都合によりしばらく更新が滞っているため、忘れないで貰えたら嬉しいな、という思いを込めつつ、生存証明としてエイプリルフール記念に出しておきます
いつか別に連載できたらと思っていましたが、元の連載がこの状態なのでくっつけておきます
連載の方は今年中に完結できるよう、連休前後くらいに復活できればと考えています。
●本編との違い
独立連載になる場合、R18になりそうです
世界の前提や、マーレが一人になるタイミングが違います
マーレの設定が書き換えられていません
マーレの本名表記を避けていません
マーレについて「弟」という表現を避けていません
だって、ついてなきゃヤれませんから、仕方ないんです
(※本編ではついてるともついてないとも明示してません)
●だったらどうして「マーレひとりでできるかな」のIFなのか
これも、ひとりですし……
一応、現地人とのかかわり方が何故か何かとあちこち似たような感じになる予定でした
というか同じ展開になる所は描写をざっくりサボ――簡略化するようなことも考えていました
●お前は何をやっているのか
ごめんなさい。なんとか連載できていた頃に気まぐれを起こした残骸なのでご容赦ください。
それは、ナザリック地下大墳墓の守護者の男衆が睨み合うアルベドとシャルティアを放置して、女の戦いから逃れたすぐ後のこと。
アウラが仲裁を押し付けたデミウルゴスを恨みがましい目で見たり、コキュートスがモモンガの子息に忠誠を尽くす未来を妄想して恍惚となっていた頃のこと。
不敬ともとれる女の戦いに男たちが寛容になれるのは、ナザリック地下大墳墓の未来を考えてのことだ。至高の御方が子を作ることがあれば、守護者たちは忠誠を尽くす対象を得ることができ、ナザリックの戦力も充実する。
そして、戦力の充実という果実は、守護者が子を作ることによっても得られるのだ。
「どうだね、マーレ。ナザリック地下大墳墓の戦力を増やすため、子供を作ってみないかね? ……もし人間や
生殖能力を持つ男性の守護者といえば、
デミウルゴスがマーレを選んで声をかけてきたのは、女性の守護者は男性であるモモンガ様の世継ぎを生むべきであるからか、男性であれば外部の存在といくら子作りをしても戦力がダウンする時期が生じないからか、その両方が理由なのだろう。
「え? ええ? ……そ、それがモモンガ様の役に立つなら……いいですよ」
顔を赤らめるマーレの幼い決意に応えるように、再度の転移が発生した。当初の転移と同様、あくまでその原因は不明だ。
ナザリック地下大墳墓の他の者たちは、突然マーレが消えたと考えた。
しかし、転移したのはナザリック地下大墳墓のマーレ以外の者たちの方であった。
マーレ消失の原因究明の際、当然ながら注目されるのはデミウルゴスの発言となる。
デミウルゴスが「せくはら」の罪を問われてナザリック防衛戦の責任者から外されたことで、かえって時間ができて現地の最前線で辣腕を振るう機会が増え、本来あるべき歴史よりよほど凄まじい勢いで侵略支配活動が捗ったのはまた別の話。
ここからは、その場へ一人取り残された守護者マーレ・ベロ・フィオーレの物語となる。
気が付けばマーレは草原の中に居た。
しばらく歩いて出会うのは、見知った第六層の森とは違う雑然とした深い森。
マーレは先程、転移をしていない。その確信はある。
転移魔法を使えるマーレには感覚としてわかるのだ。
NPCが喋れるようになった直前に転移はあったが、今はそれが無い。
それでは、これはどういうことか。
動いたのは、ナザリック地下大墳墓。
あれを丸ごと動かすなんて、偉大なる至高の御方でもなければ到底不可能なことだ。
つまり、唯一お残りになった至高の御方、モモンガ様の御業以外には考えられない。
そして、深い知恵を持つつ御方が無意味にそのようなことをするはずがない。
世界の全ては、至高の御方の掌の上にある。
ぼくにはするべきことがある。
心当たりは、一つしかない。
――ナザリック地下大墳墓の戦力を増やすため、子供を。
それが、マーレが最後に聞いた言葉だ。
デミウルゴスの口から出た言葉だが、それを了承した時点でマーレを転移させるということは、間違いない。
そうまで急ぐ理由はわからないが、今日のモモンガ様は色々なことを望まれている。望まれるなら従わなければならないのは当然のことだ。
ご自身でも、わざわざ《
そのあと、マーレは姉とともに実験ということで戦闘を行った。
今度はデミウルゴスの言うように、ぼくが人間や
きっととても簡単なことだから、藁人形を積み重ねるようにそれら人間種をいくつも用意して、たくさん子供を作ればいい。
それが、ナザリックの守護者としてマーレに与えられた使命だ。
マーレは、それら人間種を探すことにした。やり方はよくわからないが、捕まえたものから聞けば問題ないはずだ。
ところで、森といえば
そんなわけで踏み込んでみれば、この森は広いばかりでろくに使える魔獣も居ない弱者の楽園でしかない。
ようやく見つけた言葉を解する魔獣も、見掛け倒しで格好と態度ばかり立派なくせに弱いアンバランスな生き物だった。
「それがしの縄張りへの侵入者よ。命の奪い合いの前に言い残すことはあるでござるか?」
「あ、あのっ、このあたりに人間やその近親種の女の子はいませんか?」
事情を話すと、森の賢王と名乗った魔獣は少しだけ鼻をひくつかせ、人間の集落が南の方にあると教えてくれた。
少女の服装で女の子を求めることについては、嗅覚でそういうことを判断する魔獣には気にならないのだろう。
そして、残念ながらこの森には
「それがしも生物として子孫を作らねばならないのでござるが、これまで一度も同族と会ったことがないのでござるよ」
「だったら、縄張りから出て探せばいいんじゃないですか」
「それはちょっと面倒でござるなぁ。せっかくの縄張りを捨てるというのも……」
至高の御方が大規模転移を用いてまで計画するくらいだから、子供を作るということは大切なことなのだとマーレは考える。
つまらない現地の生き物であっても、同じ使命を持つ者ならば積極的になるべきだ。
「それなら、ぼくが勝ったらこの森はアインズ・ウール・ゴウンのものということにします」
「むむっ、命の奪い合いに縄張りを賭けよということでござるな! それならおぬしが敗れれば、それがしの糧となるでござる!」
毛皮が良い土産になりそうなので、マーレは少し距離を取って毛皮を傷めないような魔法を考える。
「
本体の動きより幾らか速い攻撃を繰り出してきたのは、森の賢王の尻尾だった。
マーレはこれを掴み取ると、毛皮を傷めない冴えた方法を思いつく。
「それがしの攻撃を完全に防ぐとは、いったい何者でぎゃぶっ!!」
尻尾の根元付近へ音もなく移動し、そのまま尻尾を手繰り寄せて森の賢王を裏返しに地面に叩きつける。
「べぎゃっ、ぃぎゃぁああぁぁっ!! ももももげるもげるぅっ! いぃ痛いでござるぅぅっ!」
尻尾を引き抜こうとすると、森の賢王は絶叫をあげる。
血抜きなら頭を抜いた方がいいのかもしれないが、森の賢王の二頭身ボディでは頭部の毛皮の確保も重要になるのだ。
「毛皮をもらっていいですか?」
「ななな何でも言うことを聞くでござる! 殺さないでほしいでござる!」
「……わかりました。それでは、ぼくのしもべということにしますので」
毛皮の保存は面倒なので、生きたまま保存した方がいいかもしれない。
しかし、いざしもべとして見てしまうと、少し不安を感じてしまう。
子供を作る使命を持ちながら縄張りに引きこもっていたような者をしもべとすることで、将来ナザリックに迷惑がかかってはいけない。
マーレも引きこもるのは大好きだが、使命を怠ってまでそうするのは良くないことだと思う。
だから、ここで森の賢王に厳しく接するのは、引きこもり体質の近親憎悪によるものではないつもりだ。
「ええと、とりあえず命が惜しかったら二時間以内に人間の棲む場所を正確に把握してきてください」
脱兎のごとく駆け出す森の賢王。南へ向かったので逃げたのではなく命令を聞いているのだとは思うが、念のため魔法による超知覚を発動する。
――あ、これで探せばよかったんじゃ。
超知覚の認識範囲は広い。森の中で目的の木を探したり街の中で特定の人間を探すような用途には弱味もあるが、森や草原で大きな魔獣を認識しつつ人間種を探すくらいは容易なことだ。
目を血走らせトップスピードで草原へ出た森の賢王は、そのまま人間型の生き物と激突し撥ね飛ばす。
物言わぬ骸になったのは、大きさや肉付きから人間種の男性のようだ。
――男なら、いいや。
マーレとしては、使命に支障もないので見なかったことにする。
もともとナザリック外の存在には徹底的に無関心なマーレだが、今は程良く生殖可能な女の子を見つけたら、ナザリックの守護者として捕まえて子供を作らなければならない。
守護者としての使命の都合が無ければ男女も調べず切り捨てたはずであり、その点ではマーレも人間種の側に半歩歩み寄ったと言えなくもない。
ともあれ、ここで骸となった男――カルネ村の
たとえ自分が何らかの形で関わって殺してしまったとしても、マーレであればすぐに忘れてしまうのかもしれないが。
そんなことより、今のマーレにとって重要なのは、森の南端辺りに認識できた人間種の女の姿だ。
――ナザリック地下大墳墓の戦力を増やすため、子供を。
脆弱な人間に、マーレから逃れる手段は無い。
マーレはとりあえず近くへ転移し、その姿を観察しながら対処を考えることにする。
――子供って、どうやって作るんだっけ。
草をむしっている人間の娘を見ながら、マーレは困り果てた。
こんなとき、マーレは脆弱な存在から知識を得る方法を知らないわけではない。
しかし、子供を作るには、人間種の女の身体が必要なのだ。
情報を得るために拷問をしたら、その身体がダメになってしまう。子供のマーレにだって、それくらいのことはわかる。
マーレが特に存在を隠さないまま使命の難しさを改めて噛みしめていると、作業を終えた人間の娘が気付いて近づいてくる。
「あなたは、この森に棲んでいる妖精さんかな?」
最初の相手は、決まった。
>(※本編ではついてるともついてないとも明示してません)
の記述を前書きにひっそりと追加
本編では、元々マーレの外見が皇帝クラスの洞察力を以てしても「少女」なので、現地人からどう思われるかが話を転がすポイントになっていることから、現地人に感情移入しやすいよう「男の娘」を浮き立たせないスタイルにしています。
システム上変更があったタグの問題を心配される方がいるかもしれませんが、解釈と妄想の範囲は大きければ大きいほど良いと思っているため、タグの問題が生じない形に落ち着きます。