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星界の風章「祝宴」の後の話です。それで、ハイド伯爵帝都城館にある施設の人工海「奇蹟の海」という場所の話です。
ジントとラフィールのラブラブ度は、かなり高めです。
ハイド伯爵帝都城館・『奇蹟の海』
ハイド伯爵帝都城館にある、ラクファカールにある数ある軌道施設の中で唯一貴族の館で海がある施設だった。
その砂浜の海岸でジントは、つかの間の休暇を楽しんでいた。
「ふー、泳ぐってやっぱり、気持ちいいな。無重力空間とは、全然違うけど、僕はこっちの方がいいな。」
「わが君、楽しんでいますか?」金髪と褐色の美少女のミカエルが聞いた。
その美少女は、青い白玉模様のビキニを着て、砂浜にささっている日傘の下でジントを見つめていた。
「ええ、ミカエルさん。そうですね。(やっぱり、良い体しているな。あれが、機械だとは思えないけど)」ミカエルの水着姿を見て、顔をあかくするジント
「何をじっと見ているのですか?わが君。ミカエルちゃんの肢体に心を奪われたのですか?」からかうように聞くミルフィーユ
彼女は、12〜13歳の姿で、ピンクのワンピースの水着を着ていた。
「まさか、そんなことないですよ。からかわないでください。」思わず声をあらげるジント
「すいません。ところで、今回の休暇に王女殿下はここに呼ばれないのですか?」
「ええ、王宮にいると思います。休暇といっても3日だけですし、フリーコヴに戻れば、いつでも会えますし、いいですよ。」
「そうですか。ところで、わが君、前から言おうと思っていたのですけど、そろそろ敬語を使うのは、やめてもらうとありがたいです。そもそも家臣に敬語を使う貴族なんてみたことないです。」
「ああ、そのことだけど、なんだか、自分が偉そうになって落ちつけないんだ。それにサムソンさんとかの年長者だし、そっちが慣れてくれるとありがたいよ。」
「駄目です。わが君は、アーヴ貴族なのですから、『星たちの眷属』の社会にもなれていだたかないといけません。それに、今後、お子様が生まれたとき、私たちの方がわが君より、身分が高いと誤解されます。後の教育のためにもお願いします。」
「わかりました。いえ、わかったよ。アクリアさん。」
「駄目です。アクリアと呼んでください。王女殿下だって、セールナイさんを呼び捨てですから。」にこりと微笑む。
「わかったよ。アクリア、それに、ミカエル。努力するよ。」
そうジントがつぶやいたとき、ジントのクリューノに通信が入った。それは、ラフィールからのものだった。
ちなみに、クリューノは防水性のものを使っているので水中でも大丈夫なものであった。
「ジント、今、時間あるか?」
「うん、あるといえば、あるけど、どうしたの?ラフィール」
「…そなた。裸か。なぜ、湯浴みでもしていたのか?」恥ずかしそうに言うラフィール
「違うよ。海水浴だよ。ほら、この帝都城館には海があるだろう。それで、遊んでいるんだ。」
「そなた一人でなのか?」
「違うよ。ラフィール。アクリアたちもいるよ。一応、水着というのを着て、海の砂浜で遊んだり、泳いだりする一種の娯楽だよ。資料は、思考結晶網につなげば、でてくると思うけど。」
「そうなのか、ちょっと待て、見てみる。」
そういって、しばらくラフィールは沈黙した。
すると、突然、怒ったような声がクリューノのから発せられた。
「ばか。なんだ、この姿は、ほとんど下着ではないか。こんな姿をしているのか?ジント」
ラフィールの顔は恥ずかしさのあまり、耳まで赤かった。
「えーっと、そうなんだけど、僕の地上的感覚では、海水浴というのは、こんな姿なんだ。まぁ、慣れの問題かな。」ラフィールの態度に苦笑するジント
「……そういえば、そなた以外で誰かいるといったな。」詰問するように尋ねるラフィール
「うん、家臣のアクリア、ミカエル、その他、6名ほど。まぁ、主要な家臣は、全員集まっているけど、それがどうかしたの?」不思議そうな顔をするジント
「な…(あのものは、私以外にジントの体をみてもらいたくないといことがわかっていないのか。それに、あの家臣たちが、下着同然の姿をジントにみせていることにも腹がたつというのに)」鈍いジントに憤りを感じるラフィール
「どうしたの?ラフィール。それより、用事って何かな?」ラフィールが怒っているみたいなので、おそるおそる尋ねるジント
「私もそこに行く。まっているがよい。私も『かいすいよく』とやらを楽しむ。わかったな。ジント(そんな状況は絶対許さない。私が変えてみせる。)」その瞳に決意がみなぎっていた。
「ああ、わかったよ。でも、水着とかもっているの?ラフィール(ハハ、なんだか、すごい迫力だな)」
「え……(確かにそんなものない。どうしよう?)」困るラフィール
「わが君、もしかして王女殿下もここに来るのですか?」二人の様子を見て尋ねるミルフィーユ
「ええ、そのつもりみたい。でも、水着ないみたいなんだ。」
「それなら、大丈夫です。たぶん、殿下の部屋の『薔薇の居室』にサイズの合う水着があります。こんなこともあろうかと、用意しておいたのです。」悪戯っ子の笑みをするミルフィーユ
「え、そうなんだ。わかった。ラフィール。大丈夫だよ。水着はあるみたいだ。『薔薇の居室』にあるってアクリアが言っていたよ。」
「そうか、わかった。では行く」
こうして、ラフィールは、数時間後、ハイド伯爵帝都城館の『奇蹟の海』についた。
『奇蹟の海』にある更衣室で白いビキニ型の水着に着替えて、胸元を隠すようにして、ラフィールは、砂浜の様子をうかがっていた。頭環もクリューノも防水用ではなかったので、はずしていた。
「あれ、ジント、そなたしかいないのか?」少し安心した風に聞くラフィール
「ええ、その家臣の皆さんが気をつかったみたいです。それと、あのとき怒っていた理由を説明もらったよ。ごめん、気がつかなくて、まさか嫉妬されているとは思っていなくなくて。」頬を少し赤らめて言うジント
「そうなのか。ふぅー、よかった。さすがに、この姿は他のものに見られたら恥ずかしいな。」そういって、自分の水着姿を頬を桜色に染めながら言うラフィール
「そうかな。すごく似合っているよ。ようこそ。僕の『奇蹟の海』へ、王女殿下には、不釣合いと思いますが、不肖・リン・スーニュ・ロク=ハイド伯爵・ジントがぜひ、お供させていただきます。」
まるで侍従がするように頭を深くさげながら、片目をつむるジント
「ばか、からかうではない。だいたい、ここは、そなたの城であろ。もっと、堂々とするがよい」頬を膨らませるラフイール
「それにしても、まさか、アーヴの王女であるラフィールのこんな姿を見られるなんて、子供の頃なんて、思わなかったよ。だいたい、アーヴが海水浴なんてするなんて、思わなかったし、ロブナスのときもラフィールは、あの海が気持ち悪いとサムソンさんも言っていたよね」そういって、じーっとラフィールを見るジント
「じろじろ見るではない。それに、あのときは、状況が最悪だった。そなたが死にかけた場所だぞ。」ますます顔を赤くするラフィール
「あは、そうだね。その意見があって、ここは、海は塩分がとても薄いんだ。だから、匂いはほとんどしないようにしているよ。ラフィールでも耐えることができるようにってね。」
「そうなのか?」
そういって、ラフィールは、指を海水につけて、口に含んでみた。ほんのりと、しょっぱいと思ったが、不快に感じるほどではなかった。
「さてと、休暇時間も限られているし、その『かいすいよく』というものを楽しもうか。ジント。ところで、その輪のようなものはなんだ?」
ジントがドーナツ状の空気が入ったものを見て、不思議にラフィールは思った。
「これは、浮き輪というんだ。ラフィールは、たぶん、泳げないと思ってもってきたんだ。これにつかまっていれば、おぼれる心配はないしね。」
「そうか。確かに、真空宇宙ではともかく、水の中で泳ぐという経験なんてないしな。それを使おう。」
ラフィールは、浮き輪を受け取ると、その中に入り、ゆっくりと海の中へ入った。
そして、波打ち際で細く長い足をバシャバシャとさせながらゆっくりとジントが立っているのまで泳いでいた。その姿をジントは見ながら、微笑ましい気持ちになっていた。
「ジント、なぜ、私を見ながらニヤニヤとしているのだ。そんなにじろじろ見るではない。恥ずかしいであろ」口を尖らせ不満そうに言うラフィール
「うん、なんだか、可愛いなと思ったんだ。」
「ばか」
恥ずかしそうにラフィールは顔をうつむけた。
「海面を泳ぐ王女様か。うん、やっぱり、可愛いな。」さらにたたみかけるジント
「ばか、もう許さぬ。私の攻撃をうけるがよい。反陽子砲発射!」そういって、ジントの顔面に海水をかけるラフィール
「うわ、やったな。ラフィール。僕も反撃するよ。」ジントも負け時とラフィールに向けて、海水をかけた。
二人は、はしゃぎながらも互いに海水をかけあい遊んでいた。二人とも童心にもどったような気持ちになっていた。
「ハァハァハァ……まったく、ラフィール、すぐ熱くなるんだから。まいったよ。」そういいながらも嬉しそうな表情のジント
「ふん、そなたがつまらぬことをいうからだ。その様子だと私の勝ちは決まりだな。」満足そうなラフィール
「そうだね。君の勝ちにしておくよ。ここで、否定すると後でうるさいからね。それより、そろそろ出ようか。どうやら、この『奇蹟の海』も夕方モードへ移行したみたいだ。」そういって、砂浜までラフィールの手をひっぱり、引き上げるジント
「うん、わかった。そうか、これがいつか言っていた夕日の海辺の光景か。」そういって、立体映像ながら水平線に落ちる夕日を眺めるラフィール
ジントとラフィールは、砂浜に座って、しばらく、その夕日が沈む様子をじっと見つめていた。
「ジント」
ラフィールは、ジントの右に座ると肩にそっと、もたれかかった。
「どうしたの?ラフィール」ラフィールの黒瑪瑙の瞳を見つめながら言うジント
「いや、何でも無い。ただ、しばらく、こうしていたい」心なしか頬を桜色に染めるラフィール
「わかったよ。」そう言いながらもラフィールの黝い髪をさすりながら穏やかに微笑むジント
静かな波音をしながら二人は、夕日が落ちて夜になるまで、その時間をかみしめた。
「ジント……………………」
ラフィールは突然、目をつぶり唇を少し上に向けた。
「ラフィール」そうつぶやいた後、ジントは、そっとラフィールの唇を重ねた。
二人にとっては、永遠とも思える至福のときだった。
その後、ラフィールは顔を耳まで真っ赤にしながら、ジントに尋ねた。
「ジント…今日は…その…ここに泊まってもよいか?」恥じらいの中にも期待を込めてジントに聞くラフィール
「わかったよ。よかったら、休暇が終わるまで、ここにいてもいいよ。僕のかわいい殿下」
「ばか」
二人は、『薔薇の居室』へ向かった。本当に幸せなときを感じながら………
(完)