ジンキ・エクステンド 翠聖の翼   作:オンドゥル大使

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第弐拾話「悪夢」

「ジンキ? 何を言っている?」

 

 獅子の仮面を被った高官に時雨は筆で書いた用紙の名称を見せる。

 

「こう書くんです。人の為の機械、と書いて、人機」

 

「そんな事にうつつを抜かしている場合かね!」

 

 虎の仮面を被った高官が荒々しくテーブルを叩いた。

 

「その通り。前回のモリビト弐号による壱号幽鬼の迎撃、あれには問題がある」

 

「大義であった、とはならないんですね」

 

「大義? 馬鹿を言え。どこの世界にこんな」

 

 放たれた声と共に映写されたのは街を焼き尽くすモリビト弐号の姿であった。鉤爪を振るい、目に入る建築物を叩き割っている。裏返って赤く染まった装甲と言い、獰猛な獣としか思えない挙動であった。

 

「欠陥品に賞賛を送る人間など」

 

「欠陥品? モリビト弐号と操主は幽鬼を撃退せしめました。それを指して欠陥品と?」

 

 意に介さずな時雨に高官達がめいめいに罵声を飛ばす。

 

「あれを迎撃とは呼ばんのだ! これでは……まるでそう! 暴走ではないか!」

 

「人型特殊才能機は我々の制御の範疇ではなかったのかね?」

 

「だから、人機ですって」

 

 冗談めかして口にすると獅子の仮面の高官が睨んできた。

 

「人機、その呼び名は別にいいとしよう。問題は、だ。帝都防衛の要が帝都を破壊している。この本末転倒をどう対処するか」

 

「既に数名の記者を捕らえた、との報告もある。動き出している民間人は止められん」

 

「諜報班はもっと上手く使えんのか? これでは情報統制もないも同然」

 

「左様。人機と幽鬼の戦いが何故夜半に行われているのか、その真意でさえも揺るがしかねない」

 

「それは、幽鬼が夜中に現れるからでしょう?」

 

 全く反省の色が見られない時雨に高官達が野次を飛ばす。

 

「失態だぞ! 時雨准将! 君の責任問題だ」

 

「何をもって成功かは我々が決めるのだ。君のような一軍人、いくらでも挿げ替えが利く」

 

「では皆様方に問います。迎撃成功でなくて、これをなんと呼びますか?」

 

 すると水を打ったように静まり返った。迎撃成功。その事実は揺るぎない。

 

「……だが、帝都にもこれほど被害を出したのでは。壱号機の自爆と変わらん」

 

「モリビト弐号、装甲が裏返ったそうだがそんな仕様があると整備班からは?」

 

「ありませんな。完全な想定外です」

 

 けろりとした時雨に高官達は苛立ちを募らせる。

 

「想定外が起こり得る戦場など……。まるで話にならない」

 

「そもそも、血塊炉という機構自体に謎が多過ぎる。整備班の報告書の全文の開示を要求する」

 

「無理ですよ。整備班が全部が全部報告書の体に纏めれば、この評議会では絶対に報告し切れません。一日中、専門用語と睨めっこしますか?」

 

 その可能性にすぐに至ったのだろう。高官達はめいめいに呻いた。

 

「……だが、暴走の可能性など今までなかった。何か、整備班に見落としがあったのでは?」

 

「それはありませんよ。優秀な整備班です」

 

「山城班長を呼び出して問い質すのも手の内なのだがね。彼に聞けば全部分かるのではないか?」

 

「無理ですよ。ブルブラッドに関しては全部が全部把握しているわけではありませんから。国外の技術者の技術もあります。山城班長は整備班の纏め役であって学者先生ではありません」

 

「ではブルブラッド研究の第一人者でも連れてくるしか……」

 

「いや、時雨准将。もう一度問うが本当に――心当たりはないのだな?」

 

 沈黙が降り立つ。時雨は一拍置いてから答えた。

 

「ないですよ、一切」

 

「血続と血塊炉の関係性から洗い出すべきか?」

 

「いや、そもそも血続の情報自体が少ない。これでは解析も取れん」

 

 それぞれに議論を交わす高官達を尻目に時雨は考えを巡らせていた。

 

 どこまで誤魔化し切れるか。

 

 自分とて分かっている。あの呪符だ。あの呪符以外に、想定外は存在しない。あれが何らかの作用をもたらし、モリビト弐号を暴走させた。

 

 だが、機械を暴走させるほどの何かがある小さな鉄板など、この場にいる人々は信じるだろうか。

 

 最悪の場合、モリビト弐号そのものの凍結もあり得る。その可能性だけには至らせてはならない。

 

「今回、幽鬼の残骸も回収出来たのか?」

 

 その質問に時雨は頭を振る。

 

「いえ、現場には、幽鬼のものらしき残骸はありませんでした」

 

 今回、自分も少しばかり期待していたのだが、やはりと言うべきか。幽鬼が破壊されたのは間違いないのにその欠片すら存在しない。その不可解さのほうが際立つ。

 

 モリビトは――いや、我々は何と戦っているのか。

 

 それを明瞭にしない限りこの戦いは延々と続くと思われた。

 

「幽鬼は、やはり幽霊の類なのでは?」

 

 そのような弱気な発言が飛び出す始末である。何を馬鹿な、と他の高官がいさめる。

 

「物理的な攻撃力を持ち、なおかつ兵器としての有効性を実証する幽霊などいるものか。そんなものがあればそれこそ某国の陰謀を疑わざる得ない」

 

「実際どうなのだ? 観測気球も飛ばしているのだろう? 写真がこれだけかね?」

 

 映写しているのは観測気球から撮影されたモリビト弐号の暴走の写真だけ。さすがにそれだけでは納得しまいか、と時雨は次の手を打った。

 

「幽鬼の反応を示した、陰陽師達のものです」

 

 配布された図柄に高官達が疑問の声を出す。

 

「この図は何だ?」

 

「幽鬼出現時に発生する、陰陽師の示したある一定の力場。……身も蓋もない言い方をすれば霊力です」

 

「霊力……。そんな非科学的な」

 

 そう返されると思っていたから提示しなかった資料でもある。だが、この際呪符から目を逸らさせるためには必要であった。

 

「霊力の値が高い地区に、幽鬼が発生しています。これまでの幽鬼発生時に観測されたものは以下の通り」

 

 前回の軍基地に現れた際には対応が後手になったもののきっちりと霊力が観測されている。それを目にして高官達がざわめいた。

 

「しかし……急に霊力など言われても」

 

「いや、既に幽鬼という呼び名すら相応しいとも思えん。あれは、やはりどこかの国の兵器なのではないか?」

 

「ですが、どこかの国の兵器にしては残骸も残らない兵器など、存在するはずがない」

 

 時雨の結びに高官達が困惑する。高官は実際のところ、資金さえ出してくれればいい。後の事は現場に任せる、という発言さえあればいいのだ。

 

「時雨准将。君に一任するにしては不具合や不明瞭が多過ぎる。報告書の体で纏めればいいと言う云々ではなく、我々も納得が欲しいのだ」

 

 この場を指揮する獅子の仮面の高官の言葉に他の高官も同調する。

 

「その通り。納得がいかん。どうして君にだけ、権限が委譲されている? 我々評議会はより高次の権限を誇示する機関。分かるかね? 対策室だけに任せておけないから、我々がいるのだという事を」

 

「重々承知していますよ。ですが、何分、部署ごとに立て込んでいまして」

 

 ここで押されれば負けだ。時雨は出来るだけ今の権限のまま事が速やかに進むのを期待したが、獅子の仮面の高官が食い下がった。

 

「時雨准将。君は、何か隠しているのではないか? だから、決定を急いでいる」

 

 図星であったが時雨はおくびにも出さない。

 

「何を隠すというのです? 隠して得になる事など一つもない」

 

 そう、ないはずだ。少なくとも彼らの眼が曇っている間は。今の評議会ならばいくらでも騙せる。だが、あまりに踏み入った話をするのは評議会の面子としても正しくはない。

 

 薮蛇は自分達の素性を明らかにしてしまう事だと察知している高官が押し留めた。

 

「獅子会長。その程度で今回は様子見としませんか?」

 

 これ以上事を荒立てれば自分達の席さえも危うい。それを理解しているからこそ、この評議会において匿名性は守られている。

 

「そ、そうですぞ。あまりに詮索しても、それは現場判断というもの。時雨准将だけの責任とも言えない」

 

 打って変わって擁護に回る辺り、まだ面子を気にしている。その時点で時雨の勝ちは決定であった。

 

 獅子の高官は話題を引っ込める。

 

「ではこの議題はまた別の機会に。ただし、時雨准将。モリビト弐号暴走について、報告書をある程度纏めて提出したまえ」

 

「専門用語が多くなりますゆえ、書面には向いていませんが」

 

「それでも、どうして暴走したのか、くらいは記さなければ納得がいかない。暴走の要因を突き止め、排除せよ。才能機に……いいや、人機に想定外の規格などあってはならないのだ」

 

 それを潮にして高官達が話を打ち切ろうとする。

 

「これにて評議会を終了する。各自、解散」

 

 立ち上がって別室で仮面を取り終える高官達がある意味では間抜けだ。顔を晒しも出来ない腑抜けがこの国を回している。

 

 照明が点き、傍にずっと侍っていた高木がようやく声にした。

 

「准将……。誤魔化しは難しいのでは?」

 

「いつもすまないな、高木少佐。君には喋らせずに傍にいてもらっている」

 

「いえ、私の事はいいのですが……」

 

 濁した理由は分かる。時雨は言い当てた。

 

「日下部少尉の経過かな?」

 

 高木は面目ないとでも言うように顔を伏せる。

 

「……少尉を危険に晒す事になります」

 

「彼は軍人だ。当然、いざという時の潔さも心得ていると思ったがね」

 

 時雨は言い放って席を立つ。その後を追って高木が言葉を被せた。

 

「ですが、軍人になってまだ一月も経っておりません。そんな……彼、に重責を負わせているのではないでしょうか」

 

 彼、という部分に幾分かの逡巡が見える。どうやら高木は暴走したモリビト弐号を翠が率先して動かしたとは思っていないようだ。

 

「高木少佐。モリビト弐号の暴走に、日下部少尉が関与していないと思っているのか?」

 

「それは……あのような行動、日下部少尉がするはずがありません」

 

「どうかな」

 

 立ち止まった時雨に高木は困惑したようだ。

 

「……どういう意味ですか」

 

「幽鬼との戦闘で混乱し、見境なくモリビト弐号を暴走させた。操主ならば不可能ではない。否、操主だからこそ、その可能性は考慮するべきだ」

 

「つまり……日下部少尉の精神面の脆さが、暴走の原因だと?」

 

「そうは言っていないが、彼しかモリビトを動かせる人間がいない以上、彼の精神面の安定ははかるべきだよ」

 

 戦闘中に混乱されては堪ったものではない、と暗に付け加える。高木は何か言おうとして口を噤んだ。

 

 そんな事はない、とでも言おうとしたのか。あるいは、それは穿ち過ぎだ、とでも。

 

 どちらにせよ、日下部翠という人間を分かった風になっているのは自分も高木も同じであるのは言うまでもない。

 

「実際、人機がどのような経緯を経て、あの状態に至ったのかはまるで分からない。陰陽師も、整備班もお手上げと来たのでは、わたしに言える事は少なくなってくる」

 

「陰陽師は……、彼らは霊力の有無が関係あると。面談の席を用意して欲しいとの要望があります。陰陽師達は自分の目で、一度でもいい、血続という存在を実証したいと」

 

 血続に流れているという一定の霊力。陰陽師は是非一度、日下部少尉との面談をと希望を出していたが時雨は独断でそれを保留してきた。理由は他でもない。陰陽師の目をもってすれば日下部翠が女だと割れてしまいかねないからだ。誤魔化しが利くのは外見だけ。内面を見通す陰陽師にかかれば、翠を女だと判断する材料としては充分になる。そうなれば全てが御破算だ。

 

「いや、面談はまだよしておく。医療班に治療の専念を、と言い含めてあるのでね」

 

 そうやって一時的な誤魔化しは通用してもこれから先、長期的となると難しくなってくる。翠とて足が生えているわけだから、どこへ行くのにも監視の目をつけるわけにもいかない。そのような事に割く人員も惜しいのだ。

 

「准将……。やはり今回の戦闘は大きな爪痕になったと思います。才能機、いえ人機の、その安全神話を脅かすものとなった。幽鬼迎撃のための兵器、という大義名分が通じなくなります」

 

 それは時雨も危惧しているところではあったが、まだ帝都防衛に人機以上のものがあるとは思えない。

 

「幽鬼に勝てるのは人機だけだ。それは今までの戦闘が物語っているし、何よりも、血続の重要性を説くには人機の存在が不可欠」

 

 時雨が説き伏せたいのは何も評議会だけではない。整備班、陰陽師、諸々もそうである。この国を防衛するのに、血続という選ばれし人間がいるという事。その戦力的価値。それを流布するのに、この幽鬼迎撃ほど有効なものはない。

 

「准将は、何か焦っているようにも映ります。血続など、別に人機に乗せてまで重要だと思わせる必要はないのでは?」

 

 自分の感情如何で血続が国民の代表として描かれている事に高木は懐疑的なのだろう。時雨がそれを利用している、とも取っているに違いない。個人的な感情で軍隊を動かすべきではないという高木の思想は高尚であり、なおかつ冷静だ。

 

「高木少佐。わたしが自分の虚栄心か何かを満足させるために、血続を利用している、と考えているのかね?」

 

 高木は黙する。糾弾の言葉よりも沈黙のほうがなお効果的だと知っているのだろう。時雨は次の言葉を継いだ。

 

「否だ! 断じて否。わたしにとってしてみれば、血続の人民的な立ち位置を、まるで選民思想のように飾り立てる、という意図はない。逆かもしれないな」

 

「逆、とは?」

 

「血続が、まるで純正の日本人でない事のように判断している、という事だよ。いざとなれば敵対国家の諜報員か、あるいは国民のガス抜きとして、彼らを用いる事が出来る」

 

 高木は息を呑む。当然だろう。これは日下部翠を含む血続が人民の敵になると言っているようなものなのだから。

 

「そのような事……、決して」

 

「では高木少佐。君は何の意図があって、血続至上主義ともわたしが取れる発言をしている、と聞いてきた? そろそろ血続を人機に据える理由が分からなくなってきたか?」

 

 高木は唇を噛んで声にする。

 

「……全て、お見通しなのですね」

 

「わたしが君の立場だったとしても日下部翠をいたずらに危険な場所に配する理由が不明瞭でそろそろ煮えたぎっているところだろう。何かが、分からない。何か、隠されているような気がする、とね」

 

 高木は翠をどうしても戦場にやりたくないようだ。そのために血続全体を「戦争に向いていない種族」と捉えようとしている。だが見方によればそれは選民思想だ。当然、矛先をまかり間違えれば思想的な反逆行為へと働く。あるいは虐殺の再現か。血続という存在の特別性を説けば彼らの居場所はなくなり、逆に特別ではないとすれば、彼らは社会から排除される。いずれにせよ、血続を利用価値のある存在として見ている自分よりもいい待遇に置ける価値観は、この国には存在しない。

 

「……私は、日下部少尉を、ただ単に傷つけたくないのです」

 

「暴走時の機体における録音機器の作動は?」

 

「今、整備班の報告を待っているところですが、恐らく」

 

 濁した語尾に時雨は首肯する。

 

「原因不明、だろうな。そう容易く分かれば世話はないよ」

 

「准将。やはり、呪符のせいなのではないでしょうか? あれを組み込んだから、モリビト弐号は暴走した」

 

「ではどうするかね? まさかあんな金属片一個で巨大な鋼鉄の塊が暴走する、という実証のためにあれを取り外すか?」

 

 呪符の危険性を説く事は同時にあの呪符に何らかの力が存在する事の肯定。そう考えれば、現場において何度も入手されている呪符がいよいよきな臭くなってくる。

 

「それは……私の一存では」

 

 自分ならばあの金属片を取り外せると言っているのだろう。しかし時雨にはその気がない。

 

「わたしは是と言わないよ。何故なら、あの金属片、呪符には力がある。どうして、モリビトの戦力になるものまで奪わなければならない?」

 

「戦力……。本気でそうお考えで?」

 

「本気でなければ何だ? わたしが道楽であんなものを人機に組み込んだと思っているのか? 意味のない事はしない主義だよ」

 

 執務室へと戻り、時雨は机に置かれた資料を手にする。

 

「暴走時の法則性、それもこれから見ていく必要がありそうだな」

 

「二度も三度も暴走させれば、それこそ評議会が」

 

「だが、一度暴走した、だから封印する、ではあまりに筋も通らず、なおかつ及び腰過ぎやしないか? この帝都を守る決戦兵器に、少しばかり普通と違う点があっても、それはそれだ。別段、おかしな事ではない。人機の運用は軍部が責任を持って行っているのだからね」

 

 高木は何度かの逡巡の後、声を搾り出した。

 

「……日下部少尉は、その犠牲ですか」

 

「犠牲ではない。彼がいなければ、モリビトは動かんし、何よりも人機の運用に血続は必要不可欠。彼こそが、未来を切り拓く、希望だよ」

 

 でっち上げだ、と高木は内心思っているかもしれない。だが、たとえでたらめでも、血続が人機を動かせる、その証明として考えれば決して高くはないはずだ。

 

 時雨は手元の資料に視線を落とす。

 

 そこには新型の性能試験の日取りが記されていた。

 

「新型才能機、これは、国外からの依頼か?」

 

「ええ。高津だけの技術にしておくのにはもったいないと、参入する企業があります。国外の、それこそブルブラッドの産出国であるベネズエラ辺りではこちらの技術を逆輸入して製造工程が敷かれているとか。こちらでは技術不足と資金不足で不可能であった二脚型人機の性能試験も行っているらしいです」

 

「二脚……。夢のまた夢だな」

 

 時雨は資料にある下半身のみ製造された人機の写真を凝視する。二脚型と言っても、巨大な二脚に小型の後部二脚を取り付けた偽物。即席の四脚を二脚だと言い張っているだけだが、それでも二脚型人機が運用試験を突破すれば、その性能は日本にももたらされる事だろう。

 

「モリビトが二つの脚で立つ日も遠くない、か」

 

 だがそうなった時、この国の勢力図が大きく変わるのは間違いない。人型二脚兵器の運用とそれに伴う実験と戦場における性能。戦争という在り方が大きく移り変わる。

 

「悪夢だな。本当に二つの脚で立つ鋼鉄の巨人が闊歩する戦場など」

 

「ですがもし、二脚型が発展すれば、幽鬼との戦闘においてかなり優位に働きます」

 

 しかしそれ以上に、軍部が開発しているという事は、それが戦争における道具に成り果てる、という意味でもある。

 

 時雨は窓辺から外を眺めた。

 

 垂れ込めた曇天が帝都の街を天蓋のように覆っていた。

 

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