A&N条約第壱条「知らない人について行かない事」
「人影……か?」
どこのモノ好き…いやバカだ?
それとも、この間のふざけたヤツがいるのか、【特務目標】が見つかったのかもしれないな。と思いつつ、白い影の見えた教会を目指した。
そう言えば、この【贖罪の街】は、アラガミが最も早く人々を襲ったことで知られていたか。
ここに“贖罪”なんて名前がついたのは、誰もが我先にと逃げ出し、アラガミ達に対して、隣人や近くにいた奴を差し出し、そのまま逃げようとした人間が以上に多かったからだそうだ。
……バカな話だ。救いようもねぇ。
結局、逃げようとした奴は全員捕食され、その当時のゴッドイーター達が到着した頃には、全ての人々がアラガミに喰い荒されている真っ只中だったらしい。
人々はアラ“ガミ”に
「食材と贖罪を掛けるなんざ、上層部はどんな頭してやがんだ…!」
いや、今はそのような事を考えている場合じゃない。か……
神機を構え、ゆっくりと歩きだす。教会の横に空いた大穴から、人々が必死作ったバリゲートの残骸を越えて、教会の中に入った。中は伽藍洞で、人っ子一人いやしない――――いや、
「ッ!」
上に感じた、かすかな違和感にバッと首を向ける。
(……いない、か)
辺りを見回しても、どこに何かがいると言う訳でも無い。空虚な、ただの廃墟だ。
「気のせいか…」
バスターブレードの神機を肩に担ぎ、戦闘態勢を解く。
しばらく辺りを見回し、白い人影を探っていると、連絡用端末から音が鳴り響く。
面倒だが報告しなきゃならねぇな…
「こちらソーマ。特務目標との接触はなし…索敵を続ける」
『―――、―――』
ピッと通話を切り、忌々しい奴からの声をシャットダウンする。
…ちっ!
「ちっ!」
おぉ~。
アレって、かおすのいってたゴッドイーターだな?
ひんやりするかべをたのしんでると、ヒトがあるいてた。
おっきいブキをもってたから、あれがかおすのいってたゴッドイーターか~っておもってたら、いきなりこっちをみたんだな!
「でも……」
ソーマ……だっけ?
「おんなじだぁ…!」
なかのもの、いっしょ!
でも、なんでアナグラにいるんか?
かおす。ナマエわかったから、シオもこんどついていってもいいよね?
「ふぅ、こんかいもいい汗かきました」
オウガテイルの討伐をすると、なにやらサクヤに向かってコウタが話していました。
はぁ…コウタ、サクヤの顔が難色を示しているのですから、そういう時は話をしてはいけませんよ。
「あっ、いいところに!ちょっとだけ、コウタ君のお相手頼めるかな?ぜんぜん話が終わらなくて……」
ふむ、ならば…
「嗜好品配布チケットで引き受けましょうか?」
ちょっとふざけてみましょうか。
「…さすが新型。したたかね…でもその取引には乗れないわ。今月の分、もうリンドウが予約済みなのよね…」
「なんて、冗談ですよ。先に行ってください」
「え? …そ、そう! ごめんね!」
そう言うと、コウタにアルトリアちゃんが聞いてくれるとコウタに伝えて、サクヤは足早にエレベーターに乗って行きました。
……コウタ、そのキラキラした目を止めてください。
「ホントか!? なあ、アルトリアも聞いたころあるだろ? 足が十本ある、イカっていう生き物!」
まずは、彼から説得しないといけませんね。
◇
「―――そう言う事で、コウタ。話をするのは構いませんが、ちゃんと相手の目を見て、迷惑を考えて会話をしないといけません。嫌われたくは無いでしょう?」
「は~い……」
「返事はしっかり!」
「は、ハイ!」
ふぅ、オウガテイルよりいい汗かかせて貰いました。
おや、どうしたんですかコウタ? そんなげっそりした顔して。
「ゲッソー……って、アルトリア?」
「おや、分かってしまいましたか」
もちろん、私は美味しそうなものを把握してますとも!
イカだって、私は熟知していますからね。
「…おい新型」
ふんす! と胸を張っていると、ミッションを丁度終えたソーマが話しかけてきました。
「どうしました?」
「旧ビル街…贖罪の街辺りで、誰か…人の気配を感じたことはないか?」
「人の気配…ですか。もしや、カオス達のコトでは?」
「いや……まぁいい、忘れてくれ。邪魔したな」
「いえ、こちらこそ有益な情報提供が出来なかったようで、申し訳ありません」
そう謝って頭を下げると、既にソーマはコンソールを叩き始めていました。
……次のミッション、少し楽しみになってきましたよ。ソーマ。
「それでは、私も部屋に戻りましょうか」
ミッションの疲れを癒すため、エレベーターに入って自分の部屋がある階層に向かいます。一直線にそびえたつアナグラの、更にその地下に私たちのルームは存在しています。
朝食など、食事をする場所は中央エレベーターの上階に位置していて、私たちゴッドイーターやアナグラ職員は、このエレベーターが移動の要となっています。その中でも、ゴッドイーターと整備士、上層部などの比較的階級の高い域にいる人物だけが、この側面エレベーターを使えるようですね。
そう思っていると、目の前にはリンドウが立っています。
此方を見つけると、よっ。と声を掛けてきました。
「近々、新しい神機使いが此処に配属される事になる。多分お前と同じ、新型の適合者だ」
「そうなのですか?」
「まあ、な」
そう言うと、あさっての方向を向いて頭を掻きだすリンドウ。
非常に難しい顔をしているようです。
「それと、根拠は特にないんだが…ウチの支部長、この極東支部に何かの目的で新型神機使いを集めてる気がするんだよな…。そこで提案なんだが、支部長がその辺のことに関して何か言っていたら、俺にも教えてくれないか?」
「構いませんが…そちらの方が遭いやすい筈では?」
「…ま、そりゃそうなんだが、どうもあの人は苦手でなぁ…。気が向いたらでいいし、機密事項なら言わなくていい。ちゃんと礼もするから、な? 宜しく頼む」
「はい、お礼などは関係なく、引き受けておきましょう」
「助かるわ。んじゃ、死ぬなよ」
そう言うと、リンドウはそのままエレベーターの中に消えて行きました。
閉まる直前に見えた、あの固い表情……何か、支部長には裏があると思った方がよさそうですね。私の私見でも、どうも訝しいところが諸所見られましたし。
「それにしても……」
リンドウは支部長が何をたくらんでいるかを探りたいそうですが…
「支部長をクビにして、この支部の統括を目論んでいるのでしょうか?」
いや、あの面倒くさがりな性格ですし、それはないでしょう。
「とにかく、私も休みましょうか…」
中々、会話の方で疲れがたまりましたしね。
あ、コウタからデザート券の奪取をしておかないといけません。
今日の嗜好品は、なんでも速成栽培、マル“混”印の野菜から作ったアイスクリームらしいですからね。
ふふふふふふふふふ………今、腹ペコとか言った人は、後で
◇
「聞いた? 【新型】がまた配属されるって」
翌日。
ミッションを請け負った時のエントランスで、ジーナとリッカの声が聞こえました。
なるほど、今日がリンドウの言っていたロシアからの新型配属ですか。
「あ、それ初耳だよ。此処へ来て新型ラッシュだね」
「ロシア支部から、支部長が連れてきたらしいよ…」
「へぇ~」
その時。カッ、カッ、カ…と、足音が響き渡りました。
「あ、噂をすれば、かな」
『招集、招集。第一部隊の者は、ただちにエントランス正門へ集合せよ。繰り返す。第一部隊の者は、ただちにエントランス正門へ集合せよ』
ツバキの放送がアナグラに伝わります。
私も、すぐに向かわねば…
◇
「紹介するぞ。今日から、お前たちの仲間になる新型の適合者だ」
「はじめまして【アリサ・イリーニチナ・アミエーラ】と申します。本日一二○○付けで、ロシア支部から、こちらの支部に配属になりました。宜しくお願いします」
随分露出が多い服装ですね……私の胸…………
っく! そして、私の…敗北か……
「女の子ならいつでも大歓迎だよ!」
って、コウタ!?
あなたは何を言っているんですか! ほら、空気が一気に沈みましたよ!
「…………。よくそんな浮ついた考えで、ここまで生きながらえてきましたね…」
「…へ?」
ローズグレーの髪を掻き上げて、冷やかに言った彼女の言葉に、コウタは凍りついたようです。…まあ、当然といえば当然なのでしょうが……
そこでツバキが咳払いをしました。おそらく、空気の清浄の為でしょう。二重の意味で。
「彼女は実戦経験こそ少ないが、演習では抜群の成績を残している。追い抜かれないよう、精進するんだな」
「…り、了解です」
「コウタ…自業自得なのですから」
「ぐっ…」
「アリサは以降、リンドウについて行動するように。いいな」
「了解しました」
ツバキがそう言い終えると、リンドウの方を向きます。
「リンドウ、資料等の引き継ぎをするので、私と来るように。その他のものは持ち場に戻れ。以上だ」
リンドウに目くばせすると、彼女たちははそのままエントランスを離れていきました。
…しかし、何故か嫌な予感g―――
「ねえ、君ロシアから来たの? あそこってすげぇ寒いでしょ? あ、でも最近異常気象で、温度が高くなってきたとか言ってたっけ…」
はぁ、苦労を増やさないでください。コウタ。
「そう言えば、アルトリアって髪の毛が一本だけ跳ねてるよね? これってどんな――」
「「あ」」
へ?
思考が、クロく塗リつブサれていク―――――?
「あっつぅ~い! もう、なんでカオスはこっちに寄越すかなー」
「まあ、いいじゃないか。僕も彼にはお世話になってるしね」
「エリッ君は気楽でいいねぇ。あたしは熱いトコ苦手なんだよね」
どもども、アラガミさんっと!!
ふぅ、シユウがうろついてるただけど、シオちゃんが好きじゃないし、一々鳥ももとるのに足を結合崩壊させるのも面倒だからなぁ。此処は無視させていただきますか!
エリッ君も、オウガテイル堕天の討伐で此処にきただけらしいし、小型アラガミのコアは時々こうして譲ってくれるんだよね。中型以降のコアからしか、神機の作成は出来ないみたいだし。
「それにしても……アリサ大丈夫かな?」
「ああ、今日配属される新型らしいね。華麗に舞える剣を使えるのは、少し羨ましいかな」
カオスの話だと、あのオオグルマって男はロリコンで変態で不潔らしいし。
もう二、三日もすればアリサと会えるかもしれないって、エリッ君も言ってるし。
……まあ、気楽に行きましょー。あ、オウガテイル。
「これで…っと! ふぅ、今日のミッションは、此処までのようだね」
「今日はありがとねー。コア譲ってもらったりさ」
「華麗な僕にとって、造作も無い事さ! ……だから、僕の前でコアを食べるのはよしておくれよ」
「え? ……あはは…………無意識に食べてたよ」
最近、自分がアラガミだって言う事を実感してきたかな。いつの間にか、カオスのとっておいた
…何故か、カオスはニボシとネコ缶食べてたけど。どこから出してんだろ。あれって。
「おや…? アレは、第一部隊じゃないか」
「へ? あ、ホントだ。アルトリアちゃんもいるや」
おーい! と手を振ると、ミッションできたのか、四人が此方に歩いてきた。
って、ソーマ君もいるじゃん!
「オレーシャじゃん! 元気だったか?」
「オレーシャ? このようなところで何をしているのだ?」
「アルトリア、なんか黒くない…? まぁ、とりあえずはエリッ君のオウガテイルの手伝いさ~。あらら? 見ない顔もいるじゃん。初めまして!」
「あなたは……アルトリアちゃんの言ってたオレーシャちゃんかしら?」
およ、あたしの事知ってるんだ。
「はじめましてね。私はサクヤよ」
「あたしはオレーシャ。カオスのお仲間さんでーす!」
それから暫く話すと、彼女らはさっきのシユウを倒しにきたっぽい。
向こうにいると言ったら、礼を言ってシユウのいる方に走って行った。
…あ、爆発音。
「おや、ソーマは早くいかないのかい?」
「……チッ、さっさとアナグラに戻りやがれ」
「ま、雑魚の掃討はやっておいたからね。存分に戦って来てくれたまえ」
「…………………………そうかよ」
うっわ、なにアレ。滅茶苦茶顔しかめてたじゃん。
「彼はアレでも感謝してるからね。そう邪険にしないでくれないか?」
「う~ん、とっつきずらいなぁ。アリサみたいにガバッ! と行っちゃおうかな……。それにしても、エリッ君って、ソーマ君のこと変な目で見ないよね」
「まあ、僕の憧れだからね。彼と組んだチームの死亡率から、彼は“死神”なんて呼ばれてるけど、実際のところはリンクエイドや回復アイテムを存分に使ってくれるさ」
だから、とエリッ君は穏やかな顔になった。
「実のところ、死んでいく隊員は自分勝手な暴走が多かったりするんだよね。僕は知ってるよ。彼から離れた場所で、勝手して死んだゴッドイーターは多かったけど、彼の周りにいるんだったら、アラガミが飛び交う場所でもリンクエイドしに来てくれるのさ。……エリナが言ってたけど、こう言うのって――」
「「ツンデレ」」
「って言うらしいよ……って、知ってるのかい?」
「ふっふっふ、前のアリサも同じだったもん。普段はツンツンした言動だけど、いざという時はデレ…つまり、親身になって助けてくれたり叱ってくれたりするんだよね」
「ま、その通りさ」
ソーマの戦う姿を見てると、エリッ君と一緒にふふふと笑った。
「それじゃ、僕はそろそろ帰還するよ。支部への報告もしておかないとね」
「そっか。オウガテイルのコアありがとね。これでまた数日は持つよ」
「持ちつ持たれつ、助け合いの姿は、僕にとって最上の華麗で優雅な行為だからね。礼を言われるまでもないさ!」
そう言うと、エリッ君はゴッドイーターの初期待機の場所に向かって行った。
さ~て、あたしもご飯とったから、キサラギに戻らないと。
「みんな~! またね!!」
聞こえちゃいないだろうけど、やっぱり挨拶は大事だもんね。
今日はパーティーするのかな~♪
あ、ソーマ君がアルトリアにインパルスされてる。なんか黒いし、コウタ君は怯えてるし……今日は何があったのかな? ま、関係ないか!