余りにも弟子が見つからない魔法使い殿は、自分の求める才能がある人物をさがすために、魔導書を異世界に送り込んだようです。


サモンナイトに興味を持ってもらおうシリーズ
サモンナイトに興味を持ってくれたらうれしいです

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サモンナイトを題材に、こんなんだったら面白いなぁ、もっと、サモンナイトに興味を持ってほしいなぁ、誰か書いてほしいなぁ、という目的で小説を書いていく
サモンナイトに興味を持ってもらおうシリーズ
第一弾です。ゼルレッチさんは自分なりのイメージで書いているので違和感があるかもしれませんが、気にしないよという人だけ下へスクロールお願いします。

1/29 誤字脱字を修正しました。


ゼルレッチは弟子探しのために、魔導書をばらまいたようです

リィンバウムで一般的に広まっている異能の力は【召喚術】と呼ばれている。

召喚術とは媒体となる【サモナイト石】を使い、異世界からその世界の住人や物品を召喚する力である。呼び出された住人たちは、召喚した術師の命令・懇願によって魔力を対価に、各々が保持する力を振るう。その力は呼び出される世界や住人によって千差万別である。

一方、呼び出された物品のほうはどうであろうか?

基本、呼び出された物品に関しては元の世界に返されることはない。有体に言えば、世界をまたいでの強盗である。もちろん、呼び出されるのがオリジナルではなく、全く同一の形、性能をもった模造品である可能性もある。

しかし、その場合は【召喚術】という過程で複製をしているということでもある。それも、呼び出されたもののオリジナルと同一の。そっちのほうが、いろいろな面でぶっ飛んでいると思われる。

閑話休題

 

リィンバウムでは召喚術を使うことだけなら、誰でも使用することができる。しかし、【サモナイト石】に誓約するには、召喚術師ではなくてはならない。

ここ、【蒼の派閥】はそんな術師たちが日夜、召喚術の発展のために研究している場所だ。しかし、研究がすべて成功するとはかぎらない。

ましてや、【召喚術】において初めての組み合わせの誓約では何が出てくるか事前に知ることはできない。

結果、よくわからないものが召喚される、ということは日常茶飯事である。呼び出されたもののうち、危険性がなく、金目のものはそのまま売られる。魔力が感じられるものは研究対象とされ、大切に、かつ、慎重に保管される。

しかし、そのどちらでもないものは、どうなるだろうか?

「うぅ~~~~……!おもいぃぃぃぃ……!!」

答えは、『一つの部屋にまとめて放り込まれる』である。この日、彼女――トリスは、一人で秩序なく放りこまれた物品たちの整理・記録をするように言いつけられていた。

「もぅっ!こんなの、やってらんない!だいたい、一人でこの量がおわるはずないじゃない!」

仕事を初めて既に、一時間が経っているがその作業は十分の一も終わってない。これは、彼女の作業が遅いのではなく、放り込まれた物品の数が多いのと、あまりにも品物の種類が無秩序であるからだ。

「ネスも少しぐらい手伝ってくれてもいいのに……」

トリスは口をとがらせて厳しい態度をとる兄弟子のことを思い浮かべ、文句を出す。

(わかってるわよ。ネスが手伝ってくれないのは私が問題をおこしたから。理由を聞かれて、黙ったままだったから……)

顔を寂しそうにしながら、兄弟子のことを思う。

(理由を言えば、ネスは手伝ってくれた。でも、そんなことできるわけないじゃないだって……)そのことを思い出し、顔を辛そうにゆがめながら(成り上がりの私のせいで、ネスやお世話になっているラウル師範が悪く言われたから殴ったなんて、言えるわけないじゃない。)

トリスはその時のことを思い出し、目を強くつぶる。自分が悪く言われるのはいい。成り上がりなのは事実であるし、ここに連れてこられたのも、自分が事件をおこしたからなのだから。それでも、

(ネスやラウル師範が悪く言われるのは、許せない。)そこまで考え、顔を横に振りながら、本当の理由を思い浮かべる。

(私のせいで二人が悪く思われるのが、もしも、二人の耳に入ったら……)

もし、そんなことが起こり、二人が自分のことを嫌ったら……?

(怖い。ネスやラウル師範に嫌われたら、どうしよう……?)

想像してしまい、体が冷たくなったような錯覚を受ける。思わず両手で自分の肩を抱きながら、自分に言い聞かせる。

(大丈夫、大丈夫。ネスやラウル師範はそんな人たちじゃない!)

でも、本当に嫌われたら?心の中でそう囁いてくる、もう一人の自分を無理やり閉じ込め、倉庫の整理整頓を再開する。仕事をしていれば考え事しなくて済むから……。

「ん?なにこれ?」

黙々と作業をしていると、一冊の本が気になった。ここに入れられている以上は魔力が感じられないはずであり、中身も貴重ではないはずである。しかし、

「この本、魔力を感じる?それに、汚れていない…?」

お世辞にも、保管環境がいいとは言えないこの部屋で〈事実、他の本などは黄ばみや虫食いなどがあった〉その本だけは、まるで新品のように綺麗であった。

トリスは迷った。もしかしたら仕分けするのを間違えてこの部屋に入れられたものかもしれない。もしかしたら危険な品物かもしれない、と。しかし、それ以上にこの本に興味があった。

(少しぐらいなら、大丈夫だよね…?)

ゆえに、トリスがその本を開いてしまうのは、仕方のないことであった。少しばかりの罪悪感とそれ以上の興味によって開かれたその本には、何も書かれてない白紙であった。

「えぇ~~~!?何これ?白紙じゃん……」

好奇心が大きかった分、何も書かれてないことに対する落胆の感情は大きく、ため息をつきながらページをめくっていく。

「前から後ろまで、全部白紙じゃない。筆者の名前すら書かれてないって、詰まんないわねぇ………。アィタ!」

ペラペラとページをめくりながらため息をつくと、注意が散漫していたのか、ページで指を切ってしまった。

「うぅ~~~!まったく、なんなのよ、もう!」

指が切れたことに対して今日の不満が積もっていたからか、切れた指を拭くために、本のページに乱暴こすりつけていく。

「って、あれ?本に文字が………?」

そうしていると、つい先ほどまで確かに白紙であったその本は文字が浮かんでゆく。まるで、トリスの血を取り込んで、息を吹き返したように………。

しかし、違和感に気づかず、浮かんでくる文字に対して興奮するトリスは、本の文字を読み始めた。

「わぁ、何これ!面白いしかけね!え~と、何々って、何この文字?」

文字を読もうとすると、自分が知っている言語でないことにトリスは怪訝な顔をしながらも文字を読んでゆく。

内容が気になる彼女は気づかない。どうして、知らないはずの言語がわかるのか?漏れている魔力がどれほどなのか?書かれている内容がなんなのか?

なにより、部屋の外とこの部屋の空間がズレていることが。

本の中身ばかり読んでいるトリスは気づかなかった。本の表にも変化が起きていることを。そこには次のように書かれていることも

『キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグののめり込む魔術講座』

彼女は知らない。この本がかの万華鏡《カレイドコープ》が余りにも弟子が廃人となるので量産して、あっちこっちの世界にばらまいた弟子探しのための魔導書であることを。

彼女は知らない。常人なら読んでいて数ページもめくれば死に至るような超危険な本であるということを。

彼女は知らない。もしも、この本を読みこなせれば、そのことが、かの魔法使いの元まで伝えられる仕組みであることを。

彼女は知らない。このことを知った魔法使いが彼女に魔法を教えるために訪れ、魔導書のバージョンアップをすることを。

彼女は知らない。この先に待っている地獄のような訓練を。

彼女は知らない。ようやく見つけた見込みある弟子のために、アグレッシブに【蒼の派閥】に働きかける宝石爺のことを。

そんなことを知らずに、彼女は本を読みふける。何の疑問を抱かず。次々入ってくる知識に疑問を抱かず。本を触っている手から徐々に伸びていく光の回路【魔術回路】の痛みに気づかずに。

本来あった保管庫の前で頭をかしげている、手伝いと差し入れにきた兄弟子がいることに彼女は気づかない。

 


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