幻想の投棄物   作:マルペレ

19 / 21
その19

荒御魂ヲ収ム姫君

 

≪そちらに向かったよ。後は予定通りに……≫

「では、生粋のアラガミだけを向かわせよう。吾輩が居ては…少々場違いであるからな」

≪君もある意味、ゴッドイーターの様なものだからね≫

「とはいえ、実験はゴメンだがにゃ」

≪それは残念だ≫

「ちょぉぉおおおっとぉぉぉお!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

しんしんと雪が降り積もり、季節の節目を失くした廃寺。

荒ぶる神も、此処では休息をとっているとでも言うのか? 【鎮魂の廃寺】と名付けられた寺院跡(・)が立ち並ぶ旧神奈川県の東。そこから眺めることが出来る、人類の最期の安置【エイジス島】を背景にしたこの地で、争いの音が鳴り響いていた。

 

鉄を打ち合う鈍い音、薬莢が飛び散る火薬の匂い。

此処はもはや、没した魂もが目覚める戦場と化していた。

 

「アリサ、援護を! ソーマとコウタが来る前に片づけましょう!」

「了解です、リーダー!」

 

エクスカリバーが紫光を飛び散らせ、神を侵す毒がシユウに回る。

アルトリアが退避すると、地より這い出るような炎が積み上げられ回転するシユウを守護するように覆う。アルトリアが安全地帯に言ったことを確認すると、オラクル細胞で補助された視界、補助された筋力で砲塔を固定すると、アリサは引き金を引いた。

一発、二発、三発、四発。連鎖的に積み上げられた炎の力が宿ったチップを消費し、着弾。シユウの内部に循環する炎のエネルギーを暴発させ、腕の羽を穴あきの痛ましい光景へと変える。その隙間を掻い潜ったアルトリアが特攻し、シユウの股下から肩にかけて大きく刃を振り払った。

 

「ゼェェェェェッ!!!」

 

掛け声一閃。

血飛沫を上げ、シユウはその場に膝をついてしまう。羽はボロボロ、顔は剥がされ、足の繊維は露出している満身創痍の状態。

ゴッドイーター達は、その最後の隙をつき、神機を禍々しく変形させた。

 

―――捕食(プレデター)形態(フォーム)。

 

黒き鰐のような大顎。オラクル細胞の霞を噴出させ、引っ込んだ神機の刃は獲物を求める舌のように蠢いている。嫌悪感がありありと感じられる形だが、これも彼女達の体の一部の様なもの。

突っ込ませるようにシユウの首、胴体部へ喰らい付かせ―――

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 

薙ぎ払い、その血肉を吹き飛ばした―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様です、リーダー」

「貴方こそ、アリサ。…それより、そのような他人行儀な呼称は……」

「あなたがリーダーなんですから、自覚してもらうためにも子の呼び方にさせていただきます!」

「……すみません」

 

上半身、下半身、頭とバラバラになったシユウの死体。

その横で第一部隊の新リーダーとなったアルトリアと、同じく第一部隊に所属しているアリサが慰労の言葉を掛け合っていた。

 

「こっちは終わったわよ! リーダーさん」

「アルトリアー! ヴァジュラもバッチリだぜ!」

「お疲れ様です、御二方」

 

その二人の元に、上の断層でヴァジュラを討伐していた二人が降りてくる。

一人はコウタ。第一部隊の銃型旧式神機の使い手。一人はサクヤ。同じく第一部隊の衛生兵で、スナイパーバレルの銃型旧式神機を使っている。

ミッションの編成人数の問題上もう一人が足りないが、このアラガミの死体のそばで、第一部隊が集ったのだった。

 

「では、無くならないうちにとっておきましょう」

「いただきます―――」

 

「それ、ちょっと待った!」

 

ゴッドイーターの本質。倒したアラガミを喰らい、新たなコアや偏食因子を持ち帰る事。それを実行しようとした矢先に、この場にはおおよそ似つかわしくない人物の声が響き渡る。

人物が人物だっただけに、捕食を始めようとしたアルトリアはその方向に首を向けた。

 

「……教授?」

「危ない危ない。…まぁ、説明は後だ。

 とにかくそのアラガミはそのままにして、ちょっとこっちに来てくれるかな?」

 

そこに居たのは、最後の第一部隊メンバー―――ソーマを引き連れ、戦場に赴く自体が珍しいであろう研究家。【ペイラー榊】だった。

装飾過多な服に、4種類の眼鏡。人によっては、怪しくも人当たりがよさそうにも見える常の笑顔。今回ばかりは、全員がその顔を怪しく見ていた。

 

とはいえ、此処で逆らうのも何か大事なことが起きそうにも無い。と言うのが彼らの本音。

ゴッドイーターのカンと言うべきか、それを奥底で感じ取った皆は、榊の後について行き、シユウの死骸が確認できる位置まで下がったのであった。

 

 ◇

 

それから、待つこと数分。

 

「来たよ!」

 

その言葉と共に、ソーマ以外の全員が隠れながらもシユウの死骸へ視線を集中させる。

彼が待っていたモノ。それは――

 

「…! とりももー!」

 

彼らには初見となるだろう。

そこに居たのは、何処までも白き白磁の肌と、人に限りなく近い髪の毛の様なもの、そして、フェンリルの旗を拾って体に巻いた様な、浮浪人のような服を着た純粋のアラガミ。

 

―――名を、【シオ】と言った。

 

(カオス、なんでこなかったのかな? ウロッちはついてきたのにねー?)

 

彼女が此処に足を運んだのは、仕込み過ぎたネタが遂に暴発し、食事中にネタを発現してしまったからである。ネコアルク・カオス達の取り決めの中では、食事中にネタを言った者は食料を調達する役目を仰せつかる、という常識だ。

 

まぁ、今回ばかりは彼とある人物の思惑通りだったが。

 

そんな事もつゆ知らず、ただただシユウの足の部分を解体し、それを口に運ぶ事で捕食するシオ。しっかりとした自我を持ち、それに見合った知能を持つ彼女は、どこまでも丁寧な手つきでシユウを解体していた。

 

その彼女に、ゴッドイーター達は歩み寄る。

それぞれが己の武器を掲げているが、正体不明の人物に対して野次馬根性があるのも否定はできないだろう。心なしか、歩み寄る速度が通常よりも早い気がする。

 

「オナカ……イッパイ!」

「うわわっ!?」

 

体のあちこちに返り血がついているせいか、普段は可愛らしい笑みでも、コウタにとっては悪魔の微笑みと同義だったらしい。驚きながらも銃口を向けた。

 

だが―――

 

「――!? 引き金が…!?」

 

何度か神機を揺するも、引き金は鉄塊のように重い。

実はこれ、シオが放つ特有の偏食場(パルス)に対応できてない神機に起こる副作用で、それが旧型ならば尚更のこと。偏食場に乱されたオラクル細胞の流れが神機のオラクル結合に硬質化をもたらした結果なのだ。

離れればすぐに治るが。

 

そんな彼女に、おくびもなく榊が近寄って来た。

 

「いやあ、お疲れ様。よく来たね。

 ソーマもここまで連れてきてくれてありがとう。君のおかげで、彼女を直々に送迎できそうだよ」

「礼などいい。どういうことか、説明してもらおうか」

 

朗らかに礼を述べる榊に、ソーマは不機嫌になりながらも説明を求める。

背負った神機がまた、その威圧感を助長しているようだ。

 

「いや、『彼』との約束で此処に呼んだんだけど、歓迎用の品はどうしようかと思ってね。暫くここ一帯の『ゴハン』を根絶やしにして、彼女が気に入りそうなものを探してみたんだ。

 どうやら、シユウの脚の筋肉線維がお気に入りのようだね」

「チッ、俺の役目も無駄だってことか…」

 

二人で盛り上がり、他の人物を置き去りにしていたが、此処で鶴の一声が入る。

 

「ええっと……博士、…こっこの子は…?」

 

血を浴びながら、満面の笑みで捕食を続けるシオが怖いのか、コウタは少し度盛り気味だった。

 

「そうだね、立ち話も何だし、私のラボで話すとしようか。

 キミも、一緒に来てくれるね? シオ君」

「はーい。カオスのきょかもあるし、いっしょにいくよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

博士のラボ。

此処は、様々な和風要素と、中央に鎮座している大型コンピュータがなんともミスマッチに置かれている部屋だった。

そんな場所では、榊による説明が開始さ「「「「えぇぇぇええええええ!?」」」」……れていただ「ふむ、何度でも言おう。彼女はアラガミだよ」………ぐすん(´・ω;:.:'::;.

 

「ちょ、あぶっ!」

「えっ? あっ!?」

 

彼らがこうして恐れるのも仕方がない。

アラガミとは、その細胞全てが捕食する為の構造になっている。つまり、口以外の肌。例えば…腕や尻尾、爪の先に触れただけでも、その場所から“喰いちぎられる”のだから。

とはいえ―――

 

「まあ、落ち着きなよ。シオ君は君達を捕食したりはしない」

 

榊の科学者足る説明が始まる。

―――全てのアラガミには『偏食因子』。つまり、どんなものを好んで食べるかという食事の傾向があるのだ。シオの場合は、元々人間を食べないと言う意志があるうえ、自分より格上の存在。つまり、『他のアラガミ』を食すことによってオラクル細胞の進化と安定を図っているのだ。

 

早い話が、“人間? そんなマズイ物食べませんよぉ! HAHAHA!!”…と言うことだ。

 

「つまり、シオ君は我々人間と同じ。“とりあえずの進化の袋小路”に迷い込んだもの。ヒトに近しい進化を辿ったアラガミだよ」

「人間に近い…アラガミだと?」

「そう、これも『彼』からの報告だが、シオ君はすでに人間と大差ない……いや、普通の人間よりも多くの知識を得て此処に居る。既に対話は可能だし、下手な人間よりも頭が良いんじゃないかな? 君達も、話したい事があったらドンドン話すと言い。『彼』からの許可は貰ってあるし、シオ君自身、人とのふれあいを望んでいるからね」

 

興味深げに覗きこむ皆に、シオはニカッと笑った。

 

(っ、これ…オレーシャの……?)

「先生!」

「はい、コウタ君」

 

その笑みに、引っ掛かったモノがあるアリサだったが、それもコウタにかぶせられた事で取り消した。

それからは榊のアラガミ勉強会に突入したが、そこは省くとしよう。

 

あんまりそのままにすると、運営からナニカサレタヨウダ

 

「…最後に、この件は私と君たち第一部隊。そしてエリック君、カノン君とタツミ君だけの秘密にしておいてほしい。いいね?」

「ですが…教官と支部長には…」

「しぶっちょさん? メッ!」

 

支部長の名を出した途端、シオが猛反発して場が静まり返る。

榊はゆっくりとサクヤに近づくと、重々しく口を開いた。

 

「…この子の言う通り。サクヤ君、君は天下に名だたる人類の守護者ゴッドイーターが、その前線拠点であるアナグラに秘密裏にアラガミを連れ込んだと、そう報告するつもりなんだね?」

「それは…しかし、何のために?」

 

ふっと笑うと、榊は詰め寄る。

 

「言っただろう? これは貴重なケースのサンプルなんだ。『彼』からの正式な依頼もあるし、あくまで観察者としての私個人調査研究対象さ。

 この部屋のセキュリティは、アナグラと独立させてあるからバレる心配も無いしね。

 

 ……君だって、今やってる個人的な活動にも、余計なツッコミを入れられたくないだろう?」

「!!」

 

最後に呟かれた言葉で、サクヤは完全に沈黙した。

 

「そう! 我々はすでに共犯なんだ。覚えておいてほしいね!」

「えちごやー、おぬしもワルよのー!」

「はははっ、褒め言葉さ!」

 

メガネを押し上げると、榊はソーマに向きなおる。

 

「彼女とも仲良くしてやってくれ。ソーマ、特に(・・)君も…よろしく頼むよ」

「ふざけるな! 人間の真似事をしていようと、バケモノはバケモノだ…」

 

そう言って、無言で退室するソーマ。

ちらりと、コウタは伺う様にシオを見たが、彼女は終始笑顔だった。

 

「…ところで、先ほどから博士の言う『彼』とは、誰なのですか?」

「君たちなら、あった事はあるだろう…カオス君だよ」

「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」」

「えっ? 誰ですか? ウロッちさんじゃなくて…? え?」

 

……そう言えば、アリサは遭遇してなかったか?

 

してないね、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『放してカオス! シオちゃんが、シオちゃんがぁ!』

「プリーズ止まれェェエエエ!!! 落ち着けウロッちぃ! シオは研修とか旅行的なモノに行かせたと思えばいいからぁ!! とりあえず止まらないとアラガミとして発見されて、そのまま実験施設行き―――あばばばばば!」

「ちょ、ネコちゃん轢かれたぞ!? ウロッち止まれ、いいから止まれぇ!!」

「ウロッち落ち着いてよ! 常識人(ツッコミ)がボケ始めるだなんて、一番抑えきれないだからさぁ!!!」

『神は言っている―――此処は逝くべきだと!』

「「「字が違ァァァァァァァァァう!!!」」」

 

シリアスだと思った? 残念、キサラギ本社でした!

 

とまあ、会話からも分かるように、いきなり過保護な母親っぽい言動を始めたウロッちを全力で押しとどめているカオス達。リンドウはシオの供給なくて大丈夫なのか? と思ったそこのあなた、大丈夫なんです。

シオのオラクル注射、リンドウは安定期に入ったんでもう大丈夫になったんです。とかご都合主義を言ってみる。事実だが。

 

『クッ、私を止めると言うのなら―――容赦はしないわ!! パージ!!』

「「な、なんだってー(棒読み)」」

「おーう、ノリいいなお前ら。……って、そうか。もうギャグ入ったから俺は寝てるぞー?」

「「『お休みなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!』」」

 

そして、リンドウが『俺疲れたからパス』宣言をすると、挨拶が掛け声になって―――

 

 

―――此処に、第一次キサラギ大戦が始まったのだった……(DFFのナレーターボイス)

 

まず先手を取ったのはウロッち。

分離した女神像からは6本のスターライトブレイカー……もとい、アラガミ主砲が発射される。空を切り裂き、轟音を立ててオレーシャ達の場所に着弾するが、煙が晴れた場所には深さ30メートルの穴のみ。

カオス達は大きく跳躍し、空中に逃れていた。

 

「って、にゃにぃぃいいいいい!? ウロッちヤベぇ、本気ですよあの人ォ!!?」

「あわわわぁぁぁあああ!? ば、バスター顕現! 狙い―――撃つ(・・)!!!」

 

そして、オレーシャの腕に生成されたバスターが飛ぶ(・・)。

大質量のバスターブレードがウロッちの本体に着弾し、その部分に在ったオレンジの触手を一本巻き込んで大爆発を起こした。当然、ウロッちの体は抉られるような巨大な傷が出来る。

 

『痛ッ~~~~!! こんの…! 私の触手は――レボリューションだ!!』

 

女神像が手を振り下ろすと、触手が全て地面に潜る。女神像から数本の物質化したレーザーが伸びたと思うと、そのままカオスとオレーシャを叩き落とした。

そして――その周囲の地面をウロッちの触手が喰い削り、巨大なアリ地獄を形成する。

 

『触手棺――――触手送葬!』

「我愛羅ァ!? ちょ、シャレにならねぇゼそれはよぉぉぉぉおおお!!!?」

「ど、どうなるの?」

 

オレーシャはこの後、聞いた己を悔やんだ。

 

「触手で握り潰す。―――相手は死ぬ」

「イヤァァアアアア!!!」

 

叫べども、迫りくるのは触手の壁。ドーム状に覆われている以上、何処にも逃げ場は無く、オレーシャもカオスもそれに穴を開けるようなビームや砲撃の攻撃方法を持っていない。

万事休すか――いや、

 

「穴が無ければ、作ればいいじゃない!」

「はっ! お、オッケー!」

 

いつしか益荒男との戦いで用いた『ヒートパイル』。いち早く触手に掴まれた箇所を切断したカオスは、それを近くの触手壁にぶち当てる。一瞬壁が迫るのを喰いとめた隙に、チャージを完成させたオレーシャが二本の腕をくっつけ、一本の巨大なバスターにした神機モドキをぶち当てた。

 

「ホォォォォォォォオオオオム、ラァァァァアアアン!!!!!!」

「逆転サヨナラ、満塁の一打だぁ! これは決まったかにゃぁ!?」

 

しかし――――

 

 

現実は非情である。

 

『ヒィィィィィト、エンド!!』

「「ぎゅべぇっ」」

 

カエルの押しつぶされたような声を出し、二人は潰されてしまったとさ。まる

 

「……ウロッち、本懐を忘れてるみたいだなぁ。あいつらも結構やるじゃねぇか。

 お~い、アーミー君サケ持って来てくれ、サケ」

「はっ、少々待っておれ」

 

ダミアンに指示を出し、高みの見物を決め込むリンドウ。

暫くすると、ダミアンが戻って来た。

 

「こちらです」

「ん、サンキューな……って」

 

 

―――コレ、酒(サケ)じゃなくて鮭(シャケ)だろうがー!!!!

 

 

シリアスも

 長く続けば

  ギャグ落ちに

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。