場所は戻ってキサラギ本社。
【鉄塔の森】で、ある程度コアの取り溜めをした吾輩たちは、勝手にオラクルを結合しないようにする特殊なカプセルを発見し、そこにコアを入れることで食糧の長期保存が可能になった。
……吾輩はもう突っ込まんぞ。
それから、最近初めてゴッドイーターを見かけた。
あれはそう、【愚者の空母】で漁業(グボロ・グボロ狩り)の帰りに【銀魂の廃寺】で欠けた仏像を崇めていると、【ブラスト】という大口径の神機を携えた桃髪……そう、あの台場カノンちゃんを見かけたのだ。
……ええ、戦闘モード(裏人格)でしたとも。
お、おおおおおっかねーー!!!!にゃんだアレ!?コンゴウの顔面に放射系のバレットぶちかましたと思ったら、後ろに回り込んでOアンプル飲んでから放射連打!?しかも、「断末魔素敵だったよ!」って!断末魔って!おま……
ハァ、ハァ、ハァ……逃げ帰りましたとも。
こんなグレートなキャットみたいな
「ま、そんな事があったな……」
「ニンゲン、コワイな……」
という事をシオ達に聞かせております。
どうも、ネコアルク・カオス(1ヶ月目)です。アラガミ的な生活にもそろそろ順応したと思った瞬間、ゴッドイーターと言うトラウマを植え付けられました。
怖え。マジ怖えんだよ。なんだよアレ。
『ちょんちょん、ひらひら』
「ウロッち、ぐるぐる(※注【嘆きの平原】中心部の竜巻)のちかくになんかいるって!」
「む? アラガミか?」
「ううん。ヒトみたいだよ」
「ほほう」
大方ゴッドイーターだろうけど、此処まで遠出するって事は、第一部隊の面々だろう。
そう思ってかっぱらった望遠鏡を覗いてみた。ま、ダメならサクヤさんかな~なんて……
………ゑ?
「いいか? 今度こそ誤射直せよ? 今度はいるっていう新人と、【新型】の先輩になる為にこんな遠くまで出張ったんだからな」
「は、はい! わざわざすみませんタツミさん!」
「さ、始めようぜ」
ショートブレードのイケメン兄ちゃんこと、大森タツミ。そしてその横に居るのは……う、うっそぉぉぉぉ!?
「あの、頑張りましょうね!」
「訓練なんだからそう気張るなって。それから、裏人格もなるべく抑えろよ?」
「わかりました! あ、でも射線上には入らないように気を付けてください」
聞 き 間 違 い じゃ 無 かっ た ! !
やっべ、なんで此処にカノン様いんの? いや、練習は分かるけどさ。
あ、オウガテイルやられ――「射線上に入るなって、私言わなかったっけ?」早速誤射してるーー!?
「なに?……おお、ヒトだー!」
「あ……ちょ、シオよ、何処に行くのだ!?」
「あってオハナシする! 一緒にイタダキマスだな!」
そう言うと、シオはひらりとこのビルから飛び降りてしまった。
吾輩も後を追おうとすると……
『ひらり』
「どうしたウロッちよ。吾輩も早くいかねば」
『くいくい』
「いや……貴様が行っては混乱しか呼ばん。そこのコアは喰ってもよいから、此処で待ってて欲しいのだが」
『しょぼん……ひらひら』
いったん落ち込むと、触手で出送るようにしてくれた。
その気持ちだけは受け取って、自分もシオの方に向かう事とする。
「ジェット噴射5秒前。…3……2……0!」
いざゆかん、そして――
「待たぬかぁぁぁ!!!」
シオがヤバい。ヴァジュラ的な意味で!
◇
一方、ネコでカオスな奴らがこちらに向かっているとも知らず、タツミは開始早々に誤射され、更には観測班の調査不足によって出て来た予定外の敵【ヴァジュラ】に苦戦していた。
ヴァジュラは中堅のゴッドイーターの試練とも言える相手。どこぞのバグネコは例外として、決して簡単に勝てる相手ではなく、熟練のゴッドイーターでさえ油断すれば一撃で捕食、惨殺されてしまう。
動物の中でも頂点に立つトラ。その姿形を真似たのか、圧倒的な
「クッ! カノン、今だぁ!」
「そらそらそら!……喰らえ!!!」
着弾地点を予想したタツミが雷をいなし、ヴァジュラの直接攻撃を牽制した上で、カノンが懐に潜り込み、零距離で爆発、放射系のバレットを幾つも叩き込む。
油断さえしなければ、いくらヴァジュラであろうとも、彼らが負ける要素は無い。そうして行くうちにヴァジュラはどんどん傷ついて行き、その顔面の角が結合崩壊を起こす。
だが、同時にヴァジュラは怒りで活性化。電撃の出力を大きく増大させ、唐突に地面から雷球を発生させる。それに反応できなかった二人はヴァジュラの近く…攻撃範囲内に捉われてしまった。
あわや、此処で終わり――
「あったれー!」
刹那、見たことの無いバレットが彼らの頭上を通過。そして、ヴァジュラに炸裂する。
“きりもみ弾”という種類をベースにしたそれは、ヴァジュラに命中した瞬間、着弾地点から“十字”放射の軌跡を残し、死に体のヴァジュラに風穴をあける。
体中を穴だらけにされたヴァジュラもそれには敵わず、その体を地に沈め、ついにはその命を散らす。ズズゥン……と地に伏してようやく、カノンとタツミは第三者の存在に気付いた。
「誰だ…アンタ…?」
「シオはシオだよ!」
「シオ…ちゃん……?」
「ギシャアアァァァ――ギャガァ!?」
二人して首をかしげていると、突如後方から襲いかかっていたオウガテイルに飛来物が落下し、オウガテイルを砕いて砂埃が巻き起こる。
再び戦闘態勢を取った二人だが、シオはその着弾点に近づき、
「かおすー。なんとかたすかった、よ!」
「やれやれ、独断専行、ましてやゴッドイーターに見つかるなど……危険だと言ったではないか」
煙は晴れず、その正体は分からないが、厳格な男の声がその場に響いた。
だが、徐々に風が吹くに連れてその正体も露わになって来る。
一体どのような者がそこにいるのかと、ゴッドイーターは息を呑むが、存外、その影はとても小さく……
「ウチの妹が迷惑をかけたな。……ところで、このコト黙っててくれると嬉しいかにゃ~なんて……ダメ?」
「……ナマモノ?」
二等身のネコ?が、タバコを口の端に咥えて、ハードボイルドに立っていた。
「あ、やっぱそう言う認識? フッフッフ、この
「ネコさんだー!!」
「おぷべっ!?」
説明しようとした瞬間、一瞬で桃色……カノン様に抱きつかれ、タバコを取り落としてしまった。
ギャーギャーと反論するも、カノンの腕はゴッドイーターの腕力でネコカオスを締め付ける。
「ちょ、落ち着けガール!」
「タツミさん! この子飼ってもいいですか!?」
「あー、なんだ。まずは話を聞いた方がいいと思うぜ?」
「そうそうそう! だから放して、そろそろ、首…息が……ギブ…………がく」
「「「あ」」」
ネコカオス。享年一ヶ――「まだ吾輩死んでねーから!!」……チッ
◇
あれから説明をし、シオと自分の事を隠して欲しいと頼み込んだ。
自分達はキサラギの社員の身内とペットで、生き延びるために行った実験で自分達はこうなった。幸いあんなふうに戦えるから、上への報告をして暮らしを破壊しないで欲しいと言うと……
「ふーん? ま、オマエみたいなナマモノじゃ無害だろうし、アラガミを狩ってくれるって言うんなら、俺達も長く生きれるからな。ま、不利益もないから黙っててやるよ」
「ふむ、理解ある人間で助かった。感謝しよう」
とりあえず、だけどな。と付け加えると、タツミは笑った。
曖昧だが、この様子では話す事は絶対にないだろうという確信は持てる。
すると、カノン様がもじもじしながら話しかけてきて、
「カオスさん、時々会いに来てもいいですか?」
ゴッドイーターとして戦いの日々の癒し(吾輩、愛玩動物!?)と、どのように暮らしているか。使える物があったら、居住区の母の為に何かプレゼントしたいと言うことらしい。
断る理由も無いので、今度来た時に案内するように言った。一人だけで来た時、信号弾を上げると言う合図も決め、今度の任務で個々の仕事があったらすぐにでも来るとか。
プレゼントに関しては、キサラギの開発は変態的(技術突出的)な製品が多いが、使える物もたくさん売っていた筈。ということで製品から探すことに。
現に、アラガミのコアを保存できるカプセルまで作ってあったのだから、カノン様が満足するようなものもあるだろう。というのが、吾輩の見解である。
「それじゃかえろー。ウロッちが待ってるぞ!」
「そうだな。あ奴を一人にしておくのも忍びない」
ここのコアはいくら喰ってもいいと言っていたから、一人にされてやけ食いしてるかもしれん。そう思っていると、タツミが不思議そうな顔をして、
「ウロッちって……まだ誰かいたのか?」
「同居人だ。詳しくは、今度来たカノンから聞くといいんじゃね?」
「それもそうだな……それじゃ、生き残れよ!」
「また会いましょうね! カオスさん!」
これから信号弾を放って、遠くに待機しているヘリに出動を頼む様だから、姿を見られたくない自分達はアラガミの堆積物を乗り越えて、壁の向こうに消えた。
帰る途中、シオは胸のあたりをポンポンと叩いて首をひねっていたので、何をしているのかきいてみると……
「なんか、ここがポカポカしたよ。これ、なにかなー?」
「ほう……」
それは、友達ができた心の温かさだと教える。
そう言うと、友達の意味を教えてあったシオは花の咲く様な表情になった。
「トモダチ……ウロッちとおんなじトモダチか! あったかいな!」
「良かったではないか、シオよ」
「うん! カノン、またあいたいな」
部屋に到着するまで、終始笑いながら、二人について話していた。
ビルの上階に到達し、ウロッちが出迎えてくれたあとにカノン様のことを話すと……
『ゆら!!シャキン!』
「うれしい、あそぶ!っていってるよ!」
「なら、歓迎の準備と人間に使えそうなものを探しておこうか。幸い、ウロッちはそこまでコアを喰っていないから貯蔵もあるからな」
「おー!!」
皆で腕を突き上げ、ウロッちはこの周辺を、シオはこの部屋を、吾輩は地下の倉庫へカノン様のプレゼントを探し始めた。
さて、次の来訪が楽しみになったな。存外に、あの接触は悪いものではなかったようだ。
「かおすー! これ、つかえるか?」
「ん? ……バ、バババ………」
―――○ーチャルボーイ!!?
本当、ここでは楽しみが、尽きる事がないものだ。