一緒に歩んできたおじいさんと時計の運命は・・・?

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ぼくはとけい、このばしょをずっとみてきた


時計の夢

 

 

僕がこの家にいたのは少し前の話、僕はある人に買われてここに来た

業者さんが運んできたときから僕の景色はここだけだった。

 

「おじいちゃん遊んで!!」

 

この子はここの家のお孫さんのハヤト君

遊びにいているらしい

 

「おお、じゃあ昔話でもしてあげようかねぇ」

 

この人が僕を買った人

昔はもっと若かったんだけど、人間は年をとるのが早いんだね

僕はずっとここで見てきた

初めて孫が生まれたときの嬉しそうなおじいさんの顔も、おばあさんと喧嘩して悲しそうなおじいさんの後ろ姿も。

そんな時、ハヤト君がこっちを指さしていた

 

「おじいちゃん、あの時計はいつからあるの?」

「あれはね、おじいちゃんが若い頃に買ったんだよ」

 

僕の話だ!

 

それは冬の寒い日だった。

あの日僕はトラックの中でゆらゆら揺れながら到着を待っていた

到着したときには、若いお兄さんとお姉さんが迎えてくれた

寒いのに外まで出てきてくれた

それから何年も過ぎてすっかりおばあさんになってしまったあの時のお姉さんにおじいさん。

それでも今でもずっと仲良しな二人、そして二人の間にできた男の子、その子にも今のハヤト君と同じように僕のことを嬉しそうに話してくれるおじいさん

ここに来れて本当に良かった、僕はこの家とともにあり、そしておじいさんやおばあさんとともにある。

二人の為なら何だってする。

僕をここへ導いてくれた恩人なんだから

 

「と、いう訳でここに来たんだよ。わしらをずっと見守ってくれている長年の友人みたいなものさ」

 

話が終わった。

おじいさんはその後すぐにどこか遠くを見つめて言った

 

「でも、こいつももう年なのかね。最近は少し遅れ気味なんだよ」

 

そんな!?僕が遅れてる!?

まさか、僕はちゃんと時間を指しているよ!僕が今指しているのは13:10だ、完璧なはず・・・!?

僕は目を疑った向かいの新入りが指していたのは13:25だった。

 

『もうお前の出番はないんだよ。そこで黙って捨てられるのでも待ってるんだな』

 

向かいの時計が言った

そんなこと人間には聞こえないけど。

おじいさんが僕を捨てるはずない!!一緒に生活してきたんだ、何年もここで見てきたんだ!

 

『でも、正しい時間を指さない時計なんて時計じゃないじゃないか』

 

自分でも、それが分かっているから辛いんだ

僕はもう時計じゃない、ただの・・・ゴミなんだ・・・

そういえばここ最近歯車の調子が悪い。針も言うことをきかなくなってきた。

こんなに一生懸命動こうとしているのにどうしてももう動けない・・・

悔しくて泣きたいのに時計に涙を流す機能がない

僕は捨てられちゃうのかな

 

「おじいちゃん、この時計直せないの?」

 

そうだ、直すことができるんじゃないか!?

僕はまだやれる、もっとできるんだ。

だからチャンスを・・・

 

「いいや、とても古い時計なんだ。もう相当腕のいい人でも直すことはできないだろう」

 

なん・・・で?

なんで僕は直らない?

針だって歯車だってもっともっとまだ動けるよ?

きっとまだまだできる、お願い僕から仕事を取らないで

動いて、ちゃんと動いて正しい時間を教えるから

だからお願い 捨 て な い で

 

”ゴーンゴーン”

 

「おや、もう17:00か。ハヤト、そろそろ帰らないと父さんや母さんが心配するぞ」

「分かった!またね、おじいちゃん!!」

 

ハヤト君が帰った後、おじいさんは僕を見た

もうすぐおばあさんが晩ご飯を知らせに来る時間だ

 

「なぁ、もうそろそろ終わりかもしれないな。」

 

何言ってるの?まだまだ僕は大丈夫だよ!!

ああ、でもさっきの鐘を鳴らした時に中で少しだけ変な音がした気がする・・・

 

「じいさん、晩ご飯ができたよ」

 

それを聞くとおじいさんは静かに背を向けて居間へ向かった

あんなに寂しそうなおじいさんを見たのは初めてだった。

 

その日の夜のこと

おじいさんはいつも僕のいる部屋で寝る。

おばあさんはその隣の部屋で寝る

イビキがうるさいらしい

おやすみおじいさん、いい夢見てね・・・

 

「うっ・・・ううっ・・・」

 

おじいさん?暗くて見えないけど苦しそうな声がする

 

「ううっ・・・かっは・・・た、すけ・・・」

 

おじいさん!?大変、すごく苦しそうだ

急いで隣のおばあさんを起こさないと!!

でも僕には何も・・・!

そうか、鐘を鳴らせばいいんだ!

 

”カチッカチッ”

 

・・・!?

なんで!?動かない!

お願い動いてよ!大切な人なんだ

僕はもういいから、動けなくなってもいいから・・・

 

「げほっ・・・がっ・・・」

 

おじいさん!!!

 

”ゴーン!!!!!ゴーン!!!!”

 

「なんだい!?なんでこんな時間に鐘がっ・・・!?じいさん!?」

 

良かった、間に合った。

でもあれ?すごく動くのが辛い

・・・そうか、あれが最期の鐘だったんだね。

ぼくはもう二度と動くことはできないみたいだ。

ねぇ、おじいさん?ぼくを・・・僕みたいなただの時間を知らせるだけの機械を『友人』にしてくれてありがとう。

僕は・・・幸せ・・・だっ・・・たよ・・・。

 

 

「なんとか頼みます!これのほんの一部でいい、どこでもいいからこの部品を使って作ってくれませんか?」

「無理ですよ、中も錆びちゃってますし・・・」

「お願いします・・・わしの大切な命の恩人なんです・・・」

「ですが・・・、ん?これは・・・!できるかもしれませんよ!」

 

どこか遠くでおじいさんと若い人の声が聞こえた

何かを頼み込むおじいさんとなにかを『できるかもしれない』と言った若い人・・・

 

「では・・・巻きますよ?」

 

その言葉と同時に僕は懐かしい感覚に包まれた

ものすごいスピードで回りだす歯車がチクタクと針を動かす

今まで僕が求めていた感覚だ!

でも僕は捨てられたんじゃないのか?

そっと目を開いた。そこには涙を流すおじいさんと少し困ったように笑う若い男の人がいた

景色が、違う。

いつもの家じゃないらしい

全部が大きくなったような・・・違う、僕が縮んだんだ

そういえばなんか小さい気も・・・

 

「ありがとうございます、ありがとうございます・・・」

「いえいえ、大切になさってくださいね」

 

視界が変わる、初めて見る世界が広がる。

ここは、外かな?

キラキラしててすごくきれいだ!

 

「腕時計付けていかれますか?」

「もちろんですとも」

 

腕時計?僕は柱時計だったはずだけど・・・

”この部品を使って作ってくれませんか?”

あれは僕のことだったのか!

 

「これで、お前に外の世界を見せてやれるな。」

 

僕に向かって話しかけてくるおじいさんはすごく嬉しそうな顔で、出会ったばかりの時のようなわくわくした表情をしていた。

 

「わしもまだまだ死ねんな、お前にもっといろんなところを見せてやらんと。お前が救ってくれたこの命で、今度はお前にもっとたくさんのものを見せてやろう。助けてくれてありがとうな、相棒」

 

 

 

 

end




最後まで読んでいただきありがとうございます!

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