ガンショップ店主と奴隷との生活 -てぃーちんぐ・のーまるらいふ-   作:奥の手

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原作奴隷ちゃん登場。


5日目 「町医者の奴隷(下)」

「この辺だな……」

 

強面の店主は一人呟きながら辺りを見回しています。

その手には、ここへ来る途中に買った昼食のフルーツサンドが、紙袋に入って下げられていました。

 

鳥のさえずりが辺りに響き、上り詰めた太陽がやや傾き始めた頃、強面の店主は目的の住所付近に到着します。

 

周囲は町の中心に比べると静かなもので、ちらほらと人通りのあるそんな場所でした。

 

あちこちに目を配らせ、しばらくすると診療所らしき建物が建っているのを、強面の店主は目にとめます。

表の看板に診療所の文字が見えるのを確認し、一つ頷きます。

 

「よし」

 

特にケガや病気でもないのに病院を訪れるというのは不思議な話ですが、そんな細かいことはこの店主の頭にはありません。

しいて言うならお悩み相談で片付くだろう、程度の考えです。

 

木材を加工して作られた質素な扉を押し開けると、木造の持ち合い室がすぐ目の前にありました。

ただ中には誰も居らず、静かでがらんとしています。

 

「…………だれかおるかい」

 

低い声で呟いた強面の店主は、その声が診療所の奥に吸い込まれるのを感じ、

 

「こりゃ失敗したな」

 

誰もいないことを悟りました。

 

ここまでそこそこ距離のある移動です。

日が出てきたとはいえ風が冷え込んできたために、あまり楽な道のりとは言えませんでした。

このまま何も無しに帰るのは少しもったいない、と店主は思いましたが、誰もいないのでは話を進めることは出来ません。

 

「しかたねぇ、帰るか」

 

踵を返して入ってきたドアに手を掛けたときです。

人の気配がしました。奥からパタパタと誰かが走ってくる音もします。

 

強面の店主は最初気のせいかと思いましたが、ハッキリとその耳に足音が聞こえ出すと、胸をなで下ろしました。

誰か居るのなら事情を話して、目的の少女とコンタクトも取れそうです。

 

(人相ぐらい聞いときゃよかったな)

 

今更考えても仕方のないことですが、店主は後ろ頭を掻きながら振り向き、そして少し驚いてしまいました。

 

「あの、すみません! 先生はいま往診中でいないんです」

 

現れるやいなや頭を下げたのは、顔にヤケドの跡が目立つ少女でした。

元気な声でそういいながら、深いお辞儀をしています。

 

揺れている綺麗な銀髪に、強面の店主は目を引かれました。

その髪は、青い大きなリボンでまとめられています。

服装は黒のナース服。

足元は生地の薄いソックスを穿いていて、顔と同様のヤケドの跡が目立ちます。

 

強面の店主が迎えた奴隷と、ほぼ同じ背格好です。恐らくは年齢もそう変わりません。

 

顔や手足の傷、纏っている雰囲気から店主は直感で、この子も同じ奴隷だったのだろうと悟りました。

同時に、数日前の商人から聞いていた〝町医者に引き取られた奴隷〟の話も思い出します。

 

恐らくはこの子のことでしょう。

そうであれば、似たような境遇であることを知っている服屋の店員が、この奴隷の少女を紹介した理由も頷けます。

 

奴隷のことは奴隷に聞け――――もとい、〝元〟奴隷に聞け、です。

 

「えぇっと、急患ですか?」

 

ナース服の少女はやや困ったような表情のまま、店主の顔を見ています。

身長差が実に60㎝以上あるので、少女からすれば見上げるような形になるのですが、強面の店主の怖い顔を見てもあまり怖がっている様子はありません。

 

こうして診療所の手伝いを重ねるうちに、接客のスキルが身についたのでしょう。

店主は目の前の少女の立ち居振る舞いが様になっている様子からそう判断しました。

 

そしてうらやましいと思いました。いつかは自分の所の娘も、こうして接客を任せられるようにしてあげたいと。

 

強面の店主は少女の方を見ながら答えます。

 

「今日来たのは診察じゃねぇんだ。急患でもねぇぞ」

「あ、はい。ではどのようなご用件でしょうか?」

 

銀髪の少女はカウンターからクリップボードとペンを取り出し、いくつか書き込みをし始めました。

若干ですが訝しげな表情をしています。

 

小首を傾げながらサラサラと記入をしている少女ですが、診察をしに来たわけじゃないのに診療所を訪れる意味がわからない、と言うような顔をしています。

 

その表情は、強面の店主の言葉で固まりました。

 

「お嬢ちゃんにちょっと付き合って欲しくてな」

 

せわしなく動いていたペンは止まり、おずおずと、銀髪の少女が強面の店主を見上げました。

 

「あの……それは、どういうことで……?」

「いや、ちょっとしたツテでお嬢ちゃんを紹介されてな。ここは一つ話に乗って貰いてぇんだが」

「あ、えっと…………そ、それは……」

 

クリップボードを胸に抱いたまま硬直した少女は、心持ち頬が赤くなっています。

目線があちこちをむき、落ち着かない様子で何かを言おうともじもじして、しかし言い出しにくいのか口をぱくぱくさせては躊躇っています。

 

「どうした?」

「あの、その話は、その……お受けできません」

 

強面の店主も一瞬固まりましたが、しかし商談ではよくあることです。

話が出来ずに収穫の無いまま引き返すことは、今までの人生でも多々ありました。

 

別段ショックを受けたわけではありません。もともと諦めかけたところだったので、ほんの少し期待を裏切られた程度です。

 

(そうかだめか……相談相手は余所を当たるとして、では誰にすりゃいいんだか……)

 

内心では次の行動指針を模索している店主でしたが、銀髪の少女はそんな悩み顔の店主を見てワタワタし始めました。

 

外側から見れば怒っているように見えるのです。

少女は眉尻を下げながら申し訳なさそうな表情で、クリップボードをきつく抱きながら勢いよく頭を下げました。

 

「ごめんなさいッ!! 私は先生だけが好きなんです!」

 

 

 

 

「説明が悪かった」

「い、いえ。私の方こそ勘違いしてしまって……すみません」

 

付き合って欲しい、の意味を盛大に履き違えた少女は、恥ずかしそうに、そして申し訳なさそうにそう言って、再び頭を下げました。

 

「気にすんな」

 

診療所のテーブルには店主の買ってきた昼食と、少女が煎れた紅茶が一緒になってならんでいます。

二人はそれを挟むような形で向かい合わせに座って、店主の申し出通りの話し合いをしていました。

 

「まぁ、遠慮せずに食ってくれ。相談料金だと思ってくれりゃあいいぜ」

「お腹も空いてますし……はい、いただきます!」

 

買ってきたものはサンドイッチで、間に生クリームやフルーツがふんだんに挟まっている食べ物です。

フルーツサンドと呼ばれるものでした。

 

銀髪の少女――――シルヴィは物珍しそうな表情でそれを両手でもっています。

 

「こんなすごいものが町に……初めてみました」

「ケーキ屋の裏メニューだ。頼めば出してくれるが言わなきゃ出てこねぇもんでな。まぁ今度寄ったときに注文してみな」

「先生におねだりしてみます!」

 

はむ、とかじりついたシルヴィは、頬に生クリームを付けながら幸せそうに食べています。

 

正直言うとガンショップの奴隷より嬉しそうに食べています。

満面の笑みで、心底幸せそうな表情で口の周りを生クリームだらけにして食べるシルヴィの姿は、あまり金髪の少女とは重なりません。

 

(あいつも、これくらい嬉しそうに食べてくれりゃあな……ここまでは喜んでくれぇんだよなぁ。なんでだろうな)

 

強面の店主も手際よくフルーツサンドを食べていき、ある程度テーブルの上が空いてくると、話を切り出しました。

 

「おめぇさん、名前は?」

「シルヴィとお呼び下さい。皆様からも、そう呼ばれていますから」

 

丁寧で大人びた口調とは裏腹に、口の周りに白ヒゲを生やしたシルヴィは、両手に着いた生クリームをぺろぺろとなめ取っています。

 

その光景に自然と頬がゆるむ店主でしたが、用件を伝えます。

 

「俺は先日、奴隷を引き取ってな。アンタと同じぐらいの年で、髪は金髪だ。知り合いじゃあねぇよな?」

「金髪……いえ、記憶にはありません」

「まぁそりゃいいんだ。問題はそいつがな、自分から痛い事を望むような口ぶりで接してくるんだ」

「…………? どういう事ですか?」

「ことあるごとに殴って欲しいと言ってきたり、殴らないのかと尋ねてきたり……とにかく自傷願望が見え隠れするんだ」

「それは……あの、その子は、私みたいでしたか?」

 

至って真面目な顔でそう聞いたシルヴィの表情は、言外に〝私のように虐待の跡がありますか〟と聞いていました。

口の周りの生クリームを指ですくってぺろぺろしていなければ、あまりにも重すぎる話です。

 

「そうだな。ヤケドもあるし、切り傷や刺し傷も多い」

「そうですか…………」

 

目線を伏せたシルヴィは、そのまま数秒黙ったまま、机の上の一点を見つめています。

視線の先には最後に残ったフルーツサンドが。

 

生クリームとイチゴを挟んだ、強面の店主一押しのひと品です。

 

「…………食って良いぜ」

「え、あ、はい、いただきます!!」

 

単に考え事をしていただけでしたが、勧められれば断る理由はありません。

再び口の周りと両手を白く染めながら、ニコニコとシルヴィは答えます。

 

「その子がどうして自分から痛い事をされたいのかはわかりませんが、でも、いままで痛い事をされてきたなら、本当に心から痛い目に遭いたいとは思ってないはずです」

「そりゃあそうだよな。俺は別に、あいつをそんな風にしたいとは思ってねぇしな」

「えっと…………奴隷として、丁寧に扱うと言うことですか?」

「いんや。あぁ、おめぇさんの前で言うのは……いや、そうだな。ちゃんと言うべきだよな」

「?」

 

イチゴを口いっぱいに含んでもごもごしながら首を傾げたシルヴィに、強面の店主は真面目な表情で伝えます。

 

「俺はあいつを幸せにしたい。もっと言うなら結婚したい。一生を共に過ごして、同じ墓に入りてぇんだ」

「わぁ……」

 

イチゴサンドを手に持ったままキラキラと瞳を輝かせたシルヴィは、本当に嬉しそうな表情で、

 

「そんなにも想ってくれるのなら、きっと幸せだと思います! 私も、初めは今のご主人様に何も感じていませんでした。また同じような生活が始まるのかなって。つらくて、苦しくて、どうしようも無い生活が始まるのかなって」

「あぁ」

「でも、違ったんです。先生…………ご主人様は、私に痛いことをしませんでした。悲鳴をあげさせて楽しむようなことも、酷い言葉で罵倒することも。それどころか、たっくさん、いろんなものをいただきました」

「物、か。服とか飯か?」

「それもあります。でも目に見える物だけじゃないんです。本当に、上手く言えないんですけど……いろんなものです」

 

伏せ目がちに頬を赤らめ、シルヴィは少し足をすりあわせましたが、すぐに誤魔化すように笑いながら残ったイチゴサンドを口へ運びました。

 

店主は思います。たぶんそれは、俺には難しいと。

 

果たして目に見えない物をどう相手に与えるのかは、それは商業とはまた違った視点で考えなければなりません。

 

目の前の少女が言う〝目に見えないもの〟の正体が店主にはわかっていました。

そもそもそれは、自分が望んでいたもので、同時に与えたいものです。

 

すなわち愛情です。

 

ただ、そんな目に見えないものをどうやって与えればいいのかわからないからここに来たのです。

現状あのくすんだ金髪の少女には、何も届いていないのですから。

 

いくら本をあげ、ごはんをあげ、服を買い与えても、根本的には愛情を与えたことになりません。

 

愛するがゆえに与えていることを理解してもらえれば話は変わるのですが、今はそれどころか、心すら見えません。これではいつまで経っても意味がないことは店主もわかっています。

 

「どうすりゃいいんだろうな……」

「なにがです?」

「俺はあいつと心から話がしたい。あいつは…………商売人の目からしてみれば、かなり上辺面なんだ。たちが悪いのは〝殴って欲しい〟と言っているときは、本心が見え隠れしている」

「それは……あの、これは、私自身の考えなのであっているかはわかりませんが……」

 

シルヴィはそう前置きして、おずおずと口を開きます。

 

「痛い事を自分から望めば、心が少し楽になるからかも知れません」

「……どういうことだ」

「私もそうだったんです。痛い事から逃げようとするから苦しいんだ。だから、もう何も感じないでいようって。痛いのも、苦しいのも、嫌なことも、嬉しいことも、幸せなことも、何もかも捨てて、何も感じないようにしたら、すこし楽になれたんです」

「じゃああいつは、それすらも行きすぎて、自分から望むようになった……ってことか」

「いえ、違います! 望んでるのではなく、〝望まないと〟って自分に言い聞かせているんだと思います」

「言い聞かせる……か。なるほどな」

 

強面の店主は何度か頷き、腑に落ちたように肩の力を抜いて、シルヴィが煎れてくれた紅茶に口を付けます。

 

ほのかに甘い香りが漂う紅茶は、上品で、とても美味しい物でした。

 

「その子がどのような環境を過ごしてきたかはわかりませんが、きっと心細いと思います。私もここに来た最初の頃は、もう何も感じないようにしていましたし、もし今のご主人様に何かされても、もうどうでもいいやって気持ちでした」

「今は?」

「今はえっと……何をされても良いよ、って気持ちです」

「んん、どういう意味だ?」

「あの、ええっと……私は先生が好きで、だから、先生になら、何をされても嫌じゃないって事です。昔のつらかった頃とは全然違う気持ちです。…………うまく言えなくてすみません」

 

照れたようにえへへ、と笑ったシルヴィは、紅茶を一口飲んで続けました。

 

「私もそんなにすぐには、先生の事を信用できたわけではないんです。いろんな所に連れて行って貰って、いろんな事を教えて貰って、それから……あ、私引き取られてしばらくしてから、重い病気にかかったんです」

「病気にか。でもおめぇさんの主人は医者だろ?」

「はい。それはもう、だからこそだったのかわかりませんが……一晩中看病して下さって、それで今度は一人で寝てると寂しくなって、だんだん、先生と一緒になって……その頃には、もう先生を疑うようなことはありませんでした。今思えばあのとき一生懸命看病してもらえたから、私は先生の事を信じられたのかも知れません」

 

納得のいく話だと店主は思いました。

体が弱っているときに、側に居てやれればそれはきっと気持ちが伝わるだろうと。

 

でも同時に、そんな打算で看病をしてもそれを愛情とは呼ばないと思いました。

下心が丸見えの看病をしたところで意味はなく、まして引き取った彼女が体調を崩すことを望むようなことがあってはならないと。

 

ただもちろん、シルヴィの主人にそんな打算があって看病したわけではないのはわかっています。

目の前の少女が嬉しそうに自分の主人のことを語る姿に、そのような影は全く見えないからです。

 

――――結局の所、何かきっかけがあれば心から話をすることは出来るかも知れません。

 

でもそのきっかけを自分で作ることを、店主としてはしたくありません。

商売なら儲けるために何でもします。でもこれは商売じゃありません。

 

自分から機会を設けてどうこうしようとする考えは、店主の頭から消え去りました。

 

「結局、俺はどうすりゃあいつの心が見えるんだろうな」

「時間がかかると思います。たくさん、いろんな所に連れて行ってあげて下さい。私はそれが嬉しかったんです。それから、いろんな事を教えてあげて下さい。知らないことは怖いけど、でも、それを教えて貰えば、もう怖くないんです。だから、ずっと一緒に、いろんな事を教えてあげて下さい」

「なるほど。…………わかった。ありがとな、シルヴィ」

 

金髪の少女の心をどう開くかではない。

問題はもっと別の所にあって、それは俺とあいつで一緒になって探すべき。

 

強面の店主の悩みは、確実に一歩、解決へ進めることが出来ました。

 

 

 

 

強面の店主とシルヴィが話し合いをしている頃。

 

ガンショップの一階では、赤いワンピースの少女がゴソゴソとカウンターをあさっていました。

 

一階の店舗フロアの壁には、いろいろな銃器が掛けられています。

 

それは大型の拳銃であったり、ライフルであったり、一風変わったマシンガンであったりするのですが、どちらにしても少女が手に持てるような物ではありませんでした。

 

なので少女はカウンターの内側、拳銃やその部品などが入っているところをあさっています。

 

「たぶんここにあるのかな……」

 

正直どれを手にすればいいのかわかりません。

 

そもそも使い方がわかりませんし、よしんば手に持てそうな物を見つけても、あの店主から隠れて持ち続けることが果たして出来るのか気になりました。

 

ただまぁ、そんな事は後から考えようという結論に至ったのです。まずは見てみることから始めようと。

 

「てっぽうって、気を付けないと死んじゃうんだよね……間違えて自分を撃たないようにしないと……」

 

どうすれば弾がでるのか、その仕組みを知らない彼女はカウンターの中をあさる手つきも慎重です。

 

頭の中には、昨日のお姉さんが腰に下げていたパーカッションリボルバーが浮かんでいます。

少女はもちろんそんな銃の名前は知らないのですが、間近で見た拳銃と言えば浮かんでくるのがそれなのです。

 

「あ、これ」

 

そういいながら少女が手に取ったのは、紛れもなくパーカッションリボルバーでした。

 

銃身が鈍く鉄の色をした、無骨でやや大きいそれは、少女の知るところではありませんが、中口径のパーカッションリボルバーです。

 

「どうやって使うのかな……」

 

数年前のご主人様が使っていたように見よう見まねで手に持ってみます。

引き金に指をかけたまま立ち上がり、

 

「ここから……なんだっけ、あ、弾が出るのかな?」

 

銃口を覗き込みます。

絶対にしてはいけないことなのですがそれを止める人はここにいません。

 

「ん…………よくわかんない」

 

覗き込んだ銃口から目を離し、もとあった場所に戻しました。

 

幸いなことに、パーカッションリボルバーは弾を込めるまでの工程が複雑なので、この少女が扱えるような物ではありません。

また、強面の店主は銃をすぐに撃てるような状態で保存することは希で、とくにカウンター内にある物には弾すら入っていません。

 

そんな事はつゆ知らず、少女は相変わらずカウンターをあさっています。

 

「これなんかどうだろ……」

 

今度は小さいです。ダブルアクション式リボルバーで、銃身が極端に短いモデルです。

上着のポケットなんかにも隠し持てる感じです。

 

「小さいし、これなら使えそう……? でもやっぱ、どうやって撃つのかわかんないや」

 

引き金に指をかけたままいろいろといじって、結局は元の場所にしまいます。

 

「他には……あ」

 

ふと、少女の目に、昨日店主が入っていった奥の部屋がとまりました。

 

のれんで仕切られたその部屋は、店主が工房にしている場所です。

弾を込めたままにしている銃はやはりほとんどありませんが、中には店主が護身用においてある銃も存在します。

そいつは弾が入っています。

 

「…………」

 

少女はカウンターの中からのれんをじっと見つめ、入ろうかどうしようか悩みました。

奥の部屋には行ったことがありません。もちろん見てみたいです。

 

ただもし、入ったのがばれてしまったら、自分の命が危険な目に遭うかも知れないと考えました。

 

「やっぱやめとこう」

 

のれんを睨んでいた少女はふっと肩の力を抜き、トボトボと二階へ上がっていきました。

 

銃を手にしても使い方がわからないと学習した少女が、その手に握るのはまだ先になりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




世界観といいパーカッションといい……「キ〇の旅」を彷彿とさせますね。

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