たとえ英雄になれないとしても   作:クロエック

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大荷物

「ギギッ」

 

 キチキチキチと歯を鳴らしながら不気味な声をあげるそのモンスター。

 直立した巨大な赤蟻。そう表現するのがぴったりなモンスター。『キラーアント』と僕は相対していた。

 硬い甲殻、鋭い鍵爪、そして仲間を呼ぶと言うその習性。

 ウォーシャドウと並んで、迷宮に慣れてきた駆け出し冒険者の死因になる筆頭のモンスター。新米殺しの異名を持った強敵だ。

 それでも、今の僕等なら―――

 

「ギィィッ!」

 

 キラーアントが腕を振りかぶり、その先端に備えられた四本の鍵爪で僕を切り裂こうと振り下ろしてくる。僕はそれを一歩下がって避け、振り下ろされたその腕の関節部に向けて両手で握った剣を振り下ろした。

 ザンッ、と言う音と共にキラーアントの右腕が肘の部分から切断されて地面を転がる。腕を切られた相手の次の行動はどう出るだろうか。

 怯んで仰け反るか、怒りで反撃にでるか。僕は剣を自分の体に引き戻して構えながら相手の行動に備える。

 その時、僕の後ろから声が飛んで来た。

 

「行きますっ!」

 

 僕は意識の隅で頷きながら相手を睨む。キラーアントが選択したのは右腕を切った相手への報復だったようだ。キラーアントは左腕を振りかぶって僕に襲い掛かってくる。でも、左側からしか攻撃してこないと分かっているなら対処は楽なものだ。

 僕は相手の失った右腕があったスペースに勢い良く踏み込む。相手の左腕が届かない空間へと体を滑り込ませながら剣を握った両手を()()る。

 そして向き直る動きを乗せて両手の剣を思い切り横薙ぎでキラーアントへたたき付けた。

 

「せいっ!!」

 

 ガッ、と言う音と硬い手応えと共にキラーアントの甲殻に僕の剣が食い込む。

 正確な狙いのない大振りな一撃は相手を両断することはなく、その甲殻の一部を砕きながらキラーアントを押し飛ばすに留まった。

 でも、それで良いんだ。

 

「ハァァァアアアアアア!」

 

 僕の後方から、身の丈を越す戦鎚を低く振りかぶった体制のまま駆け込んできたリリが、体を弾かれ体制が崩れたキラーアントに向かってその鉄塊を叩き込む。

 グシャリ、とキラーアントの肩に戦鎚がめり込み胴体が半ばまで大きく陥没する。その硬い甲殻も、表面を切り裂く刃は弾けても勢いが付いた鈍器の一撃には無力でしかない。

 最後の敵が無力化されたのを確認して、僕は大きく息を吐いたのだった。

 

 

 僕等は主戦場を7階層に移していた。

 リリは装備が整い新しい戦い方にも慣れはじめ、僕はいくつかのアビリティが評価Gにまで達する事が出来た。6階層での戦闘にも危なげがなくなり、何度か階層を跨いで7階層の入り口付近でも戦闘をしてみた。

 その結果、僕もリリも7階層での探索に乗り出せると言う結論に達したのだった。

 

 勿論、空いた時間にギルドへも立ち寄って担当官であるエイナさんにも相談はしてある。

 パーティの現状などを説明すると、エイナさんもいくつかの注意事項と共に僕等の7階層進出を認めてくれたのだった。

 

 当然だけど無理はしないこと。危険を感じたら前の階層に引き返す事。

 準備は怠らずアイテムを多めに持っていくこと。特に7階層から出現するパープルモスの鱗粉に備えて解毒薬をきちんと持っていくこと。

 7階層で問題ないと感じてもすぐに更に階層を降りるような事はしないこと。それから―――

 

(仲間を呼ぶキラーアントは優先して倒す事!)

 

「シッッ!」

 

 呼気と共に攻撃を畳み掛ける。

 キラーアントの甲殻には刃が通り辛いので、その隙間、関節部を狙っていくのがセオリーだ。だけどそれを狙う事ばかりに意識を裂けば防御がおろそかになり、攻撃の手数も減ってしまう。

 そうこうしている内に仲間を呼ばれ、状況が悪化していく。新米殺しの名に相応しい強敵だ。

 

(でも僕だって!)

 

「つぁッ!」

 

 のし掛かって来る様にして繰り出されたキラーアントの噛み付きに対し、僕はその喉を狙って渾身の突きを繰り出す。

 カウンターになったその一撃は、三角形の刃の先端がキラーアントの首を突き破って後方へと飛び出す程深く入れる事ができた。

 喉を突き破られたモンスターは僅かに身もだえした後、生気を失ってぐったりと四肢から力が抜けていく。

 

(やった!)

 

 上手く決まれば、僕でもキラーアントが仲間を呼ぶ前に倒す事ができる。

 そうじゃなくても、普通に一体一で相手をするなら十分やれるってことは事前の試しでわかっている。

 リリにいたっては―――

 

 ドンッ、と言う音と共に、すくい上げるように地面スレスレから放たれた鉄槌がキラーアントを大きく吹き飛ばした。リリは素早く戦鎚から片手を離すと、間合いをとってひらひらと空中に対空するパープルモスに向かってハンドボウガンを構え、連射する。射程を犠牲に威力と速射性を高めた矢弾が毒鱗粉をまき散らす巨大な蛾のモンスターの羽を貫きを撃ち落とした。

 地に落ちた巨大蛾のモンスターに歩み寄り、彼女は戦鎚を振り下ろす。

 

 キラーアント二体とパープルモス一体。

 僕がキラーアント一体を倒す間に、リリはこれだけの戦果をあげてしまう。

 大降りの一撃が多く、回避に長ける小型モンスター……ニードルラビットみたいな相手は苦手みたいだけれど、中型のモンスターへの殲滅力は僕とは比べ物にならない。

 そのニードルラビット相手にしたって、厚い装甲を身に付けたまま動き回り的を絞らせない素早い動きは相手の攻撃を寄せ付けない。

 この僅かな間にリリは、もう僕がつい嫉妬してしまうほど頼もしい仲間になっていたのだった。

 

「ふぅ……」

 

 ヘルムのバイザーをあげて、リリが深呼吸をする。

 格子状のスリットが入っているとは言え、バイザーを下ろすと目元から口まで覆ってしまうその兜は傍目から見ても息苦しそうだ。

 

 黒く焼き入れられた鎖帷子と、その上に同色の兜、胸当て、肩鎧、篭手。腰鎧の下にはチェインスカートメイルが膝上まで覆い、グリーブとサバトンが膝から足を保護している。

 その上から白地に赤い縁取りの入ったサーコートを羽織り、背中には盾と小型のバックパックを背負っている。

 両手には身の丈を越すウォーハンマー。右腰にはそれより小ぶりのバトルメイスが備えられ、左腰には大振りのナイフとリトル・バリスタが釣り下げられている。後ろ腰にはポーチが取り付けられてポーション等のアイテムが収納されていた。

 また左手のガントレットには接続具が備えられて、ボウガンと盾を状況に応じて素早く取り付けられるようになっている。

 その小さな背丈を除けば、下馬した重騎士と言ってもおかしくない威容だった。

 

 魔石を回収し終えたリリが、ずしゃりと地面を踏みしめて僕に近寄る。

 背の高さは鉄靴に嵩上げされても僕の首にも達しないけれど、鉄の塊が動いているような重量感が圧力を放っているように感じさせる。

 

(これで全力で走りながらハンマーを振り回してくるんだから相手もたまらないよね……)

 

 以前までの姿しか知らない人間にとっては、とてもリリだと気付かないその出で立ちに僕は頼もしさと少しのおかしみを感じてくすりと笑った。それに気付いた彼女が僕に疑問の声を投げ掛ける。

 

「どうしたんですか? 急にわらったりして」

「いやぁ、もし知らなかったらその姿じゃとてもリリだと気付かないだろうなって」

「そうですね。鏡で見てもどこの誰かと思いましたから……これならリリのファミリアの連中だってリリだとはわからないでしょうね。まぁそうじゃなきゃ、こんな兜まで被ったかいがありませんけど」

 

 リリはそういって自分の頭に手をやる。

 視界や聴覚を制限するフルフェイスのヘルムは、確かに守りは堅くなるものの、魔法によって獣人の感覚を身に付けることが出来るリリにはデメリットも大きい。

 けれどファミリアから身を隠す、と言う意味ではサポーター姿のリリしか知らない相手にはこれ以上ない隠蔽になるということで身につけることにしたのだ。

 魔法によって姿を代える事も、変身する瞬間をもし目撃されてしまうと大きなリスクが生じる。それに現在の姿から大きく造作を変えると魔力消費も大きく効果の持続時間も短くなってしまう。けれど元々顔を隠してしまえば、もし疑いを掛けられたとしても兜を脱ぐ前に魔法を使えば容易に誤魔化す事が出来る。

 ファミリアに自分の現状が知られる事を恐れるリリは、そちらを優先して頭全体を覆う兜を使う事にしたのだった。

 

 自分の兜に手を当てるリリを見て、僕は小さくため息をつく。

 どんなに冒険が順調に感じても、胸に棘が刺さったようにこの問題はリリを苦しめ続けているんだろう。僕等のパーティが本当に自由に冒険をするためには、リリのファミリアの問題はなんとかしなくちゃならない。

 その為の相談を周りにも持ちかけているけれど、まだはっきりとした目処は立っていない。

 僕はもどかしく感じる気持ちを、今は振り払らわなきゃと口を開く。

 

「そうだね。それじゃどんどん行こう。苦労して装備も揃えたんだし今日は沢山稼いで帰らなきゃ」

「そうですね。やってみても、この階層は十分()()()と思いましたし、今日は鼻を活かして敵を探すことにします」

 

 そう言ってリリは兜のバイザーを下ろすと魔法の詠唱を唱える。

 犬人(シアン・スロープ)になったリリが索敵を行えば、敵の多い7階層なら無駄な探索時間はかなり省ける筈だ。

 敵の湧きの多さと仲間を呼ぶと言うキラーアントの特性により、逆に多数の敵を処理しきれない事が問題になるという7階層だけれど、僕達なら何とかなる筈だ。

 僕等はこの時そう思っていた……。

 

 

 リリの一撃がキラーアントの膝に打ち込まれ、片足が破壊されたモンスターが体制を崩す。

 彼女は膝に打ち込んだ戦鎚を引いて横溜めに構えると、崩れ落ちて来たキラーアントの横顔に向かって思い切り戦鎚のヘッド部分をたたき付けた。

 

「次!」

 

 彼女は首が吹き飛ぶようにして倒れるキラーアントを無視して、次の敵に向き直る。その向き直った先から別のキラーアントがリリへと迫っていくのが横目に見えた。

 僕は僕で、ウォーシャドウとニードルラビットの二体を相手に四苦八苦している。

 即効性はないとは言え、離れた位置で毒の鱗粉をまき散らしているパープルモスがうざったい。

 

 ルームと呼ばれる小部屋構造になった一角で、キラーアント4体との遭遇から始まったこの戦闘は、次から次へと敵が湧いたり通路を歩いてきたりで追加され、当初の思惑から大きく長引いていた。

 危機感があると言う程の事態じゃなく、敵が増えるペースより殲滅は早くて基本的に敵は減っていく。

 一時はモンスターが全滅しかけたりもしたのだけれど、ポーションを飲んで一息つき、倒れた敵から魔石を取ろうとした途端次の一団がやって来たりして未だに戦闘が続いているのだった。

 

「こ、のぉ!」

 

 角を立てて突進してきたニードルラビットの攻撃を、かわしざまに僕は剣を横に薙いだ。

 相手の突進の勢いがそのまま乗った事もあって、ニードルラビットは横一文字に両断されて地面に死骸がぶちまけられる。

 剣を振り切った勢いのまま転がってウォーシャドウの攻撃をやりすごすと、僕はパープルモスへと向かって突進した。

 

 自分に向かって迫ってきた冒険者を相手に、パープルモスは羽を羽ばたかせて突進する体制をとる。その口には牙が備わっているものの、この階層のモンスターとしては明らかに直接戦闘力に欠ける相手にぼくは躊躇無く剣を突き出して飛び上がった。

 体ごと突き込んだ剣がモンスターの頭蓋を砕いて絶命させると、僕は地面に降り立ち残ったウォーシャドウへと向き直りながら解毒薬を飲む。

 蓄積していた体の痛みがすっと消える。

 早くこいつを倒して複数のキラーアントを任せきりにしているリリを援護しないと。

 

 

 僕がそうして戦っている間、リリはキラーアントを僕の方へと近寄らせないよう立ち回りながら相手の数を確実に減らしていた。

 次なる相手にその戦鎚を打ち込もうと踏み込んだリリだけど、体を蝕む毒と疲労のせいか地面に転がったキラーアントの死体に足を取られてしまう。

 

「しまっ!」

「ギギィ!」

 

 地面に手をついたリリにキラーアントが突撃する。崩れた体勢で突撃を受ければ、リリはその勢いのままキラーアントに圧し掛かられてしまうだろう。

 体格と力に劣るリリにとって、モンスターに組み敷かれるのは致命的だ。

 

「くっ!」

 

 リリは戦鎚を手放して地面を転がりキラーアントの突撃を回避する。

 だが散乱したモンスターの死骸に阻まれて殆ど間合いを取る事ができなかった。なんとか立ち上がったものの、戦鎚は相手の足の下にあり取り戻す事はできない。

 相手が無手と見るやいなや、キラーアントは続けざまにリリへと突進する。

 予備の武器を構えなおす間もないその攻撃に対して、リリが取った対応は僕を驚かせるものだった。

 

 肩鎧を突き出すような体制を取ると、リリは下がる所か逆に敵へと突撃をしてみせた。

 

「ああああぁぁぁっ!!」

 

 全力の踏み込みでもってリリはキラーアントと正面からぶつかりあう。

 体ごと相手へとぶつかり合う突撃(チャージ)は普通体格の劣る側がやってはいけない戦法だとされている。密着した状態で相手に突撃の勢いを受け止めきられてしまうと、そのまま容易に組み伏せられてしまうからだ。

 けれど小さなリリが行った全力の突撃は、そんな常識ごとキラーアントの体を弾き飛ばして突撃のぶつけ合いに打ち勝った。吹き飛ぶキラーアントに向けて押し進みながらリリは予備のバトルメイスを構え、その頭蓋にむけて全力で叩きつける。

 モンスターの脳漿があたりにぶちまけられた。

 なんとかウォーシャドウを始末した僕が援護するまでもなく、リリは自分が相対した全ての敵を屠り去ってしまった。

 

   可能な限り自分から動いて仕掛けるようにな。

 

 その光景をみて、僕はタケミカヅチ様がリリへと掛けていた言葉を思い出した。

 身につけた重さを振り回すことで力に変えるリリの戦い方は、自分から動き出して行かなければ利点を発揮できない。相手と組み合って動きが止まってしまえば、後は単純な力の比べあいになってしまうからだ。

 だからどんな時も、できるだけ先に動き出し勢いをもって敵に当たるのだ、とタケミカヅチ様はリリに忠告していた。

 彼女はその言葉に忠実に従って、普通ならありえない突撃をもって敵を打ち破ったのだった。

 

「はぁーはぁー……」

 

 メイスを地面について寄りかかるような体制で荒い息を吐くリリ。

 僕は自分のポーチからポーションと解毒薬を取り出すと、彼女に近寄り栓を抜いて差し出す。

 

「はい、リリ」

「あ、ありがとうございます……」 

 

 息も絶え絶えなリリは力なく僕から2本の試験管を受け取ると、息を整えてゆっくりと飲み干した。毒と疲労が抜けて、彼女の表情になんとか笑顔が戻る。

 

「まったく、湧きすぎですよ……」

「うん。ちょっとあぶなかったね」

「ただ連戦と言うだけなら問題ないと思っていたんですけどね……モンスターの死骸が戦闘中ここまで邪魔に成るとは思っていませんでした」

「そうだね。こんなペースで敵を倒したことがなかったから、僕も全然わかってなかった」

「リリも自分で戦ってみて初めて厄介さがわかりました。……さぁ、早い所魔石を回収しちゃいましょう。また次のモンスターが来たらたまりませんから」

「うん」

 

 その言葉に尤もだと僕は頷いて、解体用のナイフを腰から引き抜いて地面に散乱したモンスターの死骸から魔石を回収する作業に移ったのだった。

 

 

 その日の昼過ぎ、まだ太陽がさんさんと輝く時間帯に僕とリリは迷宮から出て、バベルの一階のエントランスホールでため息をついていた。

 まだ日も高いこの時間に何故僕らは探索を切り上げてここに居るのか。

 何か怪我をしたわけでも致命的なことがあったわけでもないし、勿論お腹がすいたからとかそういう理由でもない。

 

 ドロップアイテムが一杯になって持ちきれなくなってしまったからだ。

 

 今までは魔石だけならそうかさばる事もなかったけれど、7階層での敵の多さと僕らの戦力上昇に伴う殲滅ペースの上昇。

 それらが相まって戦利品が持ちきれなくなってしまったのだった。

 

「18000ヴァリス、ですか……」

 

 時間帯もあっていつもはかなり並ぶバベルの換金所もわずかな待ち時間で済んだけれど、その換金額にリリは不満げな様子を露にしていた。

 今までで最高の換金額。額面だけ考えたら手放しで喜んで良いその金額だけれど、僕らの顔ははれない。

 

「まさかドロップアイテムが持ちきれなくて帰ることになるなんてね」

「今までを考えたら嬉しい悲鳴、と言う奴なんでしょうけれど……」

 

 そう、今までの僕等からすれば考えられないこの事態は、良い兆候であることには違いない。

 だけれど半端な時間での帰還を余儀なくされた事から、消化不良に感じてしまうのは否めなかった。

 

「リリがまた大型のサポーターバッグを背負えば……」

「だめだよそれは」

 

 リリが口にした言葉を僕はすぐさま否定する。

 

「リリが余裕をもって動ける重量はもう限界に近いでしょ? スキルがあってもその装備のままあんな大きなバックパックを背負うなんて無茶だよ」

「それなら、装備の一部を外して重量を抑えれば……」

「それもだめ。今日の戦いだって決して余裕って程じゃなかったんだから、戦力を下げるようなことには反対だよ。そもそもリリがあのペースで戦えなきゃこんなにドロップアイテムなんて集まらないし……」

「それはそうですけど……」

 

 殲滅力をリリに頼っている部分が大きい以上、彼女の装備などは変えたくないし、これ以上の負担を掛けることもしたくない。かといって僕自身も、今使っている背嚢よりも大きいバックパックに戦利品を詰め込んだ状態で7階層で戦えるかと言われると自信は持てない。

 

「サポーター……でしょうか」

 

 リリがぽつりと言う。

 やっぱりそれしかないだろうか。

 僕等はその言葉を口に出すのを避けてしまっていたけれど、現状の問題を解決するにはサポーターをパーティに入れるのが最も効果的なのは明らかに思えた。

 

「うーん、やっぱりそれしか無いのかな……」

「はい。戦闘中に死骸で足場が埋まってしまう問題なんかも、それで解決できると思いますし……まさかリリが冒険者になった事で別にサポーターが必要になるとは思ってませんでしたけど」

 

 つい先日まで専業サポーターとして雇われていたリリとしては、新しくサポーターを雇うと言うのは複雑な気分だろう。

 僕にしても、リリが付いて来てくれる前に一様に誘いを断られてしまったフリーのサポーターの人達の事を思い出すとなかなか気は進まない。

 リリとペアと言う形になった今なら雇われてくれる人も居るかもしれないけれど……。

 

「それなら今日は一旦解散にしようか。僕はギルドにいってエイナさん……僕の担当官の人に話してみるよ。もしかしたら無所属のサポーター希望の人がまた出てきているかもしれないし……」

「そうですね。冒険者志望の無所属の人が居れば、そのままヘスティア様のファミリアへ勧誘できるかも知れませんし」

 

 僕の消極的な提案にリリも憂鬱そうな顔で頷く。

 最悪の場合には効率が悪いけれど、戦利品が一杯になった時点で地上に往復しながら探索すると言う事も不可能じゃない。

 戦闘に問題が無くてそれなりに稼げている以上は、どうしても急いで解決しなければならない問題と言うわけじゃないけれど、もっと楽に戦って沢山の戦利品を持ち帰れたのかも知れないと思うと、僕とリリの新しい挑戦に水を差された気分になってしまう。

 

(折角上手く行きそうだったのになぁ)

 

 苦労してこなした連戦だったのに、これじゃあ少数の敵を選んで時間をかけて探索しても成果がかわらないことになってしまう。

 新たに立ちふさがった問題に、僕とリリは一緒になってため息をついたのだった。

 

 

 

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