CriminalGirlsExtra 7人の半罪人 作:左月ノ雨
「まぁいい、名前がないのは少し面倒だ。これからはシドウとでも名乗れ」
「……、あからさまに今考え、いってええええ!」
「もともと貴様が記憶を無くしたせいだろう? むしろ感謝してほしいね。」
「あ、ありがとうございます。」
ふぅ、と一息した彼女は俺に一本の平たいしゃ文字みたいな道具を渡してきた。
なにこれ、皮張りなのは分かるんだけど、マジでしゃ文字だったり?
「それが貴様の大切な道具となる。無くしたら……」
突然、襟を持ち上げられた。俺より少しばかり背の高い彼女は、俺のことを少し持ち上げる。
蔑む目は困惑している俺の顔をしか写すことが出来ないほどの距離に近づく。
ふわりと香る、ストロベリーがやたら頭に入ってそれしか入ってこない。
あんた、ギャップがありすぎだろ。
「貴様を殺してやるよ。」
手を離され、そのまましりもちをついてしまう。
冷たい床、上から降り注がれる冷たい瞳が俺を歓迎する。
「ふふ、いいぞ。屈服した目、私の生きがいなんだその目を見ることが、な」
嬉しそうに笑うその顔は年相応というには幼く可愛かった。笑った内容を知らなかったらだけど、
「さて、ここにいるためには貴様にも仕事をしてもらわなくてならない。それは分っているな?」
「はい……え?どういう」
「貴様にしてもらう仕事は、ヨミガエリという試練の同伴をしてもらう。」
「え、いやいや、いろいろおかしいし、え!? 蘇りってここ死後の世界なの!? ってことは俺死んで、いったあああ!」
「黙って聞け、それとも貴様は私の鞭が喰らいたいから口を開いているのか?」
「す、すいませんでした」
「ヨミガエリとは運がいいことに大罪起こす前に死んだ者、半罪人に更生の機会を与えてもう一度人としての生を迎えるのに相応しいかを試す。
地獄特別法3832条 第3項更生プログラム“ヨミガエリ”のことを指している。」
彼女はなにも言わず、ゆっくりと歩き出す。
ついて来いってことだよな?
てか、俺の意見何もかも無視されるし、質問にも答えてくれないし。鞭で殴られるし、もう泣きそうなんだけど。
「この“ヨミガエリ”を半罪人だけで行っても成功するわけがない。そのため半罪人を導く指導教官というものをつける。それが貴様だ。指導教官は半罪人をつれこの塔の頂上を目指してもらうわ。頂上までたどり着けた者だけが、『蘇る』ことが出来る。そういえば、自分が死んだかどうかほざいていたけど、結論から言うと死んでいない。ここ地獄にお前達は指導教官として迎え入れられた、いわゆる外部講師という扱いになるわね。だから一応死んでいない。けど……」
「けど?」
「ここで死んでしまえば、貴様がどんなに善行していようと地獄に落ちることが確定するってことだ。せいぜい死なないように努めることだ。」
「そんな塔を上るだけなんですよね? ならなんでその死ぬようなことになるんですか?」
「それは上ったらわかる。死んでも貴様の次の後継者はすぐに呼ばれるから気にせず死んでも大丈夫だ。」
「いやいや、なんで説明してくれないですか? 上って分かるようなら今教えて貰っても」
そう言った俺の前に7つの鳥かごの檻が現れる。そのうち4つは開けられ空となっていた。
残り三つには少女がいて、死んだような目で、何もかも諦めた目で、敵意をもっている目で、俺と彼女を見ていた。
「これが檻の鍵、彼女たちをあの檻から出して見せなさい。ちなみに貴様の前に一人の新人教官が、4人連れていった。一筋縄ではいかないぞ?」
そう言って彼女の前に鍵を投げる。つまり吊るされている檻の近くに鍵を投げた。
鉄どうしがぶつかり、大きな音を立てる。音はこの広い空間に飲み込まれ、消えていった。
いや、俺教官やるなんて一言も言ってないだけど? なんでやること決まってるんだ?
別に帰っても構わないよな。俺の後継者はすぐ見つかるって言ってたし。
「……乗る気ではない貴様に朗報だ。二回“ヨミガエリ”を拒否したものは強制的に地獄行きだ。つまりこのまま貴様が彼女たちを見捨てて帰ればな? それにお前の記憶ももしかしたら、一緒にいるうちに戻るじゃないか?」
「なにが言いたいんですか?」
「いや、別になにも、ただ事実を言っただけだ。“ヨミガエリ”は権利であり義務ではない。やりたくないとだだをこねる餓鬼までに人をさけるほど、地獄も暇ではないのでな。ああ、それとも記憶が戻るほうに質問したのか? それはそうだろう? ここ来て記憶を失ったなら、ここにその原因があるに決まっているだろう? 少なからず、この指導教官に選ばられるものは、健常者ではなくてはいけないからな。記憶喪失者など選考の時点で落とされる」
そんな分かりやすい挑発と餌に乗るとでも思ってるのかよ、大間違いだ。俺はそんな安い挑発に乗るような奴じゃない。自分の身が一番、死んで地獄落ちが確定する場所なんてさっさとおさらばするに限る。そうだろ? ふつう。
カチャッ
俺の手元で金属同士が小さくぶつかり音が響く。
気が付けば、俺はしゃがんでいて
気が付けば、俺は鍵束を握っていて、
気が付けば、
「貴様ならやると思ったよ。シドウ、今日から君がこの三人の指導教官だ。せいぜい努めろ」
嬉しそうに、笑う彼女が後ろに立っている。
ああ、やってやるよ。あんたに言われて覚悟を決めたのは癪だけどな。
それにあの記憶の女の子についても俺は知らなくちゃいけない。
後1話、今月中に投稿する。
変更 2月5日