戸塚の依頼を受けた次の日の昼休み、俺たちはテニスコートに来ていた。みんなジャージに着替え雪乃の指導が始まった。雪乃のジャージ姿マジナイス!写真撮りたいな…。
始めに基礎体力を高めるということで腕立て伏せや腹筋、スクワット、軽いマラソンを中心に戸塚を鍛える。
それになぜか由比ヶ浜もやっている。理由は分からんが。
俺と雪乃はやらずに指導。というか指導してるの雪乃だけどね。雪乃が直接教えない理由は体力がないからだ。昔に比べれば多少はよくなったものの人並みではない。俺はって?俺の場合はめんどいだけ。なにか気づいたことがあったら言うけど。
基礎体力は日頃の積み重ねが大事だ。戸塚も運動部に入っているならわかっているはずだが。今日1日でそこまで伸びはしないが毎日続けるなら話は別だ。戸塚は本気でテニスに取り込んでいるのはわかるのでこれからもしっかりやるだろう。雪乃は戸塚が努力しているのを見て微笑んでいる。努力している人を見るのが好きだからな?
・・・・・・・
次の日も俺たちはテニスコートに集まった。基礎練習のこなし方はマスターしたので、今日はボールとラケットを使って実践練習だ。
基本的には俺が授業のときにやっている壁打ち。その後で俺が雪乃の指示した場所にボールを決め、それを戸塚が打ち返すというやつだ。雪乃は体力がないので当然俺がやる。
ほとんどこれは基礎だが甘く見てはいけない。基礎ができてると応用が利くようになり、そこから自分なりに手を加えていってだんだんと上達していくのである。うん、基礎大事。
俺は雪乃が指示したところにボールを決める。雪乃が指示したところはほとんどが嫌らしいところだが対処ができないわけではない。これはきつい。
だが、これが実際に試合で同じようなことが起きたらどうだろう?練習していない場合は対処の仕方がわからず打ち返せられないかもしれない。しかし、一回でも練習していると初めてその試合で起こるよりは対処ができるかもしれない。それは小さな可能性だ。試合ではそれが命取りになる。そこで雪乃は嫌なところばっか指示している。
しかし、問題が起こった。
なんと戸塚がこけてしまった。何度も嫌らしいところをやっていたので疲れてしまったんだろう。
「大丈夫か戸塚?」
「うわっ、さいちゃん先輩大丈夫ですか!?」
見ると少し擦りむいていた。けれども戸塚は俺たちを見てこういった。
「うん、僕は大丈夫。だから続けて。」
「…まだやるつもりですか?」
「みんなが付き合ってくれているから僕も頑張りたいんだ。」
「…そうですか。義兄さん、由比ヶ浜さん後はよろしくね。」
そう言うと雪乃は立ち去っていった。方向からして保健室で救急箱を取ってくるつもりだな。
「僕、雪ノ下さんに呆れられちゃったのかな…。」
「いや、単純なに救急箱を取り入っただけだと思うぞ。それに雪乃は努力しているとやつは好きだからな。そんなことはないから安心しろ。」
「そうだよ!ゆきのんがさいちゃん先輩を見捨てることはないですよ!」
「ふふ、比企谷君は雪ノ下さんのことよく理解しているね。」
「まあな、小さい頃から一緒にいるし。それに雪乃の義兄ちゃんとして当然だ!」
「うわっ…、シスコンだ。」
「シスコンで何が悪い。あ、戸塚。雪乃が来るまでしばらく休憩な。疲れただろう、適度に休憩することも大切だ。」
「うん、そうさせてもらうよ。」
と、そのとき声がした。
「あれー?テニスしてんじゃんー。」
俺たちが休憩に入ろうとしていると数人の人がテニスコートに入ってきた。
「え?どうしたの優美子。」
どうやら由比ヶ浜の知り合いらしい。
「ごめんね、結衣。なんか結衣たちが戸塚先輩の練習付き合ってるって聞いてね。あーし、元々テニス部だし練習付き合おうっと思ってさ。いいですよね戸塚先輩?」
「いや、でも…。」
ふむ、何やらその由比ヶ浜の友達とやらは戸塚か練習していると聞いて練習に付き合おうとしている。そして戸塚は難色を示している。まあ俺がどうこうする話ではないし任せよう。
「ほら、みんなでやったほうが楽しいしさ。そういうことでいいんじゃないの?」
なぜかそこでクソが割り込んできた。なんでこいつ此処にいるの?意味わからん。
「いや、なんでお前が話に入ってくるの?今はその1年と戸塚の話だろ。お前関係ないのに入ってくるなよ。それに俺たちは練習しているんだ。お前は帰れ。てか失せろ。」
「じゃあこのテニスコートをかけて勝負をしませんか、ヒキタニ先輩?」
えー、このクソ人の話聞かない。どうしようかなー。
「折角だし混合ダブルスでやりましょうよ。な、優美子。」
「え?は、うん…。」
由比ヶ浜の友達の三浦はやる気がないようだ。ごめんね、このクソのせいで。
「はぁ、んな事してる暇は無いんだがな。面倒くさいからやるきゃないか。」
「なぬ!?八幡!どうするのだ!?」
「あれ?材木座、お前いたの?」
「酷い!」
「嘘嘘冗談だ。しかし、どうしようかなー。」
と、そのとき雪乃が帰ってきた。救急箱を持ち陽乃と一緒に。…って、陽乃!?
「あれ?陽乃どうしてここに?」
「いやー、今日は何もなくてさ。ちょうど雪乃ちゃんと会ったからついてきちゃった!」
「なるほど。」
「で、この馬鹿騒ぎは何?」
俺が事情を説明すると2人は殺気をクソに放つ。
「あー、このクソどうしようかなー。」
「もうどうしようもないわ。」
「それは知っているから大丈夫だ。で、混合ダブルスやることになったから陽乃出てくれるか?」
「うん、任せて!あのクソに地獄を見せないと…。」
こうして俺・陽乃VSクソ・三浦の試合が始まろうとしていた。