だ。
好都合なことに、この老婆は大の猫好きで、野良猫だろうが何だろうが、見たらたっぷり餌をくれるおばあさんなのだった。
久々理は店の前にすっと座り、一声ニャァ、と鳴いた。
と、すぐに老婆が奥の方からとことこと歩いてくる。
「おやおやぁ…また来てくれたのかい?かわいい子だぁねぇ」
そう猫撫で声で呟きながら老婆は、そのしわがれた手で久々理を撫でる。
老婆の機嫌を取るため、わざとらしく喉を鳴らせて見せる久々理。
わざとらしく、と書いたが久々理はこの老婆の事をとても気に入っていた。
いつも世話を焼いてくれるし、野良猫にここまで優しくしてくれる人間はこの人里にも滅多に居ないのである。
「少し待ってなさいな…餌をとってくるからねぇ…」
そう言い、少しおぼつかない足取りで奥へと戻っていく老婆。
久々理はそれを見届けた後、表通りを眺めることにした。
きょろきょろしていると、雑貨屋の霧雨のおじさんを見かけた。
何か、蕎麦屋のおじさんと話している。
できそこない、勘当と言った単語がうっすら聞こえてきた。
恐らく、少し前に霧雨家を勘当になった少女の事だろう。
確か、魔理沙とか言っただろうか…?
物思いにふけっていると、また面白い人物を見かけた。
博麗神社の巫女ではないか。
どうやら、買い物中のようだ。
幾度か、この巫女さんを見たことはあるが、いつも仏頂面で、もう少し女の子らしくすればと何度も思ったことがある。
気付けば、もう30分も過ぎているではないか。
何かがおかしいと、妖怪の勘が唸る。
猫の姿のまま、店の奥の方へ歩いていく。
そこには、床に倒れ、既に事切れた老婆がいた。
「っ!?おい!」
すぐに人型に戻り、老婆の体を揺する。
だが、体は冷たく、息の一つもない。
「っ、誰か!誰か!」
久々理は大急ぎで、表通りに走り、大声で助けを求める。
「この雑貨屋の婆さんが倒れた!誰か、医者を!」
だが、その声は一人の女性の声でかき消された。
「い、いやぁああ!妖怪が、そこのおばあさんを、おばあさんを殺した!」
その言葉で、久々理はやっと気付く。
隠していた、耳と尻尾がすべて出てしまっていることを。
(不味い!これは…やられる…!)
人里の人間を襲うのは妖怪の中でもタブー。
それを犯すと、死よりもきつい罰が、博麗の巫女から落とされる。
「…ふーん、そう。あんたがやったのね」
そう、ここには居るのだ。本物の博麗の巫女が。
「い、いや!違う!俺じゃ、な」
その声は、腕に走る痛みによってかき消された。
痛みに目を細め、腕を見やると、五寸ほどもある封魔針が深々と突き刺さっている。
「ぐうぅ……ま、待て…話を聞いてくれ…博麗の巫女…」
「っは、人殺しに聞く耳を持てと言うのかしら。とんだ茶番ねぇ」
相も変わらぬ仏頂面のまま、博麗の巫女は封印札を、左手から何枚も放つ。
動きを制限された久々理は、その札をもろに全身にくまなく当てられてしまう。
「グハッ…!?」
痛さに体を苦の字に曲げる久々理。
「痛いわよねぇ、そう。もう痛くないようにしてあげるわ。」
博麗の巫女は、何かの印を結び始める。
ただならぬ、霊気が彼女の手に集まっていく。
近付く死。逃れられない。
その言葉が脳裏に浮かんだ瞬間、久々理の脳裏にフラッシュバックしてくる映像。
血まみれの服に、目の前には家族の死体。目の前には仇。
久々理は目を見開き、指で人里の出口を指さす。
と同時に、久々理の体は消えた。
「!?瞬間移動!?まさか!」
博麗の巫女も流石に動揺を隠せ切れない。
その混乱の中、久々理はひっそりと住処へ戻っていった。
無実の罪をその背中に背負ったまま…。
はい、終りました。
長らく(?)見てくださり、ありがとうございました。
何か、指摘してくれる点などがありましたら、是非、感想に書き込んでいってください。
それでは、次回のお話でお会いしましょう。
どんぱらり。