はじまり
Welcome to Sword Art Online!!
真っ白な画面に黒字の明朝体のフォントで記されたこの一文、それが泉こなたが初めに見たものだった。やがてそれが燃えるような演出で消えていく。その次に一つの質問が現れる。
“
こなたは特に迷うこともなく目の前のYESに触れた。キーボードが現れたと同時に“個人コードを入力してください”というメッセージが現れる。素早いタイピングでそれを入力した瞬間、壮大なBGMが流れ、女性のものと思われる高い声でゲームの簡単なガイダンスと世界観の紹介がアナウンスされた。
<アインクラッド>-----それがこのゲームの舞台となる場所だ。空高く浮かび石と鉄で造られた階層は100層にも連なる。アインクラッドの周辺は雲で覆われており、地上を見ることはできない。プレイヤーたちはこの<城>を1層ずつ攻略していき、頂上に存在するという紅玉宮を目指す。
(早く終わらないかな...)
こなたは退屈そうにアナウンスを聞いている。βテストに参加している彼女にとって世界観などとっくのとうに熟知してるからだ。
βテストは同じ年の1月から2か月行われた。参加者には優先的なナーヴギアの購入権が与えられることもあり募集者数10000人に対し、応募者数はその100倍もの数となった。こなたはその10000人の中の一人である。β当時に作成したアバターは正式版にも引き継げたため、本来ならばキャラメイク等で時間のかかる初回ログインをこなたは一足早くログインすることができる。
アナウンスが終わると同時にこなたは青白い光に包まれた。βのときに体験している、その次に見るものは異世界の光景だろう。
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次第に光が薄れていく。まず目の前に飛び込んできたのは石でできた門に四方を囲まれた空間だ。<転移門>-----これを利用することで到達済みの階層に瞬時に移動することができる。この転移門を中心とした広場が、プレイヤーがゲームにログインしたときに出現する場所となっている。
かがみたちは今頃キャラメイクの真っ最中だろう。今広場にいるのは一足早くログインしたβテスター-----実際、βの時にパーティーを組んだプレイヤーもちらほら見かける。ログインしたと同時に商店街へ走り出す者、こなたと同じように待ち合わせをしている者もいた。
周りのプレイヤーをなんとなく眺めていると、三人の女性プレイヤーがこちらに向かってきていることに気付いた。ピンク色のロングヘアの少女がみゆき、ツインテールがかがみ、ショートがつかさで二人とも髪は紫色だ。
「こなちゃ~ん!」つかさが手を振りながら大声で呼びかけてきた。
「3人ともやっときたかー、あんまりにも遅いから先に行っちゃおうかと思ったよ」
「こっちはキャラメイクがあるんだから仕方ないでしょ。...それにしてもあんた、こっちでも背低いのね」
こなたのアバターの身長は145。現実と比べると5cm伸ばしただけだ。
「初めは170ぐらいでやってたんだけどね。いざ動こうとしたら全然動けなくってさ。あれはなんていえばいいかな...」
「厚底のブーツを履いている感覚、なんていうのはどうでしょうか」
「そうそうそれ!おかげでキャラ何度も作り直すはめになっちゃってさ~」みゆきの例えに納得しながらこなたがいった。
「とりあえず商店街の方に行こうよ、装備と回復アイテム買っておきたいしさ」こなたたちは商店街へと歩き出した。
「そういえば泉さん、黒井先生はどうされたんですか?」
黒井先生とはこなたたちのクラスである2年B組の担任のことだ。彼女も長い間ネトゲをプレイしており、こなたとはネトゲ仲間でもある。
「先生風邪にかかって熱でちゃったみたいでさ。だからナーヴギアの安全装置みたいなのが働いて使えないみたいなんだよね。...それはそうとみゆきさん、ゲーム内ではキャラネームで呼ぶものだよ。」
こなたはふと思い立ったように言った。4人のキャラネームは全員リアルの名前と同じものだ。
「あっ、すみません私ったらうっかりしていて...では、こなたさんでよろしいでしょうか。」
「うん、大丈夫だよ」こなたは笑いながらそう返した。
商店街はすでにほかのプレイヤーで賑わっていた。まずは戦闘を楽しみたいというプレイヤーが多いのか武器屋の前にはかなりの人がいた。
「みんなは武器何にするの?」
このsaoではタイトル通り魔法や遠距離武器の一切がなく、あるのは剣や槍などの近接武器だけだ。
「私は片手剣だね、βの時にも使ってたし」こなたは迷うことなく片手剣を購入した。
「こなたの身長なら短剣の方が似合ってるわよ」
「凶暴なかがみは斧とか似合うかもねー」
「誰が凶暴ですって...!」
こなたとかがみが楽しそうにじゃれあっている。
「私はこの細剣というものにしてみます」みゆきはすでに購入した細剣を手に持っている。
「みゆきさんが使うと戦うお姫様ーって感じがするね」
「ありがとうございます。つかささんとかがみさんは何にされるんですか?」
「うーん...短剣とか使いやすそうでいいかなと思うんだけど」
「いっそのこと2人短剣使っちゃえば?可憐な双子の短剣使い!うん、絶対有名になれるよ」
「こっちじゃ全然似てないし...でもいいかもね短剣、つかさはどう?」
「私も短剣でいいかな」
つかさとかがみも決めて全員の武器がそろった。
「じゃあさっそくフィールド行って経験値稼ぎしよっか」
「それもいいけど観光もしたいな」
「そうね、時間もまだまだあるし」
「では街を一周周ってから外に出る、という風のしませんか?」
「そうしよっか。私βの時はレベル上げばっかしてたから観光とかしてないんだよね」
<はじまりの街>-----それが第一層の主街区だ。転移門広場を中心として商店街や鉄で造られているらしい<
ぱりいん、という音と共に敵が四散する。それと同時に、こなたにレベルアップを知らせるBGMが流れた。
「こなちゃんもうレベル4なの!?私なんてまだ2レベルになったばかりだよ」
あれから街を一周周り北西のゲートからフィールドである草原へ出た。ここには初心者がまず初めに戦闘を経験するであろう、<ボア>という青いイノシシ型のモンスターがいる。数が多く
「やっぱり難しいですね。スキルが全然当たらなくて」
「目の前で発動すればシステムが勝手に当ててくれるよ。ほら、かがみがやってるみたいに」
かがみはボアにソードスキルを放っていた。短剣カテゴリで初期に開放されている<アーマーピアス>だ。技時遺体は単なる刺突攻撃だが相手に防御力低下のデバフを与える。緑色のライトエフェクトを纏った一撃は見事にボアに命中した。
「おつかれーかがみ!」
「おつかれー、...て、あんたもうレベル4なのか」
かがみのレベルはこなたの一つ下、レベル3だ。
「はじめて3時間でレベル3てかがみも相当だよ」
「大体システムがやってくれるしね、ダメージもポーションで十分追いつくし...さて、この後どうする?もう日が暮れそうだけど」
ゲーム内の昼夜は基本的に現実に同期している。現在の時刻は夕方の5時、空もオレンジ色に染まってきていた。
「わたしはいったん落ちます。お母様にこの時間までといわれていますので。また夜にログインします」
「じゃあゆきちゃんまたね~」
みゆきとつかさが手を振りあっている
「いったん街に帰ろっか、武器の耐久値も結構来てるし」
「そうね、そのあとはもう一回外に出る?」
「おねえちゃん、私たちも6:30に一回やめなさいっておとうさんのも言われてるよ?」
「廃人街道まっしぐらだね」
「う...あんたおじさんに何か言われてないの?」
「特に何も。まあ7:00ぐらいにいったん補給しに行くけどね」
「こなちゃん家は放任だよねー相変わらず」
「あの...みなさん」
賑やかに話していると、みゆきが不安そうに話しかけてきた。
「あれ、どうしたのみゆき」
「その...ログアウトのボタンが見つからないんです、結構探したのですが」
「ログアウトは確かシステム欄の一番下にあったはずだけど...あれほんとだ、ない」
こなたが人差し指を使ってメニューを操作している。かがみとつかさも探したが見つからなかった。
「バグかな...まったく、こういうシステム関連は勘弁してほしいわね」
「そのうち直してくれるよ、とりあえず街にいこうよ、みゆきさんも一緒に」
こなたが歩き出そうとしたその時
リンゴーン、リンゴーン
突如鐘のようなかなり大きい音が聞こえ、こなたたちの視界が徐々に霞み始めた。
「これって転移のときの...でもなんでいきなり」
アイテムや転移門を使うことで起きる<
光が薄れて目にしたのは草原ではなく黒く輝く漆黒の宮殿だった。おそらく黒鉄宮、今いるのは宮殿前の広場だろう。
「ちょっ...なんなのよ今の」
「転移だったけど...運営から何かあるんじゃない?」
こなたたち以外にも転移させられたプレイやーが何千人といた。皆、困惑とログアウトできないことに対する怒りを顔に出している。
「あっ...上を見ろ!!」突然誰かが叫んだ。
頭上の夕焼けがたちまち深紅の市松模様に染まっていく。
「あれ...何か書いてあるような...?」
「<WARNING>に...<SYSTEM ANNOUNCED>、でしょうか」
「運営の謝罪か何かだよきっと」
「でも危険って...明らかに普通じゃないわよこれ」
かがみが不安そうに見上げている。周囲のプレイヤーは運営からのアナウンスを聞き逃さないよう耳を澄ましている。
しかし次に起きたのは彼らの予想を裏切るものだった。
突如深紅の天井の一部が大きな雫となってどろりと垂れだした。それは地面には落ちずに、深紅のローブをまとった人の姿となった。
「なに...あれ...?」
「SAOのスタッフが着てたやつだよ、あれ」
「でもなんで顔がないのよ」
「アバターが用意できなかったんでしょうか?」
「バグ対応にわざわざアバター一つ用意することなんてないでしょ普通」
「すごい不気味だよね...」
周囲から再びささやきが漏れ出した。と、それらを抑えるようにローブの右袖が動いた。白い手袋をはめた手が見えたが、それにつながっているだろう腕は見えなかった。
ないはずの口が動いた、ような気がした。直後に聞こえたのは低い、それでいてよく通る男性の声だった。
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』