チームJNPR(ジュニパー)
ビーコンアカデミーに存在するハンターチームの一つ
リーダー(J)ジョーン・アーク 男
メンバー(N)ノーラ・ヴァルキリー 女
同 上(P)ピュラ・ニコス 女
同 上(R)ライ・レン 男
卒業までの間、上記四名はチームであり、寝食を共にする。
この、寝食を共にするって部分が問題なんだよ! なお話し。
チームJNPR(ジュニパー)
ビーコンアカデミーに存在するハンターチームの一つ
リーダー(J)ジョーン・アーク 男
メンバー(N)ノーラ・ヴァルキリー 女
同 上(P)ピュラ・ニコス 女
同 上(R)ライ・レン 男
卒業までの間、上記四名はチームであり、寝食を共にする
――「この、寝食を共にするって部分が大いに問題な訳なんだよレン!」
チームリーダーのジョーン・アークは、チームJNPR自室にてライ・レンにこう切り出した。
「ええと、何の話でしょうか?」
「そうなんだ友よ。いくらチームだと言ってもだ、年頃の男女がハーフハーフだ。そして同室で暮らしてる。間違いの一つや二つはいずれ起こる、いや寧ろ起こらなかったのが不思議なくらいだ」
「えっ何々ついに間違いが起こった!?」
話に割り込んで来たのは同じくチームメンバーのノーラだ。何を勘違いしているのか、目をキラキラと輝かせ、わざとらしくリアクションを待っている。
「そっかぁ、遂にジョーンもオトナかぁ! 頑張った頑張った、で、どこまでいったの!?」
「待て待て、そういう話じゃないんだ。ホラ、なんていうのかなぁ、トラブルなんだよとにかく」
ちなみに現在、この部屋にピュラ・ニコスは居ない。だからこそジョーンはこの話を切り出したのだ。
「気付かなかったか? ピュラの様子がおかしいことに!」
「えー? どこが? 割とフツーだったけど。ねぇレンは何か気付いてる?」
「いえ何も。むしろ、どうおかしいのか……」
「そりゃ昨日までは変わらなかったさ。問題は夜だ。皆が寝静まった後からだ!」
途端、ノーラが期待に息を呑んだ。相変わらず勘違いしているに違いない、とジョーンは無視して続ける。
「いや、あの優等生のピュラがだぞ、ベッドを間違えたんだ! 気がついたら俺のベッドで寝てたんだぞ信じられるか!? ノーラならまだしも!」
「わっはぁーー、ダイタン! それでそれで、詳しく聞かせて! あと私ベッドは間違えた事ない」
「知っての通り、俺のベッドは一番端、ピュラのはその隣。で昨日、俺が寝てると、ごそごそと何かが布団に入って来た。俺は、瞬時に覚醒して悲鳴を上げようとしたんだ! そしたら口を塞がれた」
「なんと……」
「ヤバイ、そう思った時不意に、“ジョーン”ってそいつは俺の名前を呼んだ。ピュラの声だった。まさか、そんなとゆっくり振り返るったらマジでピュラだったんだ!」
「うんうん、それでそれでぇ!?」
「えっ、いや? そのままどうするか悩んで悩んで……ようやく俺はピュラにこう言った」
「おーっ! これはぁ――」
「“ぴ、ピュラ、ベッド間違えてるよ”ってさ」
(――ヘタレ)
(ヘタレですね)
「そしたらピュラも目を覚ましたんだ。それで、“ごめんなさーい”ってだけ言って自分のベッドに帰って行った。さすが優等生だよな、悲鳴一つもあげないで肝が据わってるっていうか……」
(ダメだこいつ……)
(問題ですね)
「だけど……そこからだ。ピュラが口をきいてくれなくなっちゃって……今朝挨拶したらよそよそしく対応されちまった。俺、ミスったのかなぁ?」
「あのさジョーン、それってミス以前の問題と言うかなんというか……ともかくこれは無視できない。チームに亀裂が走っちゃう。下手したらチーム解散の危機かも!? レン、どうしよう!!」
「どうしようもなにも、個人の問題ですし……」
「えーー? せっかくこんな面白――じゃない、チームのピンチに冷たくない? リーダーが悩んでるんだし、力を貸してあげようよ!」
「頼む!! ピュラは大事な友達なんだ、力を貸してくれ!」
「……仕方ないですね。アドバイス程度だったら……」
「おおっ、サンキューな! やっぱ、持つべきものは友達だ!」
――ジョーンが感激のあまり神に祈りを捧げるリアクションをとっている頃、話題の中心にあがっているピュラは、一人食堂で遅めのランチをとっていた。
とはいえ、頬杖をつき、手にしたフォークがプチトマトをなぞっている現状は、誰の目にも【何事かあったな】と感じさせるに十分だった。
(はぁ……完全に失敗しちゃったかも……)
だが、そんな様子の彼女に声を掛けようとする者は居ない。励まそうと思っていても、自分とは違う次元で悩んでいるのではないか、と想像してしまうからだ。
これもピュラ・ニコスの輝かしい経歴と、戦績の弊害であろう。
しかしながらそんな様子を知ってか知らずか、彼女の肩をポンと叩く人物があるのも事実。
振り向いた彼女に、「ハロー!」と浴びせたのは、チームRWBY(ルビー)のお母さんとも揶揄されるメンバーの一人、ヤン・シャオロンだ。
早速彼女はずけずけと隣に腰かけると、「どうしたの? 元気ないじゃん」とお母さん振りを発揮し始めた。
「いいえ、何でもないわ。ありがとう」
と、すぐに表情を張り替えて対応するピュラだったが、相手の目を誤魔化すにはまるで足りない。
「そっ。まぁ、言いたくない事なら言わなくてもいいよ。でも、一人で抱えてちゃなかなか解決出来ないかもね」
「――そんなに私、変だった?」
「うん。バッチリ。溜め息があればパーフェクトだったよ」
「はぁ……ねぇヤン、あなたは取り返しのつかない失敗をしたことある?」
「えっと、何の話? まぁ、今のところはないよ?」
あっけらかんと答えるヤン。
「だって、アタシの場合、何とかして取り返すから。ホントは……一回、そうなる所だったけど、ホラ、アタシ運は良いしさ」
「そう。アナタがちょっぴり羨ましいかも」
「いやいやそんな事ないって。能天気なだけだよ。まぁ、とにかくあれ、あんまりクヨクヨしてても良くないよ。チームメイトには相談したの?」
「あっ、あ~、いや、まだ」
(そのチームメイトとの問題なんだけどね)
「ふ~ん」
しかし、ヤンは何かを察したのか、これ以上の追及を避け、代わりにこう言い残した。
「ま、気が向いたら何でも言ってよ。少しは力になれるかも。じゃーねー」
席を立つヤン。彼女のランチプレートには、空になった食器類。全く、いつの間に食べたのだろうと感心しつつ、ピュラも最後のプチトマトを頬張ると、席を立った。
(取り返しがつく内に解決しないとね。ありがとうヤン)
――「だからぁ、ピュラってば絶対にジョーンに気があるんだって! じゃないとあんなタイミングで名前を呼ばないよ!」
一方自室では、ノーラがこうまくし立てていた。
「ま、まさかぁ。彼女は超有名人だぜ? 俺みたいな落ちこぼれに気があるなんて事はないだろ?」
とジョーンが反論すれば、
「だったら何故、彼女はわざわざマンツーマンで、アナタに戦いかたを教えてくれているのです?」
とレンがもっともな事を言う。
「そーだよ! 二人きりで内緒の特訓までしてるんだし、あれで気がないとかだったらひっくり返ってカエルの物真似してもいいね」
「待て待て待ってくれ、あれはチームメイトだからだろ? もしかしたら周りからは、俺とピュラってそんな風に見えてるの?」
「うん」
「ええ」
「寧ろビーコンの生徒からは割と有名だよ。あの女神ピュラ・ニコスの隣にいる冴えない野郎は誰だっ、てな具合に」
そう言われて、最近妙に知らない生徒から話し掛けられる機会が増えた事を思い出すジョーン。あれはピュラ効果だったのか。ってか冴えないって……
「そ、そう言えば特訓中も、やけにボディタッチが多いような……」
「そう、それ! やっぱ、ピュラはジョーンともっと仲良くなりたいんだよきっと! ジョーン、それにキチンと応えてあげなくちゃ!」
「でもなぁ、単に男として見られてない様な気もするし……それにピュラに限ってやっぱりそんな――」
そこまで言いかけた時だったか、
「私がどうしたの、ジョーン?」
「「「ピュラ!?」」」
ドアの手前にはピュラが立っていた。もしや今の話を聞かれたのではないだろうな!? ジョーンは慌てながら返事をする。
「い、いや、何でもないんだピュラ! ホントだぜ?」
「ふ~ん? まあいいわ。ジョーン、今日の特訓は?」
「あ、もうそんな時間か。ごめん、すぐ行く!」
「じゃあ先に行って待ってるわ」
ピュラは、すぐに部屋を出ていった。ジョーンは慌てて自分の武器である長剣【クロケア・モルス】を装備する。
部屋を出る直前、世話になった親友二名をチラッ、と見ると、ノーラが軽くウィンク、レンは腕組みし、ウンウンと頷く。
まるで、“決めてきな、ブラザー”とでも言われている気分だった。何度も言うがそんなのじゃない。でもある程度の真実は欲しい所だ。
こうしてジョーンは、ピュラの待つ学園の屋上テラスを目指した。時間が経てば街の灯りと砕けた月が闇夜に浮かぶ、幻想的な場所。
確かに特訓の名目なしで、男と女が二人でこの景色を眺めていたなら、それはデートにしか見えないだろう。ノーラのせいで、妙な想像をしてしまう。
息を切らせ辿り着いたら、夕日をバックにピュラが髪をなびかせ立っていた。ジョーンに気付いた彼女は、早速槍状に変形した武器【ミロ】を構えた。
「さ、始めましょ」
「お、おう」
息つく暇無くジョーンが剣と盾を構えた瞬間、ピュラの鋭い突きが繰り出された。
ビュウ、と空気を裂いた一撃はシールドを穿ち、弾き飛ばす。腕にびりびりと衝撃を感じるより早く、ミロの柄が肩を叩き、剣が手からこぼれ落ちた。
「あっ」
という間に、槍の穂先が顔面近くで寸止めされる。これが試合であれば、秒殺だと後ろ指を指されるであろう結果だ。
「どうしたのジョーン? 精彩を欠いてるわ」
「あ、ご、ごめん」
「もしかして……昨日のこと?」
いきなり核心を突いて来るピュラに、ついついジョーンは答えに窮する。
「いやいや、その、なぁ」
「ごめんなさい私、つい……」
と、目を逸らすピュラ。心なしか、頬が紅潮している気がする。ごめんなさい、はまだしも“つい”とは?
おいおいまさか、ノーラやレンの戯言が事実だったりするのか? マジでピュラは、俺に……
「うっかりベッド間違えた上に、見苦しい寝顔見せちゃって……ジョーンは何も悪くないわ、気にしないでね」
「へっ?」
うっかりベッド間違えた? それに、気にしてるのは、寝顔を見せたことだって?
ノーラ、間違ってるじゃないか! やっぱりピュラに限ってそんなことなかった。
「ジョーン?」
「あ、ああ、いや……み、見苦しくなんてなかったよ。寧ろずっと見てたかったくらいで……め、目によかった、ぜ?」
(あれ? 俺何言ってんだ!?)
「――ふふ、ふふふあははは! 何言ってるのジョーン! でも、ありがとう。一応誉め言葉として受け取っておくわ」
「お、おお。しかしピュラでもそんなドジすることあるんだな」
「当たり前よ。私だって人間だもの」
「――ははっ、違いない」
「さっ、続けましょ。ヴァイタルフェスティバルまでもうすぐだしね」
「ああっ!」
――キィン、キィンと武器のぶつかり合う音が再開される。覗き見していたノーラとレンは、その結果に嬉しい様な、物足りない様な、複雑な表情を浮かべていた。
「あーあ、あそこまで行ったら、もっとこう、ねぇレン?」
「妥当だと思いますが」
「つまんないの。帰ろレン。レンのパンケーキ食べたくなってきた!」
「今から? ……はぁ、仕方ないですね」
去っていく二人の背後で、リーダーの短い悲鳴があがっていた。