ジンキ・エクステンド 翠聖の翼   作:オンドゥル大使

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第参拾話「クジラを見ろ」

 

「だから、第二制御弁の予備品を使えって言ってるだろうが!」

 

 シゲが声を飛ばしている現場に、翠は分け入っていた。モリビト弐号の損傷は朝方よりもましになった印象だ。

 

「シゲさん。こんな時ですけれど、ナナツーに乗っていいですか」

 

 その相談にシゲは目をしばたたく。

 

「ナナツー? いいけれど、どうするつもりだい?」

 

「気を紛らわせたくって。何かやっていないと落ち着かないし」

 

 岩倉から聞かされた正体不明の落雷の事もある。シゲは快く承服した。

 

「鍵が要るんだろ? 倉庫を開けてくらぁ」

 

「すいません、その、モリビトの修理で忙しいのに」

 

「構う事はないって。確かに手は足りないが、どうせ二三日はかかるんだし」

 

「あの、シゲさん。モリビト弐号に、落雷の痕があるって、本当ですか?」

 

 真偽のほどを聞かなければならない。シゲは振り返って小首を傾げる。

 

「落雷ってのは、変な話ではあるんだけれどな。雨も降っていないし、曇り空でもない」

 

「でもその、それらしい痕跡があるって」

 

「作戦参謀殿か」

 

 言い当てられて翠は首を引っ込めた。

 

「オレ、あの時何が起こったのか、まるで分かっていなかったんだな、って。そんな人間に、その、操主の資格ってあるのかな、って思っちゃうんですよ」

 

 シゲは呻っていたがやがて歩み出した。

 

「分からなくもないんだが、翠少尉は難しく考え過ぎだよ。モリビトの整備をするのはこっちの仕事なんだし、どんと構えていればいいって言うのに」

 

「そうもいきませんよ。モリビトは、暴走しちゃったんですから……」

 

 尻すぼみになる声にシゲはため息をついた。

 

「誰も翠少尉を責めないって。こっちだって原因不明なんだからさ。モリビトが直るまで、それこそ遊び呆けていてもいいぐらいだぜ?」

 

 そうはいかないだろう。自分が何もしない間にも整備班はモリビトを直すために躍起になっているのだ。

 

「オレ、遊んでいる暇はないんです。少しでも、いや、一歩でも、強くならないと」

 

 強くならなければ帝都を守れない。兄が守ったこの地を受け継げない。

 

 切羽詰ったような声だったせいか、シゲは困惑したようだ。

 

「そこまで思い詰める事……。まぁ、ナナツーを動かすのが気晴らしになるって言うんなら、協力は惜しまないけれど」

 

 山城に一声かけてからシゲと共にナナツーの格納庫を目指す。

 

 ナナツーは、というと自分達の忙しさや喧騒など何のそので、格納庫に鎮座していた。

 

「今活性炉に火を通すから待っててくれ」

 

 活性炉にナナツーを繋ぎ、シゲが操作する。翠は自分の掌に視線を落とした。

 

 ナナツーの姿勢制御も随分と慣れた。モリビト弐号の攻撃にも躊躇いはなくなったし、最初のような醜態も晒さないだろう。

 

 ――だが、それらが全て自信に繋がるわけではなかった。

 

 経験があるからと言って勝てるとは限らない。今回はたまたま勝てただけで次も同じようにいく保証はないのだ。

 

 だからこそ、自分を研鑽する。

 

 少しでも勝てる確率を上げる事が、自分に出来る唯一の事だ。

 

「ナナツー、準備出来たよ」

 

 帰ろうとするシゲに、翠は呼び止めた。

 

「シゲさん。一戦、やってくれませんか?」

 

 整備班は猫の手も借りたい状況だ。そんな時に言うべきではないのだろうが、自分一人では抱え込めそうになかった。

 

 シゲは快く応じる。

 

「おうよ。言っておくが、負けませんよ」

 

 もう一機のナナツーへと電力を通し、シゲが準備を整えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飛行人機の事を議題に上げる馬鹿はいない。

 

 知っていても知らない振りを通すのが現状の最良であった。

 

 議題はモリビト弐号の運用状態と金の問題になっていった。

 

「時雨准将。もう少しモリビト弐号、うまく使えるようにならないのか」

 

 山羊の仮面の高官が時雨を責める。時雨は、と言うとのらりくらりとかわした。

 

「まだ実用段階には至っていないんです。それをここまで高めただけでも賞賛に値するのではないでしょうか」

 

「だが、モリビト弐号、暴走の件。我々としても対処に困るよ。原因は? 原因は何なのだね?」

 

「不明です」

 

 その返答に乾いた笑いが返ってきた。

 

「時雨准将。君の冗談は毎度の事ながらきついな。まさか人機の開発の一手を担うその長が、不明です、の一言で済まされるとでも?」

 

「ですが、不明なものは不明としか言いようがありません。それともありもしない現象をでっち上げろとでも?」

 

「だがね、不明を不明と片付けるにしては、モリビト弐号、ちょっとばかし扱いが粗野ではないのかね。今回は民間人に割れる可能性すらあった。どう考えても君の責任不足だ」

 

「承知していますが、モリビト弐号ほどの大質量を運ぶ手間も考えていただきたい。現場の不満は募る一方です」

 

「それをどうにかするために君を遣わせているんだよ。執務机に座っているだけが仕事ではないのだぞ」

 

「左様。君の職務はモリビト弐号の運用と、それに関わる障害の廃除にある。幽鬼殲滅は必要最低限度の、役職だと思いたまえ」

 

 幽鬼殲滅。それが現実味を帯び始めればこれだ、と時雨は嫌気が差す。

 

 評議会は幽鬼が殲滅出来ると確信し始めている。その連中に飛行人機などという異常な存在を示唆すれば混乱が予想されるのは難くない。

 

 否、混乱だけで済めばまだいい。

 

 評議会の即時解散と、現行政府の改正、軍部の組み換えなどが起こればそれこそ惨事だ。

 

 飛行人機に関しては知らぬ存ぜぬを通すのが一番だろう。

 

「しかし、毎度の事、幽鬼を滅せられるとは限らないのです。その保証はどこにもない」

 

「日下部翠少尉。彼も慣れてきたのではないか? 幽鬼迎撃はさほど難しい議題ではなくなった」

 

「楽観的ですよ。彼とていつでも必死です。その努力と胆力を笑う事は誰にも出来ない」

 

 時雨の擁護に他の高官からめいめいに言葉が飛ぶ。

 

「だが迎撃率を上げてもらわなければ、君の首とて危ういのだと思ってもらわなければね」

 

「時雨准将、その席は心地いいか? その席の感触を他の人間に譲る事も考えに及んでいる事を忘れてもらっては困る。その心地いい席は何も君の特別席ではない」

 

 毎度の事、よくもまぁ嫌味が出るものだ。感心さえする。

 

「重々、承知しております。わたしの首が、誰でも挿げ替えられるくらいは」

 

「ではもっともらしい成果を持ってくるんだな。前回、前々回と含めて、暴走の件、どう説明する?」

 

「釈明の余地はあるが、言い訳は聞けない」

 

 どう足掻いても暴走に関しては分かっている事を開示する他ないらしい。自分が駄目ならば山城か。

 

 しかし山城とて容易には口を割るまい。それに評議会の面子は出来ればこの評議会そのものの存在さえも察知されたくない連中ばかり。

 

 自分のような口の堅い人間でなければこの評議会そのものを糾弾しかねないだろう。

 

「暴走に関しては、原因不明、では駄目でしょうか」

 

「一度目はまだよかったさ。しかし二度となるとね。こう言うだろう? 二度ある事は三度ある。つまり、あの暴走が必然であった、という可能性だ。時雨准将、分かっている全ての情報の開示を求める。諜報班を我々で動かしても構わない」

 

「伊勢と水無瀬を越える諜報員はいません。それは不可能ですし、不干渉を貫いていたはずでしょう? お互いに」

 

 腹の探りあいはいい方向には進まない、という警句のつもりだった。

 

 評議会の高官達はそれぞれの思惑を胸に黙りこくる。

 

「……しかしだね、二度目の暴走と、作戦に支障のある計画。これではいくら設備投資の予算があっても足りんよ」

 

「モリビト弐号は金食い虫だ、という意見もある。我が方としては出来るだけ穏便に、人機関連の予算を通したいのだ」

 

 情報を渡さなければ予算を降ろさない、か。

 

 姑息な手に出るものだ。

 

 だが有効な手段ではある。予算会の決定権はこの高官達にあるのだから。

 

「どうなのだね? モリビト弐号は何故暴走したのか。全くの手がかりなしではあるまい?」

 

 呪符の事は、まだ言えない。あれは切り札だ。

 

 呪符のお陰で勝てている。岩倉や翠の尽力もあっての事だが、あれが最も大きな要因であるのは言うまでもない。

 

「血続の情報も少ないんです。もしかしたら血続由来のものかもしれません」

 

 その論に高官達は仮面越しに渋面をつき合わせる。

 

「だが……、だとすれば血続以外を乗せなければなるまい」

 

「今から新たな操主の擁立など出来るものか。日下部翠とて日下部大尉の血筋あっての事だ。今から日本全土を血眼になって探したところで、血続など見つかるものか」

 

 その理解が評議会に降り立っている事に、内心安堵する。

 

 血続は貴重だ。自分達では決して見つけられない。

 

 この連中がどれだけ吼えようが血続を見つけられるわけではない。現状の血続である翠をどれだけうまく扱うかが鍵となっているのだ。

 

 ――その鍵を運用出来るのも、自分だけだ。

 

 その自信がある。

 

 どれだけの権力を振り翳しても、手に入らないものがある。血続と人機。この二つを揃えたのは他ならぬ自分の力であると。

 

「日下部翠を操主とする、という決定は不動のままにしておくとして、ではどうする? 暴走を止めるための手立ては打っているのだろうね?」

 

「整備班にはきっちりやっておくように言っておりますよ」

 

「整備班か。山城班長を一度、この評議会に出席させるべきでは?」

 

 その提案に熊の仮面を被った高官が首を横に振る。

 

「駄目だ。専門用語をぶつけられても我々では対処出来ない」

 

「ではどうすると言うのだ。次に暴走すれば人機の解体さえも考えに及ばせなければならないのだろうに」

 

 人機の解体。それは自由だが呪符が見つかるのは厄介だな、と時雨は感じた。

 

 それを制するために言葉を発しようとして、獅子の仮面の高官が重々しく口を開いた。

 

「その必要はあるまい。何故ならば、人機の運用は急務である。それを改良するのならばまだしも、解体して使い物にならなくしてどうする? モリビト弐号は継続して幽鬼殲滅の任を帯びる事とする」

 

 この場の最高権限の声に他の高官が押し黙った。時雨も意外であった。まさか擁護されるとは。

 

「ですが、暴走の原因も掴めない現状。モリビト弐号を一回、解体してみる、というのは悪い案ではないのでは?」

 

 ここで解体するべきではない、と言うはずであった自分が解体派に回る。獅子の高官の真意が知りたかった。

 

「なに、余計な手間をかけさせるべきではない、という話だよ」

 

「それだけですか? 何か、モリビトが今必要な案件でもあるのでは?」

 

 勘繰る時雨に獅子の高官はふっと笑った。

 

 仮面越しでもそれが分かった。

 

「……食えないな、君は。現在、海上を渡って一隻の戦艦が帝都に辿り着く。明朝には到着予定だ」

 

 話が見えない。どうして今、戦艦の話をする?

 

「……意味が」

 

「血塊炉を採掘する、本国に派遣してあった人員からの報告でね。クジラを捕まえた、とあった」

 

「クジラ?」

 

 時雨でさえも分からない単語であった。クジラを捕まえた、とは何かの暗号だろうか。

 

「捕鯨に関しては我々の管轄では」

 

「額面通りに受け止めるなよ、時雨准将。無論、クジラとは通称だ。単刀直入に言うのならば、血塊炉の採掘現場であるテーブルダストにおいて、血塊炉で動く謎の生命体が出現し、それを捕獲した。その生命体はクジラに似ていると言う」

 

 謎の生命体。全くの初耳だ。呆気に取られた顔をしていたせいだろう。獅子の高官は笑う。

 

「無理もないな。これは極秘事項だ」

 

 極秘事項をちらつかせて権威を横取りする腹積もりか。

 

 そう邪推した時雨に対して獅子の高官は冷静であった。

 

「明朝には着くそのクジラを、君には是非、見て欲しい」

 

 何故自分を抜擢する? 時雨には高官の意図を把握する義務があった。

 

「他の人間では駄目なのですか?」

 

「大将自ら打って出なければ謎の生命体の謎の一端にも触れられんよ。我らとて見ていないのだ。報告書を纏めるのは君らの仕事だからね」

 

 つまり自分に謎の生命体を判断しろ、という事か。

 

 それが薬になるか毒になるかを。

 

「……ですが、テーブルダストの採掘現場にいた謎の生命体、ですか。クジラというからには、水辺にいたんで?」

 

「いいや、森林を浮遊していたらしい。飛んでいた、のだよ」

 

 その言葉に心臓が収縮する。

 

 まさか、飛行人機の事を――。

 

 だがすぐに収めようとする。

 

 飛行人機の事など、一つも知らないはずだ。

 

「飛ぶ、というのは、にわかには信じ難い話ですね」

 

 飛行する人機などいやしない。その姿勢は崩さなかった。

 

「まぁ我々とて判断に困っているのだよ。時雨准将、君の判断に一任する。クジラをどう扱うかは任せた」

 

 暗に、丸投げした、というべきでもあろう。クジラに関しては自分達で関与出来る範疇にない、という。

 

「飛翔する兵器などあるはずがないからな。そのクジラとやら、時雨准将に任せればよかろう」

 

「テーブルダストの異常事態を一つ一つ目を光らせていれば時間も金もないよ。どうとでも扱いたまえ」

 

 他の高官は分かっているのかいないのか、いい加減な言葉を投げてくる。

 

 いや、分かっていない今のうちしかない。今のうちに、飛行人機に関する調べも進めておく。

 

 時間は有限であった。

 

 諜報班を張られて飛行人機の事を知られれば、この評議会からの追放は免れないだろう。

 

 評議会そのものに出席意義があるのではない。この評議会の議決内容を知っている事に意義があるのだ。

 

 国を動かす頭であるところの人々を、少しでも自分の意図する方向に動かせる評議会の強みを理解しているだけで、彼らがたとえ仮面の下では違う人間であったとしても全く驚くまい。

 

「わたしは、そのクジラ、とやらを拝見すればいいんですね」

 

「役に立ちそうならば使うといい」

 

 どこまで情報を得ているのだ。

 

 飛行人機の事は知られていないのだろうが、飛翔する血塊炉の兵器があるのは掴まれている。

 

 飛行人機に至るのは時間の問題であろう。

 

「では今次評議会はこれで閉会する。ご苦労であった」

 

 獅子の高官の声で評議会が幕を閉じる。

 

 全員が別室で仮面を外して帰って行く中で、時雨はその場に留まったまま考えを巡らせていた。

 

 クジラ、とやらを見ろといわれたのは何も偶然ではない。

 

 疑念があるのだ。

 

 あの時発生した落雷から、飛行人機とまでの飛躍はなくとも、何か、幽鬼とは違う別の存在がいることは勘付かれている。

 

「……どうなさいますか」

 

 高木の声に時雨は首肯した。

 

「命令には従うのが流儀だろう。クジラとやらを見に行こうじゃないか」

 

「飛ぶ兵器に関して、まだ懐疑的な高官もいます。情報が漏れたとは……」

 

「高木少佐。軽薄な発言は止めておくといい。誰が聞いているか分からない」

 

 高木もそれを悟ったらしい。周囲に目線を配ってから小声になる。

 

「……伊勢と水無瀬に調べさせましょう。諜報班がどれだけ抜きん出ているのかを、連中は知りません。自分達の放った草程度で、こちらの足は潰させませんよ」

 

「その自信はよし。わたしも、伊勢と水無瀬に敵う諜報員はいないと思っている。思っているのだが……」

 

 濁した声に高木が眉根を寄せる。

 

「何か?」

 

「いや……。驕り高ぶるのもよくはないな。過小評価して抜かれてからでは遅い。伊勢と水無瀬には今日中に動き出すように厳命を」

 

「承知しました。クジラ、云々に関しては」

 

「極秘とする」

 

 整備班や翠に余計な心労をかけさせるわけにはいかないだろう。

 

「では視察、という名目上の予定を作っておきます」

 

「助かる。高木少佐」

 

 立ち上がった時雨が呼びかけると高木は疑問を浮かべた。

 

「何か、他にも心配が?」

 

「日下部翠少尉。彼はどう思う? 血続として優れていると、わたしは思っているのだが」

 

 突然の質問に戸惑ったのだろう。高木は困惑気味に返す。

 

「それは……、戦いの度に研鑽はされているのだと思います」

 

「そうだ。戦えば戦うほど、人機、モリビト弐号は強くなる。それは操主である日下部翠も然り」

 

「しかし無限の耐久力ではありませんよ。モリビトも、操主も」

 

「分かっているさ。だからこそ、新たな操主の選抜、などという話も出てきた」

 

 本音では評議会が、駒として動かしやすい人間を導入したいだけなのだろうが、血続の伝手のない評議会の高官達では不可能だ。

 

「わたしは特別だった。特別に運のよかった。日下部孝雄が血続であった事、その家柄である日下部翠も血続である事」

 

「……ですが、一方から見れば不幸でもあります。日下部少尉は、要らぬ因縁まで背負わざるを得なかった」

 

 普通ならば学び舎を出て、見合いの席にでも出されているであろう少女。

 

 その人生を歪めたのは自分だ。

 

 しかし時雨にはその程度の罪の意識に苛まれている時間すらもない。

 

「クジラを見ろ、とは、評議会もとんだ食わせ者だよ。海でも見ればこの気分も和らぐのかな」

 

「それに、報告書云々が全くないのも気になります。現地からの情報が我々を通さずにそのまま獅子会長のものになっているのも」

 

「確かに、奇妙だ。現地の人間は確か、軍人であったはずだな」

 

 記憶を手繰っていると高木は手帳を取り出して名前を読み上げた。そこまで用意周到ではない時雨は感心する。

 

「なるほど。現在の処遇についても問い質すべきか」

 

「恐らくは現地入りした時点で、向こうの軍部と話が通っているかと」

 

「ベネズエラ、か。遠いな。異国だ」

 

 当たり前の事を呟く。だがその場所でしか血塊炉の原材料は取れないのだ。

 

「しかし現地の人間からの情報も何もなく、動いたわけではあるまい。クジラの噂話でもいい。事前情報が欲しい」

 

「伝えておきます」

 

 時雨は会議室を出て襟元を緩めた。

 

 僅かに風を入れて汗ばんだ身体を冷やした。

 

 

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