戦女神×魔導巧殻 第二期 ~ターペ=エトフへの途~   作:Hermes_0724

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第五十三話:国家と信仰

王宮内の客室に入ったルナ=エマは、戸惑いを覚えていた。インドリト王は、自分が想像していた以上の人物であった。その見識は広く、深い。多様な価値観、考え方を受容しつつ、自分の判断で意思決定を下している。自分はマーズテリア神殿の聖女として見出され、総本山の中で育ち、マーズテリア神殿の教義を絶対として生きてきた。それが当たり前であり、そのことに疑問を抱いたことはない。だが、インドリト王との会話で、自分がいかに「無知」であったかに気づいた。マーズテリア神殿は光側の神殿である。闇側の神殿とは対立をしている。だが、なぜ対立をしているのかを考えたことはなかった。闇側は「悪」と決めつけていたが、その根拠が無かったのである。

 

『ヴァスタール神殿が本当に「相手の弱さも含めて愛しなさい」と言っているのなら、それはマーズテリア神の教義にも通じるものがある。ヴァスタール神殿の教典を読んでみる必要があるかもしれません・・・』

 

この時、ルナ=エマは危険な状態であったとも言える。聖女は神格者である。つまりマーズテリア神の「使徒」であり、主人に対して絶対の忠誠を持たなければならない。そこに疑問を持てば、それは天使族で謂うところの「堕天」へと繋がりかねないのである。そのことに気づいたルナ=エマは、慌てて首を振った。

 

『まだ到着したばかりです。まずは様々な人たちに話を聞きましょう。考えるのはそれからでも十分です』

 

寝台に置かれている服に着替える。ターペ=エトフの人間族が着ている、ごく普通の服だそうだ。髪を束ね、布で巻く。簡単な変装であるが、これにより街中を歩いても、聖女と気づかれずに済むだろう。

 

『師の店には、他の客たちもいます。王が来たとなれば、皆が緊張するでしょう。ルナ=エマ殿が希望されている「民衆の話を聞きたい」という希望も叶わないかもしれません。ですので、恐縮ですが「変装」をして頂きたいのです。私もインドリトではなく「ドイル」という名の男に変装します』

 

鏡を見て、思わず笑う。どう見ても、街を歩く普通の女だ。このような変装は、これまでしたことがない。

 

部屋を出ると、神官騎士たちが驚いた顔を浮かべる。ルナ=エマは笑みを浮かべ、騎士に告げる。

 

『ここからは、インドリト王と私だけで、プレメルの街に行きます。皆さんは王宮で待機をしていて下さい』

 

慌てる騎士たちを宥め、聖女は王宮の外へと歩を進めた。

 

 

 

 

 

『「魔神亭」ですか・・・』

 

『師はこの店の主人です。闇夜の眷属の多いこの地では、この名前が効くみたいですね』

 

店の入口には、冗談としか思えない注意書きが書かれている。インドリトが扉を開ける。店の中は既に、大勢の客で賑わっていた。

 

『あらぁ?ドイルさん、今日は女性をお連れなんですね?スミに置けないわぁ~』

 

可愛らしい獣人族の給仕が、笑顔で話しかけてくる。変装した王は、そのまま奥の階段に進む。賑わう店内を観察すると、気になる人物がいた。白い外套を着た金髪の女性が、店内の隅に立っている。この手の酒場には、「用心棒(バウンサー)」がいることが多い。彼女もそうなのだろうが、纏っている空気が普通ではなかった。尋常ならざる強さである。マーズテリア神殿最強の「聖騎士」でも、彼女には勝てないかもしれない。ルナ=エマは緊張した。ひょっとしたら自分は、軽はずみでとんでもない処に来てしまったのかもしれない。だが、インドリト王が自分に危害を加えるとは思えなかった。

 

二階に上がると、扉が三つある。一番手前の扉を開けると、そこは個室であった。壁には風景画が掛けられ、質の良い調度品が部屋を飾っている。程よい大きさの机には花が飾られ、その中で蜜蝋が明かりを灯している。そして、一人の男が部屋の中で立っていた。

 

『はじめまして。私がこの店の主人、「ディアン・ケヒト」です』

 

黒髪の男は、涼しげな笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

『先生、お客さまをお連れしました』

 

『あなたが・・・』

 

ルナ=エマは男の顔を見て思い出した。昼間に道を尋ねた男である。だがそんなことは覚えていないかのように、男は一礼をした。ルナ=エマもそれに倣い、挨拶をする。

 

『マーズテリア神殿のルナ=エマです。ターペ=エトフの見聞のために、この地を訪れました』

 

『・・・マーズテリア神殿の「聖女殿」ですか?』

 

ルナ=エマは頷いた。ディアンはインドリトを横目で見る。「なぜ先に教えない」と責めているのだ。インドリトは舌を出して一礼した。だが、ルナ=エマはそこに芝居を見ていた。目の前の男は、昼間に自分と会っている。ならばその時点で、自分の正体に気づいたはずだ。弟子を思い、あえて驚いて見せているのだろう。同時に、ルナ=エマは微かな違和感を感じていた。男は、顔立ちは整ってはいるものの、特に特徴はない。そして全身に魔力を纏っている。上級の魔術師などは、修行の一環として全身に魔力を纏わせる。肉体の表面に魔力を流し続けるのである。高い集中力と強い魔力が必要だが、魔力の絶対値を引き上げる効果がある。だが目の前の男は、魔術師という雰囲気ではない。ルナ=エマは疑問を感じていたが、男の案内によって、思索から戻った。

 

『どうぞ、お座り下さい。私も、食事をご一緒させて頂きます』

 

『エルドさんが、料理をされるんですか?』

 

『彼の腕は、既に私と同等だ。新しい料理を生み出す、という点ではまだまだだが、新入りの指導もしっかりしている。安心して厨房長を任せられる』

 

椅子に腰を掛けると、飲み物が運ばれてくる。琥珀色の麦酒である。ルナ=エマは意外に思った。麦酒は庶民の飲み物である。王宮での晩餐会などでは、葡萄酒が出されるのが一般的であった。ルナ=エマ自身、麦酒を飲んだことなど、数えるほどしか無い。硝子製の盃を手に取ると、その冷たさにルナ=エマは驚いた。盃を合わせ、一口飲む。芳醇な味が口内に広がる。

 

『・・・驚きましたわ。麦酒はあまり飲まないのですが、こんなに美味しいものだったとは』

 

『ターペ=エトフの南部、ルプートア山脈の向こう側には、スティンルーラ族の集落があります。その集落で造られている「エール麦酒」です。従来の黒麦酒とは製法が異なり、苦味と香り、そして旨味に富んでいます。この店では、それを氷で冷やし、お出ししています。お客様にも人気で、こうして繁盛をしています』

 

葉野菜と赤茄子、薄切りにした玉葱に白い液体が掛けられた前菜が出される。ルナ=エマは一口食べて唸った。大抵の場合、野菜には塩と葡萄酢、オリーブ油を掛けるが、この液体からは乾酪(チーズ)の味がした。それが野菜を引立てている。エール麦酒を飲むと、口内がサッパリする。相性が良いのだ。

 

『この店のウリは、料理と酒が楽しめることにあります。そろそろ・・・』

 

扉が叩かれ、給仕が次の料理を運んできた。白い皿の上に、薄く切られた「何か」がある。オリーブ油と葡萄酢などが掛けられている。

 

『オウスト内海で今朝あがった魚です。新鮮なので、生でイケます。葡萄酢で締め、岩塩、オリーブ油、粗挽きの胡椒を掛けています。白葡萄酒でも良いのですが、私は米酒をお薦めしますね』

 

自家製だという透明な酒「米酒」を薦められる。無論、ルナ=エマは米酒など飲んだことはない。魚を生で食べることも初めての経験だ。ルナ=エマは感動していた。これまで多くの晩餐会に出席したが、そこで出されたどんな料理、どんな酒よりも美味であった。酒と食事を進めながら、インドリトはルナ=エマに尋ねた。

 

『そういえば、聖女殿は先生の名前をご存知でしたが、どこでお知りになったのでしょう?レウィニア神権国でお聞きになったのですか?』

 

『いいえ、総本山の記録です。覚えていらっしゃいますか?二十年前、イソラの街にいた「ミライア」という神官騎士を・・・』

 

インドリトが思い出して笑みを浮かべた。ディアンも頷く。食べながら、インドリトはミライアのその後について、ルナ=エマに尋ねた。ミライアはその後、同僚と結婚し、ミライア・テルカという名前になったらしい。現在はカルッシャ王国で幸福に暮らしているようである。

 

『私はその報告書を読み、インドリト王の師「ディアン・ケヒト」という人物に興味を持ちました。ミライアの報告書には「透徹した賢者」とありました。私はてっきり、齢老いた老人だと思っていたのですが・・・』

 

『私はそのような賢者ではありませんよ。ただの「酒場の主人」に過ぎません』

 

『そうは思えません。確かに、当初の想像とは違っていました。ですが貴方を見て、やはりインドリト王の師は貴方であると納得しました。お会いしてまだ二刻と経っていませんが、それだけで十分に解ります。貴方の言葉やしぐさ、何気ない中に見える重厚な完成度・・・私は確信しています。このターペ=エトフの「真の建国者」は、貴方であると・・・』

 

ディアンは真顔になり、口元を布で拭いた。少し口元を歪める。

 

『・・・過剰な評価には恐縮しますが、いささか、我が弟子を甘く見過ぎですな。確かに私は、インドリトに様々なことを教えました。ですが、それを血肉とし、ターペ=エトフを建国したのは現王インドリトです。実際、私はもう十年近く、王宮には行っていないのです。優れた行政官を束ね、元老の方々と話し合い、国を富ませ民を幸福にし、民衆から支持を受け続ける・・・これは全て、インドリト王自身の力です。私は何もしていませんよ』

 

ルナ=エマは沈黙した。インドリトも恐縮している。師からここまで褒められたのは初めてであった。しばしの沈黙の後、ディアンは顔を背け、懐から何かを取り出した。

 

『でゅわっ!』

 

黒色硝子が塡められた眼鏡を掛け、ディアンは顔を向けた。ルナ=エマもインドリトも驚く。ディアンは笑いながら眼鏡を外し、インドリトに渡した。

 

『お前の変装道具だ。顔を知られたくない時に掛けると良い』

 

インドリトは眼鏡を掛けた。光が遮られ、薄暗くなる。

 

『先生・・・有り難いのですが、これでは夜は出歩けませんね。だいたい、こんな眼鏡を掛けていたら、かえって目立ちます』

 

二人は声を上げて笑った。ルナ=エマも釣られて笑う。話題を変えるために、わざと剽げたのだということは、二人も解っていた。笑いながら思った。

 

(やはり、このディアン・ケヒトという人物が、最重要人物です。もっと話を聞かなくては・・・)

 

 

 

 

 

魔神亭での、ささやかながら豊かな晩餐会の翌日、ルナ=エマは元老院の会議を見学した。元老院は、西ケレース地方に住む七大種族から選ばれた、七人の部族代表と国王インドリトを併せた八名が、円卓に座り話し合う会議である。全会一致が原則であり、全員が納得するまで話し合いは続く。会議場に入ったルナ=エマは、壁に掛けられた言葉を読んだ。

 

『万機、公論に決すべし。皆族は一部族の為に、一部族は皆族の為に・・・』

 

『・・・その言葉は、インドリト王の師が考えたものじゃ』

 

年老いた龍人族の男が入ってきた。ルナ=エマは挨拶と詫びを述べた。

 

『マーズテリア神殿のルナ=エマです。フレイシア湾上陸において、龍人族の方々を不安にさせてしまったとお聞きしました。この場を借りて、お詫びを申し上げます』

 

男は手を振って、笑みを浮かべた。

 

『儂らは、古神の眷属じゃ。それゆえ、現神の神殿に煙たがられておる。いや、煙たがられていると「思い込んでいる」のじゃ。現神と言っても、実際には様々な神がいる。先日、イーリュン神殿の神官が集落に来た。皆が警戒していたが、怪我をした子供を治療する姿に、儂らも心を許した。ああした神殿もあるのじゃな』

 

『マーズテリア神殿も同じです。マーズテリア神は、古の女神を妻とされました。それゆえ、七魔神戦争においては「不戦」を貫いたのです。少なくとも、マーズテリア神殿は龍人族の方々を煙たがってはいません』

 

『そうかのう?まぁ、少なくともお主らは、儂らの集落には入らず、そのまま通り過ぎていった。帰る時も、同じようにしてくれると有り難い』

 

『お約束します。龍人族の集落に近づくことはありません』

 

元老院は、当初は多少の緊張も見られたが、やがてルナ=エマの存在を忘れたかのように、白熱した議論となっていた。この日の議論の内容は「教育」についてであった。イーリュン神殿が建てられたことにより、宗教教育についての見直しを行おうとしているのだ。イルビット族の教育庁官が立ち上がり、意見を述べる。

 

『現在、ターペ=エトフでは各宗教の教典を教えていますが、この際、ターペ=エトフ独自の「教材」を作成してはどうかと考えます。神々の教えを一冊にまとめ、挿絵を付けながら解かり易く教えていくのです。参考としてナーサティア神の教えを教材にしてみました』

 

薄い冊子が配られる。ルナ=エマは開いてみて驚いた。読み易い文字と綺麗な挿絵が入り、ナーサティア神が「木精霊(ユイチリ)」の始祖であること。「知の欲望=好奇心」を司り、学びの神であることなどが解かりやすく書かれている。「学びとは、己の無知を徐々に発見していくことである」というナーサティア神殿の格言も入っている。子供はともすると勉強が嫌いだが、こうした教材を使うのであれば、楽しく学べるだろう。だが教義についての書籍は、神殿によって管理されている。明文化されているわけではないが、各国は神殿勢力の影響を考え、宗教に関する書籍を独自に発行することは、禁忌としていた。その点は、会議の中でも憂慮の声が出たが、インドリトが笑って否定した。

 

『我がターペ=エトフは独立国家です。宗教教育の教材にあたっては、国内にある神殿の神官たちとの話し合いは必要でしょう。ですが何故、国外にある神殿の意見まで聞く必要があるのでしょう?文句があるのなら、神殿から公式に抗議の使者を送れば良いのです』

 

『しかし王よ、もしそうなったら・・・』

 

『そうなったら、私から言い返しますよ。そもそも分厚くて読み難い教典を、しかも一部の神官たちが独占している事自体に、問題があるのだと』

 

マーズテリア神殿の聖女が聞いていることをお構いなしに、インドリトはそう言い切った。他の元老たちがルナ=エマを見る。だが、ルナ=エマは少なくとも表面的には、何の変化も無い。インドリトは言葉を続けた。

 

『我がターペ=エトフは、信仰の自由を認めています。これはつまり、どの信仰も公平に扱うということです。国家による教育においては、信仰の偏りは認めません。信仰は良し悪しではありません。その人にとって幸福であれば、それで良いのです。自分は自分の信仰を持つ、他人には他人の信仰がある。お互いの信仰には踏み入らず、協力しあって生きていく・・・このことを徹底して教えて下さい。他人の心を縛る権利は、誰にも無いのです』

 

会議後、ルナ=エマはインドリトに尋ねた。先ほどのインドリトの演説についてである。

 

『王は先ほど、信仰は良し悪しではない、と仰られましたね』

 

『えぇ、少なくとも私は、そう思っています』

 

『ですが、貴国には同時に、法があります。もしその宗教の教義と法が相反した時には、どちらを優先させるのですか?』

 

『当然、「法」を優先させます』

 

インドリトは言葉を続けた。誤解が無いように丁寧に話をしたほうが良いと思ったからだ。

 

『私は、信仰とは、心の平穏を保ち、日々を幸福に生きるために存在すると考えています。しかし、自分が幸福に生きるために、他人を不幸にして良いという考え方は、我がターペ=エトフでは認めません。人は皆、自己の幸福を追求するものです。ですが同時に、人は独りでは生きられないのです。人は集まって、助け合って生きるのです。しかし他人同士が集まれば、考え方の相違などから必然的に対立が生まれます。それを調整するために「法」があり、法を有効にするために「国家」があるのです。つまり国家とは、法を用いて、そこに生きる人々を幸福にするための装置なのす』

 

『大変失礼ですが、あえて言わせて頂きます。国自体が誤る、ということは無いのでしょうか』

 

『当然、あり得ますね。私も自分の判断が正しいのかどうか、常に問いかけ続けています。ですが、誤るかもしれないから、間違えるかもしれないからという理由で、国家を否定するのは飛躍のし過ぎだと思います。誤ら無いように為政者が努力し、誤ったら原因を見つけ、すぐに是正すれば良いのです。人は神ではありませんから、間違いもあるでしょう。大切なことは、それを是正することが出来るかどうかなのです』

 

『インドリト王は、自分が正しいとは思っていらっしゃらないのですか?』

 

『正しいと思っていますよ。ですが同時に、正しさとは人の数だけ存在するとも、思っています。私一人を絶対として、国家を運営すれば、私が間違えた時に誰が是正するのです?私は自分の判断に自信を持っていますが、「絶対に間違えない」などという思い上りは持っていません。だからターペ=エトフでは、様々な「正しさ」を認めているのです。それをお互いに開示し合い、話し合い、より正しい答えを見つける。そのために「元老院」があるのです』

 

『・・・大変貴重なお話をお伺いしました。お時間を頂き、有難うございました』

 

インドリトは笑って頷き、議場を後にした。

 

 

 

 

 

ただ独り残ったルナ=エマはしばらく沈思し、呟いた。

 

『この国は・・・危険です』

 

「ヴァスタール神を信仰する闇夜の眷属と、ガーベル神を信仰するドワーフ族が生きるために、光と闇の神殿を並べる」 この程度の理由であれば、マーズテリア神殿や他の神殿たちも受け入れるだろう。だがターペ=エトフの基本理念は、そんな水準では無かった。インドリト王は、「信仰心」というものを客観的に、冷徹に見通している。信仰を個の中に留まらせ、多様な信仰を並列させることで、国家と宗教を分離させている。そしてターペ=エトフでは、これが民衆たちにも受け入れられ、当たり前となりつつある。その結果、民族間の信仰上の対立が回避され、互いに得意とするところを持ちより、豊かな国家を形成しているのである。

 

(マーズテリア神殿は、教皇猊下を頂点とした上意下達の組織です。猊下の判断が絶対であり、二十万を超えるマーズテリア神兵たちも、それで動きます。他の神殿も、多かれ少なかれ、そのような組織になっている。ですがターペ=エトフは、それとは真逆の思想によって成功を収めている。各民族の判断を尊重し、上意と下意の融合を図ることで、より良い国家を作っている。もし、この国家形態を全ての国々が模倣したら・・・)

 

そう考え、ルナ=エマはゾッとした。それはすなわち、ラウルバーシュ大陸から「現神」が排除されることに繋がりかねないからである。進歩などというものではない。それは「革命」とも言えることであった。そして何より危険なのは、聖女である自分自身でさえ、インドリト王やこの国の形を「間違い」と言い切れないことにあった。

 

『ディアン・ケヒト殿に会いましょう。彼は恐らく、全てを見越して、この国を設計した。彼の真意を確かめねば・・・』

 

 

 

 




【次話予告】
次話は8月4日(木)22時アップ予定です。

ルナ=エマは、ディアン・ケヒトの家を訪れた。インドリトに危険思想を植え付けた張本人に、その真意を確認するためである。彼女の、後の運命を決定づけた、三日間が始まる。


戦女神×魔導巧殻 第二期 ~ターペ=エトフ(絶壁の操竜子爵)への途~ 第五十四話「信仰と信仰心」

Ihr stürzt nieder, Millionen?
Ahnest du den Schöpfer, Welt?
Such' ihn über'm Sternenzelt!
Über Sternen muß er wohnen.

ひざまずくか、諸人よ?
創造主を感じるか、世界よ
星空の上に神を求めよ
星の彼方に必ず神は住みたもう・・・

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