ガンショップ店主と奴隷との生活 -てぃーちんぐ・のーまるらいふ-   作:奥の手

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短いお話を一つ。


蛇足編 「レンガ積みの三人の男」

よく晴れたとある街を、大きな男と小さな少女が歩いていました。

 

大きな男は浅黒い肌にモリモリの筋肉を持つ、とてもこわい男です。

小さな少女は真っ白い肌に傷跡を持つ、とてもかわいい少女です。

 

二人は仲良くならんで街を歩いていました。

 

ふと見ると、二人の前にレンガを積んでいる男が表れます。小さな少女は尋ねました。

 

「どうしてレンガを積んでいるんですか?」

「お金を稼ぐためにだよ」

 

少女は続けて訊きました。

 

「あなたはこの仕事が好きですか?」

「まぁまぁ好きだよ」

 

 

 

 

よく晴れたとある街を、大きな男と小さな少女が歩いていました。

 

大きな男は浅黒い肌に立派なひげを持つ、だいぶ強面の男です。

小さな少女は真っ白い肌にきれいな金髪をもつ、だいぶかわいい少女です。

 

二人は仲良くならんで街を歩いていました。

 

ふと見ると、二人の前にレンガを積んでいる男が表れます。小さな少女は尋ねました。

 

「どうしてレンガを積んでいるんですか?」

「教会を建てるためにだよ」

 

少女は続けて訊きました。

 

「あなたはこの仕事が好きですか?」

「そこそこ好きだよ」

 

 

 

 

よく晴れたとある街を、大きな男と小さな少女が歩いていました。

 

大きな男は太い腕に大量の荷物を持った、とても筋肉質な男です。

小さな少女は細い腕に数冊の本を持った、とても知的な少女です。

 

二人は仲良くならんで街を歩いていました。

 

ふと見ると、二人の前にレンガを積んでいる男が表れます。小さな少女は尋ねました。

 

「どうしてレンガを積んでいるんですか?」

「お金を稼いで、教会を建てて、恵まれない子供たちを助けるためにだよ」

「あなたはすてきな人ですね」

 

少女は続けて訊きました。

 

「あなたはこの仕事が好きですか?」

「大っ嫌いだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある街の、とある一角。

ひとつの教会が建ちました。この街で唯一の教会です。

 

教会には子供たちがたくさんいます。

親のいない子供たちがたくさんいます。

 

教会の神父は言いました。

 

「私は自分でこの教会を建てたんだ。レンガを積み上げて建てたんだ」

 

子供たちは訊きました。

 

「たいへんだった?」

「あぁ、大変だったとも。雨の日も、晴れの日も、雪の日も、風の日も、どんな時でもレンガを積んだ」

 

子供たちはおどろいて、それから目をキラキラさせて、口々に「すごい」とか「かっこいい」とか「ありがとう神父さん」と言いました。

 

一人の子供がまた訊きました。

 

「どうして神父さんは自分で建てたの?」

 

神父はとっても優しい笑顔で応えました。

 

「お金を稼ぐためにだよ」

 

 

 

 

 

 

 


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