タイトルの「聖伝日」というのは、私が作った「バレンタインデー」を意味する造語です。クリスマスが「聖誕祭」と言われているのを参考にして考えました。
それと、ジントにアリレーム(チョコレート)を贈った人物に関しては、「ジントの修技館時代」にそれに関する話がのっています。
それで、今回はバースロイルのオールスターメンバーの話を書きたいなと思って、考えました。もちろん、ディアーホもいます。


設定
星界の戦旗Ⅰの頃ですね。場所はダクルーがあるから、アプティック星系です。とりあえず、バースロイルの雰囲気をなるべくだすように頑張ったので、楽しんでください。
ちなみにアーヴ猫は遺伝子改良されているのでチョコレートによる中毒症状はおきませんのでご了承ください。


この話は小説投稿サイト「アルカディア」様でも投稿しています。

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星界の風章「聖伝日」

「ふー、今年も贈ってきたんだ。二人とも。」

 

そういって、リン・スーニュ=ロク・ハイド伯爵・ジントは、一つはピンクにもう一つは青色に包装されたリボンに結ばれた四角い箱に書かれた贈り主の名前を見つめていた。

 

ジントは、突撃艦のバースロイル宛に遅れられたそれぞれの備品のチェックをしていた。それは、彼の書記としての日課であり、この艦の彼の重要な任務であった。その中に彼個人宛の荷物を眺めて思わずジントはつぶやいたのであった。

 

それを隣で一緒に手伝っていた経理従士のロクサーヌは、ジントの様子を不思議そうに眺めていた。

 

「どうしたのですか?リン書記。その荷物に何か?」

 

「いや、なんでもないよ。そうだ。ここは、君に任せるよ。ちょっと、僕は用事を思い出したから。」あわてたように、二つの箱を持って、その場をさった。

 

 

ジントが箱を抱えたまま、廊下を歩いていると、ふいに横からサムソンが声をかけた。

 

「リン主計列翼翔士、どうしたのか?何か慌てているみたいだが。おや、その箱はなんだい?興味深いな。」と気さくに声をかけるサムソン

 

 

「サムソンさん。なんでもないですよ。僕は急ぐので、これで。」そういって、ジントは足早に去っていった。

 

 

「おや、つれないな。まぁ、いいか。じゃぁ、今度な。」

 

 

自分の翔士個室に戻ると、ジントはさっそく、リボンをとき、箱を開けて、中身を確かめた。

予想通り、そこには、記憶片とアリレーム(チョコレート)があった。一つの箱の中身は、幅10ダージュくらいのハート型のアリレームケーキでもう一つの中身は、袋の中に星型の一口サイズのアリレームが入っていた。

 

 

「そうか。標準時間では、もうすぐ『バレンタインデー』か。どうやら、いつ届くかわからないから、二人とも早めに送ってきたのだろう。まだ、その日じゃないけどね。」そのアリレームを見ながらジントは少し苦笑しながら言った。

 

 

すると、部屋のベッドで寝ていたディアーホもそのアリレームに興味を持ったらしく、ゆっくりと近づいて、アリレームの匂いを嗅いでいた。

 

 

「ディアーホ、食べるかい。僕も、一応、食べるけど、甘いものはちょっと、苦手でね。そんなにたくさん、食べられないと思うから君に少し上げるよ。これを送った彼女達ならディアーホだったら、許してくれるよ。」

そういって、ジントは猫の前にアリレームのかけらをおいた。

それを美味しそうに頬張っていた。星型のアリレームは、ディアーホの口には食べやすいサイズみたいで、夢中の様子で食べていた。

 

 

そして、ジントは、アリレームケーキにとりかかり、たべきって、ほんの少し、ディアーホに与えると、ディアーホは突然、口にそれをくわえると、ジントの部屋から出ていった。

 

「おい、ディアーホ…どこへ行くんだ?ふぅ、たぶん、お気に入りの場所で食べるのかな」

ジントは、そういって、面倒だったのでディアーホを追うことをあきらめて、送られた記憶片を見ることにした。

 

 

ディアーホはアリレームケーキのかけらをくわえながら優雅にバースロイルの艦内を目的地に向かって歩いていた。それは、この艦の艦長であり、帝国の王女の個室である部屋であった。ディアーホがアリレームをくわえて歩く姿は、ソバーシュとサムソンが二人で歩きながらいるときに見つけていた。

 

 

「おや、坊やの猫がこんなところを歩いているな。本当にこの船は星界軍の軍艦なのかい?ソバーシュ先任翔士」猫をめざとく見つけて言うサムソン

 

 

「そうだね。監督。私もあれを見ると、とてもそうは思えないよ。交易船ならわかるけど。それにしても、彼がここの真の艦長のように思えてくるね。あの姿を見るとね。」と柔らかい笑みをするソバーシュ

 

 

「そうですな。まったく、これから戦争をするにまったく恐れをしらない姿、さぞかし、艦長になったら頼もしいでしょうね」ソバーシュの軽い冗談にのっかるサムソン

 

 

「でも、そんなことを艦長の目の前で言ったらアブリアルの怒りに触れることになりそうだよ。このことは二人だけの意見にしておこう。…うん?何かくわえているみたいだよ。監督」

 

 

「本当ですぜ。あれは…何かのケーキみたいだな。まぁ、俺も猫の食い物をとるほど飢えていないから、坊やあたりに聞けばわかるでしょう。」

そういって、向こうに去っていくディアーホを眺めながらサムソンはつぶやいた。

 

 

そのディアーホは、彼のいつものお気に入りの場所へ向かっていた。そして、その場所につくと、くわえていたアリレームケーキのかけらを床において、ひと鳴きしてみた。

すると、扉が開き、そこからは、黝い腰までかかる髪と左右にとがった長い耳を持ち、黒瑪瑙の大きなとびっきりの美少女が猫を見つめていた。

アブリアル・ネイ=ドゥブレスク・パリューニュ子爵・ラフィールだった。

 

 

「どうした、ディアーホ。また、そなたの飼い主…ジントと何かあったのか…それは、何かの食べ物みたいだな。」ディアーホが床においていたものに視線を向けるラフィール

 

「にゃーん」とディアーホは嬉しそうにひとなきした。

 

 

「そうか、そなた。私と一緒にこれを食べたいというわけだな。まぁ、よい、一口くらいなら食べてやるぞ」

 

ラフィールがそういうと、ディアーホは、再び、アリレームのかけらをくわえて、彼女の部屋に入っていき、机の上にとびのった。そして、それを食べ始めていた。

 

 

「そなた。そこで食べるのがいいのか。まぁ、よい。私も一口もらうからな。」そういって、細い指で床に触れていなかった部分のそのかけらをとり、一口頬ばった。

 

 

「これは…かなり美味いな。この帝国の王女である私の舌を満足させるとは、そなたの働きもたいしたものだな。」そういって、すでに食べ終わって満足そうにしている猫ののどをなでるラフィール

 

 

「うん、でも、こんな美味しいならもっと食べたかったな。まぁ、猫のそなたにいっても、らちがあかないと思うが、この艦の中でこういうアリレームケーキなんて出されないからな。ちょっと、新鮮だった。…そうだ。このアリレームケーキは、ジントが用意したものか?」と猫に尋ねるラフィール

 

 

「にゃーん」と答えるディアーホ

 

「そうか、わかった。なら、あのものに聞いてみよう。」そういって、クリューノを操作して、ジントを呼びかけた。

 

 

「ジントいるか?」

 

 

「あ、ラフィール、どうしたんだい?」なぜか、慌てた様子でジントは通信に応じた。

 

 

「…(何をそんなにあわてているのだ?まぁ、よい。)そなたの猫がここにきて、私にアリレームケーキを食べさせてくれた。もっとも、一口だけだったからな。そなたがこれを用意したのであろ」ちょっと、疑問に思ったが、本件言うラフィール

 

 

「え、ディアーホがあのアリレームケーキを…。えーっと、一応、僕が用意したけど、全部食べたよ。ラフィール」一瞬、かなりの驚きの表情をするジント

 

 

「そうか…。そなた、何をそんなに慌てている。私が猫のくわえたアリレームケーキを食べるのが珍しいのか?それとも、他に何か理由があるのか?」さっきからの疑問を問いただすラフィール

 

 

「いや、そんなことは、ないけど…そうだ。ラフィール、僕はこれから湯浴みをする予定だったんだ。だから、慌てていたんだよ。今も服を脱ごうとしていたんだ。だから、切るよ。もうそのアリレームケーキはないからね。」

 

 

「……(絶対、あれは、嘘だな。私にはわかる)、わかった。まぁ、よい。」疑問は持ちながらもさすがに湯浴みといわれたジントを止めることはしないラフィール

 

 

「じゃあ。また」そう言って、得意の曖昧の笑顔でジントの通信は切れた。

 

 

 

10数時間後、バースロイルは、戦隊単位の戦闘と隊形訓練を行った。そしてそれが一通り終わり、艦橋に5人の翔士がそろっているときに、サムソンは、以前の疑問をジントにしていた。

 

 

「坊や、結局、あの二つの箱はなんだったのだい?リボンがされているところを見ると、贈り物みたいだったけどな。」からかうように聞くサムソン

 

 

「そうだね。確か、リン書記の誕生日はまだのはずだから、ちょっと、気になるね。サムソン監督から、その話を私も聞いてね。ちょっと、聞きたいな。」示し合わせたように言うソバーシュ

 

 

「えーっと、別にたいしたものではないですよ。友人から、ちょっと、欲しいものをもらっただけですから。」誤魔化す風に言うジント

 

 

「欲しいもの?そういえば、その後、坊やの猫がケーキらしきものをくわえていたな。あれが、欲しいものなのか。ハイド伯爵閣下はそんなに甘党ではないと思いましたですけどね。」とわざと最後は慇懃に言うサムソン

 

 

「ああ、アリレームケーキか。けっこう、美味かったぞ。」とさっきから何気に聞いていたラフィールはその話に参加した。

 

 

「アリレーム……?」そういって、ソバーシュは考え込んだ。

 

 

「あれ、ソバーシュ先任翔士、何かわかったのですか?」ソバーシュの様子を気にするサムソン

 

 

「リン書記、確か、君は、基督教を以前信仰していたと聞いたけど、間違いではないよね。」なぜか、嬉しそうに口元を緩めながら言うソバーシュ

 

 

「ええ…そうですけど…、ソバーシュ先任翔士、まさか、知っているのではないですよね」と自分が窮地に立たされていることにようやく気づくジント

 

 

「おおーと、リン主計列翼翔士、とめてはいけないですよ。ソバーシュ先任翔士の意見をぜひききたいですぜ」ソバーシュの発言で活気づくサムソン

 

 

「あのう、もし、知っているなら、できれば、それ以上は話されると困るのですけど」その瞳は必死にうったえかけていた。

 

すると、それを聞いていたラフィールは、あのときのジントの慌てふりが何か関係あるととっさに判断をして命令した。

 

 

「ソバーシュ先任翔士、艦長として命令する。今回の件に関してそなたの意見を言うがよい。」

 

 

「艦長命令としては、仕方がないですね。話します。贈り物がアリレームということですぐにピーンときました。『バレンタインデー』です。帝国の標準暦になおすと明日がその日です。艦長。」楽しげなソバーシュ

 

 

「…『バレンタインデー』なんだ、それは。アリレームと何か関係があるのか?」

 

「まぁ、簡単に説明すると、基督教の一種の慣習の一つです。その日にアリレームを渡して愛の告白をして結ばれると、幸せになるというのが、おおまかなものですね。起源は、バレンタイン氏という人の記念日というみたいですけど、詳しいことはよくわかりません。」わかりやすく簡単に説明するソバーシュ

 

 

「…・愛の告白?どういうことなのだ。ジント、そなた、そのアリレームを受け取ったのか?」突然怒り出すラフィール

 

 

「誤解だよ。ラフィール。確かに受け取って食べたけど。これは、義理アリレームだから。修技館時代に世話になった友人で僕が以前基督教を信仰していたことを知って、渡したんだ。それ以上の意味は無いよ。」しどろもどろになりながら説明するジント

 

 

「義理アリレーム?なんだ、それは、意味がわからぬ。そなた嘘で私を騙すつもりではないのか?」まだ、怒りが収まらないラフィール

 

 

「違うよ。ラフィール。『バレンタインデー』には、本命と義理アリレームがあって。本命の方が愛の告白で、義理が友人に感謝の気持ちを込めて贈るものなんだ(…しかし、完全に二人とも本命だろうな)。でも、ラフィール、どうして、そんなに怒るの?僕がアリレームを受け取ると困るの?」鈍いジントには怒っている理由がわかなかった。

 

 

「馬鹿。もう知らぬ。私は自室で休む」そういて、顔を真っ赤にさせながらラフィールは、艦橋から出ていった。

 

 

「ソバーシュ先任翔士、面白いものをみせていただきましたな。それに色々とわかったし、ありがとうございます。そうだ。これから1杯やりません。その話もっと、聞きたいですぜ。」そういって、自分の席を立つサムソン

 

 

「うん、わかった。監督。少しは楽しい話ができると思うよ。」ソバーシュはその後へ続いた。

 

 

艦橋には、ジントと当直任務のエクリュアが残されているだけだった。

 

ジントはきまずい思いまま、今回の訓練で消費された備品についての整理を行っていた。

 

そこへ、ふとみると、ジントの顔を凝視する視線があった。

空色の髪と瞳を持つ小柄な美少女のエクリュア列翼翔士だった。

 

「あのう…どうしたの?僕に何かあるのかい?」得意の曖昧の笑顔で対応するジント

 

「明日、アリレームをあなたに渡したい」突然つぶやくように言うエクリュア

 

「え???」驚きの表情をするジント

 

 

「……といったら嬉しい?」いつもの無表情になるエクリュア

 

 

「まあね」と苦笑するジント。

 

ジントはエクリュアなりの冗談だと思うことにした。

 

 

艦長個室へ戻ったラフィールは、なんだか例えようも無い怒りに自分が支配されていると感じてさらに苛立ちを覚えていた。そして、自室へ戻るとそこへディアーホがベッドの上で丸くなっていた。

それを見つけたラフィールは、その猫に話しかけた。

 

 

「ディアーホ、どうして、私は怒っているのであろうか。確かに冷静に考えれば、ジントが愛の告白をされたからといって、怒る理由などないはずなのにな…。うん、そういえば、あのものはすでにアリレームを食べていたな。もし、真剣に気持ちを受け取る気なら、明日に食べるはずだ。」ディアーホの喉をさすっているうちに気持ちを落ちつけるラフィール

 

「にゃーん、にゃーん。ゴロゴロ」満足そうに鳴くディアーホ

 

 

「そうか、そなたもそう思うか。それに、あのものは、義理アリレームというものがあるとも言っていたな。世話になっているものの感謝の贈り物か……よし、たまには、ジントの慣習につきあってもよいであろ」

 

そういって、ラフィールは何かを決意していた。

 

 

バレンタインデー当日。

 

 

ジントは睡眠をひとしきりとった後、当直任務からはずれたはずのラフィールを探して艦内をうろついていた。

 

 

「どうしよう。艦長個室にもいなかったし、クリューノで今呼び出すよりは直接会って話したいし…。どこにいるんだろう。ラフィールは。」そういって、ジントは艦橋へ向かった。

 

そこには一人、当直任務をしていたソバーシュがいた。

 

 

「おや、書記の君がここにくるとはね。目的は艦長かい?」穏やかに迎えるソバーシュ

 

「ええ、そうです。さっきから探しているのですけど、見つからないのです。ソバーシュさんは、知りませんか。」

 

 

「確か、艦長は、軌道酒保街<ダクルー>にいったみたいだよ。何か探し物をしていたみたいだ。ちなみに、エクリュア列翼翔士もいったみたいだ。」楽しそうに言うソバーシュ

 

 

「そうですか、なら、そこで探してみます。」

 

 

「そうか、残念だな。サムソン監督と昨日、話したけど君に誰がアリレームを贈ったことが気になってね。それについて、この暇な当直任務中に尋ねたかったのに残念だよ」

 

「すいません。それについては、今後もきかないでくれるとありがたいです。」

 

「そうかい。じゃぁ、一つだけ聞かせて欲しい。そうしたら、この件に関しては一切触れないよ。それは贈ったのはアーヴ女性かい?」

 

「えーっと…二人ともそうですね。」少し考え込んでから言うジント

 

すると、ソバーシュは一瞬驚いたような表情をあげて、ふいに笑みをこぼした。

 

「二人もいるのかい。これは、驚いた。私はアリレームを贈ったのは一人だと思ったが、ありがとう。新しい事実を確認したよ。」ますます嬉しそうな表情になるソバーシュ

 

 

「あはは、そうですか(なんだか、自分で墓穴を掘った気がするな)。とにかく、ダクルーに行きます。」

 

 

ジントはダクルーへ向かったが、結局ラフィールを見つけることはできなかった。

それは、ジントがダクルーに行ったのと入れ違いでラフィールはすでにバースロイルに戻っていたのであった。

 

 

ラフィールは、板アリレームをいくつか買いこんで、それを自分の艦長個室に持ってきて、眺めていた。

 

 

「うーん、これだけ渡しても世話になった感謝の意味になるとは思えないのだが、何か良い方法はないであろうか?」形の整った眉をひそめるラフィール

 

そして、何も思いつかないので、思考結晶網につないで、アリレームに関する情報を検索してみると、アリレームで型をつくったものができると乗ってあった。

 

 

「これくらいの加工があったほうが、渡しがいがあるな。ジントに渡したものはあんな美味しいアリレームケーキを手作りで渡したんだからな。私は機械か人間でつくったものか判断できる舌を持っているからわかるのだ。」誰かにいいきかせるように独り言を言うラフィール

 

だが、彼女が自室でいくら頑張っても思ったようにできなかった。ラフィールは、手のひらサイズの星型の大きさのアリレームにしようとしたが、なぜか、ラフィールが火で溶かしたりする、変質してしまい、綺麗にしあがることは、なかった。

 

 

「ふー、こういうときは、誰に相談すればよいであろ…。そうだ、サムソン監督は、料理が得意といっていたな。ここは、頼るか。いくらなんでも、こんなものをジントに渡すわけにはいかぬな」そういって、クリューノでサムソンを呼び出して、バースロイルの厨房も艦長権限で一定時間貸し切りにした。

 

 

「艦長、どうしました?料理に関して相談があるといわれたときは、本当に驚きましたですぜ。」そういって、エプロンをかけながらサムソンは来た。

 

 

「料理といってもたいした物ではない。このアリレームを型どおりにしかも、綺麗に仕上げて欲しいのだ」

 

 

「なるほど、それは、たいしたことはないですね。でも、艦長は料理なんてやったことないでしょう。こういうことは、意外にやったことがない人がやると難しいのですぜ。まぁ、俺にとっては造作も無いことですけどね。」そういって、快くサムソンは引き受けた。

 

ラフィールは、サムソンはアドバイスのみをして、手をつけてもらいたくないと伝えてから、調理にとりかかった。そして、サムソンは的確な温度とタイミングを指示してラフィールの満足できる風に完成させた。無論、味見もしっかりとチェックを行った。

 

 

「よし、これでよい。サムソン監督、そなたに感謝を。」

 

「ありがたいお言葉です。ですが、それは頬についてアリレームをとってからいうと、もっとありがたいです」ラフィールのアリレームがついている頬の部分を指差すサムソン

 

「え…」そういって、顔を赤くしながらラフィールは、指でふき取った。

そして、それを口に頬張って、誤魔化すように言った。

 

「美味いな」

 

 

 

 

ジントは、ラフィールがそんな風に健気な努力をしている頃、ラフィールではなくエクリュアにばったりと会った。

 

 

「やぁ、エクリュア次席翔士、どうしたんだい?」いつもの曖昧の笑顔で声をかけるジント

 

 

「リン主計列翼翔士…どうしたの?」いつもの無表情でじっと見るエクリュア

 

 

「えーっと、僕は、ラフィ…いや艦長を探していたんだ。君は知らないかい?」

 

「艦長ならバースロイルに帰ったわ。」猫籠を持ちながらつぶやくエクリュア

 

 

「そうなんだ。行き違いか。…あれ、その猫籠はディアーホかい。そうか、君は遊んでくれるのか。ありがとう。本当は僕の役目なんだけどね」頬をかくジント

 

 

「そ」

 

そういったあと、エクリュアは黙り込んだ。そして、ジントも何か話しかけようと考える間黙っていた。

 

すると、突然、エクリュアが再び、ジントの顔を無表情ながら穴が開くようなくらい凝視した。

 

「あのう、僕に何か?」

 

 

「これ、アリレーム、あなたに渡すわ。」そういって、丸い球体の小指の先くらいのアリレームを渡そうとするエクリュア

 

 

「え…・」さすがに、ジントは、その行動に驚いた。

 

だが、次の瞬間。

 

 

「といったら、嬉しい?」そういいながら、そのアリレームボールを自分の口に含むエクリュア

 

 

「アハハ、そういうことか。」冗談と思い、苦笑するしかないジント

 

 

「これは、ディアーホの分、余ったらあげるかもしれない。でも、今はダメ」

エクリュアは、そうつぶやいて、バースロイルに戻っていった。

 

 

結局、ジントもエクリュアの後にバースロイルに戻り、そのまま『ハイド伯爵城館:帝国で最もちっぽけな貴族の館』と記された部屋へ戻っていった。部屋に入って、ウトウトとまどろんでいると、室外通話機からラフィールの声がした。

 

 

「ジント、いるか。」

 

「うん、入ってよ。」そういって、扉を操作するジント

 

ラフィールは部屋に入ると、大きな皿に星型のアリレームを乗せて、運んできた。

 

「ラフィール、これは…」今日1番の驚きを見せるジント

 

「もちろん、アリレームだ。今日は、そなたの基督教でいう『バレンタインデー』だったな。たまには、そなたの慣習で味わうのもいいであろ。もちろんこれは、義理アリレームだ。」そういいながらもラフィールは頬を桜色に染めていた。

 

 

「ありがとう。ラフィール。嬉しいよ。そうか、できれば、本命アリレームの方がよかったかな」と軽口をたたくジント

 

 

「え……。そうなのか?」顔をさらに赤くさせて、目を見開くラフィール

 

「えーっと…冗談だよ。ラフィール」

 

 

「そうなのか……」少し残念そうな表情をするラフィール

 

 

「そうだ、ラフィール。このアリレームなんだけど、二人で一緒に食べないかい?さすがに僕は甘党ではないのでこれだけ、たくさんはキツイから。だからといって、ディアーホに食べさせるのは悪いし、いいかな。」と頼みこむジント

 

 

「しょうがないな。これは美味いぞ。まぁ、私は甘いものが好きだからいいぞ。確かにディアーホに食べさせるよりは、私と一緒に食べた方がずっといいはずだ。何しろ、帝国の王女と一緒に食べることができるのだから。」満足そうに提案を受けるラフィール

 

 

「うん、そうだよ。やっぱり、二人で一緒に食べる方が嬉しいな。しかも、『バレンタインデー』のような記念日にね。」その意図を知ってかしらずかさらりというジント

 

 

「ジント…(本当は私はそなたを…)」ほんのりと顔を赤くしながらジントを真剣に見つめるラフィール

 

 

「なんだい?ラフィール」それを何も知らないのん気そうな雰囲気で答えるジント

 

「なんでもない。別にいい。それより、早くアリレームを食べるぞ。よいであろ」ジントが鈍いので少しすねるラフィール

 

 

「ラフィール……」今度は真剣にまっすぐラフィールを見つめるジント

 

 

「ジント…(なんで、ジントに真剣に見つめられると胸がこんなにドキドキするのであろ)」再び顔を赤くするラフィール

 

 

「これだけ、甘いものを食べたから歯磨きはしっかりしようね。虫歯になってしまうから」とどめのような場違いな発言をするジント

 

 

「馬鹿、もう知らぬ。」そういって、少しアリレームを残してラフィールは怒りと恥ずかしさが入り混じった表情でジントの部屋から出ていった。

 

 

「あれ、どうしたんだろ。怒らせることいったかな。歯がちょっときになったのかな」結局、鈍いジントは、最後までラフィールの意図はわからなかった。

 

 

 

艦長個室へ戻ったラフィールは、思いきりベッドに倒れこんだ。

 

「まったく、ジントの冷凍野菜並みの鈍さは、あきれる。(……でも、また、来年、この日が来たら、わたしとあのもの関係は、どうなっているのだろ。もし、来年のこの『バレンタインデー』で私の勇気とジントの気持ちが決まっているなら、もう1回アリレームを送ってもよいであろ。今度は………)」

 

そう思い、目をつぶり、夢の中へ入っていった。

 

(完)

 

 




この話は、「ジントの修技館時代」のアリレーム(チョコレート)をめぐる騒動から思いついた話です。
ラフィールがサムソンさんに言われながら一生懸命チョコを作っている姿は想像したら素晴らしいと思ったので、そのあたりを話にいれたのが一番楽しかったです。
あとはディアーホがいい味だしているので、話を作りやすかったですね。

これからも星界の紋章・戦旗で二次小説を書いていこうと思うのでよろしくお願いします。

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