勢い余った怒りと共に、
すると、カバーがめくれ、その下から本当のタイトルが……
『ウロッち愛好家、主任の秘密日誌(はぁと』
「ねえ、なんなのコイツ? なんでこんな吾輩を怒らせる事ができるん?」
やけ酒ならぬ、ヤケニボシを口いっぱいに頬張っていると、ウロヴォロスの触手を一本喰い尽したシオが、何事かとネコカオスに近づいてきた。
「ともだちできたよ! ……なにしてるの?」
「いや、もしかして名前は“ウロッち”とか言うんじゃなかろうな?」
「なんでわかった? かおすすごいな!」
「ああ、その、うん……もう疲れたよ、パトラッシュ」
ああ、今はこのダンディなジョージボイスが身にしみるぜ。
こんど、キリエ・エレイソンでも唱えておこう。
何とか心を落ちつけ、ウロッちとやらが佇む窓に向かった。
「……で、貴様がウロッちだな?」
『……コクリ』
「……吾輩たちを、誘導したな?」
『……bグッ』
「にゃんでやねん!」
スパコーン!と、フグとクラゲを合わせた因子のハリセンでひっぱたく。
触手の一本の先端を患部にあて、撫でるように患部をかばう姿が……うん、アレだ。ヒトっぽいけど、コイツがやると、ものすごくシュール。
「なぜ吾輩を撃ち落とした?」
『……?』
「おなじにおいがしたっていってるよー!」
『コクコク!』
「翻訳御苦労、しかし、吾輩が同族の匂い……? いやいや、まさかキサラギ製なワケが無かろう――」
『ブンブン』
「かおすだって~」
「忌まわしきは教授かぁぁぁぁ!!」
そういやそうだった。
ウロヴォロスの素材は全て【混沌の――】。
混沌の因子を、パチもんの存在とは言え保有している吾輩と同じような物と言うことらしい。向こうは純粋に色んなアラガミ喰っただけであろう?
それともアレかね?吾輩、ネタキャラとでも言うのかね?事実そうだけども。
「ぜえ、ぜえ、ぜえ……ええい、ますます吾輩たちの危険性が高まったではないか。理性のあるウロヴォロスって、それどんなチート?」
とにかく、危険性は爆発的に高まった。
これが小型だったり、中型のアラガミなら一緒に連れ回しても十分オーケーだが、コイツはよりによって【超弩級】。全長10メートルをゆうに超え、動き回る山みたいなものだ。
コレ諸共我々が、アナグラに捕縛される可能性が跳ねあがる。
「でもなー、日誌的にキサラギの皆さまの思いを無駄にするのもやぶさかであるからなー。とっつきにお世話になった過去もあるし、此処は匿うのが最良の手か……?」
潰されたくないし。
「トモダチ、つれてったらダメか?」
「まあ、いいんじゃにゃいか? 見つからなければ、な」
「やったー! ウロッち、いっしょだぞ!」
『b』
いや、触手っていろいろ変化してたけど、あこまで器用に変化できるんだな。
オラクル細胞、流石。
「ともあれ、飯漁りに行かねばなるまい。吾輩はともかく、貴様らはアラガミを喰わねば」
「ゴハンとりにいくぞ!」
「此処から南下して、鉄塔の森までの道すがら狩って行こうとしようか。ウロッちよ、上に乗せてはもらぬか?」
『コク』
「ならば、すぐにでも行こう」
了承を得たので、シオと一緒にストーカーウロヴォロス……改め、ウロッちの背中に乗る。ウロッちの背中は色々混沌としているので、捕まるところも沢山あって早々に落ちることはなさそうだ。
「では、ゆこう。大きな折れている煙突の場所を目指せ」
『コク……まろやか』
「ん? ……サリエェェェル!?」
下を見ると、踏み潰したサリエルが喰われてましたとさ、まる。
そのサリエルはスタッフ(シオとウロッち)が美味しく頂きました。
やってきました【鉄塔の森】。旧:小田原市の廃工場痕が痛々しい風景になっている。
ここは主に、工場と言うこともあり、機械生物みたいな【クアドリガ】や、さっき踏み潰した【サリエル】神種、水辺が近く【グボログボロ】種や、武者修行の為か【シユウ】種など、豊富なアラガミが現れる。極東に限り、どこも同じようなものだが。
とにかく、ここでの目的はアラガミ掃討。
旧神奈川県の東側は自分達が粗方喰い尽したので、またコアが結合されるまではこの西側で食事をとろうかと思ったからだ。
「ウロッち、ストップだ。それ以上は天井がつっかえるだろう」
『ピタリ』
「ほへ~、こんなとこあったんだな! あ、“いんてつ”だぁ」
「こっちは変若水があったぞ。……なんだ、欲しいのか?」
暫く素材採集をしていると判った事がある。
シオは隕鉄など、未知の鉱物や宇宙系の変わった物が好きだが、人の味覚に精通している場所も見受けられた。(
ウロッちは混沌とした物や、逆に純粋な物が好物のようだ。変質した岩や、超合金、哲学者の石など、変わった物が多かった。
うん?吾輩は何喰うかって?そりゃあ……
「ニボシはウマいし、タバコが至福。更にはキサラギの酒……ここが、理想郷か……」
そんな二人を肴に、一杯やるに決まってるであろう。
うん、ウマい。
しっかし、他のアラガミ一切見当たらにゃい事が気がかりなんだよね。
吾輩のセンサーにもピィ!と掠りもしないし。小型はまあ、居たけど(過去形)
そう思っていると、ついに吾輩のセンサーに気配を捉えた。
目標、此方に接近!あと20メートル……来ます!
「グギュアアアアアアア!!!」
「ヒレー!!!」
ざっぱぁぁぁん!と、水面の影が餌だと思ったのか、水を纏ってグボロ・グボロが姿を現した。
フッ、シオめ、獲物を見つけて喜んでおるわ。
さて、ウロッちは吾輩たちの戦いに手出しはするなよ?
『b』
アイコンタクトを送ると、あちらはサムズアップで返してきた。
伝わったようでなによりだ。貴様が介入すると、シオの好物部分(ヒレ)がすぐさま結合崩壊してしまいかねんからな。
「さて、始めようか……!」
我が身に宿る因子たちを開放する。
数々の獣がひしめき合い、吾輩の体の中で目の前の得物に対して歓喜している。
――ああ、同胞がまた増えるのか、と。
なかでも、最も活性化さしている因子達が己の中で暴れ狂っていた。タバコを口の端に加え、その因子達にただ一つ、たった一つだけ、命令を下す。
“行け”、と。
「とりとりとりとりとりとりとりぃぃぃぃ!!!!!」
カラスのように真っ黒な混沌の鳥達が、マシンガンの弾丸のように放たれた。
グボロ・グボロの砲塔を真っ先に破壊し、他の混沌は散らばり、グボロの全身に隈なくダメージを加えていく。そして、鳥が全て散った時、グボロには新たな影が覆いかぶさり――
「イッタダキマース!!」
両手をショートブレードの神機のように変化させたシオが、比較的脆い胴体部へ剣を奔らせた。水中で活動するアラガミであるグボロ種は聴力、視力ともに非常に弱い。それゆえ、接近に気付かなかったグボロ・グボロはあっけなく、その斬撃を体にくらった。
「グギョオアアアア!!」
反撃のためか、ヒレを起たせ、初撃で半ばから壊れた砲塔を此方に向ける。
アラガミを構成するオラクル細胞が装填、集中され、高密度の水のような弾丸が発射された。
それを見た吾輩はすぐに接近し、砲弾が放たれる直前に地面へ潜る。
その直後、ドンドンドン!と三連の砲弾が放たれる。
その反動で動きが取れないグボロ・グボロは格好の的。地面から這い出すと同時に、開放した巨大な角を持つ因子の塊でヤツを突き上げる!
「私が犯人だ!」
「なんの?」
律儀に突っ込んでくれたシオをスルーし、大きく仰け反ったグボロ・グボロへ拳と蹴りの連続攻撃をその顔面に叩き込む。重点的に歯の部分を狙った為、途中で参加してきたシオの攻撃を最後に、グボロ・グボロが体勢を立て直す頃には、奴の牙は無残で粗末なモノと化していた。
よろよろと立ちあがり、これはたまらない。と、水の中に逃げ出そうとするグボロ・グボロ。だが、最初にとりとりした因子達が水辺で防衛ラインを張っており、砲塔をいとも簡単に壊された事がトラウマとなったか、水辺を求めて右往左往している。
これはチャンス、と思った吾輩はシオにある弾丸の指示をした。
「プリーズ! 止まれ! 今だ、シオ!」
「いっけぇ!!」
撃ちだしたのは、ゲーム中で何度もお世話になった弾丸。
No サイズ 弾種 発射条件
1 SS 弾丸:射程が長い弾 ボタンを押したら
2 ├L 弾丸:射程が極短い弾 1が何かに衝突時
3 └M 制御:生存時間が短い弾 1が何かに衝突時 上120°
4 └SS 装飾弾丸:射程が極短い弾 3と同時に 上60°
5 ├S 弾丸:斜め上に打ち上げる弾 4と同時に 上120°
6 │└S 弾丸:斜め上に打ち上げる弾 5が何かに衝突時 下60°
7 └S 弾丸:斜め上に打ち上げる弾 4の自然消滅時 上120゜
8 └S 弾丸:斜め上に打ち上げる弾 7が何かに衝突時 下60゜
名称を“ラピッドショット”。雷属性弾丸版である。
計六発の弾丸を着弾とほぼ同時に打ち込むバレットであり、OP消費もお得だ。(wikiより)
それが右往左往している間抜けなグボロ・グボロに全て命中し、多段命中の痛快な音を立てながら、胴体の結合崩壊と同時にその生命活動を停止させた。
と言っても、コアが再び細胞を集めれば元に戻るのだが。
「よし、喰らうとしようか。なに、ウロッちも喰うといい」
「ゴッハン、ゴッハン!!」
『ゆーらゆら』
嬉しそうに揺れるウロッちの触手。
だが、別に愛らしい姿でも無いので、かなりシュールな姿であった。
そうして、この日もまた終わりを迎える。
何気ないカオス達の混沌とした日常は、こうしてしばらく繰り返されるのでしたとさ。