ハイスクールD×D ARC    作:ユウキ003

2 / 37
と言う事で、書き直しレベルで修正したプロローグ第1話です(※詳しい事は目次の作品解説の部分をお読み下さい)。
元からあった台本形式を廃して、以前よりも面白い作品に
なるように頑張っていくつもりですので、よろしくお願い
します。


プロローグ 第1話 R

 

SIDE ???

 

「僕を、僕を、殺して下さい。お願い、します」

 

夜。誰もが寝静まる時間。場所はどこかの

某所にある教会。

そこでまだ幼い、10歳にも満たないと思われる

少年が目の前に経つ赤い髪の男性に、縋るよう

に懇願していた。『自分を殺してくれ』、と。

 

だが、その男は、普通ではなかった。

背中にコウモリのような羽を生やしている。

彼は、視線を少年から周囲へと向ける。

教会のあちこちには灰が積もり、それが

開かれた扉から吹き込んだ風で周囲を

舞っている。

 

男性は再び、少年に視線を戻す。そして

彼は、少年に向かって徐に右手を

翳した。周囲の暗さと男の髪のせいで、

男性の表情をうかがい知る事は出来ない。

 

だが、少年はどこか、安堵した表情を

浮かべていた。それを前にして、赤髪の

男性の仲間たちが悲痛そうな表情を

浮かべていた。

 

やがて、男性の掌から赤い光が瞬いた。

 

 

~~~数時間前~~~

 

SIDE 守

 

その日、僕はお父さんとお母さんに連れ

られて教会に来ていた。

僕にはまだ宗教とかは分からないけど、

お母さんとお父さんはよくこの教会に

来ているみたい。でも僕がここに来たのは

今日が初めてだ。

 

初めて見る教会に驚きながらも、お母さんに

手を引かれながら僕は中へと入る。

すると……。

「おぉ!来たぞ!」

「あの子が我らが主のっ!」

「ありがたや、ありがたや」

 

中にいた大勢の人達が僕達を、ううん。

僕を見つめている。その視線に、僕はどこか

気持ち悪さを覚え、後ろに下がろうと

した。

「大丈夫だ守。何も心配する必要は無い」

でも、僕の背中に手を回したお父さんの

手のせいで、僕は下がる事が出来なかった。

「う、うん」

 

お父さんの声に頷く僕。でも、その時僕は、

怖かった。僕を見るお父さんの目が、

どこか暗くて、光が無いように思えた。

 

でも、お母さんに手を引かれる僕は止まる

事なんて出来ず、気がつけば僕は神父様の

前に立っていた。

「こんばんは。君が、『神谷 守』君だね?」

「は、はい。初めまして、神父様」

僕が神父様に挨拶をすると、お父さんと

お母さんが近くの長椅子の方に行って

しまった。僕もそっちに行こうとした。

でも……。

 

「あぁ、待ってくれ神谷君」

僕は神父様に肩を掴まれ、行く事が

出来なかった。

 

「あ、あの。何です、か?」

「すまない。でもどうか安心して欲しい。

 実は君に、少しだけ手伝って欲しい、

 いや。違うな。実は君のお父さんと

 お母さんの希望でね。君に神の

 祝福をして欲しいとお願いされて

 いるんだ」

優しそうな表情で僕にそう言い聞かせる

神父様。

でも、僕にはその表情が、とても怖く

思えた。まるで笑顔をと言う仮面を、

顔に貼り付けたかのような笑顔で。

 

でも、僕に拒むことなんて出来なかった。

怖くて拒否する言葉すら出なかった。

「さぁ、こっちへ。この寝台の上に」

そして僕は、神父様に言われるがまま、

十字架の下にある寝台へ寝っ転がった。

 

すると……。

「諸君っ!今宵はよくぞ集まってくれた!」

さっきまでの穏やかな表情は消え失せ、

神父様はまるで熱に浮かされたような、

子供の僕でも分かる、狂っていると言う

言葉が似合いそうな笑みを浮かべながら

高らかに叫んだ。

 

「今日という日に、世界にっ!新たな王

 が誕生するのだ!さぁ皆の祈りを

 ささげようっ!その祈りが、新たな

 王を生み出すっ!さぁ、儀式の

 始まりだぁぁぁぁぁっ!」

神父様が叫んだ次の瞬間、寝台の真下に

魔法陣みたいなものが現れ、そこから

緑色の触手のようなものが生え、僕の

周囲を囲んでいく。

 

「ひっ!?」

そして僕は、恐怖の声を漏らしてしまった。

慌てて逃げようと、体を起こそうとする。

だけど体はまるで言う事を聞かない。

『助けてっ』と叫ぼうとしても声が出ない。

 

「恐れる事は無い守君ッ!これは喜ばしい

 事なのだっ!君の体を器にして、新たな

 王がっ、この世に顕現するのだからっ!」

神父様の言葉なんて、恐怖に震える僕の耳に

入ってこない。それでも何とか動く視線で

お母さんとお父さんの方に視線を向ける。

 

そこで、2人は狂ったように笑みを浮かべていた。

 

その時、僕は子供ながらに思った。

 

『僕は、親に見捨てられたのだ』と。

 

その恐怖と、絶望が限界まで高まった時。

触手が僕の体に刺さった。胸に、お腹に、

足に、手に。でも痛みが無い。それが

逆に恐怖を煽った。

 

泣き叫びたくても、口が声を出すことを拒む。

すると直後、僕の胸から、別の触手が生え、

それが神父様の胸に突き刺さった。

「うっ!?は、はは、ははははははははっ!

 あははははははははっ!王よぉっ!

 我が魂をっ!貴方様にぃっ!」

狂ったように笑っていた神父様。でも、

次の瞬間、その体は灰となって崩れ、

来ていた服だけがその場に残った。

そして触手を通して、神父様の命が、

魂が、僕の体に流れ込んでくる。

 

『ドクンッッ!』

 

それだけで、心臓が爆発したかのように

大きな鼓動が響いた。

でも、それは始まりにすぎなかった。

次の瞬間無数の触手が僕の体から飛び出し、

教会の中にいた人達を刺し、その命を

吸い尽くし灰へと変えていった。

 

『ドクンッッ!!!ドクンッ!!!!!』

 

次第に大きくなる鼓動に、僕は、自分の体

が破裂するんじゃ無いかと、そう思って居た。

 

と、その時、触手がお母さんとお父さんに

向かって行く。

僕は『逃げて』と叫びたかった。でも

やはり、口は動かない。

何でこんな事に。

どうして僕が選ばれたの?

僕は、どうなるの?

 

答えてくれる人も居ない問いかけをするしか

出来ない。そして……。

『『ズブッ!!』』

 

触手が容赦無く、お父さんとお母さんに

突き刺さり、その命を喰らう。

そしてお父さんとお母さんが、灰になり、

消えていく。

 

『あ、あぁ、あっ、あぁっ。

 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

無力な僕はただ、心の中で泣き叫ぶ事しか

出来なかった。

 

 

SIDE サーゼクス

 

夜。それはある意味私達『悪魔』の時間だ。

私の名は『サーゼクス・ルシファー』。

悪魔の中にあってそれを率いる存在

である四大魔王の1人だ。

 

そんな私は、同じく魔王の1人であり友人の

『セラフォルー・レヴィアタン』。

私の眷属であり妻の『グレイフィア・

ルキフグス』を伴ってある場所へと

やってきていた。

 

「あそこね~。情報にあった怪しい

 実験を企ててる狂信者の根城の

 教会ってのは」

私達は木の枝の上に立ち、遠目に

見える教会を見つめていた。

 

教会とは、私達悪魔の敵である存在、

天界の領地だ。だがあの教会の土地は

悪魔が密かに管理している土地だ。

まして実験には、人体実験の可能性あり

と言う情報までこちらに届いている。

 

何が起るか分からない以上、悪魔の長の

1人として、こうして友人や眷属達と

共に来た訳だが……。

「行こう。ここから観察していても

 埒が開かない」

「OKサー君!」

「かしこまりました」

 

私達3人は悪魔の翼を広げ、静かに

教会へと接近した。

そして玄関前に着地するが、教会側からの

反応は無い。念のため待ち伏せを警戒して

周囲を観察するが……。

 

「人の気配が殆どありませんね」

我が妻、グレイフィアが静かに呟いた。

確かに、周囲に気配のような物はない。

待ち伏せは無いと考えるべきか、

或いはそう思わせるための罠があるのか。

分からないが……。

「行こう」

 

ここで立っていても始まらない。私は

静かに教会の扉を開いた。

 

そして……。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

教会の中から、1人の少年の慟哭が

聞こえてきた。

 

「ッ、何だ?」

私達は静かに教会の中、礼拝堂へと

足を進めたが……。

 

「ッ、何、これ」

そこでは、無数の灰の山が作られ、その

周囲には人の服や靴、装飾品が散乱していた。

私達が開いたドアから吹き込んだ風によって

灰が舞い散る。

 

そんな礼拝堂の中央で、1人の、黒髪の少年

が灰で汚れた女性物の服を抱きしめながら

泣き叫んでいる。

 

かと思うと、彼の体が緑色の光に包まれ、

一瞬その体が、灰色の飛蝗の怪人のように

なった。かと思うと再び少年の姿に戻った。

そのサイクルを何度も繰り返していた。

 

まるで、人と異形の間で揺れ動いているかの

ようだった。

 

とは言え、周囲の状況から、恐らく実験は

既に終わっていたのだろう。そしてその

実験の結果が、あの少年なのか?

こうしていても始まらない。私は静かに、

少年の方へと歩み寄った。

 

すると、彼も私達に気づいたのだろう。

呆然と、私達の方を見つめている。

その直後。

「あっ、こ、来ないでっ!!」

少年は怯えた様子で僅かに後退る。

 

「大丈夫。怯えなくて良い。私たちは

 君に何もしないから」

「ち、違う。違うんです!僕に、僕に

 近づいたら、僕が、みんな、食べちゃうから!」

「食べる?」

 

少年ゆえだろうか。その表現はまだ幼いため、

一瞬私は理解出来ずに首をかしげてしまった。

「僕の、僕の体から、へ、変なウネウネが

 生えて、皆の、皆の体に刺さって。

 そ、それで、お父さんも、お母さんも、

 神父様も、みんな、みんなっ!

 あ、あぁ!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

再びの少年の慟哭。そして私は理解し、

周囲を見回し、密かに唇をかみしめた。

 

灰の山に見える人の衣服。更に彼の傍に

見える神父の服。恐らく首謀者はその神父。

彼等は自らを生け贄としてあの少年を

異形の存在へと、強制的に進化させた

のだ。

 

だが、彼をこのままにしておく事は出来ない。

私は静かに、今も泣き続ける少年に

歩み寄る。

「あっ!こ、来ないで下さいっ!」

「大丈夫だ。私達は普通の人間ではないんだ。

 私は、『魔王』なんだ。だから大丈夫」

「え?魔王、様?」

「そうだよ」

 

私は少年の前に立ち、微笑を浮かべる。

そんな私を彼が静かに呆然とした表情で

見上げている。

しかし、彼は俯いてしまった。

 

「大丈夫だよ。私達は……」

「あ、あの」

私が優しく声を掛けようとしたが、それを

彼が遮った。

「魔王様、って、強い、ですか?」

「ん?まぁね。これでも私は結構強いよ?」

何故彼がそんな事を聞くのかは分からなかった

が、とりあえず答えてしまった。

 

すると……。

 

「な、なら、お願いがあります」

「ん?なんだい?」

 

その時、私は軽い気持ちで問いかけて

しまった。だが直後の回答は、私の

予想を遙かに超える物だった。

 

「僕を、僕を、殺して下さい。お願い、します」

「ッ」

 

一体誰が予想出来ると言うのだ。目の前の

年端もいかない少年が、殺してくれと

言う事など。

 

「……なぜ、そんな事を?」

「僕は、僕は、みんなを食べて、化け物に

 なって、怖くて、怖くて。でも、でも

 それ以上に、僕のせいで、他の誰かの

 大切な人を奪ってしまったら」

彼は震える自分自身の体を見つめながら

ポツリと呟いた。

 

「だから、だから、そうなる前に、僕を、

 殺して下さい。僕が、誰かを傷付けて

 しまう前に」

「……怖くは、無いのかい?死ぬ事が」

「痛いのも、怖いのも、苦しいのも、

 全部嫌いだけど、でも、でも……。

 僕が、そうやって皆に痛い思いも、

 怖い思いも、苦しい思いも、させる

 くらいなら……」

 

「ッ!」

彼は、笑っていた。その目尻に涙を

浮かべながら、精一杯笑っていた。

 

「どうせ僕はもう、人間じゃないから。

 だから、誰かを傷付けてしまう前に、

 殺して下さい」

 

「ッ!」

『ギリッ!』

 

今、私の胸の中で怒りと悲しみが激しく

渦巻いていた。

こんな優しい子が、醜い人間の私利私欲に

利用されている事に悲しくなり。

そしてそんな彼の魂を利用した人間達への

怒りが、激しく渦巻いていた。

 

後ろでも、セラフォルーとグレイフィア

が悲痛な表情を浮かべていた。

きっと、私と同じような事を考えている

のかもしれない。

 

そんな中で、私は少年に右手を翳した。

右手に赤い光が集まり、魔法陣を形作る。

少年の表情が、一瞬恐怖で歪む。だが、

彼はすぐにキツく目を閉じ、母親の物

と思われる服をギュッと抱きしめながら、

その場から逃げようとしない。

 

こんな、優しい人間が、果たして世界に

どれだけいるだろうか。

見知らぬ誰かに利用されながらも、自分が

誰かを傷付ける事を良しとしない。

それほどまでに他者を慈しむ心。

 

それは美しい宝石のように輝かしい魂だ。

彼は今も、自分の死の瀬戸際に直面

しながらも、私から逃げようとしない。

死の瀬戸際。その時人は、生きようとして

醜い本性を晒す物だ。だが彼は違う。

逃げたいと叫ぶ心を押し殺し、誰かの為に、

自分を犠牲にしようとしている。

 

紛う事なき、その優しき魂。

 

だからこそ……。

 

私は彼を殺す事が出来なかった。

 

「眠りなさい」

私がそう呟いた直後、少年の体が倒れそう

になり、私がそれを抱きかかえた。

 

私は彼を魔法の力で眠らせただけだ。

私の持つ滅びの力で、彼を消滅させる

事は出来なかった。

 

「サーゼクス様」

そこに後ろからグレイフィアが歩み寄って

来た。

「グレイフィア。……私はまた、甘いこと

 をしているのだろうね」

「はい。……ですが、私もきっと、同じ事

 をしたでしょう。……私には、彼のように

 優しい子供を殺す事は、出来ないかも

 しれません」

「そうか。いや、だがそれで良いんだ。 

 グレイフィア。私も、そうだった

 のだから」

 

こんなにも優しい子を、ここで死なせる

のは惜しい。私はそう思っていた。

「セラフォルーも、良いかな?彼の

 事は……」

「うん。私も異存は無いよ。……それに、

 私もソーナちゃんと同い年くらいの

 子供を手に掛けるなんて、出来ないよ」

「……そうだな」

 

もしかしたら、私が手を下せなかったのも、

私には彼と同い年くらいの、妹がいたから

なのかもしれない。

 

そう思いながら、私は彼女達と共に

少年を連れて、その場をあとにした。

 

 

~~翌日~~

あの少年を保護した翌日。改めて私は

昨夜の教会を訪れていた。そこは昨日と

変わりは無く、中には灰と衣服が散乱

しているだけだった。

 

私は教会の中を探し歩き、あの少年に

施された実験の情報を探した。しかし、

めぼしい資料の類いは無く、あったのは

儀式への段取りなどの資料だけ。

首謀者と思われる神父も死んでいる事から、

あの少年を生み出した、その先の目的など

は一切不明だった。と言うか、資料を

見る限り儀式自体も成功するか分からない

様子だった。

 

そう言う意味では、儀式が成功して生き残った

あの少年は、運が良いのか、或いは悪いのか。

それは私にも分からなかった。

 

その後、情報収集を諦めて私は帰宅した。

「サーゼクス様」

家の前までテレポートすると、グレイフィア

が迎えてくれた。

「ただいまグレイフィア。あの少年の

 様子は?」

「今も眠っております。それと、先ほど

 『アジュカ・ベルゼブブ』様より

 あの少年の姿について、分かった事が

 あるとの事でした」

アジュカとは、私やセラフォルーと同じ

魔王の1人だ。

「アジュカから?それで?」

「既に情報をまとめた書類をお受け取り

 しています。執務室でご覧になられ

 ますか?」

「あぁ、そうしよう」

 

その後、私は執務室でアジュカから貰った

資料に目を通していたが……。

「はぁ」

読み終わった後に、ため息が出てきた。

「どうされました?サーゼクス様」

「あぁ、うん。それなんだが、念のため

 父上や母上にも報告しておきたい。

 2人を呼んで貰えるかな?」

「はい。かしこまりました」

 

その後、私は母である『ヴェネラナ・

グレモリー』。父である『ジオティクス・

グレモリー』に、リビングに集まって

もらい、彼の、『神谷守』君の事を

話した。

 

「『オルフェノク』だと?」

そして、私の話を聞いた父はそう言って

驚いていた。

 

『オルフェノク』。

 

それは、現在において少ない伝承のみが

伝えられている伝説の種族だ。

 

かつて、私達悪魔、天界の神と天使。

そして天使が邪な感情から堕天した、

『堕天使』の3つの勢力が大きな争いを

繰り広げていた時代があった。

 

オルフェノクはその時代よりも以前に

存在した種族だ。数は少ないが、その

力は圧倒的であり、当時の3大勢力は

オルフェノクとの対立を恐れていた

と言う記述もある程だ。

その容姿は、人とそれ以外の、主に動物を

掛け合わせたような物で言わば獣人。

その体が灰色一色である事から

『灰色の種族』とも言われていた。

 

「はい。そして、私達が見たあの少年、

 守君の姿からして、彼は恐らく、

 オルフェノクの王、『アークオルフェノク』

 だろうとも」

「オルフェノクの王、か。例の少年は?」

「今も部屋で眠っています」

「そうか。……サーゼクス、お前は彼を、

 どうするつもりだ?」

「……正直、オルフェノクの強さが正確 

 に分からない以上、その王である、

 いえ、王になってしまったあの子の

 戦闘能力を推し量ることは出来ません。

 また、その身に起った不幸を慮れば、

彼の精神は今とても不安定かも

しれません。正直、危険な存在と

言われても否定出来ない所です」

私の言葉に、2人とも難しい顔を

している。

正直、彼の存在は不安要因だ。その力は

大きすぎ、また、それを扱う少年も不安定。

これでは何時爆発するか分からない爆弾の

ようなものだ。

安全の面から言えば、彼を生かした私の

選択は甘いのかもしれない。

 

だが、それでも……。

 

「それでも、私は、他者を傷付けるくらいなら

 自分を殺してくれと頼む少年を。自分の命を

 誰かの為に差し出せる少年を、殺す事が

 出来ませんでした。その命を、惜しいと

 私は思ったのです」

 

誰かの為に、なんて人は口にしたとして、

それを守れる人間がどれだけ居る。

いざとなれば我が身可愛さに豹変する人間を、

私は何度も見てきた。

だが、彼はその死を覚悟した瞬間であっても、

逃げる事はしなかった。いや、逃げようとする

心を必死に押し殺していたのかもしれない。

 

もし仮に彼が生きる事を諦めていたのなら、

あの時死の恐怖に怯える事は無かったはずだ。

だからこそ、あの時彼を押しとどめた物は、

『生への執着心』ではなく『他者への思いやり』。

そうだと私は信じている。

 

「そして同時に思うのです。彼がもし、力を

 付け、成長したとしたら、もしかしたら、

 何か大きな事を為すのではないか、と」

「……それは、貴方の感という奴かしら?」

「はい、母上。これは1人の悪魔としての、

 私の感です」

「そう」

母上は静かに頷くだけだ。

「それで、サーゼクスは彼を育てるつもり?」

「はい。調べましたが、彼に両親以外の

 身寄りはありません。なので、既に彼に

 帰る事の出来る場所は無く、無闇やたらに

 世間に放り出せば、むしろ彼が追い込まれ

 力を暴走させる結果になるとも考えています。

 なので、私が育てようと思います」

それが、私の決意だった。

 

数秒の沈黙。やがて……。

「分かりました。ならばサーゼクス。

 見届けてあげなさい。その幼き王を」

「そうだな。ここでお前と彼が出会った

 のも何かの縁かもしれない。

 だが、彼の扱いについては十分

 気をつけるのだぞ?」

2人はそう言ってくれた。

「ありがとうございます」

 

こうして、私は彼を、神谷守君を

養子として迎え入れる決心を固めた。

 

 

SIDE 守

 

ここは、どこ?

 

目が覚めて、僕は最初にそう思った。

ここは天国なのかな?いや、でも、僕は

たくさんの人を殺したから、行くとしたら

多分地獄だって思ってた。

 

周りを見回すと、僕はベッドの上で寝ている

事に気づいた。でも、多分まだ寝ぼけている

のか、声を出したくても上手く出せず、

誰か、男の人と女の人の声が聞こえた。

 

「か……よう……うだい?」

「いま……もん……です」

けど、まだ寝ぼけてるせいか会話は

聞き取れなかった。

その時。

 

『ギィィィッ』

 

音がした。扉が開くような音が。僕は

ゆっくりと首を動かすと、その視線の

先にいた女の子と目があった。

 

そこに立っていたのは、赤い髪の、僕と

同い年くらいの女の子だった。

 

 

それが、僕と彼女の、のちに僕の家族に

なる女の子との、初めての出会いだった。

 

 

~~時間は少し戻り~~

 

SIDE サーゼクス

彼を保護してから2日が経過した。私は

仕事をある程度終えた後、グレイフィア

に任せていた守君のところへと向かった。

「失礼するよ」

「サーゼクス様」

彼のいる部屋に入ると、グレイフィアが

腰掛けていた椅子から立ち上がろうと

したので手を上げて制止し、再び

座らせた。

「グレイフィア、彼の様子は?」

「術は既に解けていますが、今も眠った

 ままです。報告としては、時折

 うわごとのように『お母さん』、と

 呟いています」

「……あんな事があった後だ。悪夢を

 見ているのかもしれない」

「そうですね。……所で、彼を養子にする

 件ですが、よろしいのですか?」

「あぁ。彼は私が育てる事にした。

 ……君には、負担を掛けてしまうかな」

「いいえ。どうかお気になさらないで下さい。

 サーゼクス様の事ですから、これくらい

 はすると思っておりましたから」

そう言って微笑を浮かべるグレイフィア。

「ははっ。流石は我が妻だ」

そんな彼女に私も笑みを浮かべてしまう。

 

とは言え……。

「本題に戻るが、彼がこのまま目覚めない

 と言う可能性は無いか?人間の頭の

 防衛機構とかで、強いショックを受けた

 人間が眠ったままと言う話を聞いた事が

 あるが?」

「私も人間の医学への造詣が深い訳では

 無いので何とも言えませんが、彼は

 既にオルフェノク化しているので、

 何とも……」

「そうだったね。彼の容態はどうだい?」

「今のところはまだ問題無いですね」

 

そうかぁ。と、彼女と話をしていた時だった。

 

『ギィィィッ』

 

扉を開く音がしたのでそちらに目を向ける

と、そこにいたのは私の年の離れた妹、

『リアス・グレモリー』が立っていた。

「おや、リアス。どうしたんだい?

 こんな所で」

「お兄様こそ、その男の子は誰?」

「え?あぁ、彼か。彼は私が預かる事に

 なったんだ。でもまだ眠っていてね」

「そうなの?でも、その子こっちを

 見ているみたいだけど?」

「えっ!?」

 

小首をかしげるリアスの言葉に驚きながら

振り返ると、確かに神谷守君が私達の方

を見つめていた。

 

 

SIDE 守

 

だんだん頭がはっきりしてきた僕は、

ゆっくりと体を起こして、自分の体の

次に、周りを見回した。そこには、

あの教会で見た銀色の髪の女の人と、

魔王様。それに、魔王様と同じ色の髪

の女の子がいた。

 

「ここ、は……」

「目が覚めたようだね。神谷守君」

「あなたは、魔王様?……あれ?

 どうして、僕の名前」

「すまない。勝手だけど、君について

 色々調べさせて貰った」

「どうして、そんな……。あぁ」

 

言いかけ、思いだした。僕が、

何をしたのかを。

 

そうだ。あの時僕は……。

「どうして、僕は、生きてるんですか?

 あの時、僕は……」

「分かっている。君は私に、殺してくれ

 と言った」

「じ、じゃあ……!」

「だが、私は君を殺さなかった。それには

 ちゃんと理由があるんだ」

理由?でも、僕には、そんなのどうでも

良かった。

 

「なんで、僕を殺してくれなかったんですか?

 こんな、こんな僕なんか、生きてても

 仕方無いのに」

怪物になってまで、生きていないなんて

思わない。それに、僕が生きていたら、

きっとまた誰かを傷付けてしまう。

 

だから……。

 

そう、思った時。

 

「あなた何様のつもりっ!?」

 

不意に、赤い髪の女の子の声が聞こえた。

 

 

SIDE サーゼクス

 

私達が彼の対応に困っていると、その時

リアスの叫びが聞こえた。

「殺してくれ、ですって?そんなに

 死にたいのなら、自分で死になさいっ!

 私のお兄様の手を煩わせないでっ!

 男のくせにそんな覚悟も無いなんて、

 情けないとは思わないのっ!?」

「リアスッ!?」

突然の彼女の叫びに、私とグレイフィアは

内心肝を冷やす思いだった。

 

なぜなら今の彼の精神状態は不安定だからだ。

アークオルフェノクの力が未知数である

以上、下手に彼を刺激したくは無い。

 

だが……。

 

「そう、ですよね」

 

不意に、彼は乾いた笑みを浮かべるとベッド

から起き上がり、テラスの方へと歩みを

進めた。

「それじゃあ、魔王様に、迷惑、ですよね」

恐らく投身自殺を図るつもりだろう。

「待つんだ守君っ!」

 

私は咄嗟に駆け寄り、彼の肩を掴んで止め、

少々強引にだが振り向かせた。

「聞いて欲しい。君は、何の罪も無い子供だ。

 そんな君が命を絶つ必要なんて無いんだ」

「子供、ですか?こんな、こんな化け物の

 僕が、子供って言えるんですかっ!?」

 

彼は叫び、数歩下がった。かと思った次の

瞬間、彼の体を青い炎が包んだ。

「お嬢様っ!」

後ろにいたグレイフィアが咄嗟にリアスを

庇い、私も僅かに下がった。

 

そして、その青い炎が消えると、そこには

あの日私達が教会で見た、飛蝗の怪人、

『アークオルフェノク』がそこに立っていた。

 

「え?嘘、何、あれ」

後ろではグレイフィアに庇われたリアスが

愕然としている。

 

その時、アークオルフェノクの影が守君の

姿を映し出した。

そして彼は自らの手足を見下ろしている。

 

「これが、これが、今の僕なんですよ!?

 こんな怪物が、普通の子供である

もんか!お父さんも、お母さんも!

あそこにいた人をたくさん殺して!

僕には、僕にはもう!こんな化け物

の力しかないのにっ!どうして

何の罪も無いって言えるんですか!?

こんな、化け物の僕なんか、死んだ

って、誰も、悲しむ人なんか、もう、

いないのに……」

 

そう言うと、守君、アークオルフェノクは

その場に膝を突いた。

「こんな、こんな誰かを傷付けるだけの、

 化け物なんて……」

そう言って今にも泣き出しそうな守君。

 

ここは……。

「それは違う。違うんだ、守君」

「え?」

「私は、本当の化け物というものを 

 知っている。奴らには、優しい心も、

 愛情も、友情も、そう言った心なんて

 物を持たない。誰がどうなろうと

 関係無い。好きなように暴れる。誰かが

 悲しもうが、どうとでも思わない。

 そう言う奴らこそ、『本物の怪物』

 なのだ」

「でも、でも僕の体は、もう、怪物に」

 

「……確かに、君のその体は、もはや

 怪物と呼ばれてしまうような体なの

 かもしれない」

「ッ、や、やっぱり……」

「でも、勘違いしないで欲しいんだ。

 私は、本当の輝き、美しさは、その

 心に宿るものだと、私は考えている」

 

「え?」

「ただ顔立ちが良いからと言って、本当

 にその人がいい人かなんて分からない。

 だからこそ私は、そんな外見が

 醜いとか美しいとかが、全てでは無い。

 むしろ、そんな事よりも心の美しさ

 の方が重要だと思うんだよ」

 

「心の、美しさ」

「そうだよ、守君。だからこそ私は君に

 伝えたい。君は、自分が大勢の人を

 殺したと後悔している。だが、それは

 間違いだ。……あの儀式を行った、

 身勝手な大人達こそが、本来罪を

 償うべき存在だ。そして敢えて

 はっきり言わせて貰うのなら、彼等の

 死は自業自得とも言える」

「でも、でもっ!僕は、あの人達を、

 殺して……!」

「そうか。……それでもやっぱり、優しい

君は彼等の死を、水に流すことが

出来ないんだね。……よし、ならば

こうしよう。君はこれから、戦いの中

で罪を償うんだ」

 

「え?戦いの中で、罪を、償う?」

「そうだよ。守君は、強くなって、いつか

 君が命を奪ってしまった数よりも、

 たくさんの命を守るんだ。

 それが、魔王として私が君に与える

 罰だ」

……ただ許すだけが、救いでは無い。

 

だからこそ私は、彼に罰を与える。

 

「人を、救う事が、罰?」

「そうだよ。……これからは私達が、

 君を見守り、鍛えてあげよう。

 そして、こうしよう。もし君が、

 本当に誰かを傷付ける怪物になった

 時は、君が願った通り、私が君を

 殺してあげよう。そして罪を償い、

それでも死にたいと言うのなら、

私達はもう君の自殺を止めない。

……だから、自殺はもう少し待って

くれないか?」

 

そう言って、私は床に膝を突くアーク

オルフェノク、守君に手を差し伸べた。

 

すると彼の体が緑色の光に包まれ、

元の子供の姿へと戻った。

 

「僕は、本当に、誰かを助けられますか?」

涙目で、私を見上げながら問いかけてくる守君。

 

「あぁ、もちろんだとも」

 

「僕は、まだ、生きてて良いんですか?」

 

「あぁ。私達と一緒に暮そう。守君」

 

その言葉に、守君は震える手で、私の

手を掴んだ。

 

「僕は、生きたい。生きて、いたい。

 怪物に、なっても」

 

「大丈夫。君は怪物なんかじゃない。

 そして君は、望めば英雄にだって、

 なれるんだ」

 

私は泣きながらも、しっかりと私の手を

握る彼の手を、優しく握り返した。

 

 

今日という日を、私は忘れない。

 

かつて恐れられたオルフェノクの王、

その2代目である彼と、本当の意味で

知り合ったのだから。

 

 

     プロローグ 第1話 END

 




って事でプロローグからリメイクです。

感想や評価、お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。