SIDE 守
僕が教会で、あの儀式から生き残ってから
2日が経ったある日、魔王様の家で僕は保護
される事になった。
あの後、魔王様と、その眷属という女の人、
『グレイフィア・ルキフグス』さんに自己紹介
をして貰った。
でも、2人の自己紹介が終わった時、
サーゼクス様と同じ赤い髪の女の子は
どこにもいなかった。
「おかしいな。さっきまでリアスがそこ
にいたはずなんだが。仕方が無い。
先に私の両親に挨拶を済ませよう」
「は、はいっ」
その後、僕はサーゼクス様たちに連れられ、
部屋を出た。
でも、改めて思うけど、この家は
昔テレビで見た事のある豪邸そのもの
だった。
と言うか、今更だけどサーゼクス様
って魔王だって言ってたよね。
と言う事はやっぱり偉いのかな。
そのお母さんとお父さんに会うって
事は……。れ、礼儀に気をつけた方が
良いのかな。
さっきのサーゼクス様の言葉で落ち着いて
きたのかもしれないけど、代わりに、
自分が今これまでの普通の生活では
考えられないような状況に、今度は
別の意味で緊張してしまう。
「さぁ、ここだよ」
「は、はいっ!」
そして案内されたドアの前にたどり着く頃
には、僕はガチガチに緊張していた。
どうやらそれはサーゼクス様もお見通しの
ようで、何やら笑みを浮かべた。
「ふふっ、何もそこまで緊張する事は
無いよ。肩の力を抜いて。ね?」
「は、はいっ」
と言われも、そんなすぐに緊張を解く事は
出来なかった。
そして、開かれたドアを潜って中に入ると、
そこにはサーゼクス様と同じ髪の、
ダンディな人と、優しそうな笑みを浮かべる
亜麻色の髪の、女の人が、ソファに並んで座っていた。
「さぁ、守君。こちらへ」
「あっ、は、はいっ」
そんなお二人に見とれていた僕だけど、
サーゼクス様に呼ばれ、僕はその隣に
腰を下ろした。
改めてお二人と向かい合うけど、やっぱり
緊張してしまう。
「父上、母上。こちらの少年が、今日から
私の養子となります、神谷守君です。
守君」
「は、はいっ。えと、神谷守、です。
その、ご迷惑をかけるかも、しれませんが、
お、お世話になります」
そう言って頭を下げた後、お二人の様子を
伺うと、女の人が立ち上がって、僕の
方へと近づいてくる。
も、もしかして何か怒らせるような事を
してしまったのかな。
そう思った僕は震えながら俯いた。
でも……。
「大丈夫よ」
その女の人は、震えていた僕の手を優しく
包み込み、僕の前に屈み込んだ。
「ここには、あなたに危害を加える人は
いないわ。……辛かったでしょう?
怖かったでしょう?悲しかったでしょう?
でも、もう大丈夫よ」
そう言うと、女の人は僕を抱き寄せた。
僕は女の人の胸に顔を埋めてしまう。
最初は戸惑った。でも、何というか、
暖かさに包まれているようで、とても
安心出来た。そして、張り詰めていた糸
のような緊張がほぐれるのと同時に、
涙が溢れてきた。
「今日からは、私達があなたの家族よ。
だから、我慢なんてしないで、
思いっきり泣きなさい」
「う、うぅっ、うっ、うぅ。
ありがとう、ございます」
それからしばらく、僕は嗚咽を漏らした。
数分後、泣き止んだ僕だけど、僕の涙や
鼻水で女の人の服を濡らして、汚して
しまった。でも女の人は……。
「良いのよこれくらい。でも、着替えてくる
からちょっと待っててね?」
そう言って一旦部屋を出て行った。
しばらくして、女の人が戻ってきたので
改めて自己紹介をした。
男の人はジオティクス・グレモリー様。
女の人はヴェネラナ・グレモリー様。
と言う名前らしい。
でも、あれ?
「あの、質問しても、良いですか?」
「ん?なんだい?」
僕の質問に首をかしげるジオティクス様。
「サーゼクス様は、その、お二人の
子供、で良いんですよね?」
「えぇ、そうよ」
「でも、名字が違うので……」
「あぁ。その事か」
ジオティクス様は柔らかい笑みを浮かべながら
頷いた。
「サーゼクスはね、魔王を襲名する、まぁ
魔王に選ばれた事でルシファーを名乗って
いるんだ」
「な、成程。ありがとうございます、教えて
いただいて」
でも、魔王に選ばれるくらいなんだから、
サーゼクス様はきっと凄いんだろうな~。
今日から僕は、そんな凄い人の子供として
一緒に生活するんだなぁ、と。
僕はどこか他人事のように思ってしまっていた。
それから、サーゼクス様たちの家の使用人
や、サーゼクス様の眷属という人達に
一通り挨拶をした後、あの時僕が見かけた
女の子にも挨拶を、と言う事だったん
だけど……。
結局、彼女とは出会えず、食事の席で
挨拶を、と思ったんだけど、何だか
避けられているようで会う事が
出来なかった。
そして、僕がグレモリー家に来てから、
数日が経過した。
あれから、僕は主にグレイフィアさんに
色々な事を教えて貰った。
この世界の事。サーゼクス様やグレイフィアさん
が悪魔である事とか、色々な事を。
今僕がいるこの場所は、悪魔と堕天使の種族が
存在している『冥界』と呼ばれる場所である事。
グレモリー家とは、悪魔の貴族である『72柱』
と呼ばれる名門の家系の一つなんだとか。
でも、かつて悪魔、天使、堕天使の3つの種族
による大きな戦争があって、この72柱の、
半分以上の家系が断絶、つまり子孫が途絶えて
しまっているらしい。
そうやって、僕は普通なら知らなかった
世界の歴史を勉強しながら、同じように
グレイフィアさんや、サーゼクス様の眷属の
人達から、力の扱いについて特訓をして
貰った。
今では、何とか自分の意思であの姿に
なったり出来るようになった。また、
サーゼクス様たちからはこの姿が
過去に存在したオルフェノクという
種族の王の物である事は聞いていたけど、
まだ自分が王だなんて、実感出来なかった。
サーゼクス様が言うには、その力は強大で、
だからこそ無闇矢鱈には使わないように、
って念を押されていた。僕としても、この
力でグレモリー家の人達を傷付けないよう
に注意している。
そんな訓練をしていたある日。
グレモリー家に、別の魔王様が尋ねてきた。
「はじめまして、でも無いんだけど、
でもやっぱりはじめまして、かなっ?
私はサー君と同じ魔王の1人。
セラフォルー・レヴィアタンだよ!
よろしくねっ、神谷守君っ!」
そう言って、自己紹介してくれた人、
レヴィアタン様の事を見つめていると……。
「あっ、確かあの時、サーゼクス様や
グレイフィアさんと一緒に……」
「そうそうっ!覚えててくれたんだ~!
ありがと~」
そう言って僕の頭を優しく撫でてくれる
レヴィアタン様。
っと、そうだった。
「改めまして、神谷守です。先日は、
お世話になりました。えと、お、お礼も
言わず、あの時は大変失礼しました」
相手は魔王様の1人。それも命の恩人。
ちゃんと挨拶をしないと、と思ったん
だけど……。
「も~固いよぉ~」
そう言って更に僕の頭を撫でるレヴィアタン様。
「まぁ、礼儀正しい子は私も好きだから
良いけど」
そう言うと、レヴィアタン様は僕から
離れ、手にしていた書類をサーゼクス様へ
手渡した。
「ほいっ、サー君への資料、預かってきたよ」
「ありがとうセラフォルー。しかし、何故
君が?」
「まぁこの子の様子を見に来たいって思ってた
からかな。……どう?大丈夫そう?」
「今のところは安定しているよ。最近は
グレイフィア達が先生になって
力を制御する鍛錬もしている」
何やら僕の事について話しているみたい
だけど、声が小さくて内容は分からなかった。
「そっか。……所でリアスちゃんは?
姿が見えないんだけど……」
「あぁ。それなんだが……」
言いかけ、僕の方を見るサーゼクス様。
「少し場所を変えようか」
「え?うん」
そう言ってレヴィアタン様とどこかへ
言ってしまった。
何だろう?と思って居ると……。
「守様。そろそろ午後の授業をはじめますよ?」
「あ、はいっ」
グレイフィアさんから呼ばれた事もあって、
僕はそちらに向かった。
SIDE サーゼクス
あの後、家の庭にあるテラスに話しの場
を移した私達。
「え?リアスちゃんが守君を避けてる?」
「あぁ。顔を合わせても、殆ど挨拶をすると
どこかに行ってしまうんだ。食事も
時間をずらして食べるようになってしまった」
「そっか~。まぁ、いきなり自分の家に
同い年くらいの異性が来て一緒に
生活を始めたら戸惑うよね~。特に子供
って、そう言うのに慣れてないんじゃない?
急な環境の変化ってのに」
「やはり、そうなのだろうな。まぁ守君も
まだ家に慣れていないようだからなぁ」
「何か仲良くなれるイベントでもあれば
良いんだけどね~」
守君の精神の安定のためにも、彼には
負担を掛けたくは無い。まぁ2人の
関係が険悪、と言う訳ではないのが
せめてもの救いか。
2人の表情からしても、どう接して良いか
分からないといった感じのように
見えるからね。
「しかし……」
私はセラフォルーから渡された資料を
読み返していた。
「セラフォルー」
「ん?何?」
「君はこの資料を読んだのかい?」
「え?読んでないけど、どうかしたの?」
「純粋に驚いているんだよ。ここには
かつてオルフェノクが創り出した
武器の一部のデータが載っているん
だが、どれも、現代の人間の科学力を
超えているものだよ」
そう言って私はセラフォルーに資料を
渡した。
しばらくすると、彼女は驚いた様子だ。
「こ、これって、携帯!?」
「あぁ。しかも携帯としての機能を持ち、
尚且つそのサイズでジェネレーター、
光線銃にもなるらしい」
「うわ~お。もはやSF小説ね~」
「はるか数世紀前に存在したオルフェノク
が、現在の人類社会を上回る科学力を
持っていたと言う事実。資料によれば、
中でも突出した性能を持つのが、
『ライダーズギア』と呼ばれる特殊な
鎧だ」
資料の中には、ライダーズギアの物と
呼ばれるベルトの資料もあった。
「それは、特殊なエネルギー、『フォトン
ブラッド』と呼ばれるエネルギーを
元にしており、その戦闘力は中級悪魔
を軽く超えるものらしい」
「フォトンブラッド、光子の血?
あんまり良いイメージは出てこない
ワードだね」
「あぁ。資料によればフォトンブラッドは
猛毒。浴びた者を灰にしてしまうらしい。
ライダーズギアの必殺技も、その猛毒を
利用しているようだ」
「下手な神器よりも強力な装備が
ゴロゴロって事?」
「まぁそう言う事だね」
改めてオルフェノクという種族の異常性が
分かるという物だ。だが、これは
彼等の開発した装備の一部に過ぎない。
「それも、アジュカが何とか見つけた
資料だ。きっとそこに載っていない、
まだまだ多くの装備を、オルフェノクは
持っていたのかもしれない」
「凄いねぇ。そんな大昔の種族だってのに。
あっ、でもなんでサー君はこんなに
情報を集めてるの?」
「一つは守君の力の制御に何か役立つ情報が
無いかと思ってね。今回の儀式の首謀者
は死んでしまったが、奴らの仲間が
生きていて、再び何かをするのではないか
と言う懸念からだよ。奴らがオルフェノク
に拘っているのなら、念のためその
オルフェノクの情報を集められるだけ
集めておこうと思ってね」
「成程。それでねぇ」
その後、私とセラフォルーはもう少し話しを
したあと、お開きになって私は帰っていく
彼女を見送った。
SIDE 守
僕がグレモリー家に来てから一週間くらい経った。
それからと言う物、僕はリアスちゃんと一緒に
グレイフィアさんの授業を受けていた。
今日は悪魔の駒、『イーヴィル・ピース』という
物の事教わったけど、相変わらず、リアス
ちゃんとは余り話せていない。
そして授業を受けていたけど、3時を告げる
鐘の音が響いた。
「……では、ここで一旦休憩を入れましょう。
今、お菓子とお飲み物を持ってきますので、
少し待っていて下さい」
午後の休憩時間になった。休憩はいつも
30分くらいあるけど、よしっ。
「あの、グレイフィアさん。僕、少し
外を走ってきます」
「え?今から、ですか?」
「はい。……少しでも体力を付けたい
んです。そうでもしないと、まだこの
力に振り回されそうで」
僕はまだ子供だ。だから、僕の中にある
アークオルフェノクの力のコントロール
も完全じゃない。まだまだ危うい。
でもこのままじゃダメなんだ。だから、
もっと強くならないと。
「……分かりました。では、3時半まで
には戻って下さいね?」
「はい。行ってきます」
そう言って僕は部屋を出た。
僕が弱いままじゃダメなんだ。
それにあの日、リアスちゃんは僕に
言った。『覚悟が無いなんて、情けない』って。
だから僕は、頑張るんだ。頑張って、
頑張って、強くならなきゃいけないんだ。
その『覚悟』を胸に、僕は強くなろうって
思ったんだ。
SIDE リアス
あの子は、守は、部屋を飛び出して
外へと行ってしまった。
私は、ただそれを見送るだけだった。
やがてグレイフィアが用意してくれた
お茶とお菓子を食べていた。
でも……。
「お嬢様?」
「え?あ、何?グレイフィア」
「大丈夫ですか?ここ最近、どこか
顔色が悪いご様子ですが?」
「ッ、え、えぇ、大丈夫よ。気にしないで」
私は、グレイフィアに一瞬ドキリッと
しながらも、普通を装った。
でも……。
「本当に?」
少し疑うような目で私を見つけるグレイフィア。
「…………」
「…………」
数秒、私達はお互いを見つめ合うけど……。
「うぅ、ごめんなさい」
結局私の方が折れて視線を逸らした。
「やっぱり、何か気になる事があるんですね?」
「うん」
「……守様の事、ですか?」
「うん」
「私に、話して頂けませんか?そうすれば、
何かアドバイス出来るかもしれませんよ?」
そう言って優しく語りかけてくるグレイフィア。
……やっぱり、グレイフィアには
敵わないわね。
そう胸の奥で思いながら、答える事にした。
「私、初めて彼に会った時、酷い事
言っちゃったから」
「彼が、目覚めた時のことですね」
「私、何も知らなくて。あとでお兄様
から、彼がたくさん辛い事を
経験した事を聞いて。それで、
そんなあの子にどういう風に
接して良いのか分からなくて」
「それで、守様を避けていたのですね」
「だ、だって気まずいじゃない。この前
は知らなかったとは言え、あんな
酷い事言っちゃって。それなのに
なれなれしくしたら、逆に嫌われたり、
調子が良い奴って思われるかも
しれないし」
「成程。……まぁお嬢様がどうして
守様を避けるのかが分かった訳ですが。
お嬢様、私から言える事としては、
守様は恐らくあの時の言葉を、あまり
気にしていない様子ですよ?」
「え?そ、それってどういうこと?」
彼が気にしていないって、どういうこと
かしら?
「つい先日の事なのですが、守様が
訓練の最中に怪我をされた事が
ありました。幸い、オルフェノクと
なった守様の体の治癒能力は人間の
それと異なるために、傷自体はすぐに
消えてしまいました。しかしそれ
でも痛みはあるため、守様は涙目に
なりながらも訓練をしていました」
「そうなの?でも、彼はどうしてそこまで」
「はい、私もそれが気になって聞いて
みたのですが、理由はお嬢様の言葉
でした」
「え?私の?」
そこまで訓練を頑張る理由が私の言葉って、
どう言う意味かしら?私、あの子に
励ますような事言ったかしら?
私が首をかしげていると、グレイフィアが
小さく笑っている。
「ちょっ、笑わないでよグレイフィア。
その私の言葉って?何なの?」
「はい。それは『男のくせにそんな
覚悟も無いなんて情けない』、と言うあれです」
「え?えぇ?あれで?」
正直、あれは罵倒に近かったと自分でも
思ってるんだけど……。
それが理由になるの?
「はい。お嬢様のあの言葉が、思いのほか
守様に響いたようです。理由を聞いた時、
彼が仰っていました。
『僕はもう、情けないままじゃいられない。
だから覚悟を持って強くなるしか無いんだ
って、あの子の言葉で分かったんです』、と」
「情けないままじゃいられない?って、
どういうこと?」
と、私が問うと、グレイフィアは少し
真剣な、でも悲しそうな表情で話し始めた。
「守様は、知っての通り望んでアーク
オルフェノクになった訳ではありません。
その体は守様曰く、化け物になって
しまいましたが、心は今も、人間のまま
なのです。それもまだ、幼い子供の
ままなのです。訳も分からず怪物となり、
目の前で両親を、それも自分が殺して
しまったと言う記憶は、人1人の
心を壊してしまうのに十分な、
ショッキングな体験です。でも
守様の心は壊れず、その中を絶望が
支配していた。……それでも、
守様は自分が誰かを傷付けないようにと、
あの教会でサーゼクス様の殺してくれ
と懇願したのでしょう。それが、あの時
の彼が、力の暴走を恐れて考え
抜いた精一杯の解決策。彼の良心が
絞り出した、最も良い終わり。
でも彼はサーゼクス様に罰を与えられ、
生きている」
罰、それは私もお兄様から聞いている。
彼が殺した数よりも多くの命を救うこと。
それが、お兄様が彼に与えた罰。
『許す事が必ずしも一番ではない』、そう
お兄様は私に教えてくれた。
「ですが、生きて、命を救うのならば、時に
守様は戦わなければならない。その為に
強くならなければならない。強くなければ、
誰かを助ける事も出来ません。まして、
自分の中の力を制御する事も」
「だから、情けないままじゃ、弱いままじゃ
いられない?」
「はい。アークオルフェノクとなった自分と
向き合っていく上でも、覚悟を持った心や、
それを支える技や体が必要なのです。
如何に崇高な考えでも、それを貫く力が
無ければ妄言になります。
同じように、例え力があっても、それを
正しく使おうと言う覚悟の無い心では、
いつか力に溺れ、本当に怪物になって
しまう。……だからこそ、守様は
強くなるしか無いのです。その罰を
背負うと言う肉体的な意味でも。
折れない心を持つと言う精神的な意味でも」
「それを、彼は私の言葉を聞いて思った
って言うの?」
「もちろん今のは私の推察のようなもの
ですから、彼の胸の内と同じとは
限りません。でも、今の強くなろうと
する守様の姿勢から考えて、恐らく
そう的外れな考えでは無いと、私は
思って居ます」
「あの子が、私の言葉で……」
「はい。リアスお嬢様のあの一言が、
守様が強くなろうと決意するその
背中を押したのかも知れません」
グレイフィアの言葉に、私は少し
考え込んでしまう。
今の話からして、彼はあんまり私を
嫌ってないみたいだし、どうしよう。
戻って来たら、謝った方が良いのかしら?
いや謝るべきよね。
う~~。……あの子は、私を受け入れて
くれるのかしら?
私が1人でそんな事を考えていた時。
「失礼します」
『コンコンッ』と部屋のドアがノック
されて、彼が戻ってきた。
それに気づいて、私は咄嗟に立ち上がって
しまった。あ、で、でも、どうしよう。
急な事で、何て声を掛けたら……。
と、私が迷っていると……。
「守様。お帰りなさいませ。それでは
授業を再開、と行きたいところですが、
お嬢様が守様にお話があるそうですよ?」
「え?」
「ぐぐ、グレイフィア!?」
突然話題を振るグレイフィアに私が
戸惑う。
ちょちょっ、ちょっと待ってまだ
覚悟とか色々出来てないんだけど!
あぁでも仕方無い!何時か教わった、
女は度胸という諺を思い出すのよリアス!
私は自分に言い聞かせると、彼の前に
立った。
う~~。でもやっぱり緊張する~!
チラッとグレイフィアの方を見ると、
頑張れって言いたいのか小さくガッツポーズ
している。
う、う~~。ここまで来たらやるしかないっ!
「その、あの、ちょっと、話したい事が
あって。その……。
ごめんなさいっ!」
そう言って私は彼に頭を下げた。
「え?え?」
「……あの日、私、あなたのこと何も
知らないのに、酷い事言っちゃって。
それで、謝りたくて。でも、酷い事
言っちゃったから、声掛けるの、怖くて」
私は、頭を下げたまま喋っていた。
すると……。
「そうだったんだ。でも、大丈夫だから、
顔を上げて」
彼がそう言ってくれたので、私はゆっくり
と顔を上げた。
「僕もね、実はちょっと怖かったんだ」
「え?」
「僕は本当に少し前いきなりやってきて、
それで一緒に暮す事になって。
もしかしたらよそ者の僕だから、
嫌われてるんじゃないかって、ずっと
心配だったんだ。でも、そうじゃない
って分かって、僕は嬉しいんだ」
「お、怒ってないの?私、結構
酷い事言ったと思うんだけど……」
「ううん。全然気にしてないよ。それに、
僕も男だから、強くならなきゃって、
君の言葉で思うようになったんだ。
だから、僕が言うとしたら、それは
きっと、『ありがとう』だよ」
「ありがとうを、私に?」
「うんっ!」
きょとんとする私の言葉に、彼は笑みを
浮かべながら頷いた。
すると、彼は右手を差し出した。
「改めまして、神谷守です。これから
よろしくね」
あぁ、そう言えば、こうしてちゃんと挨拶
してなかったわね。私達。
そう思うと、不思議とおかしくなって
来ちゃった。
私は笑みを浮かべながら彼と握手を交わした。
「私はリアス・グレモリー。サーゼクス
お兄様の妹よ。こちらこそ、これから
よろしくね。『守』」
「うん。『リアス』ちゃん」
お互いの名前を呼ぶ私達。これで、私と
守は初めて、『家族』になった気がした。
……のだけど。
「あら?」
ふと気づくと、守の服や肘、膝などが
少し汚れていた。
「守、ちょっと汚れてない?」
「え?あ、えっと。実はさっき外を
走ってるときに少しこけちゃって」
そう言って笑う守に、私も自然と笑みが
浮かんできちゃう。
「ねぇ守って歳はいくつ?」
「え?僕はまだ7歳だけど?」
どうしてそんな事聞くの?と言わんばかりに
首をかしげている守。
「つまり私より年下なのね?じゃあ
私が守のお姉ちゃんね!」
「え?え?」
小首をかしげている守。
「グレイフィア。お風呂って入れるかしら?」
「えぇ。すでに準備は出来ています」
そう。なら大丈夫ね。
「じゃあ守。このリアスお姉ちゃんが
汚れた守を綺麗にしてあげる♪
さぁ!お風呂に行くわよ!」
「え!?えっ!?」
私は驚く守の手を引いて足早にお風呂に
向かった。ちなみにグレイフィアも
クスクスと笑みを浮かべながら付いて来た。
私と守は裸で、グレイフィアは少し腕まくり
とかをしてお風呂に入った。
「ほら守。こっち来なさい。お姉ちゃんが
背中洗ってあげるわ!」
「う、うん」
少し顔を赤くしながら椅子に座り大人しく
している守。私はそんな守の背中を
ソープで泡立てたタオルで優しく洗ってあげる。
「どう守?かゆい所とか無い?」
「うん。大丈夫だよ、リアス、お姉ちゃん」
ッ!その時私は、守が小さくお姉ちゃんって
言うのを聞き逃さなかった!
「なになに守!もう一回言って!今
なんて!?」
「えぇっ!?や、やだっ!恥ずかしいから言わないっ!」
「お姉ちゃんの前で何恥ずかしがってる
のよ!ほらもう一回!」
「や~~!」
そんな風にじゃれ合う私達を見て、
グレイフィアが笑みを浮かべていたのだけど、
その時の私と守にそれを知る由は
無かったのよね。
そして、その日から私と守は、
姉と弟に。本当の家族、姉弟になった。
プロローグ 第2話 END
次回は幼いソーナが登場する回になると思います。本来は前のプロローグ第2話ですでに書いていたのですが、キャラの絡みを優先した結果、これまでの話しが以前より複数に分割される形になるかもしれません。
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