今回は、けっこう、異色な短編ですね。「悪夢」を題材にしたらこんな感じになりました。
だから、表現的にはちょっときつめです。
あとは、色々と場面を変えてから書くのが難しかった。最後はけっこう上手にまとまったと思います。
設定
バースロイルで猫つきということで、星界の戦旗Ⅰでの話です。サムソンさんは、今回はあまり出番なしです。
その代わりにエクリュアとソバーシュさんが良い味出しています。
この話は小説投稿サイト「アルカディア」様でも投稿連載しています。
「父さん…いやだぁ——————————————」
ジントがそう言って間もなく一発の銃声が響き渡った。そして、ロック・リンの心臓に一筋の血痕ができ、それが広がっていった。そして、その銃を持った人物を見て、ジントは再び、絶叫した。
「ティル…なんで父さんを……どうして…答えてよ。ティル——————————————!!!」
リン・スーニュ=ロク・ハイド伯爵・ジントは、その瞬間、目を覚ました。
「ふー、なんていう夢なんだ。最悪だよ。」
そう独り言を言った後に、鏡を見ると涙が彼の瞳からあふれていた。
「心が傷ついていないなんて嘘だ。これを受け止めたらどうにかなりそうだから、感じないようにしているんだ。」
実の父であるロック・リンと育ての親であるティル・コリントの悪夢を思い出してジントはそうつぶやいた。
気分をあらためるために、潅水浴室に入り上着を脱いだときに、クリューノの時計をジントは、何気なく見た。
「まだ、ラフィールは寝ている時間だな。でも、こんな気持ちのときにラフィールを想うなんてわがままかな」
自嘲気味にジントはつぶやいた。
同時刻・艦長個室
「さあ、おいきなさい。ラクファカールで会いましょう。私のかわいい殿下。」
「はい、必ず」
次の瞬間、巡察艦<ゴースロス>は爆散していた。レクシュ艦長と共に。それを見た瞬間、ラフィールは叫んでいた。
「プラキア卿———————————————!!!」
アブリアル・ネイ=ドゥブレスク・パリューニュ子爵・ラフィールが目を覚ますと、そこは、自分の部屋の寝台であった。そして、おもむろに頬を触るとぬれていた。
「こんな醜態を見せたら父上にアブリアルらしからぬと叱られそうだな。でも、やはり、悲しいし、悔しい。私はあのとき、何もできなかった。何も……。」
そうつぶやいた後、ラフィールは時間を確認した。次ぎの当直任務まで30分の時間があった。
「湯浴みでもして、気分を落ちつけるか。こんな顔をしたら、あのものに心配されるからな。」
ラフィールが当直任務の時間になり、ソバーシュと交代しようとすると、そこになぜか、ジントがいた。ラフィールいぶかしく思いながらも少し嬉しくなり話しかけた。
「ジント、どうして、そなたがここにいるのだ?」
「うん、ちょっと、君に会いたくなってね。だから、ソバーシュさんと一緒に待たせてもらったよ。」少し不安げな表情で言うジント
「そうか、なら、いいぞ。そなた、そういえば、目が赤いな。眠れなかったのか?」
「えーっと、まあ、そんなものかな。そういうラフィールこそ、赤いよ。君もかい?」
「……まあ、そんなものだ。」
二人はそのやりとりをしたとき、互いに嘘だとわかっているが、本人が言っている以上、これ以上詮索する気持ちはなく、少し間沈黙していた。
その様子を眺めていたソバーシュは何かを悟ったように話した。
「艦長、リン書記、もしかして、カムコの実を食べたのですか?私がもらった瓶からいくつか無くなっていたので。」
「え…それって、もしかして、さくらんぼに似た実ですか?」動揺するジント
「そうです。食堂に置き忘れていたときにつまみ食いしたみたいですね。でも、あれをそのまま食べない方がいいですよ。とても悲しい悪夢を見ますから。」諭すように言うソバーシュ
「なんだと、あの実にはそんな作用があるのか?」驚くラフィール
「ええ、そうです。ということは、艦長も食べたみたいですね。私は、あれをアルコールに浸してカムコ酒のための材料としてもってきたのですが、そうすると、その作用はなくして、美味い酒が飲めるのです。」
「そのカムコの実の効果はどれくらい続くのですか?もしかして、このままずっと続いたらとてももたないですよ。」心配するジント
「うーんと確か、1個の実で一回の悪夢というのが決まっているみたい。リン書記と艦長は何個食べたのですか?」
「私は3つだ。」
「僕も」
「じゃあ、少なくてもあと2回は、見ますね。残念ですが、解毒剤は、ここにはないので、とりあえず、さっさと眠って見終わるに限りますよ。」
「そうか。しょうがないであろ。とにかく、そなたは、当直任務を外れて自室へ戻るがよい。」
「はい、わかりました。艦長」
ソバーシュは敬礼をして自室へ戻った。後に残ったジントとラフィールは気まずそうにみつめあっていた。
「そなた、もしかして、その赤い目は、悪夢のせいなのか?」
「えーっと、まあね。そういうラフィールだって、泣いていたんじゃないの。」
「私は泣いてないどいない。ただ、涙が起きていたらあふれていただけだ。」
「そうなんだ。それで、どんな内容だったの?」
「別によいであろ。そういうジントこそ、どうなのだ。話すがよい」
「うーん、どうしようかな。そうだ。あと最低2回は悪夢を見なければいけないんだよね。だったら、それが見終わってからにしようか。そうした方がいいような気がするから」
「うん、わかった。そなたの意見をいれよう。はっきりいって、あまり見たくは無いが、勝手につまみ食いした報いだと思って、あきらめるしかないであろ」形の整った眉をひそめながらラフィールはいった。
ラフィールがふと周りを認識すると、そこは、かつて、彼女が体験していた場面だった。
「(………く、ここは、どこなのだ?目の前にジントがいる。この私の服は……クラスビュールのときだ)」
「駄目だ。おい、アーヴ、信用して欲しければ、素っ裸になって、そこへ仰向けになれ、じっくり調べてやる」
目を血走らせながらカイトは、金色の髪を振り乱して言った。
ジントは、一歩前に出て、ラフィールを背中にかばった。
「そんなことできるか、ばかけだ侮辱をするつもりなら……」
「そこをどけこの奴隷野郎が!」カイトはいきなり発砲した。
「うわ」ジントの左胸に穴が開いた。そこから、とめようもなく血があふてれいていた。
そして、目の焦点がさだまらぬままゆっくりと倒れた。
「そんな、左肩を貫いただけのはずだ。そんな、ジント、ジント、ジント——————————————!!」
傍らでラフィールは、叫んでいたが、ジントの体からは赤い血が地面に絨毯のように広がり、染めていった。そして、体も冷たくなっていった。
…………………………………………………………………その瞬間、ラフィールは目を覚ました。
「ハァ、ハァ、ハァ、あれ…ここは…私のバースロイルの翔士個室か。それにしても、だんだん悪夢の度合いが増している気がするな。」
布団の中でラフィールが目を覚ましたとき、彼女の気分はとても落ちこんでいた。しかも、頬を触るとまたしても涙で濡れている感触を感じた。
「(…続けて、涙を流して起きるなどしたら、父にまた怒られるであろうな。しかし、夢でよかった。でも、あの可能性もあの場面ではあったのだな………ジント、そなたに感謝を。そして、生きていてくれたことにも感謝を)」
ラフィールは、その後、クリューノを操作して、音楽を流した。曲名は、「星に願いを」というもので、一世代前にアーヴの間で流行った曲でよく、レクシュが好んで聞いていた。
それに影響されてよく、ラフィールはこれを聞いていたのであった。悲しいときやつらいときがあったときに、自分の気持ちを落ちつけて、きりかえるための一種の方法であった。
———————星の数ほど人がいて、———————
———————星の数ほど出会いがある———————
—————————————————————そして、———————別れ
「この曲を聴いたのは久しぶりだな」ラフィールは、唐突につぶやいた。
リン・スーニュ・ハイド伯爵・ジントは、夢の中にいた。それを実感したのは、自分がクラスビュールの幻想園の馬に乗っていることが実感したからであった。
「ジント、のけぞるがよい」
ふいにラフィールがそういうと、ジントはそれを忠実に実行した。そして、ラフィールは凝集光銃を後ろむきに構えて、連射した。後ろで人類統合体の兵士が次々と倒れるのをジントはひどいゆれの中で確認していた。そして、ひどい銃撃にさらされながらも、幻想園の出口までラフィールと一緒に馬に乗りながら出口へ来た。
「ぼくはここまでしか行けないから」馬はとまった。
「ありがとう」ジントは飛び降りる
「行くぞ。ジント」ラフィールは走り始めた。
「またのご利用を…」馬が何かを言いかけた瞬間、破砕弾がその馬に命中した。そして、馬が爆発した。
「え…?(こんな場面はあったかな?)」その状況を見て、ジントは、自分の記憶と照らし合わせた。
「ジ…ジント」ラフィールがかすれるような声をジントに向けた。
それを聞いて、ラフィールを見た瞬間、彼女の美しい喉に一片の破片が刺さって、そこから、多量の血が流れ出ていた。
「ラフィール…なんで、これは…なぜ…」ジントがその状況を見て、ショックを受けたままつぶやいた。
ラフィールは、ゆっくりと仰向けに倒れ、そのまま黒瑪瑙の瞳をつぶり、動かなくなってしまった。
ジントは、体の底から震えていた。どんな状況でも、堂々たる振る舞いで数々の危機と困難を切り抜けた王女が真っ白な顔で横たわっていた。そんな状況を彼の心は認めたくなかった。そして、その想いを主張するかのように叫んだ。
「ラフィール——————————————!!!!!!」
目を覚ましたら、ジントは、震えていた。
「あれ、どうしたんだろう。たかが、夢さ。あの木の実の夢さ。アハハハ」そう自嘲気味にジントは乾いた笑いをだしたが、体の震えはまだ、とまらなかった。
そこへ、ジントのクリューノに通信が入った。ラフィールからのものであった。
「ジント…目を覚ましたか?」
「あ、ラフィール、よかった。」
「どうしたのだ?そなた、声が震えているぞ」
「大丈夫さ。収まるから」そうつぶやいているとき、徐々にジントの体は震えがとまり始めていた。
「そなた、その様子では、相当怖い悪夢を見たらしいな。今回は泣いている姿がはっきりとわかるぞ」そういうラフィールも目が明らかにはれていた。
「うん、そうだね。怖かったよ。もしかしたら、今まで一番、怖い夢だったかもしれない。なぜなら、その可能性があったから」不安そうな表情を浮かべるジント
「そうか…そなたもか。」
そうラフィールが言った後、しばらく沈黙が流れた。二人とも自分の気持ちをどう伝えていいかわからなかった。お互いがもしあのとき死んでいれば、心が壊れそうなくらい悲しく辛かったかもしれない。そして、そういう忌まわしいことは、結局、起きなくて、今、二人でいることはどんなにすばらしく幸せということを心の中で思っていたのであった。
その沈黙を破るようにジントの室外通話機がなった。
「坊や、いるか。ちょっと、手伝って欲しい仕事があるんだ。欲しい機関部の修理品があるんだけど、そのリストでわからないことがあってね。いいかい?」
サムソンからの声だった。
「あ、はい、わかりました。今すぐ行きます…ラフィール、仕事ができたから、また、今度ね」
「わかった。じゃあ、また。」
「(………ここは、どこだろう。バースロイルの僕の部屋だ。そういえば、何かサムソンさんに用事があって、いかなければならなかったな)」
ジントは部屋へ出ていき、サムソンに会って、備品についての確認を行った。
そして、ひとしきり談笑したあと、つぶやいた。
「うん、これで、ラフィールにもやる気がなさそうなんていわれないな。僕だって普段はしっかりやっているんだから。サムソンさんもそう思わないですか?」
自分の仕事がはかどったのでつい、サムソンの前でジントは、彼女の名を言った。
「坊や?ラフィールって誰だ?もしかして、坊やの恋人か?」不思議そうに言うサムソン
「え…、サムソンさん、何を言っているのですか?からかわないでください。この突撃艦<バースロイル>の艦長ですよ。」いつものように冗談を言っているとジントは思った。
「おいおい。坊やこそ、寝ぼけているんじゃないか。ここの艦長は、ラカシュ十翔長さ。だいたい、ラフィールなんていう名前はまったくきいたことがないぞ。」本気の表情で言うサムソン
「え、サムソンさん、ラフィールですよ。アブリアル・ネイ=ドゥブレスク・パリューニュ子爵・ラフィール。クリューヴ王家の第一王女で、現皇帝陛下の孫です。本当にからかっていないのですか?」サムソンの表情にジントは不安がつのった。
「アブリアル?そんなの聞いたこと無いな。それに陛下の孫は、ウェムダイス子爵・ドゥヒール殿下しかいなかった気がする。思考結晶網で調べてみればすぐわかるさ。」ジントがおかしなことを言うのでますますサムソンは不思議がった。
「そんな馬鹿な。今やってみます。」
しばらくした後、ジントは愕然とした。ラフィールの名前は、アブリアルには、なかった。それどころか、彼女の名前さえ、思考結晶には登録されていなかった。ジントの不安はますます広がった。そして、思わず、艦橋へ向かって走った。
そして、そこのついたときにいたのは、見たこともない翔士だった。それが艦長の席で静かに当直任務をしていた。
「そんな……」
ジントが呆然と艦橋で立ち尽くしていると、当直任務の交代のためにソバーシュが入ってきた。
「リン書記、どうしたのかい?艦橋いるなんて、艦長か私にようがあるのかい?」
ソバーシュは顔が青ざめているジントにおだやかに話しかけた。
「いや、何でもありません。」そういって、ジントは再び、自室へ戻った。
「(考えろ、リン・ジント、この頭はただ、体のバランスを保つためのものだけではないだろう。そうか、これは、夢だ。だって、ラフィールがこの世界からいないなんてはずはない。こうやって、痛みを与えれば夢ではないことはわかるはず)」
ジントは、思いきり右の拳で壁を殴った。
「痛い。嘘だ。なんで、痛いんだ。くそ、もう一度」
ゴスッと鈍い音を壁に響き渡らせて、ジントは壁を殴ったが、痛かった。そして、何度も何度も殴っても右拳は痛いままだった。
「どうしたんだ。僕は、頭がおかしくなかったのか。そんな、ラフィール。ラフィール、ラフィール」
最後は、泣きながらジントは、つぶやいていた。
ジントは、目が覚めた。しかし、右手が痛いと思い、おもむろに見るとディアーホがそこに噛みついていた。それは、ジントがディアーホの前足を力強く握り締めていたからであった。それに気づくと、ジントはそっとはなした。
「ふー、ふー」怒りの声を上げて、ディアーホはどこかへ行った。
「そうか、夢だったのか。、僕も馬鹿だよな。ラフィールがいなくなるなんて、そんなことないよな。」と涙でくしゃくしゃな顔でつぶやいた。
しかし、ジントの心の不安は、なくならなかった。それどころか、いっそう、広がっていった。そして、すぐさまクリューノの時計を見て行動した。
ラフィールは、ふと目覚めた。すると、艦橋に翔士が全員、自分の席に座っていた。
「ああ、艦長、お目覚めですか?もうすぐ、戦闘が始まるので、準備してください」
ソバーシュが真剣な表情でそうつぶやいた。
「わかった。ちゃんとそろっているな…な、誰だ、そなた。そこは、リン主計列翼翔士の席であろ」前にある書記の席に見たこともない翔士が座っていて驚くラフィール
すると、そこにいた全員が奇妙な瞳でこっちを見た。
「艦長、そのリン主計列翼翔士は、先日、テロで死亡したはずです。リュージュ主計列翼翔士は、そのかわりです。寝ぼけているのですか?もうすぐ本物の戦闘が始まるのですよ。」ソバーシュは厳しい目でラフィールを見た。
「テロ?なんのことだ?そなた嘘をいっているのか?」なおもラフィールは信じられなかった。
「艦長、映像、見せます。」エクリュアがつぶやいた。
それは、バースロイルにある備品倉庫の監視カメラの映像だった。そこには、熱心に備品を調べている茶色の髪をした主計列翼翔士だった。そして、その青年が何かを触った瞬間、画面いっぱいに大きな閃光が広がった。そして、その瞬間にその青年の首から上がなくなっている映像が映し出されていて、記録映像は消えた。
ラフィールはそれを見たとき、何か自分の中にあるものが壊れた。
「ジントォォォォーーーーーーー!」とにかく、その名前とその青年のことしかラフィールは思い浮かべることはできなかった。そして、それを叫びつつけた。
ラフィールがそう叫びつづけたと思ったとき、何か体がゆれている感じがした。そして、ゆっくりと周りを確認して目を開けると目の前には、茶色の髪で優しげな茶色の瞳をした青年が心配そうにこちらを見つめていた。
「ラフィール、大丈夫かい?僕の名前を言っていたけど、とても怖い夢を見たの?」
「ジント、ジントなのか。よかった。よかった。」黒瑪瑙の瞳にうっすらと涙が浮かんでいた。
ラフィールは突然、ジントを抱きしめた。
「ラ、ラフィール???」
「ジント、黙って、このままにするがよい」
ジントは無言でうなずいた。
「(…ラフィールが震えている。でも、どうしてなんだろう?よっぽど、怖い夢を見たんだな)」
ジントはそう思った後、ラフィールの黝い髪をそっとなではじめた。
「(やっぱり、ジントはここにいる。ここにいるんだ。私の側にずっと、いつでも、いつまでも。)」
そう感じたとき、ラフィールの体の震えはとまった。心から安心することができたからであった。
「ジント…そなた、目がはれているぞ。また怖い夢をみたのか?」
ジントを抱きしめたままラフィールはおもむろに尋ねた。
「うん、怖かった。ラフィールが最初からいなかった世界にいたようなきがしたんだ。その前の夢も君が殺される悪夢だったよ。クラビュールでの脱走劇でね。そんなことあるはずないと思っていても、心が張り裂けそうだったよ。」
「そうか、やはり、そなたには、私が必要だな。私がいなくて、泣かれては困るであろ」
ラフィールはいつもの勝気な調子で言った。
「うん、そうだね。僕には君が必要ということをね。ところでラフィールはどんな悪夢をみたのかい?君が泣くなんて滅多にないと思うよ。」
「ジント、これは泣いてなどいない。そなたの気のせいだ。それに、アブリアルは泣いていけないんだ。父上にもそう言われたからな。」頬を膨らませるラフィール
「わかったよ。そういうことにしておくよ。それで、どんな夢を見たの?僕は、最初の夢は、現実と同じかもしれなかった。ティルが僕の父を殺したんだ。しかも、自らの手で。はっきりいって、辛かったよ。最悪な夢だと思ったよ。そのときは?」
「そのときは?どういうことなのだ」
「そのあとは、さっきも話した通り、ラフィールがいなくなる夢さ。」
「そうか、私は……最初は、プラキア卿が亡くなる瞬間、つまり、ゴースロスの爆散の夢だった。そして、次は、クラスビュールでジントが私をカイトというものからかばたったときだ。あのときの凝集光がそなたの心臓を貫いた……」
そのあと、ラフィールは少し沈黙していた。そして、再び決意したようにつぶやいた。
「最後は、もっと最悪だったぞ。そなたが、書記としていないのだ。それを他のものは当たり前のようにふるまっていた。そして……いや、あの場面は言いたくないな。今から思い出すだけでぞっとする。」その瞳はアブリアルらしからぬ悲しみと恐怖の色があった。
「そうなんだ。ところで、ラフィール、いつまで、こうしているのかな?」
状況が落ちついてきたのでジントは、ラフィールが抱きついたまま目の前にいるのが恥ずかしくなり、顔を赤くした。
「あ…ばか。」そういって、頬を赤く染めて、ラフィールはジントから離れた。
そして、互いに距離を離して、お互いに顔を赤くしながら見詰め合っていた。
「ラフィール…」
「ジント…」
二人が互いの名前をかみしめるようにいった瞬間、近くから聞きなれた動物の声が聞こえた。
「にゃあーお、にゃーん」
「ディアーホ、静かに!」
それを聞いた瞬間、ジントとラフィールは声のする場所を見た。その次席翔士の席には、エクリュアがディアーホを抱きかかえて座って、いつもの無表情でこちらを見ていた。
「そなた、いつからそこにいたのだ?」怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にするラフィール
「艦長が寝ているときから」
感情のない声でエクリュアは答えた。
「な…次席翔士、そなた、なぜ、起こさなかったのだ?」
「まだ、交代の時間ではない」
「……そうか、ということは、すでに当直任務の交代時間だな。私は自室へ戻る。そなたは、当直任務にはげむがよい」
「了解」
そういってエクリュアを睨んでラフィールは、艦橋から去ろうとした。
しかし、一瞬止まって、ふりかえると、ジントに怒気の含んだ声でいった。
「ばか。そなた鈍さには失望したぞ」そういって、艦橋の扉の奥の向こうにラフィールは消えた。
「えーっと…どうしようかな。」状況が錯綜したためにジントの頭は今だ、混乱中だった。
その様子を見て、エクリュアがつぶやくように聞いた。
「艦長から抱きしめられるってどんな気持ち?」その瞳には珍しく好奇心に輝かせていた。
「えーっと、僕も自室へ戻るよ。じゃあ」
そういって、その答えを出さずにジントは逃げるように艦橋を去っていた。
「にゃーん、にゃーん」
ディアーホは、エクリュア一人になったバースルロイルの艦橋で楽しげに鳴いていた。
(完)
星界の戦旗でバースロイルで話を考えたらに戦旗Ⅱでジントがロブナスで死にかけたときにラフィールの夢ばかり見たという話から、今回の話を思いつきました。
よくよく考えると最後のオチはちょっと設定が甘かったなと思います。
頭環をついていたら、ラフィールはエクリュアの存在に気が付いたはずなのに・・・・
まあ、寝ぼけていた影響と思うことにしました。
これからも星界の紋章・戦旗の二次小説は書いていくのでよろしくお願いします。