でも話はまともに作ったので読んでくださるとありがたいです!
幻想郷に大きく存在している妖怪の山。その妖怪の山に私は住んでいて、一応河城工務店という壊れたものを修理するという仕事をやらせてもらっているが、人間が来ることはそうそうなく大抵がこの山にいる妖怪である。特にある天狗なんかは新聞で使う写真を撮るためのカメラを修理に出してくる。まぁ、自分の仕事には満足はしているつもりだ。ちなみに仕事の依頼が来ないときは山の周りや滝のところに行って犬走椛という白狼天狗と駄弁ったりしている。実は駄弁ったりしている生活のほうが多かったりする。そこでたまにもう少し技術が発展したりしないかな、とか考えたりもする。
今日もれいによって仕事のない暇な日になってしまった。いつものように椛のところに行って駄弁ればいいと思うのだが生憎今日は仕事が忙しいらしくとても話を聞いてくれる様子ではない。しかしこのまま一人でいるのもいささかいい気はしない。しょうがない、今日は川に沿って散歩でもして暇を潰すとしよう。
私は手ぶらの状態でぷらぷらと散歩に出かけた。
散歩をしながら私は周りを見渡して思う。
何事もたまに行ったりするといいのかもしれない。この散歩もそうだ、毎日やっていては普通のように感じてしまうが時を置いてやってみると改めて感じることがあったりするものだ。例えば周りの風景、普段何気なく私が目にしている光景だが、今こうして見ていると季節の変化によって変わろうとしている最中の自然の変化もなかなか見ものだと思う。烏天狗の奴らもたまには自分らのいる山のことについて記事ぐらい挙げればいくらか評判が出ると思うのだが。
そんなことを考えながら私は川に視線を落とす。川の水は底にある石が見えるほど透き通っていて、何にも邪魔が入り混じっていない無色透明だ。結構昔はあの憎たらしい土蜘蛛のせいで川が荒らされていたが今はアイツはいないから綺麗になっている。山の下流に向かっている川の音は小さいながらもずっと聞いているとすがすがしい気分になれるほど癒される。もっと近くで音を聞いてみたくなり私はその場でしゃがんだ。
近くで聞くとやはり立っている時と比べてよく聞こえる。だが、そんな川の音と同時にバシャバシャと川の中で暴れるような変な音が私の耳に入ってきた。
「……て……けて……!……助けてっ!」
気のせいではない。私の耳にはしっかりとまだ若い男性の救助を求める声が入ってきた。私はその声が聞こえてくる方向に走っていく。妖怪の山の川は意外と深い、私の身長ぐらいなら体全体なんて余裕で浸かってしまう深さだ。里の人間でどうやって入り込んだのかも分からないが、そんなことは関係ない。とりあえず助けるだけだ。
声のするほうへ走っていくうちに声量は大きくなっていって、とうとう少し広めのところまでやってくるとそこに水面を激しく揺らしながらバシャバシャも必死にもがく青年がいた。
「おいっ!大丈夫かぁ!?今助けてやるからなぁ!」
私は青年に呼びかけながら川に飛び込み青年の元へと向かい、青年の手をつかむと陸のほうへ引っ張っていく。やっと青年一人だけでも立ち上げれるところまで来ると青年はハァッハァッと胸を押さえて荒くなっている息を何とかして整えようとしていた。そして数分した後ようやく青年の息も落ち着いたらしく、大きく深呼吸して私に向かって言った。
「助けてくださってありがとうございます……あなたが来てなかったら僕は……」
「なに、そんなに言われるほどじゃないさ、私が盟友を助けるのは当たり前のことだからね……それにしても里の人間にしては珍しい格好だし、それにどうやってここに入り込んだんだい?山に入るのは相当困難なはずなんだが」
青年の服装は里の人間とは全く違う素材が使われているようで上半身の服は白を基調とした何も模様がない無地の服だ。下半身は上半身とは真逆で今度は黒色の服でまるで射命丸文の服のようだった。
「実は気が付いたらこの山にいて、どこか探していたら足を踏み外しちゃって……さっきの状態に……」
「……あー……最近よくあるって聞いていたけどまさか本当にご対面するとは思ってなかったね……」
そう、最近新聞で読んだのだがどうやら外の世界からこっちに迷い込んでしまう人間が増えてきたらしい。彼もその一人だのだろう。早い話、これの対処法は博麗の巫女である霊夢のところへ持っていけばいいのだがこの妖怪の山にいたとなると話は多少変わってくる。妖怪の山に入り込んだ、という勘違いをされて天狗やらにとらえられる可能性も出てくる。見つからずに行けるのなら今すぐにでもそうしたいが椛などの白狼天狗が目を光らせているせいでとてもじゃないが見つからずに行けそうにはない。そうなると不本意ではあるがこの青年を一時的に保護する他ない。
はぁ、と一回ため息を吐いた後、私は面倒くさそうに。
「しょうがないから、とりあえず私の家まで来なよ、具体的な話はそのあとで」
「は、はい!ありがとうございます!」
ついてくるよう手で合図を送りながら歩き、青年は私の後ろからきょろきょろと警戒をしている仕草を見せながらついてきた。しかし、私の家へと歩いていくうちに青年の挙動不審な動きは強さを増してった。さすがにその挙動不審っぷりには私の目にも余るところがあり、一度歩みをピタッと止めて後ろを振り向き、多少イラつきを込めたような口調で青年に問いかけた。
「さっきからずっとへんな動きばっかりして、もうちょっと落ち着いていられない!?」
「ご!ごめんなさい!でも、さっきから山を下りるどころか山の奥に向かっているような気がして……」
「そりゃあそうだよ、私の家は山の奥にあるんだから」
青年はその言葉を聞くと唖然とした表情を見せて数秒間黙り込んでしまった。しかしそのまま動き出すのを待っていても時間が惜しい。
私は青年の頬を軽くペシペシと叩く。すると青年はやっと正気を取り戻し、私の後をついてきた。
しばらく歩いてとうとう私の家が近づいてきた頃に青年は再び挙動不審な動きをしだした。面倒くさいものを私は拾ってしまったのかもしれない。
「さて、一応私の家に着いたけど……ここからどうしたものかな……」
「すごいですね、僕よりも小さいのにこんなに落ち着いていて……」
「あのなぁ!私はこう見えてもお前なんかよりずっと年上なんだからな!?」
今のはさすがの私もカチンと来た。アイツなんか私からしてみれば生まれたての小鹿同然なんだぞ?まぁ、人間の大人も私から見ればお子様だけどね。
「えぇ!?ご、ごめんなさい!まさか年上の人だったなんて……」
「ったく、もう。本当ならここまではしてやらないけど私があそこで助けたんだ。一応この件が終わるまでは面倒見てやる。分かったら入りな」
まだ怒った口調を残したまま青年に家に入るよう促してやると青年は小さくひ弱そうに「お邪魔しま~す」と言うと入ってくる。
家に入れたまではいいとしよう。なかなか私も頑張ったと思う。でも問題はこれからでこの青年をどうやって保護すればいいのかってことだ。食事はまぁ、川で釣れる魚とかキュウリの漬物とかで何とかなると思うけど、私が仕事してる間どうしよう。何もしないでそのまま居させるっていうのはなぜか私がイラつくからダメだ。
「あの、えっと河城さん?」
「え?はい?」
急に呼ばれ慣れない名前で呼ばれてしまったせいでつい変な返事をしてしまった。もちろん呼びかけてきた声の主は青年である。だがしかし、私は彼に名前を一文字も教えていない。
「なんで私が河城だって分かったんだい?私は名前は教えてなかったはずだけど」
「あ、いや、河城さんの家の看板に「河城工務店」って書いてあったからもしかしたらと思って……」
その説明を聞いて私はあぁ、と頷きながら納得した。そういえば家の扉の近くに中くらいの大きさの看板があったことを思い出した。
「そうだ、ここらへんでちゃんと自己紹介でもしようかな。私は河城にとり。かっ……」
「かっ?」
私は本来「河童だ」と言おうとしていた言葉を途中で噤んでしまった。理由は、この青年が私のことを人間だと思っていることだ。外の世界では私たちのような妖怪の類はいないといわれている。だから自分が助けてもらった相手が妖怪だなんて知ったら混乱してしまうだろう。もしここで私のことを人間だと思うか、と聞いたとしてもそんなことを聞く時点で怪しまれるのは確定事項だ。だったら黙っておくのがいいのかもしれない。
「……やっぱいいや、何でもない。お前の名前は?」
「そうですか……?僕は
「あぁ、そうだけど……あと、河城さんだなんてよしてくれ。にとりでいいよ」
「あー……じゃあにとりさんで。工務店ってどんなことをしてるんですか?何かを作ったりしてるんですか?」
そう言ってきて、隆太はグイグイと仕事について矢継ぎ早に質問してくる。しかもそれだけでなく私の家の中をまるで見学しに来ているかのように見回っている。
「あぁ、まぁそういうこともするが……っておいっ!あまり人の家を勝手に探索するんじゃない!」
「あわわ……すいませんっ!……でも僕もこういう機械系のことが好きなんですよ……」
「へぇ、例えば?」
「そうですね、自分で役に立つものが出来上がっていく工程が良かったりするんですよ」
隆太の言葉を聞いて内心私の心がビクッと反応した。
確かにそうだ。私もよく新しい発明品を作ったりするが、作ってる途中に出来上がっていく工程が気持ちよく感じたりして心地よかったりする。自分が今作っているのが役に立つものになるかもしれないなんて考えていても楽しく感じる。
私は隆太の言葉にうんうんと頷き共感しながら「他には?」と無意識のうちに質問していて。隆太はこれに答える。
「あと、修理とかあるじゃないですか。それでも、一度壊れて使えなくなったものが自分の手によってもう一度使えるようになる……そこも達成感というか満足感というか……そんなものを感じるんです」
再び私は隆太の言葉に共感させられた。隆太の言った通り一度壊れたものは死んだも同然なのだが、その死んだ存在を自分の手でもう一度使えるように命を吹き込めるだなんて考えるだけで楽しく心は舞い上がってしまう。
「分かるよ、その気持ち!そういう楽しみがあるから発明はやめられないんだよ!」
「にとりさんも分かってくれますか!よかったらにとりさんの話も聞かせてください!」
「あぁ!もちろんだとも!何から話してやろうかな……」
いつの間にか私と隆太はその場に安座の状態で対峙しながら語り合った。私からは幻想郷の今の技術や私の作った発明品などを見せてやったりして、一方隆太の方からは私の知らない外の世界の発展した技術とか外の世界の流行とか……とにかくいろいろ話した。
そんなこんな話しているうちに私と隆太はうまく打ち解けあっていた。正直私もここまで楽しく駄弁れたのは久しぶりのような気がする。椛と話していてもここまで楽しくは話せなかっただろう。
それと同時に私は隆太が機械好きだということを理解したうえで今まで私が問題として考えていたことの解決法が浮かび上がってきた。
「なぁ、隆太、私の店で一緒に働いてくれないかい?」
「え?僕なんかがですか!」
「もちろん、隆太がよかったらだけど」
「全然大丈夫です!むしろよろしくお願いします!」
隆太はそう言うと満面の笑みを浮かべた。その笑みを見ていると私も笑みを浮かべずにはいられなくてつい、つられて私も「よろしく頼むよ!」と言いながら笑みを浮かべた。この日から私の工務店に一人の青年が働くことになった。
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今日で隆太が私の店で働くことになってから約5、6日ぐらいになる。最初の頃は私の店での働き方がわからなかったため私が手取り足取り教えていたが、隆太の物覚えの速さには目を見張るものがあって、私の仕事をしっかりと手伝ってくれるようになった。おかげで最近できなくなっていた店周辺の物集めも隆太に留守番を任せることによってできるようになっていた。
結果的に隆太が私の店に入ってきてくれてよかったのだが、たまにおかしな言動も見受けられる。
それは基本的に夜なんだが、私と隆太はそれぞれ別の部屋で過ごすようにしている……それの理由に関しては分かってもらえると思うが私と隆太は一応異性だ。私だって女性だ。いくら河童だとしても異性と一緒の部屋で夜を過ごすというのはいささか変な気持ちになってしまいかねない。
とりあえずこれで理解してもらえたと思うから話を戻すが、夜な夜な隆太が私の工具を借りて何やら作っているのを見かけた。そこで疑問に思った私は「よく私の工具で何か作ってるけど何を作ってるんだい?」と聞いたが隆太は「いえ、そんなに面白いものじゃないから気にしないでください」なんて言ってくる。正直そんなに面白いものじゃないんなら見せてくれてもいいと思うが、あの隆太が私に隠そうとしているんだ。そうそう見られたくないものだということが分かる。私はそんな隆太の気持ちを尊重してあんまり詮索しないようにしているがやはり気になってしまう時が多々ある。
私は布団の中で隆太の行動のことを気にしていたが、いけないいけない、と体を起こして頬をパチパチと両手で軽くたたいてやって気持ちをリセットさせる。
どうせ完成したら見せに来るに決まってる。だったら完成するまで気長に待ってやればいいさ。
それにしても先ほどのパチパチが思ったより強めにやってしまったせいか頬がピリピリする。しょうがないから眠気覚ましも含めて洗面所へ行こうとしたとき、隣の部屋から隆太も起きてきて、私を見ると若干眠そうに頭を掻きつつ「おはおうございます、にとりさん」と挨拶してきて私もそれに合わせて「おはよう」と返事する。
洗顔を終えてようやく目も覚めてきた。隆太も目が覚めてきたらしく大きく伸びをしていつにもなく張り切った様子を見せていた。
そんな姿を見た私は隆太の肩にぽんぽんと手を置いて。
「今日はいつにもましてやる気があるじゃないか、何かいいことでもあった?」
「はい!ちょっといいことがありましたよ、だから今日は頑張れそうな気がします!」
「そうか、じゃあ私は外の物集めに行ってくるから、今日は店番を頼もうかな」
「任せてください!今日なら何でもできそうな気がしますよ!」
自分の胸の前でグッと握り拳を作ったりしてやる気を見せてきた。私はその様子を見て安心して「それじゃ、任せたよ」と言って店の裏口から物集めに出かけて行った。
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私が物集めに行ってから数時間……
今日はいつにもなく大量に取れたおかげというべきか、せいというべきか、迷うが私が出かけるときには澄み切った青色の空がすっかり赤くなってきれいな夕焼けの空に変化していた。
その空を眺めつつ、ふと隆太のことを思い出した。いくらやる気に満ち溢れていたとはいえ、こんな時間まで留守番させるのはまずいと思い、私は工務店まで足早に向かって行った。
「ただいま~……っと」
収穫してきた材料を背中のリュックに背負って裏口から入っていくと、何やら店の表口のところから二人分の声が聞こえてきた。一人は隆太だが、もう一人はあまり聞き慣れない声だ。たぶんお客なんだろう。そういえば隆太が私がいないときにどうやって対応してるのかな。
気になった私は隆太に気づかれない程度に表口の方を覗いてみると、隆太ともう一人お客かと思われる烏天狗の二人が話していた。烏天狗の方は羽をしまっているからわからないけど多分あの雰囲気は烏天狗だ。私は二人がどんな会話をしているのかが気になり、耳を傾けてみた。
すると最初に話したのはお客の方で……。
「そういえば、アンタ、にとりと一緒にいるんだろ?よくアイツと意気投合できたもんだなぁ……」
「そんなに気難しい人じゃないですよ?話の分かってくれるいい人です」
「……人?面白いこと言うなぁ、アイツは人じゃなくて河童だよ」
「……えっ?にとりさんが河童?」
私は隆太の反応を見てその場で絶句してしまった。そして今、私は隆太に種族が人間ではないことをいうのを忘れていた。烏天狗の方も隆太の唖然とした反応を見て驚いたような表情をして見せて。
「まさか、お前、にとりが河童だと知らないでずっと一緒にいたのか……?」
「……はい」
「お前、悪いことは言わない。早くここから逃げな、このままだとアイツに何されるかわからないぞ」
「……にとりさん……」
隆太は私の名前をつぶやくと裏切られたような様子で俯いた。その表情を見ているだけで私の心は何か強いものに締め付けられるような感覚に襲われた。
確かに隆太の気持ちに代わってみればわかることだった。今の今まで同じ人間だと思っていた人が、得体のしれない妖怪の類で自分を騙していただなんて考えるだけで私だったらもう信用できなくなってしまう。
今の隆太の気持ちも同じような気持ちなのかもしれない。
裏口の近くで下唇を噛んで悔やんだ。よく考えてみればわかることだったのに、なぜ隆太の気持ちに気づいてやれなかった!
私は締め付けられる胸を手で押さえながらゆっくりとその場を去ろうとしたその時……。
「僕は逃げませんよ」
今までどこかひ弱そうな雰囲気を秘めた口調だったが、今回の隆太の言葉にはひ弱そうな口調は混じっていなかった。私は去ろうとしていた足を止めて隆太を再び見つめた。
「にとりさんは多分、僕のことを考えてあえて言わなかっただけだと思います。それににとりさんが何を企んでいようと僕はにとりさんに命を助けてもらったんです。命の恩人に殺されるとしても僕は本望です」
隆太の言葉に一切の嘘偽りの様子はなく、それは心からの言葉。隆太の本当の気持ち。
その隆太の言葉を聞いていた私の目からはポロポロといつの間にか涙が流れていた。
隆太はこんな私を信用してくれていた。素性を明かすことのできなかった弱い私を認めてくれた。
烏天狗の方もその言葉を聞いて「そうか」とただ一言いうと店から出て行った。私はすぐさま裏口から外に出てあふれ出る感謝の涙を無理やり拭うと、家に戻っていき、隆太の元へ寄っていく。
私に気づいた隆太からは先ほどの複雑そうな様子はすっかり消えて私にやさしく微笑んだ。
「おかえりなさいです、にとりさん」
「あぁ、ただいま。長い時間留守番ありがとうな。今日はもう早めに寝て休むといいよ」
「いえいえ、どういたしまして。じゃあお言葉に甘えさせていただきます」
隆太はそういうと隆太の部屋へ向かって行き、布団の中に入り横になると、しばらくしないうちにスースーと寝息が聞こえてきた。
私は台所に向かうと自分の分と隆太の分のお結びを作ってやり、片方は私が食べて、もう片方は寝ている隆太の近くに置いてやって、食事後ということと、私もいろいろあったせいか強めの眠気がやってきて、自分の部屋の布団に潜るとまるで催眠にでもかけられたかのようにフッと私の意識は眠気によって途切れた。
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「……ふわぁぁ……もう、朝か……」
昨日は早めに寝たというのに気づいてみればもう朝だ。疲れというものは恐ろしいなと心底思う。
私はいつものように洗面所に行き洗顔をして、仕事に取り掛かろうとするが一つ、今までとはおかしい点があった。それは……
「隆太のやつ、今日はやけに起きるのが遅いな……疲れがまだ取れてないのか?」
そう、いつもなら隆太が起きてくる時間はとっくのとうに過ぎている。しかし、今日は隆太がいつもの時間になっても起きてこない。おかしいなと思って私は隆太の部屋の襖を開けてみると、あり得るはずのない光景に私は再び絶句した。
それは……本当なら隆太がいるはずの布団には隆太の姿がすっかり消えていたのだった。しかも布団は毛布が綺麗に畳まれていて、布団の真ん中にはある一つの中くらいの箱が置いてあるだけだった。
私はその布団の上にある箱の近くによってみると箱の上には一枚の手紙が置いてあった。手紙を手に取り、ふるふると若干震える手を押さえながら手紙を開くと、おそらく隆太が書いたのであろう言葉があった。
『にとりさんへ、この箱は僕からのいつもの感謝の気持ちです。よかったら受け取ってください。今の僕がいるのはにとりさんがあの時助けてくれたからです。本当に感謝してます。にとりさんは今まで出会った……河童さんの中では一番ですよ……ありがとうございます。立花隆太』
「……なんだよ、それ……あの、バカ……」
無意識のうちには手紙を握る力は徐々に強くなっていき、あの時のようにまた私の目からは涙が垂れて手紙の文章を濡らしていった。
「でも、私のことを受け入れてくれて……ありがとうっ……!」
私はそのまま涙をぬぐわずに箱の中にあるものを手に取った。それを見た私は一瞬驚いたような顔をしたがすぐに微笑んだ……。
それから数時間後、隆太と出会う前の状態に近い状態で仕事を始めた。やっぱり、数日間とはいえ隆太がいなくなると変な感覚になってしまう。だが、これが本来の私の状態なんだと心の中で言い聞かせる。
「どうも~!射命丸ですけど、にとりさんいますか~?」
「あぁ、文か。いらっしゃい、今日はどうしたんだい?」
「いやぁ、またカメラが故障してしまって……ところでにとりさん、店の雰囲気変えました?音楽なんか流すようにしちゃって……」
「別に構わないだろ?たまには気分転換するのはいいことだと思うけど」
「それもそうですねぇ。では、カメラよろしくお願いしますね?」
「分かったよ、2、3日後ぐらいに直しておくよ」
そう返事をした後、大きく伸びをして深呼吸をすると「よしやるかっ!」と自分を元気づけると自分の部屋へ向かって行った。
思ってみるとどうやって、隆太がいなくなったのは今でも分からないままだ。もしかしたら隆太との出来事はすべて夢だったんじゃないかとたまに思ったりするが、答えは否である。
その理由は簡単。隆太との出来事は私の思い出の中に鮮明に残っているし、なにより私の部屋に置いてあって綺麗な音色を奏でている隆太が作った小さなオルゴールが隆太がいたということを証明しているからだ……。
このたびは本作品を読んでくださりありがとうございます!
本当だったら当日に間に合わせるつもりだったんですけど意外と長くなってしまって……期日を超えてしまいました。いやはや、今回ので自分の計画性のなさに反省しております…
ですが、今回の作品は一応短編としては前から考えていた作品でしたが無事に投稿することができたのでよかったと思っています!
ではではさようなら……