たとえ英雄になれないとしても   作:クロエック

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経験者

(ああ、ダメだこれは)

 

 私がこの人の戦いをみて最初に思ったことはそれでした。

 まずステイタスが低い。敏捷と耐久が少しだけマシ、と言う程度でしょうか?それにしても目を見張るようなものではないです。

 ステイタスは最初は誰でも低い物だから、気にする事はない……なんて言うやつは何も解かっていないとリリは思っています。

 

 それはステイタスが成長するまでの間、戦い続けるための別の力を持っていて始めていえるセリフなのに。

 このベル・クラネルにそれがあるでしょうか?私の目からみれば、それはないです。

 まず元々の身体能力が低い。大して鍛えても居ない小柄なヒューマンだからあたりまえですけど。恩恵の後押しがあって、やっとダンジョンの最上層に入れるようになると言う程度の基礎能力でしかありません。

 それを補うような武芸の心得もないようです。戦い方は素人そのもの。ただ、度胸と見切りだけは少し驚く。

 素人にありがちな、相手の攻撃に不用意に怯える事がなくて、それどころか相手の攻撃がくらっても問題ないと見切れば踏み込んで攻撃する判断と精神力は思わず少し感心しました。

 

(へぇ、ちょっとはやるじゃないですか)

 

 でもそんなのは、実力差が近しい相手との戦いで有利がとれる、と言う程度の利点でしかないですよ。

 本当の力とはそもそも相手との実力差自体を縮め、追い越し、引き離すものです。

 基礎能力、バツ。とリリは内心で二つ目の採点を終えます。

 

 最後に、財力。

 これには、私も思わず同情を覚えそうになってしまいました。

 鞘に入った剣が妙な傾き方をしていたからおかしいとは思ってましたけど、まさか刀身が半ばから折れている剣を使っているなんて。

 防具もギルド支給の最低限の軽装、しかもボロボロです。最低限の防具ですら新品では買えず……中古でしょうか?

 色々な冒険者をみて来た私ですけど、こんなに酷い装備状態の冒険者はいなかったと断言できます。

 

 総評、いずれ死ぬか首が回らなくなります。

 ダンジョンの探索にはどうしても経費がかかるものです。日々の生活費そのもの。ポーションに、バベルの治療施設の等の利用費。

 でもそれだけなら、ぎりぎりまぁなんとかなるでしょう。ですが武装と言うのは日々消耗する物。

 ほとんど収支がつりあった状態で探索を続けてたら、いつか装備が壊れて買いなおすお金が無く終了。それはまだ良いほうで戦闘中にだったら最悪死にます。

 まぁファミリアから課せられている上納金のノルマにもよりますけど、たとえその額が小さくても早いか遅いか程度の違いでしかないでしょうね。

 

(そうなるぐらいならば―――いっそリリが現実と言うものを教えてあげましょう。そして冒険者なんてものは早く諦めさせてあげますね)

 

 そう考えて私はくすりと笑いました。

 こうしている間にも彼はゴブリンを二匹倒していました。

 

「ふぅ……」

「はいはい、ここからはリリの出番ですからどいてくださいね」

「あ、ちょっ……」

 

 一息つこうとしていた彼を追い出して私はゴブリンの魔石を回収します。

 普段なら戦闘中から邪魔にならないように回収作業ははじめますけど、今回はこの人の観察を優先したので、まぁそんなことはこの人にはわかりはしないでしょう。

 

「さぁのんびりしている暇はありませんよ。ゴブリンの低級魔石なんていくらあってもリリへの報酬分にすらなりませんよ?」

 

 私の作業をみてぼうっとしている彼を追い立てます。

 別に意地悪でしてるんじゃあないです。本当のことですから。

 こんなペースでやっていたら、彼は確実に今日は赤字です。まずはそれを自覚して貰いませんと。

 私だってまぁそりゃ入り口で言ったような5人PT並の報酬をよこせとは思っていませんけど、だからと言って無料とか格安にしてあげるほどの理由はないです。

 だから最低限の報酬は頂きます。むしろそれだけでついてあげるなんて自分の優しさに驚くくらいです。

 

 ……この冒険者未満の駆け出しなら、報酬でごねようったって腕ずくでなんかやらせませんしね。

 まぁそれに関してはそんなことをするようには見えませんけどね。

 

「あ、その道じゃなくて右へ向かってくださいね」

「えっ。いいけど、何でなの?」

「正規ルートなんて皆の通り道なんですから獲物なんて残ってませんよ。それとも貴方、この階層は通過点でしかないって言える程お強いんですか?」

「それは違うけど」

「ならそんな道はいかないことです。ほらほら」

 

 と追い立ててどんどんルートを指示してあげます。

 私は成るべくモンスターが溜まっている所を予想しながらこの人を追い立てて行きました。

 

「ほら居ましたよ。次はコボルト5匹です。さくさく倒してくださいね」

「5匹っ?なんだかやけに集まったモンスターにあたるね……」

「リリがそうなるような道を選んでるんだから当然です。さぁ来ましたよ。話してないで戦ってください」

 

 私は言いながら後方に下がって彼を矢面に立てます。

 慌てて戦い始める彼の後方から、私はリトル・バリスタを構えて素早く効果的な箇所へ撃ち込んで行きました。

 一度に5匹じゃ、この人じゃちょっと苦戦するでしょうからね。

 負けることは無いと思いますけど、そんな泥沼の戦い悠長に待ってられませんから。

 

「ちょっと一匹こっちに突っ込んできましたよ。ちゃんと止めてください!」

「ええっ!?―――そんな、ことっ―――言われてもっ!?」

 

 残り2体のコボルトを相手にしている彼が息を荒げながら返事をしてきます。

 私は自分へ突撃してきたコボルトを大きくかわし、矢を急所に数本撃ち込んで倒します。

 そして2体のコボルトと格闘する彼に、もう一発の援護射撃。

 

「後衛からの援護が脅威だと思われれば、相手がそれを止めに来るのは当たり前です。それをちゃんと止めるのは前衛の仕事です!」

「ご、ごめんっ」

 

 私の矢が急所に突き刺さってコボルトが倒れ、残り一匹になった相手と戦いながら彼は謝罪しています。

 それに構わず、私は倒れた敵を引き摺ってどけながら魔石を回収。体が消えて残ったドロップアイテムと撃ち込んだ矢玉も勿論回収です。

 

「このぉ!」

 

 彼の振るう剣がコボルトの首を斬り飛ばしました。

 あの折れ剣ですけど、残った刀身の切れ味はそこそこみたいですね。取り回しとしては両刃短剣(バゼラート)に近い感じでしょうか。非力な彼なら結構丁度いい武器かもしれません。

 その情けない見た目も似合ってますしね。

 

 私が残った最後のコボルトの死体へと近付いて行くと、彼は私の作業を邪魔しないようさっと離れます。

 それでいいんです。分かって来たじゃないですか。さて回収回収っと。

 さぁ、どんどん行きますよ。

 

 

 駄馬に鞭をいれるように、私は彼を追い立てて5階層までの相手をどんどん狩りながら潜らせていきました。

 まぁ私も別に意地悪でやってるわけじゃないので、ちゃんと必要だと思う休憩はさせてあげてますよ。

 今も、そうして何度目かの小休止をしている時です。

 

「さて、ベル・クラネルさん」

「なに?っていうかベルで良いよ。今更だし」

 

 ここまで追い立てて来た私に彼は苦笑いをします。

 ちゃんと丁寧語で接してきた私に対して失礼ですね……まぁいいでしょう。

 

「じゃあベルさんですね。あ、私のことはリリで良いですよ」

 

 とりあえず呼び捨ては拒否しておきます。そんな親しくなる予定はありませんので。

 

「さてベルさん。リリがこれまで回収してきた成果を概算しますと、おそらくこのペースいけば最終的な戦果は約2500ヴァリス前後と言う所だと思います」

「2500ヴァリスかぁ……」

 

 彼が気のない返事をします。これは危機感が足りてませんね……。

 

「ちなみに私は最低限1500ヴァリスは報酬として頂きますよ。そうなるとベルさんの取り分は1000ヴァリスになります」

「せ、1000ヴァリス……」

 

 彼はここまでポーションを一つ飲んでいましたね。平均的な価格で仕入れていれば300ヴァリスなので、彼の純利益は700ヴァリス。

 でもおそらく同じペースでいけば最低でももう一つポーションは使う事になるでしょう。なので良くて400ヴァリス。もっと負傷が多ければ……。

 彼もその未来の計算ぐらいはできるようで顔を青くしています。ですので私は彼に一つの提案をしてあげることにしました。

 

「このまま5階層に留まっても実りはないでしょう。どうでしょう、一つ下に下りてみるというのは」

「一つ下……ええ、6階層に!?」

 

 彼が驚くのもしょうがないです。

 5階層までと6階層以降は違う。ゴブリン、コボルト、そしてダンジョンリザードの3種しか敵はいません。

 ですが敵の数や交戦頻度ぐらいしか変化のなかった5階層までと違い、6階層からは敵が変わる。

 

 特にその中でも難敵のウォーシャドウ。

 これまでの敵は、何の素養もない一般人でも神の恩恵(ファルナ)があればそれだけで勝てるようになる相手です。

 逆にウォーシャドウは、神の恩恵(ファルナ)があるだけでは倒せないと言うラインを最初に超えた所にいる敵なのです。

 

 あれを倒すには、それまでにステイタスを十分成長させている。

 あるいはそれを補える体力や技術がなければなりません。魔法やスキル、強力な武装でも構いませんがそちらは更に高望みと言うものです。

 

「でも6階層からはとても危険だって聞いてるよ。特にウォーシャドウが僕に倒せるかどうか……」

 

 ギルドのアドバイザーにでも忠告されているのでしょうね。

 その辺の道理は一応弁えているらしい彼に私は言葉を重ねました。

 

「そうですね。あれを倒すには駆け出しと言われるレベルを明確に超えた何かが必要です。能力……技術……武装……」

 

 それらが自分に足りないと自覚しているからでしょう、リリの声を聞く彼の顔は明るくなりません。

 

「あるいは……仲間です」

 

 最後にそう告げると、彼ははっとした顔でリリの事を見ました。

 

「リリの見立てならば、ベルさんが慎重に防御を優先して戦うのならば、リリの援護があれば十分に6階層でも戦う事ができるでしょう」

 

 どうですか?と問いかけるリリの言葉で、彼は迷って居ましたがやがて覚悟を決めた様子でこちらを見つめ―――

 

「わかった。6階層に行ってみるよ」

「おや、提案したリリが言うのもなんですけれど、私の言葉にそんなに素直に従っていいんですか?もしかしたらリリの見立てが間違っているかも知れませんよ?」

 

 そう言って彼の迷いを煽ってみるものの。

 

「ううん。ここまでリリの判断は凄く的確で、僕なんかより全然ダンジョンの経験が豊富なのはわかったから。リリが行けるっていうなら、僕は信じることにする」

 

(…………この人は)

 

 まっすぐな瞳で私を見ている。

 自分の実力に迷いはあるのに、私に対しての疑いは抱かない。

 ……やっぱりこの人は、()()()になれる人間じゃない。もっと、陽のあたる場所で全うな仕事をするべき人間です。

 

「……そうですか。ではそう決められたのでしたら、休憩が終わったら6階層に行く事にしましょう」

 

 私はそう告げる自分の声が硬くなっているのを感じたのでした。

 

 

 

 6階層

 

 そこで彼は今、自身と同じほどの身長を持った黒い影。

 それまでのあくまで生物に見える相手とは違う異質なモンスター、『ウォーシャドウ』と対峙していた。

 

「ふぅぅぅぅ」

 

 剣を中段に構え、相手の様子を身長に伺いながら呼吸をするベルさん。

 その彼にウォーシャドウが急激に這い寄っていく。速度だけではなく、その異質な動きは移動の()()()が見極め辛い。

 慣れていない者は急な動きに焦るうちに、相手に攻撃可能な間合いにまで詰められてしまう。

 

 ウォーシャドウはその異様に長い両腕の先に備わった、ナイフのように鋭い三本の指を彼へと容赦なく繰り出した。

 

「っ……つぅ!」

 

 なんとか身をよじって直撃を避けながらバックステップし、間合いを取る。

 彼の上腕の皮膚が裂け、血が流れ出す。大丈夫、深手ではない様子です。

 

 私はその戦いを見ながら慎重にリトル・バリスタを構えます。

 今でも単純に射撃てば、あたるでしょう。ですがそれでは、よほど当たり所が良くない限りは倒せない。

 ウォーシャドウは手負いになれば動きが鈍るというタイプのモンスターではありません。今闇雲に私が攻撃しても、危険なだけ。

 

 私は慎重に機会を伺います。

 ベルさんは慣れない相手の攻撃に焦りながらも、なんとか自分の身を守っています。

 きっと今頃内心では援護はまだか、と言いたい気分でいっぱいでしょう。

 罵声の一つもとんでくるものと覚悟していましたが、彼は何も言わずに目の前の敵に集中している様子です。

 

 リリを信じているから?

 今日始めてあったばかりの、ただお金で雇っただけの、専業のサポーター(おちこぼれ)を?

 そんな馬鹿な。

 きっと目の前の事に必死で余計な事を考える余裕がないだけですね。

 

 私は馬鹿な考えを振り払い、標的に狙いを定める。

 

(―――今っ!)

 

 ウォーシャドウの攻撃をよけて下がった彼を、奴は更に踏み込んで追撃しようとする。

 私の指が引き金をノックし、鋭い矢が強引に踏み込んだやつの胸に突き刺さる。

 衝撃でウォーシャドウがのけぞります。彼の目の前で、無防備に体を晒して。

 

 攻撃の回避に必死だったベルさんが目の前で突然隙だらけになったモンスターに反射的に切りかかる。

 その攻撃はやつの右肩からばっさりと胴体を抉り、右腕は切り落とされて地面へと落ちながら灰になって崩れ落ちる。

 

 片方の武器を失ったやつの攻撃は、その脅威も半減以下です。

 手数も失い、必ずそちらからしか攻撃できないのであれば、読みやすくかわしやすく反撃もたやすい。

 私が更なる援護を重ねると、彼は始めてのウォーシャドウとの戦いから勝利を奪ったのでした。

 

 倒れたウォーシャドウの胸をナイフで切り開き、魔石を回収します。

 灰になる体から指の一本だけが崩れずに、鋭いナイフの刀身だけが落ちたように残ります。

 ドロップアイテム、ウォーシャドウの指刃。

 

「見てください。一匹目でドロップアイテムが出ましたよ。幸先がいいですねぇ」

 

 そう言って祝ってあげたが、彼は剣をにぎったままぶるぶると震えている。

 割と上手く倒せたと思ったけれど、そんなに怖かっただろうか?

 

「っっっ凄い!リリ!どうしてあんな風に援護できるのっ?」 

 

 彼は突然私に駆け寄り、感極まったように声を上げます。

 まるでナァーザさんの矢みたいだった、なんて言いながら。誰ですかそいつ。

 

「はぁ……と言うか最初の一撃の時ですけど、肩なんか狙わずにすぐに踏み込んで首をハネれば終わってましたよね?」

「……えっ?」

「まぁ初見の相手でしたし慎重になるのは悪い事じゃありませんけれど、次からはリリの援護をちゃんと活かしてくださいね」

 

 私は顔を背けて思わずそう言い捨てる。

 別に悪くない戦闘だった筈なのに、どうしてそんなことを言ったのか自分でもわかりませんでした。

 

 

 6階層ではルートを慎重に選びました。

 更に下層へと降りる最短の正規ルートを中心に、必ず他の戦力十分なパーティーから付かず離れず。

 何かアクシデントがあればすぐに逃げ出せるように、脇にいる僅かなモンスターだけを狙う。

 

 そうやって狩りを続けて彼も6階層の敵との戦闘に大分慣れた様子でした。

 複数体のウォーシャドウがでても防御に徹し、そして私の援護で作ったチャンスを最大に活かす。

 それができればこの階層でもなんとかやっていけるでしょう。

 私達はその日の残りいっぱい、6階層で狩りをしました。

 

 

「5100ヴァリス……」

「まぁこんなところでしょうか」

 

 地上に帰還し、ギルドでの換金を終えた彼はその額に驚きの声をあげた。

 最初から6階層をメインにしていれば、もう少し稼げたかもしれませんね、と続ける私に―――

 

「凄いよリリっ。僕一日でこんなに稼げたの初めてだよ。やっぱりパーティーって―――」

 

 興奮する彼の眼前に、私は掌をつきだしてその言葉を制止します。

 

「まぁ待ってください。まずは分配をしてからです」

 

 そういってギルドホールの自由利用になっているテーブルに行き、換金した5100ヴァリスを広げます。

 硬貨をじゃらじゃらとテーブルの上に散らばせます。

 

「わぁ……」

 

 その量にベルさんは喜色を浮かべていました。……無邪気に。

 

「じゃあまずはリリが一日雇われた報酬として1500ヴァリス頂きます。これって親切価格ですからね?」

 

 と言いながら硬貨の一部を頂きます。残り3600ヴァリス。

 

「それから、援護に矢玉を大分使いました。回収はしましたけど使えなくなってしまった物も多いです。経費として800ヴァリス頂きますね」

 

 私はそこから更に硬貨をもらう。残りは2800ヴァリス。

 

「では、残りの2800ヴァリスがあなたの取り分になります。おめでとうございます」

 

 パチパチと私は気のない拍手をする。

 

「2800ヴァリスかぁ……」

 

 とわかっていない彼に、リリは一つ言いことを教えてあげることにする。

 

「ところで6階層どうでした?やっぱり5階層までとは敵の強さが違いますでしょう……なにしろポーションを5個もお使いになってましたし、ね」

 

 戦闘で生傷が絶えずに疲労も激しく、それぐらいは使わざるをえなかったのだ。

 その前に一つ使っているので、合計6個。市場価格で1800ヴァリスなので、彼の純利益は……

 

「せ、1000ヴァリス?」

 

 食費やらファミリアの上納金やらを考えると、赤字でしょうか?

 ホームがあればいいですけど、宿代に止まってたりしたら目も当てられませんね。

 

「それでは本日はありがとうございました。またサポーターが必要になった時はいつでもリリに声をおかけくださいね」

 

 呆然とする彼に一礼し、私はさっさとその場を離れる事にする。

 

 私が援護すれば、6階層でも戦う事はできる。

 しかし矢玉やポーションの消耗が激しく、赤字になる。

 5階層以下では消耗はないけれど利益が低く、私への報酬だけで赤字になる。

 しかし一人では、浅い階層でゆるいペースでしか戦えず、ジリ貧でしかない。

 

 

 私は昔の自分のことを思い出していました。

 神酒がのみたくてたまらなくて、でもひ弱な小人族(パルゥム)とパーティーを組んでくれるような相手は誰もいなくて

 一人で冒険者を始めて、必死に努力した。

 

 弱いモンスターを、かならず奇襲で襲い、複数の敵を相手にせず、常に物陰で息を潜めて。

 それでも、リリには冒険者は無理だった。

 武器の整備費、消耗品、生活費、治療費。どんどんと赤字がつもり、ステイタスの更新をしても上がるのは雀の涙。

 独力で伸びていくだけの素質も、強者からの保護もないものが挑めるほど、ダンジョンは優しくない。

 

 

「そんな甘いもんじゃないんですよ……」

 

 あの少年はいつ諦めるだろうか。

 早く現実に気付いて、冒険者を目指すことなど止めてしまえば良い。

 私はそう願いながら宿へと歩くのだった。

 

 

 

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