幻想の投棄物   作:マルペレ

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その5

 場所は戻ってキサラギ本社。

 【鉄塔の森】で、ある程度コアの取り溜めをした吾輩たちは、勝手にオラクルを結合しないようにする特殊なカプセルを発見し、そこにコアを入れることで食糧の長期保存が可能になった。

 ……吾輩はもう突っ込まんぞ。

 

 それから、最近初めてゴッドイーターを見かけた。

 あれはそう、【愚者の空母】で漁業(グボロ・グボロ狩り)の帰りに【銀魂の廃寺】で欠けた仏像を崇めていると、【ブラスト】という大口径の神機を携えた桃髪……そう、あの台場カノンちゃんを見かけたのだ。

 ……ええ、戦闘モード(裏人格)でしたとも。

 お、おおおおおっかねーー!!!!にゃんだアレ!?コンゴウの顔面に放射系のバレットぶちかましたと思ったら、後ろに回り込んでOアンプル飲んでから放射連打!?しかも、「断末魔素敵だったよ!」って!断末魔って!おま……

 

 ハァ、ハァ、ハァ……逃げ帰りましたとも。

 こんなグレートなキャットみたいな生物(ナマモノ)、あんなテンションのカノン様に出会えば、見猫必殺ですとも!吾輩はチキンハートなのだよ!

 

「ま、そんな事があったな……」

「ニンゲン、コワイな……」

 

 という事をシオ達に聞かせております。

 どうも、ネコアルク・カオス(1ヶ月目)です。アラガミ的な生活にもそろそろ順応したと思った瞬間、ゴッドイーターと言うトラウマを植え付けられました。

 怖え。マジ怖えんだよ。なんだよアレ。

 

『ちょんちょん、ひらひら』

「ウロッち、ぐるぐる(※注【嘆きの平原】中心部の竜巻)のちかくになんかいるって!」

「む? アラガミか?」

「ううん。ヒトみたいだよ」

「ほほう」

 

 大方ゴッドイーターだろうけど、此処まで遠出するって事は、第一部隊の面々だろう。

 クールな兄ちゃん(ソーマ)かカッケェオッサン(リンドウ)か……さ~て、一体だれかにゃ~

 そう思ってかっぱらった望遠鏡を覗いてみた。ま、ダメならサクヤさんかな~なんて……

 ………ゑ?

 

「いいか? 今度こそ誤射直せよ? 今度はいるっていう新人と、【新型】の先輩になる為にこんな遠くまで出張ったんだからな」

「は、はい! わざわざすみませんタツミさん!」

「さ、始めようぜ」

 

 ショートブレードのイケメン兄ちゃんこと、大森タツミ。そしてその横に居るのは……う、うっそぉぉぉぉ!?

 

「あの、頑張りましょうね!」

「訓練なんだからそう気張るなって。それから、裏人格もなるべく抑えろよ?」

「わかりました! あ、でも射線上には入らないように気を付けてください」

 

 聞 き 間 違 い じゃ 無 かっ た ! !

 やっべ、なんで此処にカノン様いんの? いや、練習は分かるけどさ。

 あ、オウガテイルやられ――「射線上に入るなって、私言わなかったっけ?」早速誤射してるーー!?

 

「なに?……おお、ヒトだー!」

「あ……ちょ、シオよ、何処に行くのだ!?」

「あってオハナシする! 一緒にイタダキマスだな!」

 

 そう言うと、シオはひらりとこのビルから飛び降りてしまった。

 吾輩も後を追おうとすると……

 

『ひらり』

「どうしたウロッちよ。吾輩も早くいかねば」

『くいくい』

「いや……貴様が行っては混乱しか呼ばん。そこのコアは喰ってもよいから、此処で待ってて欲しいのだが」

『しょぼん……ひらひら』

 

 いったん落ち込むと、触手で出送るようにしてくれた。

 その気持ちだけは受け取って、自分もシオの方に向かう事とする。

 

「ジェット噴射5秒前。…3……2……0!」

 

 いざゆかん、そして――

 

「待たぬかぁぁぁ!!!」

 

 シオがヤバい。ヴァジュラ的な意味で!

 

 ◇

 

 一方、ネコでカオスな奴らがこちらに向かっているとも知らず、タツミは開始早々に誤射され、更には観測班の調査不足によって出て来た予定外の敵【ヴァジュラ】に苦戦していた。

 ヴァジュラは中堅のゴッドイーターの試練とも言える相手。どこぞのバグネコは例外として、決して簡単に勝てる相手ではなく、熟練のゴッドイーターでさえ油断すれば一撃で捕食、惨殺されてしまう。

 

 動物の中でも頂点に立つトラ。その姿形を真似たのか、圧倒的な王気(オーラ)を放ち、同時にヴァジュラは雷球をも放つ。その雷は神に逆らう者への刑罰の様で―――

 

「クッ! カノン、今だぁ!」

「そらそらそら!……喰らえ!!!」

 

 着弾地点を予想したタツミが雷をいなし、ヴァジュラの直接攻撃を牽制した上で、カノンが懐に潜り込み、零距離で爆発、放射系のバレットを幾つも叩き込む。

 油断さえしなければ、いくらヴァジュラであろうとも、彼らが負ける要素は無い。そうして行くうちにヴァジュラはどんどん傷ついて行き、その顔面の角が結合崩壊を起こす。

 だが、同時にヴァジュラは怒りで活性化。電撃の出力を大きく増大させ、唐突に地面から雷球を発生させる。それに反応できなかった二人はヴァジュラの近く…攻撃範囲内に捉われてしまった。

 

 あわや、此処で終わり――

 

「あったれー!」

 

 刹那、見たことの無いバレットが彼らの頭上を通過。そして、ヴァジュラに炸裂する。

 “きりもみ弾”という種類をベースにしたそれは、ヴァジュラに命中した瞬間、着弾地点から“十字”放射の軌跡を残し、死に体のヴァジュラに風穴をあける。

 体中を穴だらけにされたヴァジュラもそれには敵わず、その体を地に沈め、ついにはその命を散らす。ズズゥン……と地に伏してようやく、カノンとタツミは第三者の存在に気付いた。

 

「誰だ…アンタ…?」

「シオはシオだよ!」

「シオ…ちゃん……?」

「ギシャアアァァァ――ギャガァ!?」

 

 二人して首をかしげていると、突如後方から襲いかかっていたオウガテイルに飛来物が落下し、オウガテイルを砕いて砂埃が巻き起こる。

 再び戦闘態勢を取った二人だが、シオはその着弾点に近づき、

 

「かおすー。なんとかたすかった、よ!」

「やれやれ、独断専行、ましてやゴッドイーターに見つかるなど……危険だと言ったではないか」

 

 煙は晴れず、その正体は分からないが、厳格な男の声がその場に響いた。

 だが、徐々に風が吹くに連れてその正体も露わになって来る。

 

 一体どのような者がそこにいるのかと、ゴッドイーターは息を呑むが、存外、その影はとても小さく……

 

「ウチの妹が迷惑をかけたな。……ところで、このコト黙っててくれると嬉しいかにゃ~なんて……ダメ?」

「……ナマモノ?」

 

 二等身のネコ?が、タバコを口の端に咥えて、ハードボイルドに立っていた。

 

「あ、やっぱそう言う認識? フッフッフ、このG(グゥレイトォ)なC(キャッツ)に向かって何を言うかと思えば……そう、何を隠そ――」

「ネコさんだー!!」

「おぷべっ!?」

 

 説明しようとした瞬間、一瞬で桃色……カノン様に抱きつかれ、タバコを取り落としてしまった。

 ギャーギャーと反論するも、カノンの腕はゴッドイーターの腕力でネコカオスを締め付ける。

 

「ちょ、落ち着けガール!」

「タツミさん! この子飼ってもいいですか!?」

「あー、なんだ。まずは話を聞いた方がいいと思うぜ?」

「そうそうそう! だから放して、そろそろ、首…息が……ギブ…………がく」

「「「あ」」」

 

 ネコカオス。享年一ヶ――「まだ吾輩死んでねーから!!」……チッ

 

 ◇

 

 あれから説明をし、シオと自分の事を隠して欲しいと頼み込んだ。

 自分達はキサラギの社員の身内とペットで、生き延びるために行った実験で自分達はこうなった。幸いあんなふうに戦えるから、上への報告をして暮らしを破壊しないで欲しいと言うと……

 

「ふーん? ま、オマエみたいなナマモノじゃ無害だろうし、アラガミを狩ってくれるって言うんなら、俺達も長く生きれるからな。ま、不利益もないから黙っててやるよ」

「ふむ、理解ある人間で助かった。感謝しよう」

 

 とりあえず、だけどな。と付け加えると、タツミは笑った。

 曖昧だが、この様子では話す事は絶対にないだろうという確信は持てる。

 

 すると、カノン様がもじもじしながら話しかけてきて、

 

「カオスさん、時々会いに来てもいいですか?」

 

 ゴッドイーターとして戦いの日々の癒し(吾輩、愛玩動物!?)と、どのように暮らしているか。使える物があったら、居住区の母の為に何かプレゼントしたいと言うことらしい。

 断る理由も無いので、今度来た時に案内するように言った。一人だけで来た時、信号弾を上げると言う合図も決め、今度の任務で個々の仕事があったらすぐにでも来るとか。

 プレゼントに関しては、キサラギの開発は変態的(技術突出的)な製品が多いが、使える物もたくさん売っていた筈。ということで製品から探すことに。

 現に、アラガミのコアを保存できるカプセルまで作ってあったのだから、カノン様が満足するようなものもあるだろう。というのが、吾輩の見解である。

 

「それじゃかえろー。ウロッちが待ってるぞ!」

「そうだな。あ奴を一人にしておくのも忍びない」

 

 ここのコアはいくら喰ってもいいと言っていたから、一人にされてやけ食いしてるかもしれん。そう思っていると、タツミが不思議そうな顔をして、

 

「ウロッちって……まだ誰かいたのか?」

「同居人だ。詳しくは、今度来たカノンから聞くといいんじゃね?」

「それもそうだな……それじゃ、生き残れよ!」

「また会いましょうね! カオスさん!」

 

 これから信号弾を放って、遠くに待機しているヘリに出動を頼む様だから、姿を見られたくない自分達はアラガミの堆積物を乗り越えて、壁の向こうに消えた。

 帰る途中、シオは胸のあたりをポンポンと叩いて首をひねっていたので、何をしているのかきいてみると……

 

「なんか、ここがポカポカしたよ。これ、なにかなー?」

「ほう……」

 

 それは、友達ができた心の温かさだと教える。

 そう言うと、友達の意味を教えてあったシオは花の咲く様な表情になった。

 

「トモダチ……ウロッちとおんなじトモダチか! あったかいな!」

「良かったではないか、シオよ」

「うん! カノン、またあいたいな」

 

 部屋に到着するまで、終始笑いながら、二人について話していた。

 ビルの上階に到達し、ウロッちが出迎えてくれたあとにカノン様のことを話すと……

 

『ゆら!!シャキン!』

「うれしい、あそぶ!っていってるよ!」

「なら、歓迎の準備と人間に使えそうなものを探しておこうか。幸い、ウロッちはそこまでコアを喰っていないから貯蔵もあるからな」

「おー!!」

 

 皆で腕を突き上げ、ウロッちはこの周辺を、シオはこの部屋を、吾輩は地下の倉庫へカノン様のプレゼントを探し始めた。

 

 さて、次の来訪が楽しみになったな。存外に、あの接触は悪いものではなかったようだ。

 

「かおすー! これ、つかえるか?」

「ん? ……バ、バババ………」

 

 ―――○ーチャルボーイ!!?

 

 

 本当、ここでは楽しみが、尽きる事がないものだ。

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