たとえ英雄になれないとしても   作:クロエック

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ナァーザ・エリスイス

 あれから僕は毎日ナァーザさんのポーション作りを手伝っている。

 もう、随分と調合の腕が上がった。今なら一日中薬研を擦っていても、腕は全く痛くならない。

 それだけではない。なんと下級回復薬ぐらいならナァーザの手を借りずに自分ひとりで最後まで作り上げる事すらできるようになったのだ。

 もう立派な駆け出し薬師と言っても良いのではないだろうか。

 

 僕は冒険者を志していた筈なのに、どうしてこうなったんだろう。

 

 

 もちろん、たまにはダンジョンへ潜る日もある。

 でもダンジョンに潜っていると鬱々とした気持ちが胸の奥でとぐろをまいてきて、どんどんと嫌になっていくんだ。

 自分で作ったポーションを実際に役立てるのは新鮮だったけれど、ほんの僅かな慰めにしかならない。

 こんな頻度の探索じゃあ当たり前なのかもしれないけれど、ステイタスだってちっとも成長しやしない。

 なんの成長もない自分が、変わり映えのしない上層でただひたすらゴブリン達を殺していると、自分が酷く無意味な事をしているようで気が滅入ってくる。

 

 それだったら、自分の腕が日々上達しているのを感じられる薬の調合をしている方がよっぽど良い。

 このまま薬師を目指す道に入ってしまおうか。最近は、そんなことも考える。

 まぁミアハ様の所でやっているのはあくまで手伝いなのでお給金はない(ダンジョンに行く時ポーションを少しもらえる。)のでこれでは生活ができないのだが。

 ただ、ダンジョンに潜ることを話したら高等回復薬(ハイ・ポーション)をナァーザさんに持たされたのは嬉しかったな。

 ベルが死んだら手伝いがいなくなって困るからと一本だけ持たされ、あくまで貸すだけ。使ったら料金は請求すると念を押されてはいたけれど。

 夕食をとりながらそんな話をすれば神様にも、最近ベル君も元気がでてきたようでなによりだよと、言われてしまった。また心配をかけてしまっていた事に胸が痛む。

 

 

 毎日の製薬とたまの探索。

 そんな日々の中のある日の事だった―――

 

「ベル!ベルよっ!!」

 

 ミアハファミリアのホーム。

 ナァーザさんと二人でいつもの調合をしていると、出かけていたミアハ様が声を張り上げながらホームに駆け込んで来た。

 

「ど、どうしたんですか?ミアハ様」

 

 いつになく焦った様子のミアハ様に僕は声をかける。

 僕の名前をよんでホームに駆け込んで来たけれど、一体どうしたんだろう?

 

「そなた、給金は受け取っていないとは本当か!」

「えっと……給金って、なんのことですか?」

 

 心当たりがなく聞き返すと、ナァーザさんが隣で小さく舌打ちをした音がした。

 

「我がファミリアでの製薬作業の給金に決まっておろう!」

 

 え、えぇー?

 聞いていない。と言うかそんな物を受け取る話はしていない。

 ナァーザさんにはあくまで無料(タダ)で手伝って欲しいと言われた筈だ。そもそも普通に給金が支払えるなら、ド素人だった僕じゃなく普通に薬師を雇えばいいわけだし。

 

 その事をミアハ様に話すと―――

 

「ベルよ。そなたが我がファミリアの製薬を手伝うようになってどれだけたったと思っているのだ」

「えーっと、どれくらいでしたっけ……」

「半年以上だ!ここは天界ではないのだぞ。半年以上、しかもほぼ毎日朝から晩まで仕事を手伝わせておいて何の見返りもなしなど道義に悖る行いだぞ!

 私はてっきりおぬしはきちんと給金を受け取っていると思っていたのに……ヘスティアと話していてお互いの家計が苦しいと言う話になった時に、あやつからベル君は給金なんてもらってないよなぞと言われた時は心臓が止まったかと思ったわ!」

 

 そう言い放ったミアハ様は、ナァーザさんに顔を向けてぎろりと彼女をにらみつけた。

 

「ナァーザ!これはどういうことだっ!そなたはベルにはきちんと謝礼を渡していると言っていただろう!」

 

 ナァーザさんは俯いてミアハ様に目をあわせようとせず、視線の先のスカートの布地を両手で握りしめながら答える。

 

「嘘は、言っていない。お礼は……している。現物で……」

 

 それを聞くとミアハ様はこちらを向いて―――

 

「ベルよ。何を受け取った」

「ええっと……ポーションを」

「幾つだ!」

「幾つだったかな……正確にはちょっと」

「大体でよいのだ!」

 

 いつもおだやかな貴公子然としたミアハ様が真剣になった迫力はすさまじく、たじたじになりながら僕は答える。

 えーっと、ダンジョンに行く時に手持ちの分をもらって使わなかった分は返却してるから……。

 

「月に12個くらい……かな?」

「まるで足りぬではないか!!」

 

 吐き捨てるように言ってミアハ様はナァーザさんを睨みつける。

 ナァーザさんは無言で俯いたまま何も言おうとしないけれど、その尻尾がぶるぶると震えているのが僕には見えた。

 

「ええぃ話にならぬ。ナァーザよ。ベルには今までの分、そしてこれからも手伝いを依頼したならば正当な報酬をきちんと金銭で支払うのだ!よいな!」

 

 怒ったミアハ様がそう言い付けると、ナァーザさんが俯いたままぼそりと呟いた。

 

「そんなお金は無い……」

「なんだと?」

 

 聞き返すミアハ様にナァーザさんは顔をあげると、キィっと睨みつけて強く言い放った。

 

「そんなお金はどこにもない!」

「な、なんだと……だが金庫にはまだ多少の金子が……」

「あれは製薬の材料を仕入れるためにお金。あれを別の事に使ってしまったら私達は即に路頭に迷う……」

「むぅ……ではベルにはしばし待ってもらい利益が出次第支払いをだな」

 

 勢いを失いながらも代案をだすミアハ様に、ナァーザさんは言葉を畳み掛けた。

 

「利益なんてでてない……!

 私だって、いつも手伝ってくれるベルにはちゃんと報いたい……でもできない!

 元はと言えばミアハ様が誰彼構わず良い顔してポーションをタダで配りまわるからっ!だから元が取れずに困ってベルを呼んだ!

 ベルを無料(タダ)でこき使ってやっと借金の利息分だけでも返せるようになるかとおもったのに!

 これでなんとかやっていけると思ったら、ポーションが多くできるようになったからってミアハ様は勝手に配るポーションの量まで増やし始めた!

 これじゃあベルの給料を払う余裕なんで永遠にできないっ……!!」

 

 いつも物静かなしゃべり方をするナァーザさんが吠えた。

 調合を手伝うようになって前より親密になったと思ったけれど、ナァーザさんがこんな長く大きな声でしゃべるなんて想像もつかなかった。

 

 

 しかも、話を聞くとどう考えてもミアハ様が悪い。事実ミアハ様は言葉を失ってタジタジになっている。

 それにしてもミアハ様達は借金があったのか……。製薬を手伝うようになって、売れ行きもそれなりに良いのに何故かいつもお金に苦しそうだから疑問には思っていたんだ。

 目に涙を浮かべてミアハ様を睨みつけるナァーザさんに、ミアハ様は口をぱくぱくさせて弁解しようとするが、何も思いつかずに言葉がでないようだった。

 

「えっと、僕は別に最初から手伝いのつもりでしたから給金なんて―――」

 

 無くても良い。そう言おうとした矢先だった。

 

 

「ふはははははははっ、邪魔するぞおおおおおおー!!」

 

 大音量を響かせながら店の扉を蹴破って別の神様が突然現れたのだった。

 

「今月分の借金を取り立てに来てやったぞおぉ、ミィ~アァ~ハァ~」

「ディアン……!!」

 

 借金。この神様が、ミアハ様達へのお金の貸主なのだろうか。

 突然の乱入に言いかけた言葉も取りやめて、神様達のやり取りを見守る僕。

 

 現れたのは、灰色がかった神と髭を蓄えた初老の男性神だった。

 老神という見た目でありながら、やはりその容貌は非常に整っている……んだけど、何だかその纏っている雰囲気が、色々なものを台無しにしているような気がする。

 ニヤニヤとした嫌らしい笑みと尊大そうな目付き。服装は金銀の刺繍が施された豪華なローブで、何だろう、どこかミアハ様の格好を意識してそれを真似つつ豪華にしたかのような印象が……。

 

「いつまで経っても現れんから、儂自ら足を運んでやったわ。感謝しろよ貧乏人どもぉ、ふはははははははっ!!」

 

 ……何となく、この神様の性格がわかった気がする。

 

「相変わらず埃臭い店だ!こんな場所に止まっていれば体調を損なう、さっさと用件をすませてやろう!」

 

 そんな言葉をはく神様にナァーザさんは親の敵を見るかのような激しい目付きで、ミアハ様も苦虫を噛み潰したような表情だ。

 

「で、今月の支払いは用意できておるのか、ミアハァ~~!!」

「それは……!」

「フフンッ、できておらんよなぁ、できておらんだろぉ?ぐはははははははっ!この万年滞納者どもがっ!」

 

 ぐぎぎぎぎいっ、と音が聞こえてきそうなぐらいナァーザさんとミアハ様が揃って歯をあらんかぎりに食い縛る。

 

「慈悲深い儂はこれまで何度も見逃してやったが、お前達の無節操な振る舞いはいい加減目にあまる。今月からは毎月の支払いができなければ、貴様らを追い出しこのオンボロなホームを売り払ってやるからなぁ!覚悟して置けよ!?」

 

 唾を吐き散らしながらディアンとミアハ様に呼ばれていた神様は豪快に笑った。

 

「ふははははははっ!帰るぞ、アミッド!!」

「はい」

 

 扉の前でずっと立っていたのか、その神様の背後に控えていた女性が動く。

 小柄で、まるで精緻な人形のような容姿の彼女は、僕たちにぺこりと頭を下げた後、笑い散らし闊歩する主神様に付き添っていく。

 嵐が過ぎ去った後のような沈黙が、僕たちの間に残った。

 

「あのディアンケヒトとは、天界にいた時から折り合いが悪くてな……」

 

 混乱する僕に、ミアハ様はぽつぽつと身の上話をはじめてくれる。

 あの方はディアンケヒト様という神様で、治療と製薬で名高い大手ファミリアを率いる……ミアハ様達にとっては所謂商売敵であるらしかった。

 

「下界に降りファミリアを構えた後も、ことあるごとに衝突していた。派閥の活動自体も被り、幾度となく張り合っていたのだが……」

「私がそれをぶち壊しにした」

 

 歯切れが悪くなったミアハ様の言葉に割り込むように、ナァーザさんが声を発する。

 

「私も前は、冒険者だった」

「え……」

 

 僕はそれを聞いて思わず驚いてしまう。

 

「薬作りはちょっとした手伝い程度で……だいたいはダンジョンに潜って、お金をかせいでたけど……ある日、やらかした。

 モンスターにめちゃくちゃにやられて、右腕を食べられた(・・・・・・・・)

 

 その言葉に僕が疑問を挟むより先に――

 ナァーザさんは、いつも着ている左右非対称の変わった上着。右腕だけが長袖になっているそれをまくりあげる。

 それを見て僕は驚きに目を見開いた。

 

「銀の、義手……?」 

 

 思わず声が出た僕にナァーザさんはこくりと頷く。

 

「腕を失った私に、ミアハ様が用意してくれた……あのディアンケヒト・ファミリアに何度も頭を下げて……」

 

 ナァーザさんの右腕は、研ぎ澄まされた剣と見紛うほど滑らかな金属の輝きをもつ、形状を限りなく人の腕に似せ、一方で関節部分は宝石が埋め込まれ中の構造がすかして見える、精緻な義手になっていた。

 右手のグローブをとれば、その細い指の先までが輝く銀でできている事が見て取れる。

 

「ディアンケヒト・ファミリアは治療と製薬のファミリア。回復薬(ポーション)を売る以外にも、冒険者の需要に応えてより専門的な治療術や道具(アイテム)も提供している。この銀の腕(アガートラム)もその産物」

 

 ナァーザさんの生身の左手が伸びて、その銀の腕をつかんで強く握り締める。銀の腕がギギィと軋んだ音を立てた。

 

「ミアハ様はこの義手を私一人の為に買って、借金を背負った。その時までいた私以外の団員は、とんでもない負債にうめいて、このファミリアを見限って皆出て行った……」

 

 そんな、そんなことで皆ファミリアを捨てて出て行ってしまうなんて……。

 

 ……ミアハ・ファミリアは以前は中堅どころの規模と力があったのだと言う。それこそ施薬院のファミリアとしてはディアンケヒト・ファミリアにも劣らないほどの。

 それがナァーザさんの事故を契機に、一気に崩壊し、落ちぶれてしまったのだと。

 

「ミアハ様のもとに残ったのは、使えなくなった元冒険者と、馬鹿みたいな額の借金……今の私はもう、モンスターとは碌に戦えない。製薬の知識と技術は先輩達に教わっていたから、薬師には転職できたけど……借金を返せるほどお金が稼げるわけじゃない。私は役立たず……」

「ナァーザ」

「私達があいつらに借金をしているのは、そういう理由。全部、私のせい」

「ナァーザッ、もういい。止めよ」

 

 ミアハ様の静かな声に、事故罵倒を続けようとしていたナァーザさんは口を噤む。

 重苦しい静寂が訪れる。

 

 

 僕は、うな垂れたナァーザさんをみて、声をかけようとして、でも何も言えずに口を開けなかった。

 

 ナァーザさんが―――

 過去には冒険者だったけれど、敗北と大怪我で挫折し、助けられ、その代償にファミリアに大きな借金を背負わせてしまった事。

 それを悔いて、自分を責めながら、それでも自分にできる事で何とかしようとあがき続けていた事。

 それでもどうにもならなくて、今彼女は打ちひしがれている。

 

 僕はそんなナァーザさんを見て、空虚だった胸に何か熱いものが灯ったような気がした。

 それが体に熱を宿して、動き出せと叫んでいるようで、僕は苦しくて胸に手をやってシャツをきつくつかんだ。

 

 

 この人の力になりたい。

 

 彼女はいつも働き者だった。

 朝僕がくるときには作業の準備を終わらせていて、毎日一緒に日が暮れるまで調合に明け暮れた。

 素人だった僕に製薬について手解きをしながら、自分自身の勉強も熱心で、毎日寝る前にまだ知らない薬や治療法等について勉強しているのだと言っていた。

 お金にがめつくて、商売のやりかたについても色々考えることをやめなかった。それなのに、彼女が贅沢をしているところは一度も見た事がなかった。

 いつもいつも、自分の私生活でも出費を抑えることに汲々としていた。

 

 この人の助けになりたいと、強く思った。

 

 こんな僕でも彼女の助けになれるだろうか?

 無力な僕でも、誰かの助けになれるだろうか?

 

 わからない。でも、何もせずにはいられなかった。

 

 

「幾ら足りないんですか?それから、何か期日までに指定額に間に合わせるあてとかは?」

 

 黙っていても何も起きずに暗くなっていくだけだ。そう思った僕は無理やりでも話を進める事にした。

 けれど、聞き出した金額は今の僕には目もくらむような大金だった。手持ちのお金じゃあ焼け石に水にしかならない。

 

 このとき初めて、僕はホームに引きこもっていた時間のことを後悔した。

 あんな無駄な時間を過ごさずに真面目にお金をためていれば……必死に自分を鍛えていれば……もっと助けになれたかもしれないのに。

 いや、過ぎた事を後悔している暇なんてない。今できる事をやらなくちゃ。

 

「とりあえずその額だと、期日まで僕が毎日ダンジョンに潜ってもとても間に合いそうにないですね……」

 

 何か他に方法を考えないと。そう思って僕が悩んでいると―――

 

「ベル……何、言ってるの……?」

「そうだぞベル。これはあくまで我らの借金。気持ちは嬉しいがおぬしが返済の為に駆け回るような事はせずともよいのだっ!」

 

「よくなんてありません!」

 

 的外れな事を言うミアハ様に僕は思わず反論してしまう。

 

「ナァーザさんもミアハ様も僕はもう一つの家族(ファミリア)だと思ってます!お二人が路頭に迷うような事になったら僕は凄く嫌です!

 神様だって神友(しんゆう)のミアハ様達のことを絶対に助けたいと思うに決まってます!だから僕は僕にできる全力で二人を助けます!!」

 

 鼻息荒く僕が言うと、二人はぽかんとした表情で僕を見た。

 そして僅かの沈黙の後―――

 

「ぷっ……」

「くっくっ……」

 

 二人はこらえ切れないと言うようにどちらとも無く笑い出した。

 

「な、何がおかしいんですかっ」

「いやなに、おかしくなど無いとも。今時珍しいほどにまっすぐな"子"だと思っただけだ。いやはや素晴らしい」

「ベル……凄いお人よし……っていうかバカ?」

「ば、バカは酷くないですかバカは」

「なんで……家族?ベル、ただこき使われてただけ……」

 

 ナァーザさんはそんな風に言うけれど、僕は決してそれだけじゃない事を知っている。

 思えば最初は酷い手際だった僕に、彼女は根気よく丁寧に調合のやりかたを教え続けてくれた。

 鬱々として部屋にこもるだけだった僕を立ち直らせてくれた。ダンジョンに行くと言えばたっぷりのポーションに、ハイポーションまでもたせてくれた。

 貸すだけだと、使わずにダンジョンで死んだら回収できないから絶対生きて帰れと、そう言ってくれた。

 

 二人だって大変な事情を抱えているのに、今まで僕は全然その事に気付かなかった。

 二人はそれで周りに当たるどころか、いつもさり気なく僕の事を気遣ってくれているのが感じられた。

 二人や三人で調合に明け暮れて、一緒にお昼ご飯を食べて、時には神様も来て四人でお茶をしたり……。

 この半年間、ミアハファミリアは僕にとってもう一つのホームだったんだ。

 

 

「ナァーザさんはただこき使うための相手と毎日一緒に昼食をとったりわかり易い入門書を用意したり高級回復薬を持たせたりするんですか?」

 

 僕がそう反撃すると、彼女はうっと言葉につまって話をそらした。

 

「……返済のあては、ある」

 

 珍しく気恥ずかしそうなナァーザさんをもっと突っ込んでみたかった気もするけれど、流石に今の言葉は聞き逃せなかった。

 

「あてがあるんですか?どんなものですか?」

「新薬をつくって売込みをかける」

「……新薬ですか。それってどんなものですか?」

「体力と精神力を同時に回復できるポーション。デュアルポーションって命名しようと思ってた……」

「なるほど……確かにそれができればお金を用意できるでしょうけれど、そんなに急にできるものなんですか?」

 

 新薬となれば競合相手はいないので値段設定はほとんど自由だ。効能的に冒険者への需要は高いだろうし、第二級以上の上級冒険者は消耗品にかけるお金も桁違いだ。

 材料の原価次第ではあるけれど、最悪利率が悪かったり効能が低かったりしても将来性のある新薬であれば、レシピそのものを売り払うという手もある。

 問題はこんな急に都合よく新薬の開発なんてできるのだろうかと言う一点だけだった。

 

 

「元々、構想はしていた物だから。今は研究の最後の詰めの段階……今月はまだ丸々あるから急げば十分可能性はある……」

「ならばやる事は決まったな。そのデュアルポーションを早急に完成させて、ディアンのやつめに叩きつけてやるのだ!」

「もちろん僕も未熟ですが出来る限りお手伝いしますよ!」

 

「その意気やよし!」

「……うん」

 

 二人が手を差し出す。ナァーザさんが差し出したのは残った生身の左手だった。僕も、そこに手を重ねる。

 やるんだ、この三人で。

 

「「「エイ!エイ!オーーーー!!」」」

 

 

 

 帰って神様にその話をしたら、僕も仲間にいれてくれよぉーーー!!雑用でもなんでもするんだよぉぉーーー!!!と泣き付かれたので四人で頑張る事になりました。

(バイトはしばらくお休みするそうです)

 

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