また地道にやっていくつもりです。
——前回までのあらすじ——
ディオドラ・アスタロトの魔の手からアーシアを救うために
戦った守達。
その戦いの終わり後、彼らは度々駒王町に侵入してくる
カオスブリゲードの構成員との散発的な戦いに頭を悩ませていた。
そんな折、日本の神話の神々と対話をするという目的で来日した
オーディンと、お付きのロスヴァイセ。
だが、そのオーディンを狙って彼らと同じ北欧神話の神である
邪神ロキが守達の前に現れた。だが、そこに今度はヴァーリまで
もが現れ、彼は何と守達に共闘を持ちかけるのだった。
SIDE 守
今、守たち27人とソーナ、椿姫が神宮家のリビングに集まって
ある会議をしていた。
これは守がある提案をしたのが始まりだった。それが……。
ミラ「ファイズの、最強形態!?」
彼の言った事に驚きソファから立ち上がるミラ。他の者たちも
似たり寄ったりの反応を示した。
美南風「待って守。ファイズの最後がブラスターフォームじゃ
なかったの?」
と言う美南風の言葉にイルやネル、ニィ、リィ達が頷く。
守「一応はね。ただし、あと一つだけ理論上は可能な形態が
あるんだ。それは、ブラスターとアクセルの同時使用」
イザベラ「そうか。アクセルの使用はアクセルメモリーをベルトのフォン
に接続する事で発動する」
守「そう。理論上で言えば、ブラスターに装填しているファイズフォンに
アクセルメモリーを装填する事で発動が可能な形態。
『アクセルブラスター』、とでも言うべき力」
リアス「アクセルブラスター。……でも守、それは本当に出来る事
なのかしら?」
守「そうなんだ。これはあくまでも机上の空論でしかない。兄さんに
連絡して、過去の文献をもう一度調べてもらったけど、
アクセルブラスターに関する記述はなかったみたい。知っての通り、
今のライダーズギアは昔のと違って使用者に対するフォトンブラッドの
毒性を克服している。かつてのオルフェノク達が使用をためらった可能性も
ありえる。ブラスターフォームの出力はオーガさえも上回っているし、
そんな状態でアクセルを使えば、ただでさえ毒性の強い高密度の
フォトンブラッドを纏っているのに、どうなるか分からない。
だからこそ、しなかったし、できなかった。そう考えられる」
神妙な面持ちで語る守の姿に、他のメンバー達も自然と真剣な表情を
浮かべた。
ソーナ「いうなれば、この形態はフォトンブラッドの毒性を克服した
今のライダーズギアだからこそできる形態。そういう事ね?」
守「うん。このアクセルブラスターになれば、ブラスターフォーム
以上のパワーを生み出せると思うんだ。でも、そもそもこれは
机上の空論でしかないから、あくまでも奥の手。それも、
最後の最後に打つ、博打になるかもしれない」
雪蘭「今試したりはしないの?」
守「もちろん、地下のトレーニングルームを使えば可能だろうけど、
もし仮にそんなことをしてブラスターもアクセルも使用不可能に
なった場合、それは本末転倒だからね。今からじゃ壊れた場合、
ロキとの戦いには間に合わないだろうから」
そう言って、守は一息ついた。
「ともかく、アクセルブラスターはあくまでも使うかもしれない。
その事をみんなに伝えておきたかったんだ。それと、ミラちゃん」
ミラ「何?」
守「ミラちゃんには、ファイズのベルトの代わりにこれを渡しておくよ」
そう言って守が彼女に渡したのは……。
ミラ「ぶ、ブレイクガンナー!?」
アザゼルが作り、守に託された人工神器、ブレイクガンナーだった。
「で、でもそれは守専用じゃ!?」
守「大丈夫。少しだけ改良を加えてリミッターをかけてあるんだ。
今のミラちゃんでも、十分使いこなせるよ。それと」
そう言って、途端に険しい表情になる守。
すると次の瞬間、彼に体が青白く発光し始めた。やがて光が彼の
胸辺りに集まると、そこから剣の柄の部分らしき物が現れた。
黒歌「ま、守!?何してるニャッ!?」
彼を心配して腰を浮かせる眷属たち。しかし、それでも守は
笑いながら剣の柄を両手で掴んだ。
守「大丈、夫!ぐっ!ぬぁぁぁぁぁっ!!!」
そして、一気にその剣を体の中から引き抜いた。
引き抜かれた剣。それはリアス達が一度は目にしたことがあるものだった。
祐斗「それは、確かコカビエルとの戦いのときの」
守「はい。オーガ、ブレイバーです。それと」
もう一度、自分の胸に手を突っ込み、中からある物を引き抜く守。
それは、ライノスーパーバイラルコアだった。
「カテレアさんには、ブレイバーを。ミラちゃんには、
バイラルコアを渡しておきます」
そう言ってカテレアとミラにそれぞれ手渡す守。
しかし、ミラの方は受け取ったバイラルコアを見つめて、
未だに不安そうな表情を浮かべているのだった。
SIDE ミラ
その後、守はアザゼル達に呼ばれ、ミドガルズオルム召喚のために
特殊なフィールドの方へ行ってしまった。
そして、そんな中で一人ミラは、受け取ったブレイクガンナーと
バイラルコアを片手に薄暗い地下のトレーニングルームに居た。
横長ベンチの一角に座ったまま、ブレイクガンナーを見つめるミラ。
ミラ「……。ハァ」
『本当に、私でこれを使いこなせるのかな?』
今、一抹の疑問がミラの中で渦巻いていた。
『ファイズもそう。私は使えているだけ。守は、
ファイズの力を100%引き出している。……でも、
私は違う。私には、守の半分程度の力も出せていない。
そんな私が、これを持って良いのかな?』
自分ではブレイクガンナーの力を出し切れないのではないか?
と言う疑問が彼女の中で燻っていたのだ。
そんな時だった。
夕麻「ミラ、こんな所でどうしたの?」
そこに夕麻が現れ、部屋の電気をつけた。
ミラ「夕麻。うん、ちょっと考え事をね」
それに気づいて、薄く笑みを浮かべるミラ。しかし……。
夕麻「……」
彼女は無言で歩み寄ってくるとミラの顔を覗き込んだ。
ミラ「うえ、あ、あの。夕麻?」
夕麻「……何か、悩み事?」
突然の事で驚くミラを後目に、彼女の心を見抜いた夕麻の一言。
それがミラを驚かせた。
ミラ「べ、別にそんな事は」
と、慌てて否定しようとしたが……。
夕麻「嘘ね。その目は何かを迷っている目よ」
と言われて沈黙してしまうミラ。
ミラ「……情けないんだ、私」
そんな言葉を聞きながら、夕麻はミラの横に腰を下ろした。
「守から譲ってもらったファイズを、私は使えこなせて
無い。同じ装備のはずなのに、実力は雲泥の差。
ブラスターだって使えない。アクセルが精いっぱい。
そんな私が、また守と同じ力を使おうとしている。
そう思うと、情けないんだ。同じ力を持っているはずなのに、
全然追いつけない自分が」
そう言って苦笑いを浮かべるミラ。それを見た夕麻は……。
夕麻「ミラ」
ミラ「え?んんっ!」
名前を呼ばれ、彼女の方に振り返ったミラだったが、次の瞬間には
夕麻に唇を奪われていた。
最初は驚いたミラだったが、すぐに瞳をトロンとさせた。
やがて、数秒後に唇を離す夕麻。
夕麻「……ミラの気持ち、何となくわかるわ」
と、突然語りだす夕麻。
「私は元々、天使だった。けど、実力の無さを嘆き、
他人を恨んで堕天した。そして……アーシアを利用し
殺してでも、力を得ようとした。だけどね、ミラ。
そもそも力は千差万別の物なのよ」
ミラ「力が、千差万別?どういう意味?」
夕麻「例えば、黒歌。黒歌は私達の中で一番仙術の扱いが上手いのは
知ってるでしょう?実際、彼女は守のテクニックに関する師匠でも
あるの」
ミラ「そ、そうだったの!?知らなかった」
夕麻「黒歌は私達眷属の中で一番の古株だもの。知らなくても
無理は無いわ。それに、小猫もそう。多分私はあの子と
力比べをしても勝てないと思う。でも、私にほんの少し
誰かより優れている点があるとすれば、生成する光の力が
少しだけ純度が高いくらい。……と言っても、こんなものは
本当の強者の前には、何の意味も無い事なのかもしれない。
けどね、これだって結局、私が他の誰かよりちょっとだけ
優れているってだけ。誰も彼も、少しは自慢できることが
あるかもしれない。けど、それ以上に誰かより何かが
劣っているなんて、普通じゃないかしら?」
ミラ「劣っている事が、普通?」
夕麻「う~ん、劣っている、じゃあちょっと語弊があるかな?
弱点、でもない。……苦手な事、かな?」
と、言いつつ、顎に指をあてて考える夕麻。
「まぁ、誰だって苦手な事、不得意な事の一つや二つ、
あって当然だと思うの。私は」
ミラ「……不得意な事」
その単語に俯くミラ。
夕麻「でもねミラ。私達は一人じゃない。仲間が、家族が傍にいる。
だから一緒に戦うの。それぞれがそれぞれを補う形で
戦う。……それに。忘れたの?この前の戦いのとき、誰が
私の背中を守ってくれたのかしら?」
ミラ「あ」
そう言われ、思い出すミラ。
先日のブリゲードとの戦いの時、ミラのファイズアクセルが敵の
攻撃を弾き夕麻のサイガを守ったのだ。
夕麻「ミラ、あなたは自分で思ってるほど弱くなんてないわ。
もっと、自分に自信を持ちなさい」
『チュッ』
そう言うと、夕麻はミラの額にキスをしてからその場を後にした。
残されたミラは……。
ミラ「もう。夕麻のキス魔め」
と、苦笑しながらキスされた額に手を当てるのだった。
しかし、結果的にこの事がミラの新しい力を覚醒させる元になる
とは、夕麻もミラも、そして守も、予想だにしなかった。
そして今、その覚醒の前兆であるかのように、ライノコアが僅かに
光を放っていたのだが、ミラは気づいていなかったのだった。
SIDE カテレア
一方、ミラと同じく新たなる力を貰ったカテレアはイザベラと共に
邸宅の屋上にあるテラスでカクテルを飲んでいた。
そして、その表情はどこか懐疑的だった。
イザベラ「どうした?悩み事か?」
それに気づいて声をかけるイザベラ。
カテレア「少し、悩んでいた。これを私が受け取る必要が
あるのか、と」
そう言って、椅子の横に立てかけていたオーガブレイバーを
持つカテレア。
イザベラ「守からの贈り物だ。受け取っておいて損はないだろう」
カテレア「しかし。私は眷属になってからまだ日が浅い。
いくら何でもそんな相手にこんな……」
そう言いつつ、再び椅子の横にブレイバーを立てかけるカテレア。
イザベラ「それを言ったら私達元ライザー眷属だって同じさ。
守の眷属となってからまだ1年と経ってはいない」
と言う言葉に、驚くカテレア。
カテレア「そ、それなのに既にベルトを!?」
イザベラ「あいつにとって、時間は関係ない。私達が
家族であり、仲間であるか。それだけだ」
カテレア「家族、か。……どうして彼はそこまで、家族に
拘るんだ?」
イザベラ「……守は、幼くして目の前で両親を失った」
そう言いながら、カクテルに口を付けるイザベラ。
カテレア「ッ!?……本当なの?」
イザベラ「あぁ。以前、守とベッドを共にした事があるが、
その時先に眠ってしまったあいつは、泣いていたよ。
『お母さん』、とうわ言を何度も呟きながらな。
だからこそなのだろう。守の家族に対する愛情と
信頼は、それを失う事への恐怖の裏返しでもある。
『二度と失いたくない』。その思いが、ある意味
強すぎるがために、守は家族に全幅の信頼を
寄せるんだ」
カテレア「失いたくない者、か」
彼女の説明を聞き、手元のグラスに視線を落とすカテレア。
イザベラ「皮肉な話さ。……この世界で強い奴は、大抵
絶望を経験している。守もそうだ。
一度失い、二度と取り返せない者、家族を失った。
だからまた失わないために、守は強く在ろうとしてきた。
絶望を知っているからこそ、それを繰り返さないために
強くなる。本当に、皮肉な話だ」
カテレア「……私は、彼の期待に応えられるだろうか?」
イザベラ「さぁな。そればかりは私にもわからん。だが、
あいつの傍にいるのは良い物だぞ?毎日のように
バカ騒ぎをしたり、美味い料理を食って、
大切な人の傍で、隣で眠る。
それを自分で味わい、思った事がある。
そうやって、誰かと笑っていられる日常が
幸せなんだ、と。……だからカテレア。
お前が期待に応えようなんて意気込む必要はない。
守の傍にお前が居て、お前自身が笑っていられるの
なら、あいつはそれで満足するだろう」
カテレア「……守の隣で笑う、か」
カクテルの水面に浮かんだ自分の顔を見つめながら、カテレアは
グラスを握る手に力を籠めるのだった。
そしてまた、彼女の想いに呼応するかのように、
ブレイバーが僅かに光りを放っていた事に、二人は
気づかないのだった。
その後、守達とヴァーリ達を集めて作戦会議が行われた。
まず、現れたロキとフェンリルをソーナ達シトリー眷属の力で
守達、ヴァーリ達と一緒に採石場に転移。そこを戦場とする事。
そしてロキと相対し戦うのがヴァーリと守。
それ以外のメンバーは魔法の鎖、グレイプニルを使用して
フェンリルを拘束して撃破を試みる。
と、アザゼルから一通りの作戦を聞かされた守やヴァーリ達。
ちなみにその後、匙はアザゼルに連行されグリゴリの研究施設に
連れて行かれた。
その事に同情し、アザゼルの神器に対する周囲の認識から夕麻が
念のために警告すると、匙は……。
匙「会長ぉぉぉぉぉっ!!神宮ぁぁぁぁぁっ!助けて~~~!」
涙目で文字通り泣き叫びながらアザゼルに襟を掴まれて連行
されていった。
アーシア「さ、匙さん。大丈夫でしょうか?」
瑠海「だ、大丈夫っすよきっと。ね、ねぇ?」
華菜「え!?あ、あぁ。まぁアザゼル様も死ぬほど
厳しい事は……」
小猫「事は?」
華菜「しない。と思う。多分、恐らく」
と、段々自信を無くしていく華菜を見てレイヴェル達の
表情が蒼白になっていった。
イル「い、今更だけど私達神器持ってなくて良かったね」
ネル「うんうん!」
ゼノヴィア「主よ。どうか哀れな我が学友にご加護を」
そしてそれを聞いたゼノヴィアに至ってはあまりの心配に
祈りを捧げる始末だった。
SIDE 守
その後、作戦開始まで各々時間を過ごす事になった守達。
今、守は一人リビングで工具を片手にファイズギアのメンテを
行っていた。
その近くでは、ヴァーリが北欧の魔術が書かれた書物を
手に、それを無言で読みながら技術を蓄えていた。
そんな時だった。
ヴァーリ「君は、あの神、ロキに勝てると思うかい?」
不意に、本に目を向けたままのヴァーリの声が聞こえ、一瞬
手を止めてから守も、すぐに手を動かしながらも答えた。
守「そう言うのは問題じゃありませんよ。勝ち戦とか、負け戦とか、
僕が興味あるのは、その戦いでどうすれば家族や仲間を
守れるか、ですから。もっとも、負ける気はありませんけど。
僕の家族に手を出すのなら、殺す気で行きます」
ヴァーリ「はは。戦いに臨むならそれくらいの方が良いさ」
そう言いつつ、笑みを浮かべるヴァーリ。
守「……相変わらず、ヴァーリさんは戦いが好きなんですね」
ヴァーリ「あぁ。それこそ、俺が今ここで生きている理由の
ような物でもあるしね」
守『それがヴァーリさんの生きる意味、か。僕にはあまり
理解できないけど、結局の所、それは個人個人だもんなぁ』
そう思いながら工具でメンテを続ける守。
ヴァーリ「逆に聞くが、君の場合何か夢中になる事は無いのかい?
趣味みたいなものだが」
守「趣味、ですか?そうですね~。よく料理はしますね。
普段から主夫みたい感じもありますし、日ごろから
料理もしてますから。暇なときはスキルアップの意味も
込めて料理をしています」
ヴァーリ「ほう?料理か。ラーメンとかは作るのかい?」
守「え?ラーメン、ですか?そうですね~。麺とかは市販の物
ですけど、スープや具材は自分で作ったりすることも
ありますね。……あれ?でもどうしてラーメンなんですか?」
ヴァーリ「なに。俺は実はラーメンが好きでね。よく美猴と
東京のラーメン屋を食べ歩きしているのだ」
守『えっ!?い、意外な事実を知ってしまった。ってそう言えば
ディオドラの時そんな事を言っていたような。ふふ』
ヴァーリ「そう言えば以前、東京でテキーラを使った
ラーメンと言うのを食べた事があったな。あれも
美味かったが。……おいおい、何を笑ってるんだ?」
ラーメンの話をしていたヴァーリだったが、守は笑みを
堪えている姿を見て問いかけた。
守「い、いえ。ヴァーリさんがラーメン通だったのが意外で」
ヴァーリ「おいおい。俺にだって好物くらいあるぞ」
と言って、少しばかり笑みを浮かべるヴァーリ。
守「なんなら、今度僕の作ったラーメン、食べてみますか?
レストランやお店で出してる物ほど美味しいかは
わかりませんけど」
ヴァーリ「どういう風の吹き回しだい?俺に奢るなんて。
これでも一応君を突け狙う男だぞ?」
守「ライバルとして、ですよね?」
ヴァーリ「ん?まぁそうだが……」
守「僕は正直、そう言うのも良いって思ってます。互いを
殺したいから戦うんじゃない。互いに切磋琢磨し
強くなっていく。……それに、僕も男です。
強さには、少し憧れがあるんです」
ヴァーリ「現在進行形でオルフェノクの王なのにか?」
守「これまで、何度も戦いを経験してきて、その度に
色々な事がありました。その度に色々な力に目覚めたり
もです。……僕は家族を守りたい。そのために強くなりたい。
でもそのためには、やっぱり強い人と戦うしかない」
ヴァーリ「成程。それが俺か」
と、どこか納得した表情を浮かべるヴァーリ。
守「僕もヴァーリさんも、互いに強くなるための
ライバルであり、殺す相手ではない。……甘い
かもしれませんけど、僕はヴァーリさんとそんな関係で
ありたいと思っています」
ヴァーリ「ふふ、成程。確かに甘いが、悪くない。それは
つまり、俺が戦いを申し込めば君は応じてくれる。
そう言う事になるんだろう?今後は」
守「死なない程度、でお願いしたいですが」
ヴァーリ「ハハッ、良いさ。君の進化した力と戦い、また俺の
進化を促す。俺としては願っても無い関係だ」
そう言うと、どこか狂暴そうな、しかし楽しそうな笑みを
浮かべるヴァーリ。
それにつられて自分も笑みを漏らす守。
しかし、この時彼は気になった事があった。
守「あの、唐突な質問なんですが、ヴァーリさんはともかく、
白龍皇、アルビオンさんは僕がライバルで良いんですか?」
アル『構わないさ。私もそれで納得している』
と、不意にヴァーリの方からアルビオンの声が聞こえて来た。
守「でも、アルビオンさんのライバルって赤龍帝ですよね?」
アル『あぁ、それに変わりはない。しかし現代の赤龍帝の男は
その力に気付いてすらいない学生だ。あいつとは既に
もう何百回と戦って来たし、たまには別の存在と
戦ってみるのも悪くはない。それに……』
守「それに?」
アル『ドラゴンとしては情けない話だが、現代の赤龍帝には
覚醒して欲しくないのが私の願いだ』
守「……。へ?」
アル『実は、ある日私は夢を見たのだ。そこでは、確かに
赤龍帝は覚醒していた。そこまでは良かった。
良かったのだが……。あいつの宿主が、変態だった
のだ』
守「変、態?あの~、話が全然見えてこないんですけど……」
アル『あの夢の中で、奴の宿主のせいで赤龍帝は乳龍帝と
呼ばれ、そんなふざけた称号を持ったライバルの
おっぱいドラゴンなどと言う見ていて目眩がする
ような番組が放送され……。そこまで見て、夢は
終わった。しかしその時、私は生まれて初めて、
寝起きに絶叫しかけてしまった。あれほど、夢であって
良かったと思った事もあの時が初めてだった』
守「そ、そんなにショックだったんですね。けど、それは
あくまで夢であって」
アル『いや、あの夢に出て来た宿主は、今まさに赤龍帝を
宿している男で間違いない!私はこの目で見た!』
と、いきなり必死になるアルビオン。
ヴァーリ「試しに赤龍帝の宿主を見に行ったんだが、アルビオンの
言う通り猿みたいな男でな。アルビオンが今の
赤龍帝を目覚めさせるなと言うのもあるし、君と言う
代わり以上の逸材も居たから、結局この時代の白龍皇である
俺は赤龍帝とぶつかるのを諦めた訳さ」
守「は、はぁ」
アル『今にして思えば、あの夢は予知夢だったのだ。
しかしそれが外れた。それが嬉しいと思った時
さえあったほどだ』
守「つ、つまりアルビオンさんはその夢を現実にしたく
ないから、現代の赤龍帝には目覚めて欲しくない、と?」
アル『当たり前だ!誰が好き好んで乳龍帝などと呼ばれる輩の
好敵手など!……そう言う意味では、お前には感謝
している。神宮守。どうか、これからもヴァーリの
良きライバルであってくれ』
守「は、はい」
『こ、声がガチすぎますよアルビオンさん。そんなに
現代の赤龍帝が嫌いなのかな?』
と、苦笑しながら守は頷くのだった。
「ち、ちなみにもし赤龍帝が覚醒しそうになったら?」
アル『奴が乳龍帝と言われ始める前に真っ先に宿主を殺す!!』
と、アルビオンはガチな声音でそう叫ぶのだった。
そんな話をしていた時だった。
オーディン「なんじゃおぬしらは、戦いが近いと言うのに
雑談か?」
守「あ、オーディン様。何か御用ですか?」
オーディン「なに。戦いの主力たるお前達に一つアドバイスでも
と思ったのじゃが、肝心のお前達は雑談とはのぉ」
ヴァーリ「俺はロキ程度で止まることなど考えちゃいない。もっと
先を目指す。今戦おうとしているロキもまた、通過点に
しか過ぎない」
守「僕だって負ける気はありませんから。家族を守るために
全力で戦うまでです」
オーディン「ほっほっほ。そうかそうか。……若いとは良いのぉ。
それが真に大切な可能性じゃ。わしはこの歳まで、
その大切な事に気付かなんだ」
守「でも、気づけたのなら今はそれでいいんじゃないですか?」
オーディン「うん?」
守「その可能性に気付いたのなら、気づかないままとは
別の『これから』を歩いていける。結局、人も悪魔も
天使も神様も、迷う事なんてたくさんあると思いますよ?
だから、迷って気づいて、これからを変えて行けばいい。
僕はそう思ってます」
オーディン「これからを変えていく、か。ふはははっ!
そうかそうか!その通りじゃな!」
と、一瞬ポカンとしてから豪快に笑うオーディン。
「全くお主らオルフェノクはいつもわしに臆する
事無くはっきりものを言う。しかしまぁ、そんな事
が新鮮ではあるがな」
そう言って笑みを浮かべるオーディン。しかし、その単語を
聞いた時、守はある事を思い出した。
守「あの。そう言えばオーディン様は以前のオルフェノクに
会われた事があるんですよね?」
オーディン「うん?あぁ、そうじゃが」
守「出来れば、その時のお話をお聞かせ願えませんか?
今のオルフェノクの王として、過去のオルフェノクが
どんな事をしていたか知りたいんです」
オーディン「ふむ。よかろう。では少し、昔話をすると
しようかのう」
と言うと、守達の近くの椅子に腰を下ろすオーディン。
果たして、彼の口から語られる過去のオルフェノクとは
一体?
第20話 END
2年ぶりの投稿です。何と言うか、最近はずっと別の作品の
投稿ばかりしてたんですが、やっぱり自分の作品として
責任を持って執筆するべきだと思いまた書き始めました。