これは一人の若きジャーナリストが傭兵とは何か、戦い続けることとは何かを探った『記憶』であり、今である。

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あなたにとって……

『戦い』とは……?
『傭兵』とは……?
『アーマードコア』とは――。

そう――知っていると。
なら、あなたにとって…

Voice of War(VoW)とは一体?
主筆こと J・ジェスターとは一体――?

これを見ている傭兵たちよ―
知りたくは…ないですか?


戦場の傭兵たちよ・・・・・。

 お昼過ぎ、海沿いにひっそりとあるシリウス正規予備軍基地。今日は珍しく晴天で、そんな青空にはどこからか5機編成を組んだ戦闘ヘリコプター隊が3回、爆撃機2機、高機動型自立兵器10機ほどが小さな基地の真上を通った。

 

 

≪出撃10分前、各隊員は装備を確認後指定された配置につけッ!繰り返す――≫

 男性職員によるアナウンスが騒がしい倉庫に響き、その2倍にも増して倉庫が騒がしくなる。私はその倉庫の中でも一番奥にあるガレージにおり、一人の男に質問をしている。

 

「俺が戦場に行く理由について訊きたいだァ?」質問をされても見向きもしない傭兵。

「今は忙しいンだ、あとにしてくれ!」小型端末を取り出し、最終チェックを始める。

 

 彼は長年アーマードコア(AC)で荒稼ぎをし、三大勢力間で引っ張りだこの傭兵のひとり。しかしある任務で汚染地域に長く滞在したことが原因で大病を患い、長く持って2年と言われたらしい。にもかかわらず、依頼がある度にACを駆けているのだ。早死にするぞと医者に言われ入院を勧められたのだが傭兵はそれを断り、こう答えたらしい。

 

「俺が死ぬのはこのマリアの中だけって決めてんだ。最後はいつか戦場でカッコ良く死ぬためにな」と。そんな話を聞いた時、私はこの傭兵に会ってみたいと思った。その傭兵に訊きたいことがある。ACを駆ける傭兵だけが持つ『戦い続けること』とは何か。彼がボロボロになってでも戦場に行くのは一体なぜか。それを訊きに来たというのに、タイミングが悪かったらしい。

 

 

「また戦場へ行くのですか?」と訊くと傭兵は「ああ」とだけ答え、小型端末を操作しACの各パーツを確認している。

 

 私はふと、そのACのエンブレムに目が行く。十字架によってはりつけにされた女性、しかしその十字架は土ではなく金貨や銀貨、紙幣などで固められた土台にそびえ立っており、その女性はどこか微笑んでいるように見える、そんなエンブレムだ。

 

「マリアって名前だ」突然の発言に少々戸惑ったが、それがACの名前だと理解し、私はそのACの名前を確かめるかのようにマリアと呟く。

 

「昔の愛人さ、出会った女の中で一番気に入っててよォ、ソイツにはずいぶんと金を注いだもんさ」とガハハと笑いながら、チェックが終わったのか小型端末を棚に投げる。作業用ジャケットを脱ぎ、タクティカルジャケットを手にすると。

「んで、なんだったっけ?理由だっけか?特に訳なんてねぇよ」と質問を確認し、その答えを述べる。

「戦う者には必ず理由があります。理由なくして戦場へ行くことは自殺行為も同然、そうでしょう?」

「そうかもな、俺はどうやら死にたいらしい」彼の大笑いが私の耳に響く。正気じゃない。

「あなた正気じゃありませんよ。死ぬのが怖くないのですか、生きたくはないのですか!」 どんな人間だっていずれ死が訪れる。だがこんなご時世だ、私はそんな簡単には死にたくない。誰だってそうに決まってる。彼のような傭兵とは違って。

「無論そりゃあ生きてぇさ、無事帰ってきた後のビールはうめぇんだ♪」よほど美味しいのであろう笑みを浮かべる傭兵。服を着終え、鼻をこすりながらトタンの階段を上っていく。6mくらいまで上ると足を止め、再び口を開く。

「でもまあ、全くないってわけでもねぇんだよなぁ」と傭兵は腕を組み、感慨深そうに言う。

「というと・・・?」私はまた質問をする。

「それがよォ、俺にもよく分からねえんだよ」自殺願望の次は、よく分からないと来たか。相変わらず『傭兵』という部類の連中は、よく分からない。質問の答えに呆れ、ひとつため息をつく。時間の無駄だったか。

「俺は今まで一人で生きてきたんだけどよぉ」傭兵が語り始める。私はそれに続けて疑問を投げかける。

「一人で?・・・しかしあなたにはマリアさんがいるのでは――」投げた疑問そのものを避けるかのように茶色い錆色の柵を大股で越えると。

 

「俺が、殺しちまったのさ。アイツをよ」

 

 

 

 

一瞬の間が、ここのガレージの時間を止める。倉庫内のほとんどの兵器が整備を終え、外に出始めている。しかし私たちは微動だにしない。上手く理解することは出来なかったが、私はハッキリと聞き取ることができた。俺が殺した、と。ニッと笑う彼の笑顔が死神のように見えたのは・・・私だけだろうか。ACの肩に立つ傭兵はまた語りだす。

 

「重要施設を守っているAC防衛部隊を撃破しろっつー依頼でよ、俺を含む5機、敵さんの5機、つまり5対5で戦ったわけよ」先ほどの彼と比べると今は不思議と生き生きしているように見える。

「その敵さん側にアイツがいるのを初めて知ってよぉ」まるでそれは――。

「そんでもって戦ってたらアイツと俺だけが生き残っちまって、仕舞にゃアイツと一騎討ちさ」玩具を手にした赤子のよう。

「俺もアイツもコアの前面装甲が剥がれて、お互いの顔が見える状態での一騎討ちでよ。楽しかったなぁ」彼は、悲しくはないのだろうか。信じられない、愛する者をこうも簡単に殺せるものだろうか。

「『こうも簡単に殺せるのか傭兵は』…ってか?」その発言に驚愕した。私は仕事の関係上思考が読まれないよう訓練してきたが。傭兵とは、そんな生き物なのか。

 

「あなたは・・・愛する者を殺して、悲しくなかったのですか?」

「俺は、『傭兵』だ。勢力のためでなく、お偉いさんのためでもなく、自分が生きるための、金のために働くクズと同じさ」

「おい傭兵!ぐずぐずするな、早くしろ!!」正規整備員の怒号が倉庫に響く。どうやら倉庫の中にいるのは私たちだけらしい。

「へいへい、今行きますぜ~」と傭兵は返事する。

「それによ、アイツも満更でもなかったんだぜ。俺と戦えてよ」

「それは、どういう・・・?」

「お互いが傭兵として尊重し合って戦うのは、それはとても嬉しいことでもある。それに・・・」

「それに?」

「楽しいんだ。目的は違ってもそれは傭兵として本望なんだよ、全力で戦って死ねるっていうのは。俺みてぇな傭兵は、戦いの中でしか自分を証明することができない哀れな生き物なのさ」

「それは『傭兵』という者すべてがそうなのでしょうか」

「さぁ?それは分からんな。・・・ただ――」

「ただ?」

「アイツはそうだったぜ、マリアも。俺と戦えてお互い、後悔はないぜ」

 これが『傭兵』か。誰のためでもない、己のために戦う――そんな人間が世の中にはたくさんいるのか。

「おしまいか?なら、俺は行ってくるぜ」傭兵はコア上部の頭部ハッチを開き、狭い穴をするりと入る。彼は出撃するのであろう。

「ま、待ってください。さ、最後に一つだけ!」錆色の柵を飛び越え、ガタンと厚い金属板で覆われたACの肩に降り立つ。

「おぉ、どおしたぁ?ほら頭ァ持ってかれるぞ!」操縦席から声が聞こえる。操縦席付近に付属するスティックスイッチを人差し指で下に操作、頭部パーツが降りてきている。

 

 決心した。これが最後の質問になるかもしれないんだ、ならば私が訊きたかったことを。

「あなたは――あなたにとって『戦い続けること』とは・・・?」

 

 頭部パーツと胴パーツであるコアと合体。数えきれないほどの部品という部品で構成されたコアから爆音が発し、ACマリアが起動する。ブースターから青白いアフターバーナーを吹かす。慣性の法則で私はひっくり返され、6m下へ落とされる。無造作に積み重なったダンボールがクッションとなって助かった。が、当たり所が悪く後頭部と背中が少々ズキズキと痛む。その光景を彼は見ていたのか、愉快に笑っている。偶然私の手にはエメラルド色をした瓶があった。

「そいつがさっき言ってたビールさ。お前にやるよ、うまいぞぉ~♪」ACマリアから傭兵の声が聞こえる。落下で痛めた個所を手で押さえ、瓶を見つめる。お酒は基本仕事終わりに飲むべきものとしているのだが、瓶と王冠のデザインに惹かれた。

 

 

 Do you believe potentiality?(お前は可能性を信じるか?)  そんな言葉が印刷されており、王冠には真っ黒のカラスがデザインされている。

 

 

「お~い!」たった1本のビール瓶に見とれているうちに、傭兵はとっくに外へ出ていた。急いでガレージから出ると、ACマリアと大型輸送ヘリとの連結、固定が完了していたところだった。

「お前さんの名前は?」大型輸送ヘリのツインローターがさらに回りだし、空気を強く地面に叩き付ける。通常のヘリコプターでも離陸時の風圧は突風並みだが、AC輸送用となればその風圧は私の足を持っていかれるほどに凄まじい。そんな状況下に何を訊いてくるんだ傭兵は!

「なんで名前なんかを!?」大声に近い大声で彼に呼びかける。

「俺の武勇伝を聞きてぇんじゃねえのか」

「は、はあぁ!?」この期に及んで・・・。

「終わったらいつも通り戻ってくるからよぉ!その時にでもまた話してやるよ。その時までこっそり飲むなよぉ??」

 傭兵の連中とは仲良くするなと上司に言われたことがある。礼儀知らずで無礼なことをするだけだと。でも彼だけはどうしても嫌いにはなれなかった。

 少しずつ上昇を始める輸送用ヘリとマリア。彼は戦場へ行くのだ、戦うために。目的は訊けなかったが、彼にしかない素質が戦場へ誘おうとしているのか。私は知りたい、ジャーナリストとして、この混沌と化した世界に生きる者として。だから私は・・・!

 

 

「ジェスター・・・。J・ジェスターといいます!あなたの名前は!!」ビール瓶を持つ左手の指に力が入る。

「J.ジェスターだな、覚えとくぜ。俺は―――」輸送用ヘリに固定されたACマリアが飛び立つ。離陸するぞとでも言わんばかりの騒音と風圧で、知りたかったはずの彼の名がかき消されてしまった。「もう一度名前を!」と叫ぼうとした時、ACマリアの手が動いたかと思えばなんと親指を立ててきた。まるで、ファイトと励まされているかのように。あっけらかんとしてしまった私を見たであろう彼はまたもや愉快な笑いをする。5m、10m、20mと上昇し、発進してしまった。

 

 

 

 ゴツゴツとしたマリアの後姿を見ることしかできなかった私は、ようやくハッと意識が戻る。そして無性に苛立ちが走る。本当は訊くはずだった質問の答えを訊けず、名前すらも訊けなかったのだから。苛立ちをぶつけることができるものといったら、このビール瓶しかないではないか。叩き割ってやろうか?いや・・・「飲むな」と言われたのだから飲んでやると思い、内ポケットからボールペンと取り、ガチャガチャと無理にでもこじ開けようとする。シュポンッという軽い音とともに真っ白の泡が流れ出てきた。口に運ぼうとしたが一旦引く。アルコールに弱いのではない、これでも仕事中なのだ。そんな気持ちが行き場のない苛立ちによっていいから飲めと変換され、結局はラッパ飲みをすることに。

 

 不味い。とにかく不味すぎる!これが本当にビールなのかってくらい不味い。ホップを効かせた刺激やコクは強いくせに、ビールを彩るはずの果実やハーブの香りは一切なく、苦味という苦味だけが口の中を独占していく。私の体は拒絶反応を起こし、ひどく咳き込んだ。こんなもの、もう飲んでやるものか。少し落ち着いた所で青空を見上げると、黒い点のように見えるそれは青空を飛ぶカラスとなっていた。

 

 基地や倉庫、プロペラの音や溶接する耳障りな音は一切なく、気が付けばこの基地にいるのは私だけだったらしい。そして滑走路の中心に私だけがポツンと立っていた。それにさっきとは一変としてイライラがすっかりなくなっていた。咳と一緒に出してしまったかのように。

 

「また来てやりますよ」聞こえるはずのない言葉だけを吐き捨て、私は誰もいない小さな基地を後にする。今度会ったときは徹底的に質問責めにしてやる、とジャーナリスト魂に火を付けながら。

 少々悪酔いしたかな。

 

 

 

 

 

 

 だが・・・誰一人として生きて帰ってこなかった。

 

 

 

 

 一緒に出撃したシリウス軍も。

 

 

 

 

 あの礼儀知らずで一風変わった傭兵も・・・・・。

 

 

 

 

 

 あとで知った話だが・・・あの作戦はすでにヴェニデの方に知られていたらしく、そのときの情報を上回る3倍の戦力差だったという。鬼畜とも言える戦況で傭兵は、現地に捕らわれていた捕虜を救うべく自ら囮になって、死んだ。だがその勇姿も空しく、ヴェニデによる掃討作戦で捕虜も、シリウス正規軍も皆殺しにされたという結末だ。彼の言う「最後くらいカッコ良く死ぬために」という言葉を思い出す。こんな結末には反吐が出るとは思うが、私はそうではないと思ってしまった。傭兵にとって戦場で死ぬことは本望だから。それとともに後悔をしているのも事実である。もっと自分にも彼のような傭兵を・・・少しでもサポートすることはできなかったのだろうかと。

 

 

 

 

 

 

 

 私は、Voice of War(VoW)主筆 J・ジェスター。

 

 私はあの後、世界各地の戦場や紛争などを記録し、全世界で共有する情報ネットワーク機関を完成させた。画像付き最新ニュースの配信に情報提供、各勢力や組織のプロフィールなど戦場で戦う者たちには必要不可欠な情報を取り扱うことで、より戦争に特化したサービスを作り上げることができた。

 

 あらかた仕事が終わり、自室に戻る。オフィスチェアに座り、ふぅと息をつく。次は14時30分に移動か。そういえば明日の午後から使う資料はどこだっけかな。しかしデスクの現状はノート端末を中心に積み上げられた書類と青、赤、緑色のファイルが散乱し、電話機の上に飲みかけのコーヒーやスナック菓子の食べかすなど、自分でもわかるありさまだ。あの潔癖症のフレッドが「いい加減デスク整理でもしたらどうだ」と引き気味に言われたことを思い出す。片付けるかとしぶしぶデスクの引き出しを見ると、見るも無残な光景に、まるで宇宙(?)だ。

 

 すると、蛍光管タイプの青白い光が何かに反射、エメラルドの色をした光が目つぶししてきた。緑の閃光が過去の記憶を巡らせる。今でも鮮明に覚えている、あのビール瓶だ。ゴソゴソと引き出しの中をかき分け、ようやく取り出す。異様なデザインをした、あの傭兵との思い出の品だ。

「あれから20年ぐらい・・・かな?」懐かしい思い出に口元がゆるむ。

 

 

「ジェスターさん、カドカワ様からお電話です」スーツ姿の女性が受話器を持ったまま私に伝える。はて、あんな人ウチにいたかな?こっちに回してと合図すると、女性は受話器越しにいるであろう依頼人に一言。電話機のボタンを押すと自室にかかってきた。

 

 これまでの歴史を書籍にするという一大プロジェクトだ。これが成功したところで何が起こるかは分からない。けれども、私は、ジャーナリストだ。記事を書くのが私の仕事だ。この仕事でしか私は私を証明することができないのだから。

 

 空気を吸いに屋上へ。今日は珍しく晴天。あのときと同じくらい真っ青だが、いつになく静かなお昼過ぎである。錆びた腰くらいまでの柵に寄りかかり、先ほど見つけたビール瓶を再び見つめる。王冠はどこかでなくしてしまった。どんなデザインだったっけかな・・・。

 

 どこからか私の隣にカラスが降りてきた。私に向かってカァと1回、思い出の品をくちばしでコンコンと2回、エサじゃないと判断したのか羽ばたきを3回し、飛び立っていった。「ジェスターさん?」と女性特有の柔らかな声が後ろから聞こえた。

「新人かな?」と問うと女性は答える。

「はい、アンジェリカ・レイと申します」スーツ姿にショートの金髪、この青空のような青い目をしている。アンジェリカは続ける。

「あのジェスターさん、そろそろ移動のお時間かと・・・?」

「あれ、もうそんな時間だっけ!!?」右手首にしている腕時計には14:21と表示されていた。思わずため息をする。

「仕事が嫌なのでございますか?」こんな私を心配してくれるのかと心の中で感動する。

「違うよ。休暇が欲しいなって思っただけさ」アンジェリカがプッとほほ笑む。そんな天使のような笑顔に私も笑みがこぼれる。

「じゃあ、行こうか。戦場へ!」

「はいッ!」

 

 

 

 戦場の傭兵たちよ、何を思い戦うか・・・。

 

 

 

 

 戦場の傭兵たちよ・・・何が目的で戦場へゆくのか・・・。

 

 

 

 

 戦場の傭兵たちよ・・・・『戦い続けること』とは・・・・。

 

 

 

 

 戦場の傭兵たちよ・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




初投稿となります、作者のティーラです。

今回はお試し感覚で書きました。

さまざまなサイトでACVDの二次小説を読むと、大体の確率で主人公は傭兵であることがわかり、ほかの役職のキャラはあまり見かけませんでした。

そんなときにACVDの設定資料集(カドカワ製)を購入し、1日中読むのに没頭してしまいました。(笑)

VoWのssを書くのならどんなキャラにしようかとしていたときに出会いました、
J・ジェスターさんに!(*^▽^*)

私はACVDをプレイ済みなのである程度VoWについては知っていましたが、これほど情報量が少ないとはと正直あきらめ半分でしたが・・・なんとかできた、できちゃった♪♪

これを機に、また書こうかと思います。

感想やコメントなど、どんどん書いちゃってください!お願いします!

最後にこんな作品を読んでくださり、誠にありがとうございます。

ではまたどこかでお会いしましょう。 サヨナラ~( ’Д‘)ノ~~.。

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