蒼穹の月?真夏の太陽にしてやんよ byオレーシャ
じ・あふたーでい。
どうも、ネコアルク・カオス(罪状:キサラギ空き巣常習犯)です。
なんか出番が恐ろしく前の気もするが、エリッ君のところから戻って来たオレーシャ。コアいっぱい貰ってきたよ! とホクホク顔で戻ったのだが、此処に来る途中でほとんど食べてしまったらしい。
…いやまあね? 別に道のり長いからちょっとぐらいは良いんだぜ。でも―――
「流石に全部喰う事はにゃいだろう!」
スパーン
「痛いっ!? うう~。でも、お腹すいたんだよう」
「シオのもないの? こっちのがおなかすいたぞー」
『【断固抗議するわ!】』
「ぐはっ」
吾輩たち全員から非難の言葉を浴びせられ、ずーんと意気消沈する“今週の食料確保員”。
まったく、職務を全うせずして何がプロか。
「最近此処は荒れてないから、食料が少なくなってきているのだぞ? それで吾輩たち全員で一週間テーブル式を取り決めたというに……」
『【最近オレーシャ】【気がたるんでるわよ】【アリサとかは分かるけど】【もう少し落ち着きなさい】【私がついて行って】【あげるわ】【今度がんばりましょう】』
「は~い……」
どうやらウロッちは、大人の女性みたいな喋り方らしい。
この前水性マジックとホワイトボードを食べて、身体のどこからでもボードを出して文字を浮き上がらせることが出来るようになった。主に触手を伸ばした先に出すが。
で、その頃から個性が出てきたのか、今の喋り方に落ち着いたようだ。
「ねえカオス。シオ、まちのほうでおんなじとあったぞ!」
「同じ…? それはどういう事かにゃ?」
「なかみ、いっしょ! こっちはむこうしってるから、こんどあってもいいか?」
「吾輩かウロッちを同伴なら構わぬよ。オレーシャはダメだがな」
「はーい」
「またハブられてる、あたし…」
『【まあまあ】【今度一緒に】【空母でもいきましょうよ】』
「……そうだね!」
その後、今日のオレーシャの失態から、食糧班を全員にする。
吾輩とオレーシャは贖罪の街に、ウロッちとシオも念の為、待機要員としてへ向かう事になった。
……しかし、どうも嫌な予感がする。杞憂で済めばよいのだがにゃ…………
そう言うワケで、1日かけて街に到着したみたい。
って言っても、あたしはジェット吹かせたカオスに掴まってただけなんだけどね。
もう少し遅れてあの二人もくるみたいだけど、今日は何か……
「気配が濃い…? ねえ、なんでこんな……」
「人為的な何かであろうな。加え、特定の形態を持ったアラガミにのみ作用するフェロモンの様な効果があるようだ」
「言われてみれば……こっちかな?」
あたしの中の何かが反応してるって事は、カオスの言う通りなら【ヴァジュラ種】が引き寄せられるタイプかも知れない。
“あたし”自身はそうでもないけど、元になったヴァジュラの因子が強く反応してる。これじゃ、最近出てきたって言う新種も出てくるかも……
「あ」
そんな事を思って進んでると、ビルの廃屋の中に変な機械を見つけた。
緑っぽい光を出してて、あたしの中の因子がすごく強めに反応してる。でも、周りには誰もいないみたい。
そんな事を思ってると、カオスが考え込んで、
「壊しておくとしよう」
「え? なんで壊すの?」
「これはいつしか、どのアラガミでも引き寄せる様になる」
どうして分かったのか知らないけど、この装置が出すフェロモンは、いつか全てのアラガミが味を占める程の偏食因子で構成されたオラクル細胞を吐きだすものみたい。
こういうものって、ここに設置しておけば、暫くの間はここにアラガミが集まって被害が抑え込めるけど、この装置が壊れた時には、ここに集まった沢山のアラガミ全てが、ここからアナグラに侵攻するかもしれないんだって。
「うん。じゃ、離れてて」
「任せた」
未来には危険になるかもしれない物は、あたしは許容できない。
そう言うワケで、両手からバスターを生やして、オラクル細胞を装填する。
紫黒の刃が剣の周りを覆って、オラクル細胞特有の靄が滲み出始める。
そして―――
「でぇぇぇぇぇええええええいっ!!」
思いっきり、振り下ろす!!
「でぇぇぇぇぇええええええいっ!!」
オレーシャがそう言って神機を振り下ろすと、とつてもない程の威力で装置もろとも、この廃ビルの床が抜けた。彼女の足元も抉れるように陥没していることから、無意識に使ったオラクル細胞を補充しているようだ。
「大儀だったな。では、食料を―――ん?」
この街には、中央に人々がアラガミから逃げる為に兵糧した、教会の残骸が残っている。
奇跡的に一番被害が少なく、この辺りの建物の中では原形を保っている数少ない人間の歴史を表しているものだ。
アラガミ達も【神】と畏れられる存在。かつて神を崇める為に使われた建物は破壊したくないのか? という、勝手な予測が立てられるそこに、あまりにも濃い気配を感じた。
「あーっ! アレって、アリサ!!!」
「にゃにぃ!?」
そんなオレーシャの声に、急ぎ教会の方へ眼を向けると、大量のプリティヴィ・マータに囲まれているアリサ他、ゴッドイーター達の姿が見えた。
アリサがアルトリアに抱えられて気絶している。しかもあの
「急ぐぞ! 掴まっていろ!!」
「うん!!」
マズイ。あのときは偶然にもリンドウは手を持っていかれるだけで済んだが、このような装置があるという事は他にも設置されている可能性がある筈。
しかも、今ここにいるプリティヴィ・マータの数は、視認しただけでも【23体】。
原作とはかけ離れ過ぎている。これは――――
「まずいな…こっちも囲まれてやがる……」
「ぐぅううっ!?」
「コウタ!」
女王の数はあまりに圧倒的。
いくらアラガミの大量発生と言っても、通常ではありえない光景。それは、チェスで
そして、コウタが吹き飛ばされた事を皮切りに、他の女王も教会へとゴッドイーター達を追い立てる。
じりじりと距離を詰めるマータ達に対して、ゴッドイーターの後ろは無い。
なぜなら、アリサがこの教会の入り口に銃口を向け、リンドウ諸共閉じ込めてしまっていたからだ。
だが、それでも彼らは脱出を諦めない。
リンドウをも連れて帰る。そうして、現在指揮をとれる立場に居るサクヤが決意した瞬間、
『命令だ! アリサを連れて、アナグラに戻れ』
くぐもって聞こえてきた命令。直訳すると、それは“自分を見捨ててこの場を突破しろ”。
リンドウは、自分の一人の為に仲間全員を殺す様な選択を取れる男ではない。
人類の未来の為、仲間の為、自分が此処で朽ち果てる事を選んだのだ。
「でも…!」
『聞こえないのか! アリサを連れてとっととアナグラに戻れ!』
サクヤの反論も、二の次を言わせず命令を繰り返す。
『サクヤ! 全員を統率! ソーマ、退路を開け!!』
「無茶言いやがる…! 行くぞ!」
それでも、異常な聴力でしっかりと彼の言葉を聞き取ったソーマは、バスターを握りしめてコウタを引き連れ入口へ向かう。
「パパ…ママ…そんな、つもりじゃ…」
「アリサ………サクヤ、急ぎましょう」
「リンドウも、早く!」
アルトリアが自失呆然としたアリサを確保。
しっかり肩を組み、歩きだせる体制になった事を見て、サクヤが再三リンドウへ呼び掛ける。
だが……
『わりいが、俺はちょっとこいつらの相手して帰るわ。…配給ビール、とっておいてくれよ』
それでも、やはり否定。
彼はここでこの大量のアラガミ全てを相手にするつもりだった。
「ダメよ! 私も――」
「サクヤ! 今はリンドウに従うのです! 彼の思いを無駄にするつもりですか!!」
『そういうことだ。サクヤ、これは命令だ!! 全員必ず生きて帰れ!!!』
それっきり、リンドウは闘いの為に沈黙する。
瓦礫の向こう側から聞こえる、アラガミの悲鳴とリンドウの神機が弾ける音。硝煙の香りがその場を乾かしていった。
そして、ようやく一匹の女王が沈黙する。
しかし、余りある女王の群れはその穴を瞬時に埋めてしまった。
「言いやがる…だが、この状況をどう乗り切れってんだ!!」
「じゃあ、あたしに任せて!!」
ソーマがそう叫んだ瞬間、空から一つの影が降り立った。
地が揺れるほどの着地と共に、二本の大剣を二体の女王に突き立て、全ての個体がバラバラの場所にある筈のコアを正確に叩き砕く。
ズルッ、と刃を引き抜いた先に見えてきたのは、太陽の輝いた様な、皆を安心させる笑顔。
その持ち主、オレーシャだった。
「ここはあたし
言いながら、すぐさま大剣のインパルスエッジを起動。薬莢が吐き出され、後方にブーストが掛かった大剣は近くの女王を3体まとめて輪切りにする。
三体分の空間に空きができ、遂にゴッドイーター達の退路が造られた。
「行って!!」
彼女が叫ぶと同時、ソーマが先行して神機を振るう。コウタはリンドウに叫ぶサクヤを、アルトリアは気を失ったアリサを抱えてオレーシャの横を通り過ぎて行った。
そして、そのすれ違いざま。
「アリサを…お願い」
「……はい」
その言葉に頷き、アルトリアも急ぎその場を離れる。
そして、この場に残ったのはオレーシャと女王が21体。
普通のゴッドイーターなら確実に殺されるだろうが、生憎今のオレーシャはアラガミ。この程度の物量で、彼女を止めることなどできない。
その中、群れの向こう側から爆発音がして2体のプリティヴィ・マータが消し飛ばされる。
群れの向こうから見えてきたのは――
「オレーシャ、だいじょうぶか!」
「シオちゃん!」
この街に向かっていたシオ。
彼女の持つ神機モドキからは、銃口の辺りから煙が出ている。おそらく、8スロット全てを放射+爆発のチップにしたバレットで纏めて吹き飛ばしたのだろう。
シオはオレーシャの方向に立ちはだかる女王の足を、顔を、マントを薙ぎ払いながら走り抜ける。そして、彼女の元に到着すると、背中合わせに立った。
「ごちそうイッパイだぁ! イタダキマス。だな!!」
「食べ過ぎて、お腹壊さないように…って、アラガミだから関係ないか」
どこまでもマイペースに。
そうして、彼女達は刃を振るう。
男が吐き出した白煙が、がらんどうの教会を埋める。
反対に地上は、男からにじみ出る赤い液体で彩られていた。
「行ったか…」
彼の名は、雨宮リンドウ。
先ほどの第一部隊の隊長であり、この場に残る事を選んだ統率者である。
彼の傍には、6体のプリティヴィ・マータが斃されていた。彼の実力は、単騎でウロヴォロスを大きな怪我も無く倒せるほどの腕前。大立ち回りが得意なのか、こういった才能が秀でているのかは別としても、戦闘力が高いことには変わりがない。
その大挙を挙げても、彼に休息は与えられないらしい。
なぜなら――
『――――ッ』
「はあ…ちょっとぐらい休憩させてくれよ…身体が持たないぜ……」
新たな客を視界に捉え、タバコを投げ捨て神機を担ぐ。
それでも、死に逃げ込むコトは無く、生を宿した瞳でゆっくりと、彼に立ちはだかったアラガミの方へ向かった。
『――――ァァァァアアアア!!!』
「おいおい、こっちは全快出来てないっての」
瞬間、人面アラガミの上位種。
恐れられたヴァジュラ種の頂点に立つ存在、【帝王:ディアウス・ピター】が唸りを上げて飛び掛かる。
しかし、難なく神機のバックラーでいなした彼は、即座に盾を収縮させてすれ違いざまに足を切り裂く。その痛みで、更なる咆哮を上げる帝王は途轍もなく巨大な雷球を創造した。
「冗談キツイぜ…前までそんなのなかったろうがよ!」
それでも、雷は無慈悲にも彼の元へ投げられる。
再び盾を展開してそれを防ごうとしたが―――
「やれやれ。マナーがなっていないぞ」
突然響いた声。それと共に雷球を覆った黒い影に遮られる。
「吾輩、
「その漢字は“かんどう”とは呼ばないさ」
「――――ぶっちゃけ、そろそろ血が見たいゼ。ってことだ」
これが、歴史の変わった瞬間。
初の、彼らの邂逅となった。
「言葉はいらぬな? 力を貸そう」
「心強いな。手ぇ貸してくれよネコちゃん」
語るに及ばず。双方の意志は伝わり合った。
リンドウはアンプルを飲み込むと、神機を構え直す。
隣に立ったネコカオスは、すうっと体勢を前に傾けた。
――――そうして、今此処に運命は交差する。